保護者もとい観客席の反応
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んー、とりあえず予選は問題なく通過したみたいだな。
…いや、定員より通過人数が減ってしまったのが問題じゃないとは言わんが。アルマさんもうちょっと手加減したげてよぉ。
勇者君と、件のアイザワ君? が互いに言い争いながら鍔迫り合いをしているうちに、大地剣と魔刃・疾風のコンボでリングの上を巨大化した剣の横っ腹で一閃。
3人以外の全員が場外まで叩き落とされて、定員未満しかあのリングの選手は本選に進むことができなかった。
一人ずつ落とすのが面倒だからってちょっと無慈悲すぎませんかね……。
それにしても、勇者君のステータスはかなりのものだったな。
能力値だけなら、Lv59のコワマス以上だ。明らかに群を抜いている。
スキルも種類、質ともにアホみたいに恵まれていて、マスタースキルを4つも取得してた。ちょっとチートすぎんよー。
さすが勇者、俺と違って神に愛されてやがんな。贔屓しすぎやろ。
一方アイザワ君のステータスだが、これがなかなか面白い。
剣術スキルがカンストして天剣術まで取得しているが、その天剣術のスキルレベルが既にLv4まで上がっている。
筋力や防御力や素早さなど、膂力に大きく影響する能力値が軒並み高い。
同レベルの剣豪と比べても、多分2割増しくらいか?
才能があるのは確かだ。実際、リングの上での動きや立ち回りは素人目に見てもとても洗練されているように思えた。
だが、才能だけじゃ能力値は上がらない。いくら才能があったとしても、あくまでそれは戦闘センスの話であって、能力値は別の問題だ。
彼は恵まれた才能を持ってなお、陰でレベリングとは別に鍛錬をしているようだ。能力値が高いのは、おそらく努力値の補正がとんでもなく高いからだろう。
才能に胡坐をかいて弱者を見下しているのではなく、誰よりも努力しているから、自分より弱い他人が怠慢な人間に見えてしまって不遜な態度をとっているのかもしれないな。
……まあ、それにしたってちょっと口が悪すぎる気もするが。
「んふふ、やっぱり全員本選へ進んだね」
「アランシアン・アイザワも、勇者とやりあっているうちに残ったようだな」
「いやぁ、ネオラ君とまともにやりあえるとは、あの子が天才だってのはホントみたいだねー」
「……その後ろで他の選手を一掃したアルマティナも相当なものだがな」
「だよね、なにあの巨大な剣。カジカワ君、あれってマスタースキルかなにか?」
「いえ、魔法剣スキルの一種ですが」
「一種? え、他にもあんなトンデモ効果の技能があるの?」
「ええ、まあ」
「……ちょっと、ネオラ君の優勝怪しくなってきたかもねー」
アルマのことを評価されて、ちょっと嬉しいと感じてしまった。
なんというか我ながら親バカみたいな心境だなー。あ、すんませんなんか本当の親バカ二人から思念みたいなのが伝わってきてる気ががががが…!
「控室へ向かう時に、なんかあの天才君がアルマちゃんに声をかけてたね」
「『俺に負けた後で俺のモノになれ』だけ分かったが、あれはもしかして口説いていたのか?」
……なんですと?
「え、聞こえたの? 順風耳を使っても歓声で分かんないだろうに」
「いや、極体術スキルの【千里眼】で口の動きを読んだだけだ」
「読唇術まで使えるの? ライザちゃんも大概器用だねー」
「しかし、アレに目を付けられるとは厄介なことになったな。さっきも言ったが、アレはほしいものは必ず手に入れたがる性質だ」
「あー、仮にアルマちゃんと当たって、負けたりしたらそのままお持ち帰りされちゃうかもしれないってこと? もしもそうなったら、カジカワ君はどうするのー?」
「ブチ殺す」
「ひぃっ!? か、カジカワ君ストップストップ! 落ち着いて!」
「……真横で人を呪い殺さんばかりの殺気を発するのはやめろ。肌が粟立つのが止まらん……」
隣に座っているアイナさんが悲鳴を上げ、コワマスが顔を顰めながら身震いしている。
……いかんいかん。深呼吸、深呼吸。
アルマと当たると決まったわけじゃないし、仮に戦うことになったとしても、おそらくアルマが勝つ。
これは親バカでもなんでもない、冷静に分析して判断した結果だ。だから大丈夫だ、大丈夫だ。
「すみません、ちょっと感情的になってしまいました」
「お、おう。そっかー。……万が一、天才君が勝つようなことがあったらどうしよっかなー。正直、君を止められる気がしないんだけど」
「狩猟祭の時とは比べ物にならんほどのプレッシャーだったな。……今なら、黒竜とも互角に戦えるのではないか?」
