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はやく

新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。


今回無駄に改行が多いです。



現状ではまだこちらが有利。まともに戦えば十中八九俺が勝つ。

そして、そのことをゴブリンも理解したらしく、数合打ち合っただけですぐに逃走を開始した。



『キイイイキャァァアアアッ!!』


「待てやゴラァァァアアアアアッ!!!」



逃げるゴブリン。追いかける俺。

暢気に追いかけっこしてる場合じゃないんだが、こいつ思ったより逃げるのが上手い。


素の状態じゃ向こうのほうが能力値が高いけど、少し気力強化すればすぐに追いつける。

だが、こっちが加速したら急旋回したり、軌道の微調整のために少しでも速度を緩めたらその隙に全速力で逃げやがる。


魔力の遠隔操作で捕えようにも、まるで見えているかのように的確に不可視の魔力を避けて移動してる。

このレベルの魔獣になると感知能力も半端じゃない。おそらく目が見えなくなったとしても他の五感を総動員してしのぐだろう。


さすがLv90、それも固有魔獣。鬼先生に次いで強い。

まあ養殖というか禁忌魔法で無理やり作られた存在だからか鬼先生ほど圧倒的な実力でもないけど。


見た感じ、勇者君からコピーした極体術と盾術を駆使して、とにかく距離をとることに専念している。

おいおい、このままだと他の戦場まで――――――





……っ!?

クソゴブリンが、それが狙いか!




「お、おい、向こうからなにかくるぞ!」


「あれは、ゴブリン? いや、なんだあの速さは!?」



こちらに気付いた兵士たちの声が聞こえた。

やばいやばいやばい! 東側からいつの間にか南側の戦場まで来ちまった!

こっちは確かラディア君やバレドたちが戦っている戦場だったか、下手に手を出されたら戦闘系のスキルをコピーされちまう!



「どけぇぇぇええええっ!!!」



ゴブリンに接触しないように大声で怒鳴る。

なにが悲しくて味方に向かって威嚇せにゃならんのか。



「ひ、ひいいぃぃぃ!!?」


「な、なんだこの空飛ぶ仮面はぁっ!!?」



……なーんでゴブリンより俺のほうを見て悲鳴を上げるんですかね。

そりゃちょっと怒鳴り方が乱暴すぎたかなーとは思うけどさ。あ、一人腰抜かしおった。


だがその甲斐あって、ゴブリンが接触する前に皆全速力で離れていく。……いや、むしろ俺から逃げてる?

ここはまだ戦場の外周。本格的に戦場に乱入されてスキルをコピーされまくる前に、なんとしてもヤツを仕留めなければ。



っておい!? 我関せずと言わんばかりに喧嘩してるっぽいのが何人かいるんだけど!

誰だ戦争中に人間同士で喧嘩なんかしてるアホは! 今はそれどころじゃ………ん? よく見たらあれラディア君じゃね?

で、喧嘩の相手はフードを被った不審者っぽいの。……俺も似たようなもんだけど。


ちょっとちょっと、なにやら憤怒の形相で斬りかかってるみたいだけど、いまそれどころじゃないぞー。

つーか相手は誰だ? 何者?


≪……容姿から、ラディアスタの血縁者であると推測。おそらく実兄と思われる≫


実兄? え、まさかラディア君の兄貴ってこと?

ってことは、あのフード野郎が魔族に寝返ったっていう……いや、それはいい。

てかそっちにゴブリンが! ゴブリンが向かってるんですけど!




