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大体アイツのせい

新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。




「く、くるぞ……!」


「だ、大丈夫なのかよ、いくら勇者様といえどもたった二人で1万を超える魔獣群と戦うなんて無茶だろ。しかもこっちの方角は魔獣たちが一番強いって話だし……」


「弱音を吐くな! 我らが敗れれば次に蹂躙されるのは王都だ! 偉大なる国王陛下、そして国を営む愛すべき民を守るのが我らの役目であろう!」


「し、しかし……」



外周東側は俺と勇者君の二人で殲滅する手筈だが、万が一侵入を許した時のために王都を囲う防壁の近くで兵士たちが待機している。

その兵士たちの様子ですが、なんだか狼狽ムードのようで。まあ無理もない。


さっき軍隊長っぽい人も言ってたけど、もしも俺たちがやられたら1万近いLv40超えの魔獣群を相手にすることになる。

で、この兵士たちも大体Lv40台。東側に配置されている数はせいぜい500人くらいしかいない。

普段からこんなに少ないわけじゃないらしいが、各地の騒ぎを収めるために人員を回しまくった結果、こんな風前の灯みたいな戦力しか残らなかったらしい。

しくじったら一瞬で喰い潰されるなこりゃ。半泣きになってる人もいるし。


もしも討ち漏らしが出た時にこんな士気の低い状態じゃちとまずいかもな。

……ちょっと勇者君に士気を上げてもらおうかな。



≪ちょいちょい、ネオラ君ちょっといいかね?≫


≪なんすか。もう一体一体の見分けがつくくらいまで魔獣の群れが近付いてきてるんですけど≫


≪その魔獣の群れに向かって、先制攻撃で【魔刃・遠当て】をブッパしてくれないかな≫


≪え、別にいいけど、あの数相手じゃ焼け石に水もいいとこだろ≫


≪いいからいいから≫



怪訝そうな顔をしながらも、遠当ての構えをとる勇者君。

……む、その構えは……。



≪遠当てする時に剣を逆手に持つのは、やっぱ某大冒険マンガの影響かな?≫


≪はいそうですがなにか? ……レヴィアからはその構え変すぎるからやめろって言われてるけどな≫



だろうね。短剣ならともかく普通サイズの剣を逆手に持っていいのは某ストラッシュの時だけだよね。

マンガの勇者よろしく、遠当てを放つべく剣に魔力が集中していくのが分かる。


で、そこに俺の魔力も遠隔操作でこっそり上乗せしておく。バレへんバレへん。

他人のスキル技能の強化なんて初めてだけど、問題なく剣に魔力が吸収されていってるみたいだから上手くいったみたいだな。

……MP500近く追加したけどコレ大丈夫なのか?




「はぁあっ!!」




遠当てを放つべく、魔獣群に向かって勇者君が剣を振るった。



その瞬間―――






「……え?」





ズヴォッ と重く鈍い音とともに、横幅100m近い特大の魔力による斬撃が剣から放たれた。わーゆうしゃさますごーい(棒)

斬撃を放った本人もそれを見て思わず呆気にとられたような声を漏らしている。……ちょっと強化しすぎたかな。




急に発生した巨大な斬撃を避け切れず、広範囲の魔獣たちが巻き込まれて胴体真っ二つになっていく。

魔力を上乗せした分、俺も協力した判定になっているのか結構な量の経験値を取得したのが分かった。

……今ので何体仕留めたんだ?


≪おおよそ2000体程度討伐した模様≫


今ので全体の1~2割倒したのか……。

連発すればそのまま全滅できそうだけど、燃費悪いから一発だけにして後は予定通りに戦おうかな。



今の特大斬撃を見て、兵士たちが呆然としている。そりゃそうなるわな。

とりあえず、シャキッとさせるついでに士気を上げるように煽っておきますかね。



「皆の衆、これが今代の勇者様の実力だ! たとえ魔獣が何万体向かってこようとも、まるで小虫を潰すように容易く蹴散らせるほどの力を持っている!」


≪え、ちょ、おい!?≫


「よって、我らが負けることはありえない! しかし勇者様がいくら強かろうとも、その目を盗み数体ばかり王都へ近付こうとする魔獣が出てくる可能性は否定できない。そのほんの数体を倒すことが、今この場に集う皆の役目だ!」