「いえ、さすがにそれはお世辞が過ぎますよ。……未だに、先生にまともに一撃入れることすらできないくらい未熟なんですから」
「君の先生、いったい何者なの……」
いやホント、鬼先生には未だにパンチ一発まともに当てることができていない。
しかも向こうはスキル技能の一つも使わず、純粋な体術のみでこちらの攻撃をいなしつつ攻撃している。
……メニュー曰く、鬼先生が全力であらゆるスキル技能を惜しみなく使用した場合、最低でも平時の軽く2、3倍は強くなる見込みだとか。もうアンタが魔王倒せよ。
でも、鬼先生を倒せるまでとは言わんから、当面の目標としてせめて黒竜をステーキにできるくらいの強さは身につけておきたいな。
「レヴィアちゃんは大人数相手の訓練を活かした立ち回りで危なげなかったね。オリヴィエちゃんもよく動いてた。いやぁ、まさかあの虚弱体質で持久力ゼロだった子があんなに走りまわせるようになるとはねー」
勇者ばかりに目がいきがちだったが、他のリングで戦っていた勇者の仲間もなかなかのものだった。
大賢者っていうレア職業の女の子なんか、魔法使い系の職業とは思えないくらいとにかく走り回って、的にされないようによく立ち回っていた。
「……そのオリヴィエという娘にはどんな訓練をさせていたんですか?」
「賢者としての役割と立ち回りの学習とレベリング、それ以外はとにかく走り込みをさせて体力づくりをさせてたよ」
「たかだか2カ月足らずの修業で、あそこまでの持久力を身につけられるものなのか?」
「疲労で気絶するまで走らせて、倒れたら叩き起こしてまた気絶するまでーってのを繰り返してたら、いつの間にかあんなに元気に走り回れるようになってましたー」
「鬼かお前は……」
コワマスにドン引きされるような修業やらせてるとか、この人も大概ヤベーな。
見た目すごい美人なのにやることエグすぎやろ。
「あと、さしあたり気にかかったのはレイナちゃんと、あの短剣使いの男の子かなー」
「あれは、ラディアスタか。……ふむ、私がこの大陸に渡る前に見た時と比べてさらに強くなっているな。少々生き急いでいるようにも見えるが」
ラディア君も本選に進めたようだな。
しっかし、短剣一本でよくあそこまで器用に立ち回れるもんだ。
大抵の相手にはリーチで劣るが、【伸魔刃】で間合いの不利を埋めつつ短剣特有の振りの速さで翻弄して、隙をついて一気に距離を詰めて一突きしたりとか。
ベテラン相手でもまるで実力と年季の差を感じさせない、見事な戦い方だった。
レイナはいつものように影潜りに頼るかと思いきや、意外にも真っ向勝負で周りの人間を叩きのめしていた。
気力操作に頼りすぎるとすぐにバテるんじゃないかと心配だったが、相手の攻撃を『迅雷短剣【雷鼓】』でガードして、雷属性の追加ダメージを与えほんの一瞬だけ麻痺させてからその隙に場外にぶっ飛ばしていた。
あれならさほど気力も魔力も使わずに戦えていただろう。まあ次の試合前に全回復してもらえるから節約しなくても大丈夫ではあるんだが。
他にも『バレドライ』と『ラスフィーン』、狩猟祭で入賞を果たしていた的中弓士の『ウェーラカヌス』や剣豪の『ラウナクェス』、橙エリア優勝の豪槍戦士『ヴィノウマック』など粒揃いだ。
本選に進むだけあって、誰も彼も油断できない強豪ぞろいだな。アルマとレイナはどこまで勝ち進めるのやら。
声を上げて応援なんてガラじゃないけど、頑張れの一言くらいは言ってやろうかな。
自家製ポテチでも齧りながら。バリバリ。
お読みいただきありがとうございます。
>メニューさんもう完全に感情持ってるよなw――
メニュー機能の役割は『扱っている者のサポート』であり、その者の意に沿った結果をもたらしやすいように機能するように振る舞います。
ゆえにメニューに感情が無くとも扱っている者の感情からどうするべきかを予測、判断しているんですねー。それを感情と呼ぶべきか否かは人それぞれでしょうけども。
>ついにメニューさん同士の絡みが――
まあ第三者の正体バレバレなんですけどね(;´Д`)
主人公のメニューが第三者のメニューの存在を知っているのは、同じく勇者の動向を探ろうとした際に「なんか他に誰か見てる」と気付いて、誰が見ているのか調べてみた結果、メニューを使用している第三者が誰なのか、その目的がなんなのかを突き止めたという裏設定。
その際に第三者も主人公のメニュー機能の存在に勘付いてはいますが、すぐに情報を遮断されてしまったので主人公が誰なのかはまだ察知されていない、というなんとも微妙な状況だったり。
>オカマ、オカマか…そういやこの作品でてないなオカマ。――
今後も出す予定は……いやネタ枠か強キャラ枠で出すのもアリか……?




