会議と喧嘩 そして―――
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会議の途中で言いがかりをつけられそうになって、実力の証明を求められたのでちょっと気力を籠めて睨んでみたら黒竜が乱入してきた。
なに言ってるか分からんだろうけど、俺にもこの状況がよく分からん。
『さて、問おう。仮面の貴様、先程の威圧はなんのつもりか?』
「実力を示せと言われたのでその通りに対応したまでですが、なにか」
『ファハハ、なかなか肝が据わっておるな。貴様、名は?』
「機密ですのでお答えできません」
とりあえず興味なさげに塩対応。
ホントは今すぐぶん殴ってやりたいくらいだが、今はそういう場じゃない。
「黒竜、いいから宿舎に戻れ。面倒事を増やすな」
『そう言うな。それに、物事は正確に把握すべきであると思わんか?』
「…どういう意味だ」
『こやつは力を示せと言われて、ただ威嚇しただけであろう? 実際に戦ったところを見たわけでもあるまい。ハリボテの威圧か、それとも真の強者の力の表れなのか、知るべきではないか?』
「お前がただ戦いたいだけだろうが! これ以上場を混ぜっ返すのはやめろ!」
ラーナイアが黒竜を半ギレで諫める。
こいつら普段からこんな感じなのか? 飼い主の胃に穴空きそう。
だが、好都合だ。
「そうですか。では、これ以上私に何を求めるというのでしょうか?」
『決まっておろう。仮面の丈夫よ、我と戦い真の力を示すがいい』
「飛行士殿、こやつの戯言は無視してかまいませんので、どうかお気を悪くしないでいただきた――」
「かしこまりました。しかし、この場では他の方々を巻き込みかねないので、都市の外まで移動してからにしましょうか」
「飛行士殿!?」
ラーナイアが焦った様子でこちらをなだめようとするが、無視して黒竜と話を進める。
だってさー、これってある意味チャンスじゃん? このクソトカゲを合法的にぶちのめせる機会なんかそうそうあるもんじゃないだろ。
ここは話に乗ったふりをして、憂さ晴らしの相手になってもらおうか。
え、なんの憂さ晴らしかって? 狩猟祭でアルマが死にかけた原因を作ったこいつらに対する恨みですがなにか。
『ファハハハ! 話が早いな。では送ってやろう、背に乗るがいい仮面の丈夫よ』
「いえいえ、そんな恐れ多い。自分で飛んでいきますのでお気遣いは無用ですよ」
コイツの背中なんかに乗りたくない。
窓から魔力飛行で飛んで、自力で飛べるということを見せておく。
「ほ、本当に飛んでいる……」
「天駆、いや、足踏みをしていない。ということは本当に空を飛ぶスキルを……?」
『ほほう。翼もなく、天駆を使うでもなく飛んでみせるか。数千年生きた儂でも、そんな者は初めて見るな』
「……では、行きましょうか」
飛んでいく時に、アルマたちが心配そうな顔をしながらこちらを眺めていたが、ちょっとじゃれあってくるだけだから大丈夫大丈夫。
では、行きますかね。
~~~~~勇者視点~~~~~
おいおい、梶川さんなにしてんの!?
急に黒いドラゴンが現れたかと思ったらいきなり飛行士こと梶川さんに喧嘩を売ってきて、それに応えてどっか飛んでいっちまった。
てかはっや!? 梶川さん飛ぶの速すぎてあの黒いドラゴン追いついてないんですけど!
操られてた時は本調子じゃなかったのかな。やっぱヤバいわあの人。
「黒竜め……」
「い、いったいなんなのだ、あの仮面の男は……?」
王国側の人たちが呆然としながら空を見上げている。
ドラゴンの飼い主っぽい壮年の男性も、苦い表情で頭を押さえながら俯いているのが見えた。苦労人っぽいなこの人。
「……彼ってあんなに好戦的な性格だったっけ?」
「いや、狩猟祭の際に黒竜絡みで色々あったらしくてな。内心黒竜に対してはらわた煮えくり返っているようだ」
アイナさんと赤髪のギルマスが小声でなんか呟いている。
梶川さん、アンタもしかして私怨を晴らすためにわざとドラゴンの誘いにのったのか?
あの人かなり荒っぽい性格なのかな。昨日のおかんっぷりはどこへ……。
「……やれやれ。あのお二方のことは一旦放っておいて、話を進めることにしましょうか」
「は、はぁ……」
あ、もう面倒くさくなったのか、ドラゴンと梶川さん抜きでギルマスが話を戻しおった。
……まあいいや。あの人ら交えてまともに話ができる状況じゃなさそうだし。
気を取り直して、王国側の偉そうなオッサンが口を開いた。
「今回の襲撃事件に関しては、ご協力いただいた方々にそれ相応の報酬を支払うことで区切りをつけさせていただきたく存じますが、いかがでしょうか?」
「それでよろしいかと」
「では、そのように」
さっきまでいらんことで騒いでいた軍のオッサン方が気絶していることもあってか、すげースムーズに話がまとまったな。
ああいうのがいるから会議が無駄に長くなるんだよなぁ。
「襲撃についての話もまとまりましたし、そろそろ本題に入らせていただきたいのですが」
「そうですな」
え、本題? これまでの話は本題じゃなかったのか?
