死は誰にでも訪れる
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今回ちょっと(?)グロ注意。
前触れもなく姿を見せた、魔族の総大将『魔王』。
その魔王が、なぜこんなところに……?
メニューいわく、魔王は『魔王城』から基本的に出ることができないらしい。
出ようとしても専用の結界が張られているので無理。仮に出られたとしても、外にいる限り少しずつ身体が朽ちていくので長時間の行動は不可能。
そのため、歴代の魔王が城の外に出たという記録はないらしい。
逆に言えば、どうにか出られればほんの少しの時間だけ活動できるということだ。
今代の魔王は過去の勇者の転生体。だからメニューを、そして【ファストトラベル】を使えるということだ。
そのわずかな時間で王宮を破壊して国王を殺害し、ここにきたってことなのか。
これじゃあ安全な場所なんて皆無じゃないか。
他の大陸の国王も同じ手を使えば容易に殺害できるだろう。……なんてことだ。
絶望的な事実を知ってしまったけど、それより、それよりも、腑に落ちないことがある。
なぜ、魔王が、俺の顔を、俺の名前を知っているんだ。
俺が魔王を見たのは今この瞬間が初めてだ。そしてそれは魔王も同じのはずだ。
「なん、で」
「なぜ自分を知っているのか、か。無理もない。以前会った時にはこのような姿ではなかったからな。……いや、会ったのは余ではないのだが、な」
以前、会った? 俺と? いつ? どこで? 誰が?
過去の勇者? いや、一世代前の勇者ですら数百年前の人物のはずだ。どう考えても違う。
あるいは勇者の、さらに前世?
過去の勇者の遺した手記や音声のネタなんかを考えると、おそらくどの勇者も21世紀初頭あたりから召喚されていると思う。
だとしたら、誰なんだ? 対象になる人間が多すぎて絞れねえんだけど。
いや、知り合いで亡くなった人なんかを思い出せば――――
「お前を見つけられたのは、思わぬ僥倖だ」
低い声で言いながら、魔王が笑みを浮かべる。
笑みといっても友好の意なんかカケラも感じられない。ただ、口角が上がっているだけだ。
「国王より、勇者より、我らにとってお前こそが最も危険な脅威となり得る」
アカン。
コレどう見てもダメな流れだ。
どうする、どうすればいい!?
なんでさっきからメニューさん黙りこくってんの! こういう時のためのメニューさんやろがい!
メニューに依存しすぎてるのは自覚してるけど、こんな状況で頼らずにいられますかって!
多分、メニューを使えるなら誰でも依存すると思うわ。こんな状況ならなおさらだ。
「故に」
どうくる。
どう動く。
くるなら早くきやが――――
「……え?」
魔王の手に、『なにか』が握られている。
血塗れで赤黒く、脈打っているグロテスクな物体だ。
それが見えたのと同時に、自分の鼓動が感じられなくなっているのに気付いた。
「油断はしない」
物体を握り潰しながら、魔王が呟いた。
まだ動くうちに、アイテム画面から大槌を取り出し魔力操作で叩きつけるのと同時に、魔力パイルを撃ちこんだ。
だが、虫でも掃うかのように軽く手を振っただけで大槌は砕かれ、魔力パイルは魔王に命中するのと同時にひしゃげ潰れてしまった。
「この玩具は初めて見るな、新しく作ったのか? パイルバンカーは以前よりも弱くなっているようだが、腕が鈍ったか」
魔王がそう言い放ったのが聞こえるのと同時に、身体が地面に崩れ落ちた。
心臓の鼓動が、感じられない。
身体が動かない。ピクリとも。
回復、ポーション、ダメだ、意識が、保て、な ――――――――――――――
死に、たく、な―――――
アル、マ――
ご、め――――
―
。
~~~~~
「HP0 状態は『死亡』 やっと表示を見せてくれたな、梶川光流」
血の海に沈む日本人の死体を見下ろしながら、思わず溜息を吐く。
この男の死を確認して、ようやく一段落ついたのだと実感した。
不完全な転生のためか、メニュー機能にも不具合が生じている。
例えばファストトラベルを連続して使える回数は2回まで。
外の世界に赴いて一回。魔王城に戻るために一回。それ以上使おうとしてもメニュー自体が強制的に休眠状態に入ってしまう。
再びメニュー機能を使用可能になるのはおよそ半月後。それまでは城で例の魔法の調整でもするとしよう。
「っ……」
左腕が、朽ち始めた。見ると末端から灰になって崩れていく。
たった数分程度で活動限界を迎えるとはな。なんとも不便なものだ。
だが、その数分間はとても有意義なものだった。
当初は王宮ごと国王を殺して、そのまま城に戻る予定だった。
あわよくば人類側の手練れを何人か消せればと、メニューを頼りに探っていたが、その際不可解なことに気が付いた。
誰が殺したのか分からない、大量の魔獣の死体が王都の東側に溢れていた。
殺した者のキルログに記録が残るように、殺された側にも加害者の記録が表示される。
しかし、死体の履歴には空白の表示のみだった。
それを確認するのと同時に、メニューがこの男のみなぜかステータスが確認できないことに気付き、直接確認してみたところでこの男の正体に気付いた。
顔を見た時は、内心肝が冷えたものだ。
よもや日本ではなくこちらの世界に来るとはな。なんとも因果な話だ。
この男、梶川光流だけは敵に回したまま放置しているべきではない。
ここで始末できたことは、嬉しい誤算だ。
やはり、人の歴史は今回で終わらせるべきなのだと、運命が、神が導いているのだろう。
感謝するぞ、梶川光流。余がメニューを始めとした力を手に入れることができたのは、お前の助けあってのことなのだからな。
「俺を助けてくれて、ありがとう」
もう動かなくなった梶川光流を見下ろしながら、それだけ言い残し、魔王城へファストトラベルを発動した。
~~~~~~~~~
「ここに、居たんだよな?」
≪は、はい。ほんの少し前まで、確かに≫
「魔王が、梶川さんが、ここで戦ったんだよな?」
≪……そうです。戦いというよりは、ただ梶川さんが魔王にやられただけのようですが≫
「残っているのは、血だまりと、壊れた大槌だけ、か。クソッ……アルマたちに、どう言えばいいんだよ……」
お読みいただきありがとうございます。
>梶川「け、警戒は十分してたのに!―――
なお、魔王の一定以上近くにいるとファストトラベルが使えなくなる模様。大魔王からは逃げられない。
元ネタでもラスボス最終形態相手に天丼で逃走してましたね。2部主人公すき。
>魔王様の登場で場が混沌と化してきてますね。―――
そして次の話でさっさと帰る魔王様。もっとゆっくりしてってもええんやで? 死ぬけど。
はたしてこの先生きのこれるのか。大丈夫大丈夫。心臓止まっても3分くらいは脳死しないから。
そしてクソ兄貴は置いてかれたので、徒歩で戦線離脱した模様。
>今ゼ○ブレイドDEやってんだけどさ、―――
ギアスとサーガはクリアしたんですがねー。機会があったらやってみようかなー。
あとドキドキを裏切らないかこっちがドキドキです(;´Д`)
>メニューがクラッキングされるか、―――
大体合ってる、かもしれません。
あとザ・〇ールド機能はよくよく考えたらメニューを使える魔王も使えるようになってしまうので、一旦保留。申し訳ない。




