対 梶川光流②
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今回は勇者視点です。
「しね」
「に゛ゃぁああいっ!?」
「くぅっ……!!」
急に現れたアルマとレイナミウレに躊躇なく襲いかかる仮面。
高速移動しながら放たれた拳を、武器の横っ腹で受けつつ下がる二人。
『ピピィッ…!……コケッ!!』
「……魔獣。非殺害対象」
二人を攻撃している隙に、足元にいたヒヨコがいきなり銀色の大きなニワトリになって、蹴爪で仮面に蹴りかかる。
顔面にモロに蹴りが入ったが、まるで応えた様子がない。やっぱり、能力値に差がありすぎるんだ……!
蹴りが入った際に、顔の仮面が真っ二つに割れて地面に落ちた。
仮面の下には、虚ろで怪しく光る二つの目。日本人らしく彫りが浅い、しかし整った青年の顔があった。イケメンって言うにはちょっと華が無いけど。
これが、この人の素顔か……。
「おかしいっす……!」
「……うん、おかしい」
攻撃を防いだ二人がなにやら目を細めて納得いかない、といった表情をしている。
おかしいって、誰がどう見ても今のこの人はおかしいだろうに。
「カジカワさんが殺す気で攻撃してきたら、こんなもんじゃ済まないはずっす!」
「うん、腕が折れるくらいは覚悟していたけど、ちょっと痺れるくらいで普通に防げた」
そこ!? いや、確かにさっきの白魔族相手の時に比べたら弱いかもしれないけどさ!
おかしいと感じるポイントがおかしくないか!?
「よく感じたら、ヒカル、スタミナが尽きてる」
「あー、だから気力操作が使えないんすねー。なら、いくらでもやりようはあるっす!」
え、なんでスタミナが尽きてることが分かるんだ?
そういえば、この子たちも大会でスタミナを消費して能力値を強化してたっけ?
もしかして、他人の魔力やスタミナをメニューや鑑定スキルなしで感じとることができるのか?
……この子たちも大概非常識だな。どういう子たちだ。
「生命力がゼロになるまで攻撃してから、動けなくなるように死なない程度まで手足を重点的に攻める」
「……えーと、洗脳されてるんだったら、アルマさんの声で正気に戻したりとかはできないんすか?」
「洗脳スキルはそんなに甘いものじゃない。……洗脳スキルで操られて、最愛の家族を手にかけてしまった人の話もいくつか知ってる。だから、私の両親も状態異常の対策は普段から欠かしていなかった」
「自分たちも、今後は状態異常対策はしっかりするべきっすね」
「うん。すごく高い値段の付呪が必要だから、なかなか手が出なかったけどそんなことも言ってられな―――」
「ころ、す」
会話の途中で仮面、いや梶川さん? が再び襲いかかってきた。
少女二人に襲いかかる男性の図。字面も絵面も完全に事案ですやん……。
「うぐぅっ!」
「【稲光乃剣】!」
レイナミウレが攻撃を辛うじて防ぎ、アルマが雷を纏った剣で梶川さんに斬りかかる。
麻痺の効果を狙っているのか? でも、この人の抵抗値じゃ麻痺なんか効くわけが……。
「ああ、あがががががああがががががが………」
「……うわ、白目剥きながらすっごい痙攣してるっす……」
え、き、効いてる!?
アイナさんのパラライズアローでも全く止まらなかったのに、アルマの雷を纏った剣は効いているみたいだ。
麻痺こそしていないものの、状態表示に【感電・激痛】という項目が追加されている。痛みのせいで身体が強張っているのか。
「アダだだだダダだだだ……イだだだだだだだだ……」
「あ、なんかいつもの痛がり方してるっす」
「洗脳されていても、痛覚はあるみたい。……ごめん、もう少しだけ我慢して」
この子たち、いつもこの人に対してこんなことやってんの!?
梶川さん、あんた実はすごい苦労人だったりする……?
身体は硬直しているが、HPがあまり減っていない。
このままだとアルマのMPのほうが先に尽きそうだ。
「あああっ………ああああああっっ!!」
「っ!!」
「うわぁぁあいっ!?」
一切身動きしていないのに、梶川さんが叫んだのと同時になぜかアルマとレイナミウレが跳ね飛ばされた。
まるで見えないなにかが二人を弾き飛ばしたように見えたが、あれも魔力の操作ってやつか?
ってのんびり眺めてる場合じゃない! こっちに飛んできとるやん!
遠くへ飛ばされる前に二人をキャッチ!
「だ、大丈夫か?」
「……っ!」
「アタタ、油断したっす……」
跳ね飛ばされた際に強い衝撃を受けたのか、あばら骨にヒビが入っている。
この程度なら回復魔法で治せるが、ちょっと時間がかかりそうだ。
まずいな、治療の途中で襲いかかられでもしたら……。
それに、梶川さんだけじゃない。魔族の残党もどれだけ残ってるのか分からないのにモタモタしてたらいつこっちにくるかも分からない。
≪あー、魔族の残党なら大丈夫みたいですよー≫
え、なんで?
