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準決勝 幼女vs勇者

新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。

濁点の付け忘れとか我ながらどうなってんでしょうかね……? ひらがなで打ち込んでるわけじゃないんですが…。

お読みくださっている方々に感謝します。


今回は勇者視点です。




「準決勝、レイナミウレ選手、ネオライフ選手の試合を始めますっ!!」



「よろしくお願いしますっす」


「おう、よろしく」



互いに礼をしてから定位置につく。

やっぱちっちゃいなー。……この子、ホントに今のオレと同い年なんだよな?

これまでの戦績を見ていなきゃ、せいぜい12歳くらいの幼女にしか見えん。


≪油断は禁物ですよー。これでもこの子Lv34もあるんですから。……それでもどうしてオリヴィエさんに勝てたのか不思議ですけど≫


この子もそれなりに修羅場を潜ってきてるってことだろ。

称号欄に『蛮勇者』がある時点でお察しだ。

……この子のパーティのリーダーも相当無茶させてるみたいだな。死に戻りの恩恵もないのに。




「それでは、試合開始っ!!」




試合が始まった直後、レイナミウレが周囲に撒菱をばらまいていく。

さっきの試合のように撒菱を巨大化させて、その影に潜った。


二番煎じはアカンよ君ぃ。



「【シャインボール】!」


「うわわっ!?」



地面に向かって光属性の攻撃魔法を放ち炸裂させて、撒菱の影を強い光でかき消す。

潜っている影が光で照らされたら強制的に実体化させられるのは、メニューから教えてもらっていたので楽に対応できたな。


影から出てきたレイナミウレに向かって、剣で魔刃・遠当てを放つ。



「うひゃあっ!? あ、アルマさんのと同じくらい強いっす!」



遠当てを短剣で弾きながらレイナミウレが悲鳴を上げる。

え、アルマの能力値ってオレより大分低かったような覚えがあったんだが、同じくらい?

身内自慢かな。……いや待て、待て待て。


なんで、オレよりもずっと能力値が低いはずのこの子が、オレの攻撃をあっさり弾けるんだ…?

メニュー、この子なんかズルしてない? ドーピングとか。


≪い、いえ、薬物や強力な身体能力強化の装備などは身につけていないようですが。……どういうわけか、瞬間的に能力値がはね上がっていましたね≫


は、はぁ? そりゃいったいどういうこった?


≪いやホント分かんないんですってば! 他にも、当たり前のように撒菱とか手裏剣とか巨大化させてますけど、投影した忍具のサイズを変化させることなんか不可能のはずです!≫


……メニューにも、原因が分からないってか?


≪は、はい……ゴメンナサイ≫



……さっき戦ってたアルマも、急に強くなったり魔刃・遠当てを分裂させたりしてたけど、スキル以外になにかそういった技術でも使えるんだろうか?

よく分からん。後でアルマかこの子にでも聞いてみようかな。



「じゃあ、これはどうっすか!?」



地面にボールのようなものを叩きつけながら叫ぶ。

ボールはほとんどはねずにコロコロと転がるだけだ。…なにをするつもりだ?



「……あれ? 割れるとあたりを煙だらけにするはずなんすけど、割れないっす……?」



床に転がるボールをつつきながら首を傾げる幼女。なにやってんだ。

今のは煙玉かな? なんかギャグマンガの忍者よろしくボケてるけど、戦場じゃ命とりだぞ。

…まあ、そもそも忍者ってのは忍んでこその職業だし、こんな公の場で戦うこと自体がアウェイなんだけども。



「まあいいっす、とりゃー!」



失敗を誤魔化すように、手裏剣や苦無を投げつけてくる幼女。

一つ一つがまるでフリスビーのようにデカくなっていく。厄介な飛び道具だな。


まあ、並の戦闘職ならの話だが。

こちとら腐っても勇者なんですよ。


メニュー、装備、盾!


≪アイサー!≫


盾を構え、飛び道具を弾く障壁を展開する技能【魔盾衝壁】で手裏剣や苦無を弾いていく。

何十発もの飛び道具を連続で放っているが、全て弾いて……?


……あれ? レイナミウレはどこへ行った?


≪弾いた手裏剣の影の中です! 高速で移動しながら機会を窺っています!≫


なら、さっきみたいにシャインボールで!



パンッ! となにかが破裂するような音とともに、あたりに煙が立ち込めた。

みるみるリングの上が煙で満たされていく。

……さっきの煙玉か!? なんて悪いタイミングで暴発してんだ!


