パパからのアドバイス
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鍛錬初日。
まずはアルマパパとの稽古からですが、半日近く交代で組手をしていった結果、全員ボロボロになって息も絶え絶えの状態に。
なお、アルマパパは息切れすらしていない。爽やかに汗を拭いながら余裕の表情である。バケモンかこの人は。
「うむ、順調に育っているようでなにより……というか少々成長が早すぎる気もするが、むしろ魔族を相手にするにはこれくらいのペースじゃないと厳しいか。目覚ましい成長ぶりで嬉しいよ」
「……それでも、一本もとれなかった」
「ははは。最愛の娘でも、いや最愛の娘だからこそ、そう簡単には負けてはやれんさ」
「暴風剣も、大地剣も、剣山刺突も、必殺技も通じなかった……」
「一つ一つが強力な技ではあるが、それに繋げる牽制や攻防の腕が少し弱い。攻防の基礎を鍛えれば今より段違いに強くなるだろう。……あの『必殺技』とやらは少々肝が冷えたがな」
稽古を終えて、疲労のあまり座り込んでしまったアルマが、無表情ながら悔しそうに呟く。
それに対しどこか懐かしさを感じているような優しい声色で、アルマパパが微笑みながら娘と言葉を交わしている。
それだけ見てると休日の親子のキャッチボール感があるな。
なお、手に持っているのはミットでもバットでもなく剣な模様。こんな殺伐とした親子の休日は嫌だ。
「レイナ君はアルマとほぼ同等のレベルらしいが、若い身空で随分と生き急いでいるね。だがなかなか面白い戦い方をするな。相手のペースを乱すことに特化した戦い方で、基礎能力値の差を上手く埋めようとしているのが分かるよ」
「……けほっ………どうも、っす………」
地面にうつ伏せになりながら、死にそうな声で応えるレイナ。
気力も魔力もほぼ使い果たして、半死半生の様子だ。
忍術スキルのレベルが上がって分身の術やら煙玉やら土遁や火遁の術やら、なかなか使える手札が増えてきた。
特に『畳返し』は屋外だろうが関係なく、足元から畳を出現させて相手の攻撃を防ぐ貴重な防御系技能で重宝しそうだ。
さながら畳の錬金術師と呼びたくなるほど、何枚も連続で出現させて目くらましにも使ったりもできるらしく、応用も利きそうだな。
「あとヒヨコ君、だったかな? まだLv30台らしいが実際はAランク、いや瞬間的な爆発力はSランクの魔獣に迫る。さすがヒカル君の従魔と言うべきか」
『……コッ……コケッ……』
「だが、持続力がまるでないな。そんなすぐにバテていては実際に戦える時間は10分もないだろう。もっとよくスタミナの振り分けを考えなさい」
『コケェ……』
まるで絞められた食用ニワトリのようにぐったりとしながら、アルマパパのアドバイスを受けている。
ヒヨ子、どうやら俺以外の人間の言葉もある程度理解できるみたいだな。さすがに喋ったりはできないようだが。
「そしてヒカル君だが、膂力の強さは大したものだが基礎がまるでなっていない。スキルを取得できないから仕方ないのかもしれないが、身体の動かし方がぎこちないし攻撃する際の体重の乗せ方が滅茶苦茶だ」
「面目ない……」
「……しかし、隙だらけかと思ったら不可視の杭が身体のいたるところから突き出してきて、実際は常にどんな体勢でも迎撃が可能。対人戦に慣れている相手からしたら物凄く戦いづらいだろうね。隙を攻撃のチャンスに変えているし、これはこれで正解な気がしてきた……ううむ……」
俺の基礎もへったくれもない思い付き素人戦法を見て、呆れているような困惑しているようななんとも微妙な表情をしながら呟くアルマパパ。
魔力パイルバンカーは突き出すところを選ばない。掌だろうが頭だろうが背中だろうが自由に使用可能だ。
まあアルマパパは関係ないと言わんばかりに、パイルごとあっさり斬りおったんですがね。しかも木剣で。スキル技能を使ってとはいえちょっとショックですじゃ……。
剣の側面を上手く狙わないと攻撃を弾けないので、防御するのもなかなか難しい。3回に1回は斬られてたと思う。
一時的に能力値を大幅に上昇させて、白魔族戦後半くらいの膂力で攻撃を仕掛けてみたりもしたが、出始めを潰されたり軽く避けられたりで全く相手になりませんでした。
やっぱステータスの強さだけじゃ本当の強者には敵わないということか。戦闘経験の差や理念の違いがモロ結果に出てる。
こっちはほとんど苦労せずに、ただ高い能力値を適当に振り回すゴリ押し戦法。実戦経験もまだ半年程度でさほど多くない。
それに比べ、アルマの御両親は膨大な数の実戦経験の積み重ねを十数年以上続けていて、レベルの高さから推測するに格上と戦うことを日常にしてきて死線も数えきれないほど乗り越えてきたんだろう。
でなけりゃこの若さでLv90半ばなんて異常な強さにはならないだろうし。というか常人なら生涯を費やしても到達するのは至難の高みだ。
「ヒカル君はなんというか、実戦経験とステータスの高さが釣り合っていない印象を受けるな。第4大陸で戦った、というより喧嘩の巻き添えをくっていた魔族の幹部も似たようなものだったが」
「喧嘩の巻き添え……?」