≪ちょっと! なにノリノリで演説してんのこの人!?≫


「魔獣を恐れる必要はない! この場で最も恐るべき力を持っているのは、我ら人類の希望、勇者ネオライフなのだと知るがいい!」



チャットでツッコミを入れてくる勇者君をスルーしつつ、兵士たちに激励の言葉を送っておく。

勇者君は人類にとっての最終兵器なんだし、こういう場で目立つ機会も必要だよね。


…………。




≪……自分で言っておいてなんだけど、超恥ずかしいんですけど……≫


≪だったら言うなや! なにしとんのアンタは!?≫


≪いや、半ベソかいてる人もいたし、最後の防衛線である兵士たちの士気が低いままだとまずいじゃん? だからここらでちょっとケツ引っ叩いて気合を入れようかと思った次第でして≫


≪あんなもん見せられてもドン引きするだけだろ! てか、普通に遠当て使っただけなのになんであんなことになったの!?≫


≪ナンデダロウネーワタシワカンナーイ≫


≪しらばっくれんな! 絶対アンタの仕業やろ、騙されんぞ!≫



見てるだけで血を吐きそうな形相でこちらを睨みつけながら、声にならないツッコミをチャットで送ってくる勇者君。正直すまんかった。

でも、パフォーマンスの効果はあったようで兵士たちがなんだかキラキラした目で勇者君を見つめている。



「こ、これが、勇者様の力なのか……!」


「まさに英雄、いや、勝利の女神様だ……!」


「皆の者! 勇者様に無様なところを見せては男が廃るというものだ! せめて自らの役目くらいは果たしてみせよ!」


「「「了解っ!!」」」



狼狽える対象が魔獣群から勇者君に切り替わったように見えたが、あんな無茶苦茶な力を振るうことができる味方がいるとなると生存率は大幅にはね上がる。

それを理解した兵士たちの士気が一気に上がったのが一目で分かった。



≪気合入ったみたいだな、よかった≫


≪……いまオレのこと女神とか言ってたようなヤツがいた気が……≫



その容姿じゃしゃーない。つーか多分兵士たち皆が勇者君の性別を勘違いしてると思う。

せめてもっと短髪なら中性的なイケメンに見えなくもないんだがな。女顔だからそれでも間違われるかもしれないけど。



≪あと、今のでLv49になった。レベルキャップまで経験値が溜まったんだけど、この状態で魔獣倒しても経験値無駄になるんじゃね?≫


≪あー、メニューが言うにはジョブチェンジした時までに溜まってた経験値の貯蓄を使って一気にレベルアップできるみたいだから、無駄にはならないよ≫


≪そっか、よかった。ところで、こっからどうやって戦うつもりなんだ?≫


≪ああ、次は合図したら魔獣群に向かって適当な攻撃魔法を撃ってくれ。ファイアーボールでもなんでもいいから≫


≪……またさっきみたいにとんでもない威力になったりしないだろうな≫


≪MP消費が激しいからそうポンポン強化できないよ。レベルアップすればMPも回復するだろうけど≫


≪そ、そうか。安心した…………てかやっぱアンタの仕業じゃねーか!≫





ぶっちゃけ魔獣を殲滅するだけだったらさほど難しくはない。手間はかかるが。

極端な話、魔獣の群れの中心に降りて爆裂大槌をハンマー投げみたいにブンブン振り回してるだけでゴリゴリと数を減らせると思う。


でもさー、それじゃ『飛行士』が悪目立ちするだけじゃん? 『勇者』を差し置いて目立つようなことすると今後お互いの立場が悪くなる気がするんだよね。

というわけで、勇者君が派手に暴れて無双したように見せかけて、こんな時にしか使えないようなエグいアイテムをバカスカ投げ込んでみるとしよう。



≪ネオラ君、今だ撃てぇっ!≫


≪りょ!≫



タイミングを見計らって、勇者君に魔法を放ってもらう。

よしよし、いい塩梅で撃ってくれたな。




勇者君が放った火球が着弾した直後、魔獣群のいたるところで連鎖的に大規模な爆発が発生した。

まるで戦闘機から絨毯爆撃でもされたかのように、地面が爆ぜるたびに魔獣群が肉塊へと変わっていく。


勇者君が放ったのはちょっと強めの火属性魔法。威力は高いけど、こんなふうに何回も強力な爆発が発生するような魔法じゃない。

爆発の原因はジュリアンが開発した魔石地雷。

事前に仕掛けておいたのを、魔獣が踏むのに合わせて魔法を放ってもらったというわけだ。元ネタ的に雷属性の地雷を使いたかったけど、効果範囲が狭いので火と地の魔石による広範囲型を使用した。コレデヨイ。



