表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/584

娘を宜しくお願いします

新規のブックマーク、ありがとうございます。

また、読み続けて下さっている方々にも感謝いたします。


今回からまた本編再開します。

 ちゃかちゃかちゃんちゃんちゃん。

 はい、こんばんは。脳内お料理実況の時間です。

 今日の晩御飯のメニューはカツ丼ですね。戦勝祝いとはいえ断じてカッタ丼とは呼ばないのでご注意を。

 で、今日はお料理のゲストにアルマママこと、ルナティアラさんにサポートをお願いすることになりました。

 つーか向こうから手伝いたいと言ってきてくれた。正直普通にありがたいけどさ。

 ナイスバデーの美人さんが隣で手伝ってくれて、本来嬉しい状況だが相手は人妻、それも後ろで旦那さんがこちらを見ているので、迂闊に下手なことを考えられない状況です。

 この人、16歳のアルマのお母さんだから少なくとも30超えてると思うんだけど、見た目どう見ても20代前半くらいに見える。

 レベルを若い時から上げると、肉体の加齢が遅くなる効果でもあるのだろうか?


≪推測:ただの若作り≫


 ソウデスカ。

 …これ以上この話題について考えるのはやめよう。勘付かれでもしたら後が怖い。


 はいそんなことより料理の方ですが、まず下ごしらえから始めていきましょうか。

 あらかじめ用意しておいた、昆布(に似た乾燥海藻)の入った水を鍋に移して火にかけて、沸騰する少し前に海藻を取り出す。

 事前に準備しておかないと時間がかかるので注意。30分くらい水につけた状態で置いておくと良い出汁が出る。

 で、海藻を取り除いたら鰹節(に似た(略))を投入。しばらく火にかけて、沸騰したら鰹節モドキを取り出す。

 出涸らしたものは二番出汁を取ってからこっそり『アイテム画面』に収納。この画面、便利だからってなんでも放り込んでるとそのうちゴミ箱代わりになりそうだから定期的に整理しないとな。

 ソイソ(醤油モドキ)、酒、砂糖と酒を煮詰めて作ったみりんモドキを少々加えて煮ながら味見。

 味の好みは人によって違うけど、まあ今回は俺の好みくらいでいいか。前回の唐揚げも俺の味覚基準で作ったけど大丈夫そうだったし。


 味付け用の出汁が出来上がったら、今度は食材の下処理から。

 ロックオニオンの皮、というか殻だなこれ。を剥いて(むしろ割って)中身を取り出して、薄切りにしていく。

 この薄切りの作業の時に、アルマママの手つきが凄まじく速く丁寧で、ちょっとよそ見してる間に綺麗に刻み終わってました。

 俺、思わず呆然。アルマママ、渾身のドヤ顔。これが料理スキルの力か。…いや、それだけじゃなくて多分能力値が高いせいでもあるかもしれない。あと毎日料理を作っている分の、スキルとは別の経験値とか。


 メインのカツは、豚肉の下ごしらえに筋切りの作業の後、塩と胡椒を揉みこむ。

 胡椒は砂糖以上に高く、小瓶一つで3000エンもした。金銭感覚おかしなるでこんなん。

 そんでその肉に小麦粉をまぶして、粉を落として、卵に浸けて、パン粉をまぶす。

 パン粉は買ってきたパンを刻んで乾燥風をかけまくってカチカチにし、砕いたものを使用。

 思った以上に固くて砕くのに苦労しそうだったけど、アルマママが素手で握って簡単に粉々にしてくれました。この人絶対に怒らせないようにしよう。こわひ。


 熱した油に肉を投入。時々上下を返して焼き色を見ながら5分くらい揚げる。

 揚げ終わったら取り出して油切りして、2cmくらいずつに切る。


 で、刻んだ玉ねぎと出汁を一緒に鍋に入れ火にかけて、ちょっとしんなりしてきたら刻んだカツと溶き卵を半分ちょっとほど、全体に円を描くように入れた後鍋を揺らしながら半熟になるまで煮詰める。

 最後に残りの溶き卵を回し入れて、10秒ちょっと煮込んだものをアロライスにかけて、青ネギモドキを刻んだものを振りかけて出来上がり。

 野菜の塩もみを漬物代わりに小皿に用意して、申し訳程度に栄養バランスをとってみたり。



「できました。ルナティアラさん、お手伝いありがとうございます。野菜を刻む速さとか、凄かったですね」


「うふふ、どういたしまして。ヒカルさんの料理は独特な調理工程で、楽しく進められますね。パンを乾燥させて砕いたものをまぶして揚げる、というのは肉以外の食材にも合いそうね」


