ダラ、……。
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大玉をぶん殴って壊してから、怪我してるヤツを生命力譲渡で治してとりあえず一段落。
直径2mは下らない鉄の大玉を気力操作も無しに素手で壊せるようになっても、魔王からしてみれば俺も雑魚に過ぎないんだよなー。魔王マジ魔王。クソチートめ。
「て、テメェ、あれからさらに強くなってやがるな……!?」
「あの大玉を、ぶん殴っただけで砕いちまいやがっただと!? やっぱコイツバケモンだ!」
なんで助けてやったのにバケモンバケモンと言われなきゃならんのか。
てかせめて礼の一つでも言えよ。
「……助けるんじゃなかった」
「すまねぇ、このバカどもには後で灸をすえておくから勘弁してやってくれ……」
およ? リーダーの金髪ことダラなんとかは意外とまともだ。
いや、なんかこっちを見る目に怯えが見える気がする。なんでや。
「……半年前は悪かった。あんな華奢な娘に縋ろうとしてた自分が情けなく感じるぜ」
「だから、テメェとあのアマを見返してやろうって強くなったんだぜぇ!」
「テメェもレベルが上がってるみてぇだが、オレらも負けてねぇぞ! なんせ全員中堅職にまで上がってるんだからな!」
「伊達に毎日死ぬ思いでレベリングしてねぇってこった! どうだ、まいったか!」
「やめろみっともねぇ! 俺らが束になっても敵わねぇ相手だってことも分かんねぇのかバカどもが!!」
俺に対抗意識を燃やしているのか、自分たちの力を誇示するモヒカンめいた野郎ども。
そしてそれを諫めるダラなんとか。……普段の苦労が見てとれるようだ。
んー、だが確かに全員Lv25を超えている。
特にリーダーのダラなんとかは、前見た時は確かLv10くらいだったのにLv32まで上がってるな。
普通ならひと月にレベルが1上がればいいくらいだってことを考えれば、半年で20近く上がってるのは素直にすごいんじゃなかろうか。
まあ、うちの子たちの成長速度はもっとおかしいけどな。ヒヨ子なんか生後3、4ヶ月で既にLv55だし。
「なんでダンジョンなんかに潜ってたんだ? レベリングするなら、魔獣のテリトリーでやったほうが討伐報酬ももらえて効率がいいだろうに」
「数日前に王都でとんでもねぇ戦いがあってな。どうにもその騒ぎが原因で国王が崩御されちまったらしい。王宮も今じゃ瓦礫の山だとか」
「王宮ってのはとんでもねぇ警備体制で、並の魔獣や魔族なんか一歩も入れねぇはずなのにあっさり壊されちまった。そのことを考えると、俺らも貧弱な装備のままじゃ危ねぇんだよ」
「かといって良い装備を手に入れようにも、対魔族軍とかが良質な装備や素材を持ってったせいで俺らのほうまで回らねぇ。強力な装備が欲しけりゃ自分たちで調達するしかねぇってこった」
……ああ、やっぱり国王様はダメだったか。
この国、今後はどうするんだろうか。しばらく混乱が続きそうだな。
≪次期国王は既に選別されているため、比較的スムーズに混乱は収束すると推測≫
え、そんなあっさり次の王様決めちゃっていいの?
≪国王は自分の死期を側近の【天啓】スキルであらかじめ悟っていた模様。王都防衛戦時点で王宮の中にいた者は、カモフラージュのために警護や文官などの衣装を纏った犯罪奴隷たちばかりで、国の中枢を担っている者たちはほとんど無事である模様≫
は? ……え、要するに、国王様はあの日に自分が死ぬことを知っていたってことか?
てか、天啓スキルって人の死の予言なんかできるのかよ。
≪肯定。神聖職の者のみが使用可能なスキルで、極稀に自動でスキル技能が発動し、大きな事件が勃発することを予言して混乱を防ぐこともある≫
……今回の場合は、運がいいのか悪いのかそれで自分の死ぬ時を知った国王様が、魔王相手に一杯食わせたっていうことなのか。
普通なら身代わりを置いて自分だけでも助かろうとしてもおかしくないのに、あえて自分以外の人材を助けることを優先したってのか。
≪魔王が国王を標的とした時点で、魔王の手から逃れることは困難。よって、自分が助かる方法より被害を最小限に抑えることを考えざるを得なかったのだと推測≫
いや、それならもう単身街の外へ出るとか、……いや、国王様が外に一人でいたら予測不能なトラブルでも起きかねん。
最悪、目的が国王様殺害から誘拐に切り替わって、誘拐した国王様を人質にもっと深刻な事態への引き金になりかねないし、アレで最良だったのか……?
いや、待てよ? 俺みたいにこのダンジョンの21階層を目指せば魔王から逃げられたんじゃ……。
≪梶川光流や剣王・大魔導師クラスの実力が無ければ、21階層へ辿り着くまでの道のりで魔獣やトラップが原因でほぼ確実に死亡する。アルマティナたちに梶川光流の現在地を伝えなかったのも、ダンジョンの深層へ同行させることを避けるためである≫
えぇ……この先そんなヤバいところなの……?