「と、とんでもない威力の魔法だな……!」


「剣技も魔法も桁違いだ……! これなら楽勝だな!」


「勇者様、バンザァイッ!!」



兵士たちもますます勇者君を英雄視するようになったようだ。順調順調。

当の本人は魔獣群の惨状を見て白目剥いてるけど。



≪おいぃぃいっ!? もう強化はしないんじゃなかったのかよ! なんかえらいことになってるんだけど!?≫


≪強化はしてないよー。ただ事前に仕掛けておいた地雷に引っかかったのと魔法が着弾したタイミングがたまたまかぶっただけだってば≫


≪いや、明らかに狙ってやってただろ!? これじゃまるでオレが撃った魔法がアホみたいな威力を発揮したみたいに見えるだろうが!≫



うん。それが狙いだからね。

今までの攻撃で全体の3~4割くらいは削れたかな。なかなかいいペースで倒せてるじゃないか。

お、レベルアップした。これならまた勇者君のスキルを強化できるな。


さーて、他にも色々試しつつ殲滅していきますかね。

そしてその功績は主に勇者君にかぶってもらおう。『大体勇者様のおかげ作戦』続行である。頑張れ勇者君。



しっかし、こんだけ楽に経験値を稼げる機会があるなら、アルマたちとも一緒に戦いたかったなー……。




お読みいただきありがとうございます。



>さて、この大郡勢相手にどう強みを生かして―――


ぶっちゃけ東側は消化試合もいいところという。主に空飛ぶ仮面のせい。

いつからポテチがのり塩だけと錯覚していた……?


>さぁ!芸術は爆発だ!汚ぇ花火だ!( ゜∀゜)フハハ八八ノヽノヽノヽノ \となるのを予想しますね


はい、その通りになりましたね。そして大体勇者のせいにされる模様。濡れ衣もいいとこである。


>まさかのここでヒカル以外にもラディア君の新装備―――


このままだと主人公の新装備を披露することなく終わるかもしれない恐怖。いえ一応出番は用意するつもりなんですが。

敵を利用するのはいつぞやのオオカミウェポンやらなんやらのことですね。最近だとクトゥグァハンマーとか言って大精霊振り回してた模様。元ネタは……分からないままで問題ないかと。


>げんじんしん走りは止めとけ…ただでさえ変態機動なのに…


そして速攻で元ネタ特定されるというね。ダカダカダカダカ。デンコウキカンカイホウ!


>………………………………つまり、やろうと思えば魔力でおっぱ――――


天才じゃったか!!

……マジでその発想はなかった。


>熱などの状態が保存されるのなら、魔力操作で―――


毎度発想がエグくて草。ちょっとドカーンとかましたい時に参考にさせていただいてます。感謝。

でも勝利を確信して風呂入りに行くと大抵「なにがあった」と言いたくなる状況になっているという。


>ダカダカダカダカ(歩いているのに走ってるように見える!)―――


あの人普段から地雷をいくつ持ち歩いてるんでしょうね。

火炎旋風はちょっと難しそうです。もっとヤバいのを予定しt(ry


>皆平等に殺して差し上げる(出来るとは言ってない)―――


結構マイナーな印象なのですが、意外と知ってる人多くて草。……やっぱ例のグレーな格ゲーツールの動画の影響が(ry

あと勇者君に女性ホルモンはやめて差し上げろ。……そのうちちょっとそれ関連で閑話でも書いてみようかな。



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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[一言] 魔力でアレを作るにしても本物を触ったことがないと、再現出来ないんじゃないですか?あと何かに阻止される気が。
[良い点] マニアを擽るネタで皆さんのコメントが笑えるw [気になる点] 技的には勇者っぽいのに、結果が魔王の仕業じゃないですかやだー 「今のは○×ゾーマではない、○×だ」 人をダメにする柔らかさの…
[一言] こんなサクサクだとなんかありそうですね。突然の高レベルモンスターとか地面から生えそう。
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