準決勝 アイザワvsアルマ ①
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今回始めはカジカワ視点です。
「あ~~~……やっぱダメだったか~~~……」
保護者もとい観戦席にて、アイナさんが残念そうな声を上げた。
俯きながら頭を抱えたりして、随分オーバーなリアクションだがふざけているわけじゃなくて本当に残念な様子。
「てか、なんなのあの子? 滅茶苦茶速く剣を振るわ剣から炎が噴き出すわ挙句の果てに攻撃魔法の同時発動とか。いくらなんでも反則過ぎない?」
「ルール違反は一切してませんよ。複数の攻撃魔法を同時に使えるのはそういうマスタースキルがあるからです」
「余計に反則臭いよそれー。……はぁ。まあレヴィアちゃんはよく戦ったよ。アルマちゃんの攻撃が苛烈すぎて全然持ち味を活かせない状況でも、勝ち筋を見出そうと必死に考えてたね」
「……次に当たるアイザワが気の毒になってきたな」
コワマスも苦笑いしながら、控室に戻っていくアルマを眺めている。
「そうでもありませんよ」
「ん? どういうことだ」
「アイザワ君は、アルマの天敵と言ってもいい能力を持っています。……正直、このまま戦ったら勝ち目は薄いでしょうね」
「んんー? なんでそんなことが……って、君もメニューってやつを使えるんだったね」
「どういうスキルを持っているんだ?」
「それは試合を見てのお楽しみです」
アルマのことを信じていないわけじゃない。
でも、アイザワ君だけはこの大会で唯一アルマにとって相性の悪い能力を取得している。
……さっきのレヴィアリアみたいに、自分の持ち味を殺されて負けるか、それとも……。
まあいいや。始まるまで余計なことは考えないでおこう。
にしても、まだこないのか? こちとら内心気ぃ張りっぱなしで気疲れしてきたんですが。
おかげで観戦用に作っていた菓子を食べでもしないと落ち着かない。もしゃもしゃもしゃ。
「……カジカワ君、ちょっと食べ過ぎじゃない? 太るよ?」
「大丈夫です。これの軽く十倍は食べても満腹にはなりませんから」
「どこが大丈夫なんだそれは……」
とかなんとか言ってるうちに、次の試合が始まった。
レイナとラスフィーンか。レイナガンバレー。
……お、おう。魔力操作で巨大化させた『撒菱』を辺りにばらまいて、その影に潜って四方八方から手裏剣や苦無を投げて、隙をついて気力強化した膂力で一気に距離を詰めてから首を斬りおった。
試合時間1分も経ってないんですけど。わけ分からんうちに試合が終わってるラスフィーン可哀想。
レイナはもう少し自重してもいいと思うんだがなー……。
~~~~~アイザワ君視点~~~~~
やっと、やっとだ。
ようやくお前と戦える。楽しみすぎてどうにかなっちまいそうだ。……なぁ、アルマ。
…我ながらまるで初めて女をデートに誘う童貞みてぇな心境で、笑いそうになっちまう。
「それでは中堅職の部準決勝、アランシアン選手、アルマティナ選手の試合を開始します!!」
アルマが試合前の会釈するのと同時に、こちらも礼を返す。
……人に頭を下げるのなんざ、いつぶりだか。
剣の師のジジイ以来か? 大分前に新たな剣王が生まれてから引退したって話だったが。…どうでもいいか。
お前だからこそ、俺も対等に接してやってるんだぜ?
「それでは、試合開始っ!!」
審判が開始の合図をするのと同時に、互いに剣を構えた。
……こうして見ると、剣の扱い自体は悪くはねぇが平凡の域は出てねぇな。
「さっきの試合でトドメに使った技は使わねぇのか?」
「…いきなりアレを使っても、あなたには通用しない」
いいぞ、分かってるじゃねぇか。
もしも、何も考えずにあの高速移動の斬撃を繰り出してきていたら、カウンターで胴体真っ二つにしてたところだ。
しばらく睨み合っていたが、先に動いたのはアルマのほうだった。
アルマの周囲に、さっきの試合のように複数の魔法の弾が展開されていく。
ん、剣を構えたからてっきり剣術でくるかと思ったが、まずは攻撃魔法か。
「はっ!」
そのまま展開した魔法を放ってきた。
複数の属性の同時攻撃。軌道も着弾速度もまったく異なる。大抵の相手ならこれだけで倒すのは容易だろうな。
だがそれは悪手だ。他はともかく、俺に対しては。
「効くかよっ!!」
「!」
俺が剣を振るうと、放たれた攻撃魔法が全て霧散し、消えた。
マスタースキル【マギ・バニッシュメント】 装備している剣と合わせた俺の攻撃力の値まで、攻撃魔法の威力を減退・あるいは無効化するスキル。
魔法使いにとってはまさに天敵とも言えるスキルで、俺を倒せるのは武器同士のぶつかり合いか肉弾戦のみ。
「しっ!」
「甘ぇ!」
攻撃魔法の影に潜んで例の高速移動の斬撃を繰り出してきたが、魔法をかき消された状態じゃ奇襲の意味がねぇ。
容易く防御することができた。受け止めた剣は、思ったよりも軽く感じた。
「どうした、お前はそんなもんなのか? 俺の期待を、裏切るんじゃねぇぞ」
「……【火炎剣】」
アルマが呟くのと同時に、剣から青い炎が噴き出した。
が、それも一瞬だけ。すぐに水をかけられた焚火のように鎮火してしまった。
「魔法の、無効化……?」
「その通り。どうやらお前の剣に魔法を纏わせる技も消せるみてぇだな。……さぁ、どうする?」
「まだ、勝負はこれから」
「そうだな、簡単に諦めんじゃねぇぞ!」
どうやら俺は、アルマにとって天敵のようだ。
アルマは強い。スキルを十全に使える状況だったなら、おそらく俺以上に。
だが、魔法抜きで剣のみでの勝負なら俺が上だ。
お前は武器しか使えない相手に容赦なく魔法をぶちこんでたんだ。それを使えなくなったからって、文句は言わねぇよな?