『キキキキキィィイイイイ!!』


「っ!?」


「あ? なんだこいつ?」




ラディア君は喧嘩に夢中だったようで、迫るゴブリンに気が付いていなかったようだ。

対して喧嘩相手のフード野郎は眠そうな目でゴブリンを見つめている。 余裕だな。




「邪魔すんなっ!!」


「そうそう。せっかく数年ぶりの水入らずの兄弟喧嘩に興じてるところなのに、無粋だぜ?」



喧嘩してる二人が『短剣で』乱入してきたゴブリンを斬りつけようとする。



『キィッ! ………キヒヒヒヒヒッ!』



それをマスタースキル【小鬼骨武装】により自らの骨で作った盾で防ぎ、ゴブリンが嗤う。

ユニークスキル欄に【短剣術】と上位派生の【懐短剣術】が追加されてやがる。コピー完了ってわけか、クソっ!



『ギィッ!』


「あん?」



そして早速骨を変形させて短剣を作り、ラディア君の喧嘩相手に斬りかかってきた。

むぅ、これは止めるべきか? いやでも魔族側に寝返ったってことは、このままボコらせても問題ないのか……?




「あぶなっ、なにすんだ、よっ!」


「なっ」


『ギッ!?』


「が、はっ……! て、めぇ、え……!!」



こいつ……!

斬りかかってきたゴブリンに、ラディア君を突き飛ばして盾にしてやり過ごしやがった……!


ゴブリンの短剣がラディア君の腹に深々と刺さった。

口から血を吐き、膝をつきながらフード野郎を睨みつけて、苦しそうに息を荒らげている。



「ん、あー、悪い悪い。急に襲いかかってきたもんだからつい。悪気はないんだ。ごめんな」


「ふざ……け……!」


「まあ、アレだ。弟のモノは兄のもんだろ? 小さいころからそんなこたぁ分かりきった常識だ。だからお前の命もおれ様のもんってわけで、ここで身代わりにしてもなんの問題もないってこった」




なんだ、こいつは。

これが、実の弟にかける言葉か。


自分以外の人間のことなんざ、なんとも思っちゃいないのか。

実の家族を、なんだと思ってやがるんだ……!!




