挨拶は大事
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レイナと勇者君も治療して、勇者君の意識が戻ったところで、洗脳中に迷惑をかけてしまった勇者君他数名の人たちに土下座して謝罪。
勢いよく頭を叩きつけて地面が割れるほど深く土下座したが、特に非難されることもなく許してくれた。
あんな目に遭わせてしまった俺を、そんな簡単に許してもいいのかと言ったが、本当に怒っていないから頭を上げてほしいと言われた。
「いや、というかアンタがいなかったら詰んでたし、むしろこっちが礼を言わなきゃならないぐらいだから謝らなくていいってば」
「そうそう、元はと言えばあの白い魔族の洗脳スクロールのせいだし、誰も死ななかったんだから気にしないでいいよー。むしろ誇るがいいー」
「……いえ、俺がそのスクロールに咄嗟に反応していれば、こんなことには―――」
「あーもー! いつまでもウジウジ言わないの! だったらお詫びに今晩奢れ! それでチャラ! むしろごちそうしてくださいお願いします!」
「……そんなことでいいんですか?」
アイナさんが痺れを切らしたようにまくし立ててきた。
いや、ありがたいけど単にアイナさんが食べたいだけじゃないのかそれは。
「ちょっとアイナさん、なにどさくさに紛れてメシたかろうとしてるんですか。てか助けられたのはこっちなんだし、お詫びなんかする必要ないでしょうが」
「だってさー、カジカワ君のご飯は美味しいってイヴランちゃんから聞かされてて、この際だから是非ガッツリ頂きたいなーと。まだポップコーンとコーラくらいしか味わってないし」
「え、ちょっと待ってまさか元々このオッサンのこと知ってたの?」
食い気を漏らすアイナさんに、赤い三つ編み少女が問いかけた。
この子がレヴィアリアか。姉妹なだけあって3人娘のフィフライラって子によく似てる。オッサン言うのやめてくれないかな……。
「うん。君たちを鍛えるように依頼を出したギルマスがアタシの妹ってのは話したよね? その子からカジカワ君たちの情報も聞かされてたんだよー。ネオラ君と同郷って話もねー」
「ネオラと同郷……? え、このオッサンが!?」
「あ、あまり似ていませんね……」
だからオッサン言うなし!
まだ25だっつってんでしょうが! 言ってないけど!
「それなら、その人の情報も教えてくれればよかったじゃないですか……」
「んー、そうしたいのはやまやまなんだけどさー、とある事情で彼らについての情報の拡散は極力控えておかないとまずいんだよねー……」
「とある事情、とは?」
「ネオラ君なら、なんとなく察しがつくんじゃないかなー」
「え? ええと、能力値の強化とかできることが知られるとまずいとか?」
≪その情報絶対軽々と話しちゃダメです! 万が一あの直接操作の技術が広まったりしたら世界の危機ですよ!≫
「え、アレそんなヤバい技なの?」
勇者君の目の前に、見覚えのある青い画面が表示されて警告を発している。てか他人のメニュー画面も見えるのかよ。
あれが彼のメニューか。俺のメニューさんに比べて感情表現豊かそうだなー。
「能力値の、強化?」
「そういえば、さっきアルマティナたちが触ってから、ネオラが急に強くなってたけど、あれのこと?」
「そうそう。……言っておくけど、絶対に言いふらしたり、詮索しないでね? ……でないとアタシもしかるべき措置をとらざるを得ないから」
「うっ、いつになく真面目な表情ね……!」
「アイナさんがそんな顔するなんて、よほど深刻な事情があるんですね……」
「分かってくれたみたいでなにより。……決め手がアタシの顔っていうのがなんか解せないけど」
魔力や気力の直接操作のことを広めないように警告を発するアイナさん。
普段があんな感じだから、真面目になった時のギャップが危機感を強く煽っているようだ。
「まあそんなわけだから、決してイタズラ半分に彼らのことを黙っていたわけじゃないってことは理解してねー」
「……分かりました」
「さて、カジカワ君。君が感じてる負い目は晩御飯をごちそうしてくれることでチャラにするとして、大事なこと忘れてるよね」
「え、はい?」
「自己紹介だよー。謝ってばっかで、ネオラ君たちに挨拶してないでしょ?」
「今更って気もするっすけどね」
そういえばそうだったな。
勇者君はメニューで俺の名前を知ってるっぽいし、無理にする必要もなさそうだけど、まあマナーとしてやっておくか。
勇者君に向き直って、挨拶をする姿勢に。
ドーモ、ハジメマシテじゃ駄目だよなやっぱ。