「そら、今度はこっちからいくぞ!」
「っ!」
攻勢に回ると、一気に勢いがなくなった。
俺の攻撃を防ぎながらちょくちょく魔法を放ってきているが、全てかき消されるから意味がない。
……俺の剣をある程度防ぐことができてるだけでも大したもんだ。
こいつも尋常じゃない努力をしているのが、剣を通して伝わってくる。
やはり、お前はいい。
だが、ここまでだ。
剣を弾いて、僅かな隙を突いて身体を斬りつけた。
だらんと力なく垂れ下がるアルマの左腕から、鮮血が流れていく。
「くっ……!」
「咄嗟に身体を捻ってかわしたか。切断こそしなかったが、もうその腕は使えねぇだろ」
お前はよく戦った。この大会に出てる奴らの中でも、おそらくトップクラスに強かった。
俺が有利に戦えたのは、ただ、相性の問題だろう。
剣を突きつけ、口を開く。
「俺の剣は、片手で受けきれるほど軽くねぇ。もう勝負はついただろ」
「……」
「負けを認めろ、アルマ」
降参を催促したが、気丈に片手で剣を構えたままこちらを見つめている。
……最後まであがくつもりか。
諦めの悪い奴は、大好きだぜ? やっぱり、お前は最高だよアルマ。
さて、ならお望み通り引導を渡してやるか。
大丈夫だ、これ以上いたぶるつもりはねぇよ。すぐに終わらせる。
試合後に回復できるとはいえ、俺のモノになる女をこれ以上傷物にするつもりは―――
「アルマぁぁああっ!!!!」
「!?」
「っ!!」
アルマにトドメを刺そうと剣を構え直したところで、誰かのクソデカい声が聞こえてきた。
まるで師匠のクソジジイが怒鳴った時のような、腹の底まで響く怒声。
声の方を向くと、観客席で黒髪の男が腕を組みながらこちらを、いやアルマを見つめていた。
……なんだ、あのオッサンは?
唖然として見ていると、オッサンが言葉を続けた。
「手加減して勝てるならいい! 本気を出して負けるのもいい! だが手加減して負けるようなことだけはするな! 相手に失礼だぞ!」
……なに?
「大丈夫だ、全力を出すのは卑怯でもなんでもない! 使えるもんはなんでも使えっ! そして勝てっ!!」
言いたいことを言い終わったのか、それだけ言うとすぐに席に座って観戦する姿勢に戻った。
……なんだったんだ、アイツは? というか、なにを言ってたんだ?
まるで、アルマが手加減しながら戦ってたような言い方を……!?
急に、肌が粟立ったのを感じた。
背筋に悪寒が走る。まるで極寒の吹雪の中に放り出されたように。
それとは裏腹に、顔から脂汗が噴き出してくる。まるで、炎天下で全力疾走したかのように。
原因は、さっきのオッサン? いや、違う……!
「ごめん、ヒカル。ごめん、アランシアン」
なぜか謝りながら、右手だけで剣を構えるアルマ。
それと対峙しているだけで、鳥肌が収まらない。
違う。さっきまでとは、まるで別人。
存在感が明らかにデカくなっている。さっきまでより、明らかに強くなっている。
いったい、なにが……!?
「ここからは、本気でいく。今まで手を抜いていて、ごめんなさい」
「っ…! 面白ぇ……! こい、アルマぁっ!!」
ああもう、どこまでお前は俺を楽しませてくれるんだ!
最高だ、最高すぎる!
もしかしたら、俺は今日お前と戦うために生きてきたのかもしれない、と思うほどに心が躍るのを感じる!
ここからが、本当の勝負だ。
……たとえ、一瞬でケリがつこうとも。
お読みいただきありがとうございます。
>仕方ないよ、その子もっと理不尽な人が近くにいて――
レヴィアは決して弱くはないのですが、相手と相性が悪すぎました。
いつかちゃんと活躍しているところもかいてあげたいなぁ。
>???「男を困らせる質問だ。
それは紛れもなくやt コブ〇じゃねーか!
>うん、ネオラくん。ご両神に数回もがれてきなさい。――
もがれたら今度こそ女の子に(ry
>さて、決勝戦ではネオラは――
もう負けること前提でコメントされてるアイザワ君とレイナ可哀そう。
結果はすぐに分かりますので、しばしお待ちを。