≪このお二人と、あのニワトリさんがほぼ全滅させてしまったようで、残った魔族も周囲の戦闘職の人たちが駆逐してくれたようです≫
……他の魔族もLv50以上はあったよな? それをほぼ全滅って、やっぱこの子たちおかしいわ。
≪それでも普段の能力値だけなら、ネオラさんのほうが上なんですけどねー≫
「あ、ぐ、ころ、す、アル、ころ、こ」
呻き声の内容が支離滅裂になってきてるな。さっきの電気ショックの影響か?
残りHPはおよそ1500。先が長い、長すぎる。
「ころ、す!」
「ちっ!」
二人に向かって突進してくる梶川さんを、剣と短剣を使った魔刃・疾風で迎撃した。
それを素手で受け止められた。生身の身体に当てたはずなのに、金属音があたりに響く。
「この二人は、アンタの仲間だろうが! そんなことも分かんねぇのか! いい加減目ぇ覚ませ!!」
「ころ、す、アル、ころ、マ、す、レ、ころす、イナ、ころ」
「ヒカル……!」
「カジカワさん!」
……呻き声に、二人の名前が混じり始めた。この人も、洗脳スキルの影響とギリギリのところで戦っているのかもしれない。
オレが梶川さんを押さえている間に、二人が側面から梶川さんに武器を振るった。
だが、金属音が響くのと同時に、二人の武器が弾かれる。
「くぅっ!」
「だ、ダメっす。自分たちじゃ、そもそも力が弱すぎてカジカワさんの防御を突破できないっす……!」
今の攻撃、瞬間的に能力値が1500近くまで強化されていたはずだがそれでも梶川さんのHPを減らすには至らなかった。
あの雷の剣も、カジカワさんに当たる10cmくらい手前のところで停止してしまって感電させられないようだ。魔力で防いでいるのか?
くそ、火力が足りねぇ! どうすんだよ!
「!」
オレと鍔迫り合い状態だった梶川さんが身を引いた。
その直後、梶川さんが立っていたところに、レーザーみたいな光の筋が走る。
アイナさんが弓矢で攻撃を仕掛けたみたいだが、瞬時に反応して避けたようだ。
「今のも避けられちゃうかー。ネオラ君、ちゃんと押さえてて! 的が止まっていれば、絶対に当ててみせるから!」
「ちょっと難しいです! この人、筋力も素早さも尋常じゃないんですよ!?」
「他に方法ないでしょ! なんとか動きを止めて!」
どうする、さっきからオレが梶川さんの筋力とわたり合えているのは、補助魔法で強化しているからだ。
だが、それでも足りない。この人の動きを止めるには近接戦闘で、かつこの人を超える力を持った人間じゃないと無理だ!
「………私たちじゃ、ヒカルを止められない」
「………仕方ないっすね」
後ろのほうで、諦めたように呟く二人。
いや、確かに無理ゲーだけど、そんなあっさり諦めんなよ!
「まだだ、まだできることはあるはずだ! だから諦めずに………」
「ネオラ」
「ネオラさん」
『ピピピ』
「……え?」
二人の手がオレの肩に触れて、ヒヨコ化したニワトリが頭の上に乗ってきた。
え、え? どしたの? なにする気なの?
「私たちの中で、あなたが一番強い」
「自分たちの力、ネオラさんに託すっす!」
『ピピピピッ!!』
そう言った直後
全身に、これまで感じたことのないような、なんとも言えない感覚。
力が漲って、いや、ほとばしって、溢れてくる……!?
「うおおぉぉお!? な、なんだコレ!?」
「あなたの能力値を、可能な限り強化する」
「アイナさんもあとで強化するっすから、なんとかお二人でカジカワさんを止めてくださいっす!」
『ピィッ……!』
どういう原理なのかまったく分からないが、オレの主要な能力値が爆上げされていくのが分かった。
いやちょっと、これすごくない? 自分のステータス見て目を疑ったわ。
……こんな技使ってたら、そりゃ格上相手にも勝てるわな。こんなん反則ですやん。
これなら、梶川さんにも充分対抗できるだろう。
「……アンタの仲間の力だ。アンタ一人の力と、どっちが強いかな!」
「ウグ……レイ、ナ、ヒヨ、子、コロス、……アルマ……」
「そうだ、その三人が、……いや二人と一羽? がアンタを止めるためにオレなんかに力貸してんだよ! さっさと正気に戻れっ!!」
「ううぐうぅ……! あああぁぁあああっ!!!」
梶川さんが、再び突進してくる。
先程よりも遥かに遅く感じるのは、気のせいじゃないだろう。
……さて、こっからが本番だ!