「……では改めまして、梶川光流と申します。『希望の明日』というパーティのリーダーを務めております。よろしく」
「初めまして。日本名は『大石 忍』、今はネオライフと名乗っています。気軽にネオラとお呼びください。よろしく」
同胞と、初めてのまともな挨拶。てかやっぱ日本人かこの子。
思ったよりあっさりしているが、まあこんなもんか。
「え、終わり? あっさりしすぎじゃない?」
「てか、『ニホンメイ』? オオイシシノブってなに? え?」
「あー、前世でのオレの名前だよ。そういえば言ってなかったっけ……」
「転生した時に名前を変えたの?」
「……うん。どうせ生まれ変わるなら、いっそのこと名前も含めて全部やり直そうって思って」
「歴代の勇者と名前の響きが似てないのはそのせいかー。ん? カジカワ君とあんまり似てないけど、容姿も変えたの?」
「いやそれはなぜか勝手に変えられてました。自由にキャラクリできるならもっと男らしい顔にしてたのに……」
≪あー、ハーレム作りたいって言ってたからモテやすい容姿にしてくれたんでしょうね。……もしくは完全に神様の趣味の可能性も……?≫
勇者君のメニューが表示された後に、顔を顰めて口の端をヒクつかせる勇者君。
多分、いま脳内で『神様なに考えてんだ! 容姿ぐらい自分で好きにさせてくれよ!』とか思ってそう。
よかった、別に男の娘になりたかったわけじゃないんだな。……いや自分の望む容姿になれなかったのは可哀想だけど。
「……さて、騒ぎもようやく収まったようだし、とりあえず宿に戻って休もうか」
「怪我をした人たちはどうしますか? 私とネオラさんだけでも治療に回るべきでは……」
「ああ、神聖職の人たちが今現地入りしたみたいで、緊急の治療が必要な人はもういないし、大丈夫だと思うよ」
ふむ、マップを確認したが確かにもう大丈夫みたいだな。
でもヒューラさんとガザンギナンドさんくらいは治療しておくか。で、早く宿に戻って晩御飯を作るとしよう。
……あれ、そういえばコワマスは?
≪魔族の攻撃に巻き込まれた者たちの救助をしている模様≫
……俺らも手伝っておくか。
宿に戻るのはもう少しかかりそうだなー……。
~~~~~アイザワ君視点~~~~~
なにもできなかった。
魔獣や並の魔族を相手にするぐらいなら問題なかったが、あの白い魔族が地面を殴っただけで、吹き飛ばされて動けなくなっちまった。
……俺も、雑魚だったってわけだ。
あの黒髪のオッサンが、アルマの男か。
バケモンみてぇにデカい魔獣を素手で殴り殺したり、あの白い魔族を倒したのもあのオッサンみてぇだ。
今の俺じゃ、まるで敵わねぇ。
あそこまで強くならなきゃ、アルマの傍にいるのは相応しくないってことなのか。
俺じゃ、アルマを、守り切れないのか。
なら、誰よりも強くなってやる。
勇者より、あのオッサンより、あの白い魔族より、なんなら魔王だって倒せるように。
力が足りなきゃ強くなって、ほしいものは力ずくで手に入れる。
今までだってずっとそうしてきた。
今はまだ弱いけれど、いつか、必ず―――――――
お読みいただきありがとうございます。
>勇者君の中でカジカワがラスボスぐらいの位置にいそうw―――
ラスボスというか、チートキャラというかバグキャラみたいな印象ですね。
勇者も充分チートなのですが。しかもまだジョブチェンジを残しているという。
>本当になんで勇者ちゃんよりも少し早く転移してきた上に―――
なんででしょうね(白目
能力値が高いのは使用ゆえ致し方なし。しかし魔力操作は完全に想定外な模様。
>これを機にカジカワとアルマの関係が進展してくれたりしないかな?
お互いに胴体貫き合った仲ですので、きっとより深い繋がり(物理)を感じていること請け合い。
>そういえば何時の間にかアイザワくんが蚊帳の外に
吹っ飛ばされて寝ていた模様。
彼の今後についてはまた後ほど。
>なんとか一件落着しましたね。―――
面倒事はまだ尽きまじきというところですね。
ヒヨ子視点の閑話かー……。近いうちに書いてみましょうかね。
>ネオラが胸を突き刺されて、それで動きを少しでも―――
打算的過ぎて草。
盾の弁償は現物支給で済ませる模様。
>そろそろアルマ両親再登場せんかなー―――
近々登場します(断言
あと鬼先生のトコ連れてっても勇者君の首が飛ぶ(物理)だけなのでお詫びにならねぇ!
>今後の戦訓『上位魔族に止めを刺す場合は遠距離からにしましょう』だな。―――
あるいは状態異常対策はしっかりととか。
いくら力が強かろうともそれを逆手に取られちゃアカンですね。
サキュバスかー。……いいな、それ(ニチャァ