「はい。魚などの海産物、特にエビなんかがいいですね」


「あら美味しそう、今度試してみるわ。それでは、頂きましょうか」



 それぞれの席にカツ丼と野菜の塩もみを並べて合唱。いただきます。


 うーむ、美味い。やっぱ丼ものの中でも格別の満足感とボリュームがあるな。

 手作りのカツ丼なんか久しぶりに食った気がする。

 思えば自炊を毎日するなんてこっち来てから始めたことだし、向こうじゃ面倒でビニ弁とかインスタントで済ませてることが多かったからなぁ。



「美味いな、実に美味い! 汁が染みているのにサクサクしているのがたまらん」


「ホントだ。この間のオヤコドンにちょっと似てるけど、食感と味が大分違う。美味しい」


「うふふ、作り方はもう覚えたから、料理のレパートリーに加えておくわ」



 多分、自分以外にこうやって食べてくれる人がいるから続けられてるのかもしれない。

 自分の作ったものに人から評価をもらえるのは、やっぱり嬉しいからな。



 食べ終わった後、食器を洗って乾燥。

 食器を空中に浮かべながら乾燥するとなかなか捗るが、他人の目がある時にはできないなこれ。



「あ、相変わらず異様な光景だな…」


「さすがに他の人が見ている前ではできませんけどね」


「当たり前だな。今回のスタンピードでも大層活躍したそうじゃないか」


「いえいえ、最初に角とキノコを使った以外は特には何も」


「聞いた話だとブレイドウィングに取り付いて次々と地面に激突させていったとか」


「上空から石を投下してホブゴブリンを何体かミンチよりひどい状態にしたとか聞いたわ」


「あと、ウェアウルフの攻撃を素手で掴んで、私がとどめを刺すまで動きを封じてた」



 …あらら、思ったより目立ってたのかな。

 あとアルマ、余計な追撃入れるのやめてくれ。



「…前二つは空を飛べるならまだギリギリ分からなくはないが、ウェアウルフを素手で拘束してたのかね? 随分無茶をする」


「私たちならともかく、初級冒険者のできることじゃないわね」


「いえ、レベル20くらいの槍使いの人や双剣使いの女性、それにアルマが消耗させてくれていたからできたことですよ」


「…あれは消耗させてたからできたとかそういうレベルじゃなかった気がする…」



 アルマ、フォローする気なのかこっちを困らせたいのかどっちだ。



「そ、それより、親玉の討伐の方が大変だったんじゃないですか? 侵攻してきた魔獣に比べて、森林の中は強力な魔獣が多かったでしょうに」


「いや? 正直素手でも楽勝なくらいだったがね」


「親玉も、レベル40くらいのゴブリンキングだったし、侵攻してくる魔獣の対応にデュークを残しておいても良かったくらいよ」


「まあ、時々弱くても物理無効とか魔法無効の装備を身に着けてる奴がいるから、念には念を入れておきたかったのだが」



 あー、仮に物理無効だった時にはアルマパパでもきついか。



「…今回の親玉はルナティに向かって奇襲を仕掛けてきたな。親玉の割に半端に知恵が回る奴だった」


「え? だ、大丈夫だったんですか?」


「大丈夫じゃない、主に親玉が大丈夫じゃなかった。奇襲を察知したルナティに杖で殴り飛ばされていたよ…」


「あれぐらいなら、魔法を使うまでもなかったわね。うふふ」



 こわひ。

 魔法使いでも、ここまでレベルが上がると物理攻撃力も相当な物みたいだな…。



「あと、アルマを是非ウチのパーティに入れてくれ、とせがんでくる者たちが随分いたな」


「ウェアウルフにとどめを刺したのはアルマちゃんで、それが決定打になったと皆言っていたわね」


「槍使いの人と双剣使いの人が消耗させて、ヒカルが動きを押さえてくれてたからできたこと。私一人の力じゃない」


「そうだな。それを分かっているからこそ、お前を誇らしく思うよ」


「こんなに立派になって…! お母さんまた泣きながら抱きしめちゃいそうよ!」


「息が止まるまでするのは勘弁してほしい」



 前にそれで死にかけてたしな。



「で、パーティの誘いをアルマ本人が断ったのなら、私たちが言うことは何もないと返しておいた」


「一部しつこく嘆願してきた人もいたけど、ちょっぴり威圧しただけで気絶してしまったわ。あんな人たちにアルマちゃんは預けられません」


「それでいい、ありがとう。もう私は、パーティを組む人が決まっているから」


「それは、ヒカル君かね?」



 和やかな雰囲気から一変、少し張り詰めた空気になった気がした。

 でも、会ったばかりの時と違って、こちらに対する敵意のようなものは感じられない。



「うん。ヒカルには、何度も、何度も助けられた。これから、少しでもお返しがしたい」


「いや、俺は大したことしてないんだけどな。でも、まあ、パーティを組んでくれるって言うなら大歓迎だよ。俺はまだまだ弱いから、足を引っ張らないようにしなきゃいけないな」


「うふふ、ヒカルさんは私とデュークに睨まれても自己紹介ができるくらいには肝が据わっていたわね」


「…正直思うところはあるが、あのような者たちに誘われるよりは、ヒカル君と組んでもらった方が安心できるな」


「そ、そうですか?」



 その誘ってきたパーティがどんな人たちだったのか逆に気になるわ。

 スタンピードの時には皆頑張っていたように見えたけど、中にはろくでもないのとかも混じってたのかな。



「どうか、娘を宜しくお願いしますね」

「あ、勝手に手を出したりしたら…わかっているね?」


「アッハイ」



 勢いで了承しちゃったけど、え、なにこの娘を嫁に出すような対応は。パーティ組むだけなんですけど?

 アルマもなんでちょっと顔を赤くして嬉しそうにしてんの?



「ああ、そうそう。スタンピードの報酬の引き渡しが明後日から行われるそうだから、忘れず受け取りに行っておきなさいね」


「参加者が少ない分、ギルドの払う報酬も比較的少なくて済むみたいだが、事後処理があるから今日明日に払うのは無理らしい」


「そうですか。ご連絡ありがとうございます」



 他の人たちと同じ時間帯に行くと、またパーティの勧誘とかにアルマが絡まれそうだし、少し遅めに行くとしよう。

 俺の報酬も、公認ではあっても非公式の物だし。

 パーティの結成が済んだら、今度は何をしようかな。

 やっぱ美味しいモノとか探して色んな所に足を踏み入れたりしたいなー。

 あ、でも強そうな魔獣に襲われるのは怖いな。どうしようか。

 まあ、時間はたっぷりあるし、アルマと相談してから決めよう。

お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