てか、アルマたちを巻き込まないようにってのは魔王じゃなくてダンジョン攻略にだったんだな。
「……どうした? 急に固まっちまって」
「……いや、国王様、本当に崩御されたんだなって……」
「あー、……まあショックだよなぁ」
いかんいかん、またメニューとの脳内会話に夢中になってた。
……はたから見てると、急にスイッチの切れた危ない人みたいに見えるんだろうか。気を付けよう。
「ところでお前、アルマティナはどうした? 一緒じゃないのか?」
「ハハハ! アレか、こんなオッサンと一緒じゃやだって結局別れたんじゃね―――」
「あ゛?」
「ひ、ひぃいぃぃいっ!!? スンマセンスンマセン冗談です殺さないでくださいマジスンマセンでしたぁ!!」
「ノック、いくらなんでも失礼すぎるだろ……」
「罰としてテメェはしばらく飯抜きだ! ちったあ自分の立場をわきまえろ!」
「そ、そんなぁ……!」
無礼千万なことをほざいたハゲに、思わずスゲー低い声で威圧してしまった。
能力値に大きな差があるうえに『恐怖の大王』の称号の効果も相まって、とんでもない威圧感を叩きつけてしまったらしく、流れるように土下座しながら謝ってきた。
「……諸事情で、今は別行動中なだけだ。アルマたちをダンジョンの深層に連れていくにはまだちょっと早いからな」
「そ、そうか。お前もダンジョンで装備品やアイテムを発掘中なのか?」
「まあな」
一応、それも目的の一つでもある。
強力な装備品を見つけたら、アルマたちや他の修業メンバーたちに渡して戦力強化もできそうだし。
できれば21階層以降にある『有用なバグ』も持ち帰りたいところだが、さて。
5階層手前の脱出ポータルでダラなんとかたちとは別れた。
向こうも大分長いことダンジョンに籠っていたらしく、そこそこ収穫もあったからもう帰るとか。
しかし、結構強くなってたなあいつら。
前に会った時はただのバカ集団だったが、変われば変わるもんだ。……去り際にウェイトレスがどうとか言ってたのが気になるが。
さて、こっからは生息する魔獣もLv30以上が最低ラインだ。
まだまだ余裕で攻略できるけど、油断は禁物だな。
特に15階層以降は段違いにヤバいらしい。
1階層攻略するのに1日かけるくらい慎重に進んだほうがいいとかなんとか。……ウカウカしてるとタイムリミットがきそうで怖いな。
だが、その分見返りも大きいはずだ。ダラなんとかいわく、4階層でもそこそこいい装備が出ることもあったみたいだし、深い階層ならもっといいものを期待できるだろう。
お、とか言ってたら早速宝箱発見。中身はなにかなー? パカッとな。
中から出てきたのは、緑色のドングリに似た木の実だった。
…………もう木の実はいいです。いい加減まともなアイテムをくださいよー……。
お読みいただきありがとうございます。
>右腕、左足が持っていかれて義手義足は付けずに生命力操作で治すんですね。
ぶっちゃけ昨日まで例の錬金マンガ読んだことなかったり。
全巻一気に読破して、気が付いたら日付が変わってました(;´Д`)
>理を越えて頭やら心臓持ってかれても生えるように強化(狂化?)しそうね…―――
さすがにそこまで人間離れは、……今でも充分人間離れしてるか。
ヤケ食いというよりは、主人公の気遣いに感極まって食いまくってしまっただけだったり。
>時空が歪んでいて、魔王のメニューが―――
YES。なのでなるべく早く戻らなければ大きなトラブルが起こっても対応できません。
大玉トラップは砕いてしまいましたが、他に有用そうなトラップがあったら引っぺがして持って帰るかもしれませんね。酸の海とかトゲのついた釣り天井とか。
>ちょっと前に、メニューさんブチ切れ回で―――
前世の情報だけでは謎が残ったままで混乱させかねないので、現在メニューさんが独断で主人公に会った人物たちの情報検索をして、なぜパイルバンカーを知っているのかなどの謎を解き明かそうとしている真っ最中だったり。
情報がまとまり次第、全ての情報を伝えるつもりのようですがなかなか難航しているようです。相談しろよメニューさん。
>客観的に見てあの状況でどうせ生きてるんだから心配するだけ無駄って―――
レイナも心配していないわけではないのですが、アルマの状態のほうにどうしても目がいってしまうようで。
あるいは、無意識に絶対に無事だと思い込もうとしていたのかもしれませんね。
あと、御両親がアイザワ君連れてきたのは、武術大会の準決勝でいい勝負をしていたという話から、ちょっとでも状況がよくなるんじゃないかと思ってのことだったり。……正直、あまり期待はしていなかったようですが(;´Д`)