「が……ぁ……!」




……落ち着け、今はラディア君を助けることが先だ。

魔力飛行でラディア君に接近。生命力操作で傷を大急ぎで治していく。


なんとか完治したが、刺されたショックで気を失ってしまった。

……あとでファストトラベルを使って安全な場所まで運ぼう。



『ギィッ!!』



ゴブリンが短剣で斬りかかってきた。


邪魔だ。



『ギャベェッ!!?』



気力強化した膂力で、魔力で形作った巨大な拳で殴り飛ばす。

攻撃が当たる直前に【真獣解放】を発動したらしく、その甲斐あって死んじゃいないようだがダメージは小さくない。

警戒したように距離をとり、こちらを眺め続けている。


それを見たフード野郎が、俺に向かって口を開いた。



「んー? アンタ誰?」


「……この子は、お前の弟じゃないのか」



身体の芯に冷たいものが走る。

頭が怒りで沸騰しそうなのに、妙に落ち着いているのが自分でも分かる。



「え? ああ、そうですがなにか? なに? ヒトの家庭の事情に興味あんの?」


「ラディア君は、ずっとお前を追っていたそうだ。フィリエ王国の軍に入ったお前に会うために、死に物狂いで頑張ってきたらしい」



王都での晩餐会の時に、酔っぱらったラディア君が泣きながら愚痴を漏らしていたのをよく覚えている。

許しがたいほど憎く、しかしそれでも家族だからと愛憎の混じった複雑な想いを彼は口にしていた。



「あっそ。そりゃご苦労さん。で? まさか頭でも撫でてもらうために追ってきてたりでもしたの? うーわーキモぉ。乳離れのできない赤ん坊みてぇだなぁ」


「……いざ王都に着いてみたら、お前が魔族に寝返ったと聞いて強いショックを受けていたよ」


「ふーん」


「恥ずかしくないのか。兄として、人として。まだ成人して1年も経っていない弟がこんなにも頑張っているのに、なんとも思わないのか」


「あのさぁ、わざわざ説教するためにきたの? うっとうしいからさっさと消えてくれない?」


「魔族なんかについても、いずれ殺されるだけだ。奴らは人類を味方にすることなんか決してしない」


「人間側に戻っても死刑になるだけだろ。ならこっちにいたほうがまだちょっとは長生きできるってもんだ。それに……」



どこか悲壮感すらあるような、なんとも言えない笑みを浮かべながらフード野郎が呟いた。







「どのみち人類は滅ぶ。あんなのに勝てるわけねぇだろ。あんなのを、倒せるわけねぇだろ」








そう言った直後。


王都の、いや王宮のほうから爆発音が響いた。

地震でも起きたのかと一瞬思うほど、大地が、大気が激しく震えた。

王宮のほうにキノコ雲が上がっている。………まさか。


≪王宮が破壊された模様。国王を含め、宮殿内の生存者は皆無≫


……ウソ、だろ……!?




「この気配は……おいおいマジかよ。噂をすればってか。……あそこから出られないんじゃなかったのかよ」



顔を引きつらせ、冷や汗をかきながらフード野郎が呟く。

気配って、なにを――――




王宮のほうに、かつてないほど強大な生命力と魔力を感じる。

アルマの御両親、いや鬼先生すら超える、桁違いの存在感。

そして、今まで見たどの魔族よりも禍々しい気配。こうして感じ取っているだけで、身が引き裂かれるような心境だ。


ステータスなんか見なくとも分かる。おそらく、こいつは能力値が素の状態で5ケタを超えて―――――



≪ラディアスタ以外の全てを捨てて、ファストトラベルで逃げることを推奨≫



真っ赤な画面に大文字で、メニューが警告を出してきた。

いったい、なんだってんだ……!?





≪ は や く に げ ろ ≫




















「ステータスが表示されないな」



いつの間にか、本当に、いつの間にか、俺の真後ろにソレは立っていた。



「勇者は向こうにいるようだが、お前は誰だ」



黒い長髪。焦げ茶色の瞳。肌の色は透き通るように白く、しかし美しく健康的な彩りを含んでいる。

整った顔立ち。まるで高名な職人の造った芸術品のような、現実離れした美しさ。

見た目は人間そのものなのに、なぜかどう見ても人間とは思えない。


しかも、ステータスが表示できない。情報が、遮断されている?



まさか



まさか、こいつが






「魔王、様……!!」




隣にいたフード野郎が、跪き、呟いた。


こいつが、魔王、だと……!?





「ふむ」





俺が着けていた仮面を手に持ちながら、魔王がこちらを見ている。

いつ、奪われたんだ!?




「その顔、知っているぞ」




穏やかな顔のまま、しかし明確な敵意をもって、魔王が口を開いた






























梶川光流(かじかわひかる)か」



「な、に……!?」



お読みいただきありがとうございます。



>このクソ兄が何かしら悪事をやらかして――――


クソ兄の末路に関してはまだ後のお話にて。

魔族についた時点で、もう詰んでいるという。

まだコメントのように一思いに殺ってあげたほうがマシかもしれませんね。


>さあここでストレスキャラの登場だ!


まだまだ退場はしません。待て次回。いや別に次回死ぬわけじゃ(ry

上司にへこへこどころか社長が出てきて土下座した形になったという。胃に穴空きそう。


>とりあえず登場の仕方が不快だったのでゲス野郎には爆弾飲んでもらって内側から弾けよっか(笑顔)


そんな優しい制裁で済ませるほど甘くはないです(ニチャァ



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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[一言] 汚さしかないジャイアンみたいな奴がビビって寝返る魔王様に知られてるとは、何者だ?
[気になる点] メニューがクラッキングされるか、アクセスを防ぐために自発的にダンマリになるかして使用不能なるんやろか? [一言] 今こそ「ザ・●ールド」を!!
[一言] 今ゼ○ブレイドDEやってんだけどさ、 最終章直前で黒幕登場の真相解明の時ぐらい、今回読んでドキドキしてるわ。
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