「あー、うん。拠点の奥まで辿り着いた時にどちらが幹部と戦うかで言い争いになってね。そのまま夫婦喧嘩が始まって、それに巻き込む形で幹部を仕留めてしまったんだ」
「いや、普通に二人がかりで倒せばよかったんじゃ……」
……夫婦喧嘩云々の話はともかく、魔族の幹部もステータスの強さと実戦経験が釣り合っていないというのは納得できる。
俺が戦った白魔族も高レベルの格闘術スキルや高い能力値を誇っていたが、鬼先生に比べてなんというか戦い方があまりにもお粗末だった。
スキル技能をバンバン使っているのにもかかわらず、技能を使わない鬼先生よりも劣るというのは少し不自然だし。
もしかしたら幹部クラスは産まれた時から強くて、実際に戦った経験値自体はさほどでもないということなのかな。
魔族の出生起源がよく分からんから推測でしかないが。魔王が口から卵でも吐き出してんのか? ダーレガツツイタ。
「正直言って基本的に未熟もいいところだが、反応の速さは光るものがあるな。明らかに格上と何度も戦っている動きだが、もしや既に誰かに師事しているのかね?」
「あ、はい。……正直言って、俺の先生は人にものを教えるのが苦手みたいなので、二日に一回組手をするくらいしかやってくれないのですが」
「ふぅむ、その先生との稽古の成果か。ヒカル君を見る限り相当な実力者のようだが、いったいどちら様なのかな?」
「えーと、ぶっちゃけ人間じゃないです」
「化け物じみた強さの御人か。ううむ、誰だ? 【極拳闘師】の『ジュウロウ』氏あたりかな?」
「いえ、魔獣山岳で知り合った『拳の鬼神』って固有魔獣の先生ですが」
「……ジョークかね?」
「マジです」
「君は自殺志願者かなにかかな? なにがどうなったらアレに弟子入りすることになるのやら……」
先生の名前を出した途端唖然とした表情をした後に、顔を押さえながら苦笑いするアルマパパ。
てか、アレ? もしかして鬼先生のことを知ってる?
「先生のことをご存じなのですか?」
「ああ。……アレは私とルナティが組んで、本気で戦って倒せなかった唯一の魔獣だからね」
「お二人でも、倒せなかった……?」
「挑んだ当時はLv90手前くらいだったかな。凄まじい膂力と技量で、人間相手でも見たことがないほど鋭い攻撃を繰り出してきた。いま改めて戦ったとしても勝ち目は薄いんじゃないかな」
「よくご無事でしたね」
「ああ。しばらく攻防を続けていたら、なにやら真の力を解放したらしくとんでもないプレッシャーを放ってきてね。その時点で倒すのは困難だと判断して、さっさと転移魔法で逃げ帰ったよ。……我ながら情けない話だが」
この御両親が逃げ出すレベルとか。本気の鬼先生どんだけ強いんだよ。
いや鬼先生相手にある程度攻防を続けられるこの御両親が異常と言うべきか?
鬼先生もアルマパパも、俺が能力値を6000近くまで強化して挑んでもまるで歯が立たない。
そろそろ本格的にゴリ押し戦法を卒業して、自分なりの戦闘スタイルを身につけなければならない時期だ。
スキルの恩恵無しでどこまでやれるかな……。御両親と鬼先生に何度も挑みながら模索していくしかないか。
「さて、午後からは私とのお稽古よー。お昼ご飯を食べてしっかり休んでから頑張りましょうねー」
……そしてこの午後から地獄の第二ラウンド開催のお知らせである。
アルマママはパパ以上にヤバそうだ。生き残ること第一に挑まないと死ぬかも……。
お読みいただきありがとうございます。
>画面裏で黒龍の飼い主がアルマペアレンツから―――
アルマペアレンツとかいうパワーワードに草。モンペでもなにも間違いじゃないという。
なお飼い主は黒竜からアルマがあの二人の娘ということを知らされて胃に穴が開いて喀血するハメになった模様。イ㌔。
>メニュー「当メニュー機能にはヘルプ機能はついていません―――
俺はまだ登り始めたばかりだk(ry
なんとか半分死ぬ程度で済んだようで。残りの半分はママが美味しくいただかれそうですが。
>ご両親倒すならアルマが本気で結婚とか―――
見える、発狂しながら大泣きして主人公に襲いかかるパパンの姿が見える見える…
>勇者やラディア君心配してる場合じゃないという―――
期待が大きい分、容赦もされないという地獄。
乗り越える前に何度か死にそう。
>レベルが同格のアルマ両親と、二対一で―――
鬼先生無双が止まらない。
あと黒竜へのエグい制裁案も止まらないで草。やめたげてよぉ。
>アランシアがアルマ狙ってます宣言して、―――
はい。後に彼にも『期待』を寄せる模様。
娘の将来のお相手は誰になるのやら(すっとぼけ
>あーーーーー!丸一日かけてやっと追いついた〜〜〜。―――
お疲れ様です。ご無理なさらずに(;´Д`)
全身を流れる血液や内臓なんかを気力で強化するイメージが上手くできれば、抵抗値の強化も可能でしょうがまだそのレベルには達していないようです。
あとさすがに細菌のような小さな生物は操作できないかと。
まあ媒介にしている液体なんかを操作して相手に摂取させることなんかは可能かもですが。
……毎度コメント欄の発想が物騒すぎて笑いが止まらん。