≪いえ、どうやら狙ってやったみたいです! さっき不発させたのはわざとです! この子、思った以上に狡猾ですよ!≫


こんな煙だらけの状態じゃ、光を放っても拡散してしまって影を照らしきれない。

まずいな、一気に向こうに有利な状況にもっていかれた。


視界が利かない。かといって煙幕を吹き飛ばすほどの攻撃を使ったらその瞬間に致命的な隙を晒すことになる。

順風耳を使って、いや耳がよくなりすぎるから爆音系の技を使われたらヤバい。

……煙の流れを見ながら



とかなんとか迷っているうちに、背筋に悪寒。

ヤバい、くる! どこから? 足元? 背後? 左右? いや、あえての正面か……!?



いや、上だっ!!



煙で見えない空を見上げると、予想通り短剣を構えたレイナミウレがオレの脳天を狙っているのが見えた。

いつの間に頭上へ飛んでいたんだこいつは? だが、見切ったぞ―――



≪違います! それは忍術スキルでつくったニセモノですっ! 本物は真正面ですよ!!≫





ドスッと、胴体になにかが突き刺さる感覚。

視界を上から目の前へ移すと、レイナミウレが短剣でオレの胸を刺しているのが見えた。

さっきのは、スキル技能でつくった幻、いわゆる分身の術ってやつか……!


いったい、一撃入れるのに何重のフェイントをかけてんだこいつは……!?

光虎革の胸当てを容易く貫いてやがる。並の攻撃じゃ傷一つ付けられないくらい丈夫なはずなのに。




「……とったっす」


「ぐ、ううううぅぅぅ……!!」



短剣が刺されている胸に、激痛が走る。

まるで傷口にワサビとトウガラシでも摺り込まれているかのように、痛み続けている。

装備している短剣の、雷属性追加ダメージか……!


このまま伸魔刃でも発動すれば、一気に内臓を貫いて致命傷を負わせることができる。

……相手がオレじゃなけりゃ、これで勝負はついていたかもな。


胸に突き刺さっている短剣を、アイテム画面に放り込む。

これで、レイナミウレの武器は無くなった。



「っ!? た、短剣が……!?」


「せいっ!!」


「かはっ!! ……け、ケホッ、ゲホッ……!!」



腹を蹴り飛ばして、攻撃しながら距離をとる。

唖然としてるところをモロに蹴られて随分苦しそうにしているが、こっちなんか短剣で胸刺されてんだぞ。まだマシやろ。


まあこれくらいの傷なら回復魔法で治せるんだけどな。



「ゲホッ……き、傷が塞がって……!」


「惜しかったな。もうちょっとでやられるところだった」



光虎の牙剣を構えながらレイナミウレを見据え、問う。



「お前の武器はもうないぞ。まだやるか?」


「……ははっ。あの短剣だけが、自分の武器じゃないっすよ!!」



痛む腹を押さえながら、再び手裏剣を投げるレイナミウレ。

それは効かない。煙玉をまた使おうもんなら破裂させる前に奪ってアイテム画面へ放り込む。


レイナミウレが光虎革の胸当てを貫けたのは武器の攻撃力あってのことだ。

素の状態じゃ、オレにまともなダメージを与えるのは……!?





……っ!!





レイナの存在感が、いや、能力値がはね上がっていく。

さっきまで300~400程度の値しかなかったのに、今じゃ素のオレを超えるほどの能力値まで強化されている。

な、なにが起きてんだ…!? どっかの野菜人じゃあるまいし、いくらなんでもおかしいだろ!?



「はぁぁあああっ!!」



縮地と見紛うほどの速さで突進してくる。

その手には投影した苦無が握られている。短剣代わりに使うつもりか。


オレの剣と衝突した瞬間砕け散ってしまったが、すぐさま新たな短剣を投影して斬りかかってくる。

重い……!! オレやアイナさんの攻撃に肉薄するほどの衝撃が、打ち合うたびに腕に響いてくる。


さっきのアルマといい、どうやらこれがこの子たちの切り札みたいだな。

どういう理屈で能力値を強化しているのか分からないが、とんでもない強さだ!