ギルマスに促されて、王国側の偉そうなオッサンが話を進めていく。
「さて、大会の参加者の皆様方には本日全員に連絡するつもりだったのですが、先行してこの場にてお伝えすることがあります」
「それは?」
「例年ならば、強さを競って結果を出して懸賞を渡して終了といった流れなのですが、今回は魔王の復活後のため例年の大会とは少々意味が異なります」
え、どゆこと?
「今回の大会は、世界中から手練れの方々を集めるための宣伝のために開かれた大会なのです。極端に言えば大会の結果自体はさほど重要ではないということですな」
「世界中の強者を、集める? なんのために?」
「その手練れの方々に、さらに力をつけていただくためです。そう、魔族に対抗する力を」
……話の流れがイマイチ分からんな。
「集まってくださった方々を鍛えるために、教官となってくださる方々を何名かお呼びしておりまして、近いうちに王国に到着する予定となっております」
「要するに、今回の大会は強い人たちをできるだけまとめて鍛えるための呼び水ってわけだねー」
「言ってしまえばそうですね。ああ、強制的に鍛えるためのものではなく、あくまで希望者を募る際スムーズに事を進めるための処置ですので、都合のつかない方は無理に参加されなくとも結構ですよ」
ん? もしかしてアイナさんもその教官役にまわる側だったりする?
ってことは、これまで勇者だけにやらせていたあの地獄の特訓を、今度は手練れの人たちにもやらせるってことなのか?
……修業が終わるころには何人か死んでそうだけど大丈夫なんだろうか。
「よくそんな大胆な策を実行しようと思いましたね。その教官役を呼ぶ費用もバカにならないでしょうに」
「……第3大陸が滅亡まで追い込まれた以上、ウカウカしていられませんからな。多少無理をしてでも、早急に人類側の戦力を強化する必要があると王も納得されていました」
「今も魔族と交戦中の第1・第2大陸の者たちはあまり集まりませんでしたが、それでも相当な実力者の方々が集まってくださいました。彼らがさらに強くなれば、魔族に対する大きな戦力となるでしょう」
……ん? ちょっと待て、第1・第2大陸は交戦中で、第3大陸は滅んでるから人がこない。第5大陸はこの大陸だから分かるけど、第4大陸はどうなんだ? 魔族との戦いは?
≪あ、ひと月前にとある冒険者たちの手で幹部が殺られたらしく、せいぜい残党が少数いるくらいらしいので問題ないかと≫
早いな。幹部を仕留めたのは誰なんだろうか。
少なくとも梶川さんと同レベルと見るべきかな。こわいなぁ。
「し、失礼します!」
突然、会議室に慌てた様子で王国兵っぽい人が入ってきた。なんかあったのか?
「どうした、今は会議中だぞ」
「例の方々が到着されまして、現在応接室にて待機していただいているのですが……」
「そうか、もうすぐ会議が終わるから、その後にでも向かおう」
「そ、それが、黒竜様と誰かが都市の外に飛んでいったのを見て、2名ほど追いかけていってしまったのですが」
「なに……?」
……まーたなんか嫌な予感が。
あのバケモンたちげふんっ もとい規格外たちの喧嘩に混ざろうとでもしてるのか? どこの命知らずだ。
喧嘩の規模が拡大して王都にまで被害が及ばなきゃいいけど……。
~~~~~黒竜視点~~~~~
「らぁぁぁぁぁぁあああっっ!!!」
『グォォォォオオオオオッッ!!!』
大槌をすさまじい速さでこちらに向かって振るう仮面。
それを爪で弾くたびに手が痺れる。とんでもない威力であるな。
ふ、ふは、ふははははっ!
強い……! これほどの相手とやり合うのはいつぶりであろうか。
気配からしておそらく人間であろうが、人類と戦っている気すらせぬ。
こやつ、先程までの紳士的な態度はどこへやら、戦いが始まるとまるで怒り狂った魔獣のような暴れっぷりを見せおるな。
仮面ごしにも、その怒りの表情が見えるような、凄まじい怒気を感じる。
……こやつ、どこかで会ったことがあるのか? 恨まれるようなことをした覚えはないが、はて。
『貴様、なにを怒っておる?』
「自分の胸に聞いてみろ!!」
『いや、分からんから尋ねておるのだが……。せめて理由くらいは聞かせて―――』
「死ね」
『うおぉうっ!?』
いかんな、余計なことを考えておる余裕がない。
とりあえず、積もる話は一発叩きのめしてからにするかのぅ!