ネオライフ
Lv42
年齢:15
種族:人間
職業:勇者
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :841/1116
MP(魔力) :345/551
SP(スタミナ):312/428
STR(筋力) :3514
ATK(攻撃力):3514(+670)(+100)
DEF(防御力):3476(+430)(+310)
AGI(素早さ):3461(+120)
INT(知能) :3247
DEX(器用さ):3101
PER(感知) :3079
RES(抵抗値):571
LUK(幸運値):171
【スキル】
剣術Lv10 天剣術Lv2 槍術Lv9 斧術Lv7 棍術Lv6 弓術Lv6 盾術Lv8 体術Lv10 極体術Lv3 投擲Lv5 拳法Lv10 格闘術Lv1 隠密Lv4 攻撃魔法Lv10 上級攻撃魔法Lv1 補助魔法Lv3 回復魔法Lv8 他、任意で表示
【マスタースキル】
オーラ・ミティゲイション
マギ・ミティゲイション
カウンター・フィスト
次元刃
装備
光虎の牙剣
ATK+670
光虎革の胸当て
DEF+430
紫電一閃のブーツ
ATK+100 DEF+310 AGI+120
【称号】
勇者 魅惑の美男子 死を乗り越えし者 格上殺し 怖いもの知らず 命知らず 蛮勇者 生き急ぐ者 魔獣キラー 魔獣ジェノサイダー 魔族討伐 スキルマスター 処刑人 千の壁突破 二千を超えて 三千世界へ
お読みいただきありがとうございます。
>やめて!白魔族の悪あがきで―――――
申し訳ないがその某凡骨デュエリストを励ましてるのか煽ってるのか分からない予告はNG。吹いた。
あと、洗脳スキルは定期的に同じ人がかけ続けないといずれ解けてしまいますので、人類滅亡の前には止まると思います。というか、その前にアルマの御両親あたりに殺されそうですが。
>ヒカルさん完全にターミネーター状態(笑)―――
デデンデンデデン。胸を貫かれようと頭をぶち抜かれようと追いかけてくるよ! 完全にホラー作品の怪物役だね!
>よぉぉぉおし!勇者君ちゃん、よく耐えた!―――
なお、勝手に強化されて押し付けられた模様。頑張れ勇者。
>いよっしゃ!!アルマさん!!レイナ!ヒヨコ!盛大にやったれ!!
盛大に気力強化して任せる他力本願。
バケモノにはバケモノをぶつけんだよぉー!
>強化中なので抵抗力6000程度(抵抗力未強化で――
長文でのご指摘と考察、誠にお手数おかけしました(;´Д`)
洗脳スキル便利すぎだろ問題は洗脳スキルのデメリットを厳しいものとして設定して、あくまで型にはまると強力だけど、準備とかの条件が厳しすぎて実用は難しい、といったものにしたいと考えています。
強力すぎるスキルの扱いには充分注意するべきだと認識させていただきました。こういったご指摘は執筆するうえでとても参考にさせていただいております。
他にも不自然な点などありましたら、ガンガンおっしゃっていただくとありがたいです。ありがとうございます!
>『鬼神の弟子』なんだし、鬼先生が弟子を―――
鬼先生そこまで甲斐性ないです。「おう、はよ肉料理持ってこいや」的な。なんだこのダメ鬼。
盾代の弁償は、果たしておいくらなのやら。軽く数十万以上はかたいでしょうね。
>決め手はもちろん金的キックだろうな…
(アカン)
一応、ヒカルにだけは使わないようにと決めているようです(震え声)
>チョー怖えぇ…!!自分が戦ってる訳でもないのに――
ターミ〇ーター言われまくってて草。
エリクサーはちょっと投与させるの無理じゃないですかね……。あと金的は(アカン)
>容赦ないだろうなー2人+1匹の攻撃―――
はい、容赦なしですね。そしてそれに耐える主人公。
黒竜はもうちょっとで戦闘終わるくらいじゃないっすかねー。超適当。
>変な魔力感じてるならアルマちゃん達なら操作して取り除ける?―――
アルマたちの魔力操作ではちょっと無理ですねー。
主人公ならあるいは、といった具合ですがそいつが操られているからどうにもならんという。
>次回は2人と1匹の愛の力(物理)で―――
ボコボコにしようにも、素のスペックに差がありすぎて治せないという。
感電のショックで若干おかしくなったりはしてますが、正気にはまだ戻りません。
>Lvが50を超えたからメニューさんの機能が増えますよね?――
増えていますね。でも戦闘中に使うよりも、戦闘前の準備に使うような機能なのでお披露目はもうちょっと後です。
あと主人公はマジで操られています。操られた振りなんかしようもんならパーティから大顰蹙でしょうねー……。