「ぜぇ、はぁ、はぁっ…!!」



だが、そう長続きはしないようだ。

スタミナの値がみるみる減っている。これが能力値強化の代償といったところか。

気功纏に近い効果だが、能力値の上がりかたもスタミナの消費量も段違いだな。



「でぇりゃあああああっ!!!」



さらに能力値を上昇させて、これまででも一番速い突進。


をするように見せかけた分身の陰で、手裏剣を放っているレイナミウレ。

最後まで小細工しまくりだな。諦めて自棄になったりしないで、勝つために自分なりに必死に考えているのが分かる。


その負けん気の強さに、オレも応えるとしよう。




剣を、あえて分身に向けて思いっきり振る!

スキル技能でつくられた幻なので、傷なんかつけられず剣はすり抜けていった。




「がっ……え、え……?」



後ろから手裏剣を投げていたレイナミウレの身体が、胴体から真っ二つに分かれた。

なにが起きたのか分からない、といった表情のまま死亡し、蘇生されるとともに場外へ移されていく。


マスタースキル【次元刃】

剣を振るい、目に見えている範囲に任意で斬撃を発生させるスキルで、目に見えているのならどこへでも攻撃できるという反則技だ。

一応、どこへ斬撃を出すか予測できれば防御することも可能だが、並の人間じゃまず無理だろうな。



「レイナミウレ選手の死亡、および蘇生を確認! 勝者は、ネオライフ選手! 決勝進出は、ネオライフ選手ですっ!!」



審判の勝敗宣言の直後、観客席から歓声が上がった。

オレだけじゃなくて、レイナミウレに対する称賛の声も多く聞こえる。当然だな。




あ、危なかったー……!!

なんなのあの子!? ハチャメチャなスキルの使い方するわフェイントしまくるわ、挙句の果てにはオレより能力値が上昇するわでもう意味が分からん!

……よく勝てたなオレ。もっかい戦ったらどうなるか分からんくらい余裕のない試合だった。


……メニュー、あれって結局なんだったんだ?


≪分かりません、判定不能ですー……≫


いやおかしいだろ。諦めんなよ。もっと詳しく調べてみてよ。


≪いえ、ですからホントに分かんないんですよぅ。スタミナを消耗して能力値を上げるスキルはいくつか存在しますが、さっきのはスキル由来の力ではありませんでした≫


スキル由来じゃない……? じゃあ結局なんなんだよ? 答えが出てへんぞ。

……やっぱ本人に聞くのが手っ取り早そうかな。

メニューにも分からないことなんかあるんだな。普段あんなにドヤって解説してるくせに。


≪……直接操作のことなんか教えられませんって……≫


ん? なんか言ったか?


≪いえなんでもないですよー。それより早く控室へ戻って休憩しないと。次の相手はあのアルマティナさんですよ?≫


……そうだった。どうしよう。

レイナミウレよりも明らかに強そうだよなぁ、アルマって。

まあいいや。この際、勝ち負けにこだわるより全力を出すことだけ考えようそうしよう。


≪負けること前提で考えてませんか……?≫




お読みいただきありがとうございます。



>ぶっちゃけスキル×魔力気力操作が応用効きすぎなんだよなぁ……――


はい、今回勇者が勝ったのはリングの上という開けた場所だったことと、コメントにあるように地力の差が大きいことが要因かと。

スタミナ切れを待てばマスタースキルを使わなくても勝てたでしょうが、まあそこはノリで使ったということで。


>あ、これメニューちゃんが魔力、気力操作見破りそう――


はい、レイナやアルマが使っているのを分析して既になにをしているのか理解しています。

ただ、直接操作が広まるリスクを考えてあえてしらばっくれているようですが。

勇者メニューの内心としては『あいつらあんなもんこんな目立つ場所で使ってんじゃねーよバカ』とか考えてたり。


>股関蹴りはもう完全固有技になっとんなぁ…――


まずは金的ぃ! 次も金的ぃ! 懺悔しやがれ、これがトドメの(ry


>アイザワ君、言い逃れ出来ないレベルで規格外と親バカの逆鱗に――


ソフトタッチどころか、両親が見てたら結界ぶち破って乱入するレベル。

カジカワも思わず殴り込みにいく寸前でしたが、例の蹴りを見て踏みとどまった模様。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[一言] おい、この勇者他人の家を漁るが如く平然とレイナの短剣をパクったまんまでいやがるんだが?
[一言] いやー流石に勇者ちゃんが直接操作使えるようになったら魔王とかヒカルでも止めれなくなりそうだし、システムがヒカルみたいに理外にあるわけじゃないから死ぬのが早くなりそう…だからメニューさんナイス…
[一言] 短剣泥棒さんになるなんて… これは保護者突撃待ったなしですわ…
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