『シャァァア!!』
「っ!」
竜族スキルの【ドラゴン・ウィング】で暴風を発生させ、仮面の動きを制限する。
同族のドラゴンですらこの風の中では自由に動くことはできぬ。質量の軽い人間ならばなおさらだろう。
そのまま、肉弾最速の速さを誇る竜族スキル【ドラゴン・テイル】で死なない程度に弾いて、気絶させるとするか。
『フゥォアッ!!』
儂の尾が仮面に音速並みの速さで迫る。
回避も防御も不可能。これで終いだ。
「らぁああっっ!!!」
『グァァアッ!!?』
尾が仮面に命中すると同時に、激痛。
なにが起きた? ……尾の先が、切れている?
この仮面が、斬り落としおったのか?
『ふ、ファハハハハッ!! 面白い、尾を斬られるのはいつ以来であろうか!』
「……次は首だ」
『よかろう、やってみるがいい!』
胸が高鳴る、気が昂る!
昨日の竜どもですら儂に傷一つ付けられなかったというのに、見事に斬り落としおった!
これは、手を抜くと死ぬな。まるで数年前に戦ったあの二人に迫る、圧倒的な力を感じる。
では、こちらも遠慮なく暴れるとするか―――――
「そこまでだ。双方、矛を収めなさい」
………。
………!!!
儂には二度と、そう、二度と戦いたくないと思った相手がこの世で3人ほどいた。
一人は魔王。リョータとともになんとか打ち倒した、世界の敵。
圧倒的な膂力と魔法をもった、産まれて初めて死の恐怖を味わわされた相手。今はもう存在せぬが。
そして、もう二人が、『剣王』と『大魔導師』のコンビ。
その魔王に迫る魔法と剣技で、戦いの後には飛ぶこともできぬほどに徹底的に痛めつけられた記憶がある。
その『剣王』が、儂と仮面の間に天駆を使い、佇んでいるのが見えた。
「デュ、デュークリスさん……!?」
「久しぶりだね、ヒカル君」
……仮面に向かって、穏やかに話しかけている。
そうか、あの仮面の男はヒカルという名か―――――
お読みいただきありがとうございます。
>さて、また黒龍が出ばってきましたが――
なんとも消化不良な感じで中断してしまいましたが、尺の都合ゆえ致し方なし。
本格的な喧嘩はまた後日ということで。
>ここでクソトカゲかぁ…―――
どこぞの不死身の爬虫類のようにクソトカゲ言われまくってて草
魔族襲撃の際はドラゴン5体相手に戦っていたので勘弁したげてください。
>エッ、まさかのここで、ドラゴンステーキ…―――
はい。とりあえず尻尾を切るくらいしかできませんでしたが、それでも相当な量のお肉を手に入れましたね。
……爬虫類のお肉って美味しいのかな。ワニ肉なら食べたことありますが。
>爆裂ハンマーで、ドラゴンハンバーグを作らなきゃ。
多分、威力が強すぎて肉が弾け飛んでしまうと思うんですけど。
ミンチよりひでぇや。
>怒りとか怨みよりも食欲が湧いてそう
半々といったところでしょうか。
実際どんな味なのでしょうね。
>おっしゃ、ドラゴン発見。ヤツを倒せば―――
もう倒した後の素材としてしか見られてなくて草。
さすがにここで殺っちゃうと王国側に喧嘩売ることになるので、半殺しくらいでやめるつもりだったようです。結局中断させられましたけど。
>ドラゴンの…肉…(º﹃º)ジュルリ
今更ですけどドラゴンステーキ関連のコメント多すぎワロタ。
ファンタジー好きならみんな一度は夢見る食材ですが、どんな味なのやら。
>災害(両親)を宥めるための料理の材料が来ましたな
その災害が止めに入った模様。
多分、この二人ドラゴンの肉とか定期的に食べてそう。
>仮面vs黒トカゲのメンチバトル開始!―――
まあヒヨ子なら神経図太いので余裕で耐えられるでしょうけども。
ハリセンはともかく(?)自動追跡爆弾はちょっとえぐい。コッチヲミロォ
>黒竜も猟って食っちゃるつもりで挑まれればさすがに怯みますかね…―――
食うことが目的だと分かれば多分怯みますね。
あと尻尾は生えてきます。やっぱこいつトカゲじゃね?
>あ、ステーキ。。無限肉製造機。。(; ・`д・´)ゴクリンコーーー
発想エグすぎィ! いや大カニ戦で似たようなことやりそうでしたがけども。
というか本当にコメントの大半がドラゴンを食材としてしか見てなくてたじたじなんですが。どうしてこうなった(;´Д`)




