仲裁
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飯屋に寄ろうとしたところで、鉱山から爆発音が聞こえた。
……うん、腹減ってるし、余計なトラブルに首を突っ込むのはやめにしようそうしよう。
〈やばいやばい! ねーちゃん、いそいでこうざんへむかってとめてくれ!〉
〈たのむ、おれらだけじゃせっとくできねぇ!〉
「……リトルノーム? どうかしたの?」
スルーして店に入ろうとしたところで、アルマに地の精霊たちが寄ってきてなにかを止めるように懇願してきた。
精霊魔法を使った素振りは無い。ということは、精霊たちが自らアルマのもとへ近付いてきたのか。
あのやんちゃな地の精霊たちが、こんなに切羽詰まった様子で迫ってくるのは初めてのことだ。
〈こうざんで、ノームのあにきとイフリートのばかがおおげんかしてんだ!〉
〈はやくとめないと、もっとおおきなばくはつがおきてみんなぶっとんじまうぞ!〉
〈ぶっちゃけにんげんのまちがぶっこわれようがどうでもいいけど、おれらまでまきこまれるのはやだ!〉
うん、正直でよろしい。あくまで自分たち本位の都合で報告にきたわけね。
でもその分信憑性が高い情報だ。このままだとヤバそうだな。
『ノーム』と『イフリート』ってのは、このチビッコ精霊たちの上位版とみていいのかな?
≪肯定。下級精霊のリトルノームおよびイフリートジュニアが長い年月魔力を貯めこみ進化した中級精霊≫
≪これらの精霊が本気で争いを始めた場合、街が半壊する恐れあり≫
アカンやん。はよ止めな。
「はぁ、メシ食ってからゆっくり解決しに行くってわけにもいかないみたいだな」
「うう、お腹空いてるのに食べられないのはつらいっす」
「サンドイッチでも出してやるから移動しながら食え」
「お腹痛くなりそう……」
というわけで、パンをくわえながら鉱山へ急行。
もぐもぐ、結構ヤバい状況のはずなのにメシ食いながらだと緊張感がないな…。
「お、おい、まだ喧嘩してやがんのか?」
「ヴァンリーザさんもジバガンさんも頭に血がのぼって、まるで止める気がねえみたいだ……」
「このままじゃ鉱山が崩落しちまう。最悪、街にまで被害が……!」
鉱山に着くと、鉱夫と思しき人たちが戦々恐々とした様子で鉱山の入り口を覗いている。
いつ崩れるかも分からないから、中に入るわけにもいかないようだ。
「すみません、なにかトラブルでも起きたのでしょうか?」
「ん? なんだ、アンタら」
「いえ、ウチのパーティに精霊使いの子がいましてね。地の精霊たちがなにやらこの鉱山での喧嘩を止めてほしいと言ってきたらしいので」
「お、おお、そうか。……頼む。危険な頼みごとになるが、どうかあの二人を止めてくれ……!」
鉱夫の人たちが言うには、精霊魔法を使って魔石や鉱石なんかの採掘を手伝っているエルフの鉱夫『ヴァンリーザ』さんと、その鉱石を同じく精霊魔法で熱して加工するのを手伝うドワーフの『ジバガン』さん。
この二人が、なにがきっかけか鉱山の奥で言い争いを始め、それがエスカレートした結果互いに精霊魔法まで使った大喧嘩になったらしい。
はた迷惑すぎるわ。喧嘩するならせめて人様の迷惑にならないところで仲良く喧嘩してほしいもんだ。
てか、精霊魔法が使えるっていうことは二人とも戦闘職か。高レベルなら、止めるのはちょっと面倒そうだなー。
事情は分かった。さっさと鉱山に入って止めるとしますかね。
崩落の危険があるが、そこは頼りになる精霊使いに頼るとしよう。
「アルマ、もしも崩落しそうになったら精霊たちに止めさせてくれ」
「分かった。リトルノーム、お願い」
〈お、おう。でも、なるべくはやくけんかをとめてくれよ〉
〈もしもほんきでぶつかりあってだいばくはつでもおきたら、おれらでもどうにもならねぇぞ〉
「万が一の時はレイナの影潜りか、ファストトラベルで脱出しよう。その前に喧嘩を止めるのが最良だが」
〈おれらをみすてるのかー!?〉
〈ひどい! いつもまるでどれいみたいにこきつかってるくせにー!〉
「その分、魔力も多く渡してる。無事に解決できたら、ボーナスに魔力を追加するから頑張って」
〈〈〈いえす、まむ!〉〉〉
……アメとムチの使い分けまでできるようになってきたか。アルマ大佐怖いです。
鉱山の中なら薄暗くて、レイナの影潜りで一気に進めるんじゃないかと思ったが、ところどころに光る鉱石を利用した照明があって途切れ途切れにしか移動できない。
イラついた様子で、レイナが影に入ってはすぐに出てくるのを繰り返している。
「むがー! ちょっと移動してはすぐに影から追い出されて、これじゃあ普通に移動したほうが速いっす!」
「まあ、デカい魔力が暴れてるほうに行けばすぐ辿り着くだろうし、焦ることもないだろ」
「そろそろ着く。……すごい熱気」
奥から漏れ出ている熱に、顔を顰めながら汗を拭うアルマ。
これ大丈夫なのか? 二人とも奥で熱中症になって倒れたりしてないよな?
とか思いながらさらに奥へ進むと、3mくらいの人の形をした岩の傍にいる長い耳をした金髪美形の青年と、人の上半身を形作った炎の隣にいる背が低い筋肉質な髭面のじい様が睨み合っているのが見えた。
この二人が喧嘩を繰り広げている張本人たちか。暑くないの?
「ふ、ふふふ。いい加減、負けを認めてはいかがですかな?」
「バッハハハハハッ! バカ言うな! やっと温まってきたところだろうがよぉ…!!」
うん。主に鉱山の中の空気がね。原因はこのじい様の隣にいる炎の人型かな。
〈ふん、貴公の主は随分気性が荒いな。さぞや日々苦労していることだろうに〉
〈ああ? テメェを飼ってるそのモヤシに比べりゃまだマシだ。テメェの物差しで決めつけてんじゃねぇよカタブツが〉
〈類は友を呼ぶ、という人間の勇者の言葉を知っているか? まさにその通りだな。野蛮なものは野蛮なものに惹かれるということか〉
〈ハッ! ならテメェもモヤシと同類ってこった!〉
中級精霊たちも無駄に流暢な言葉遣いで口喧嘩をしている。
こうして見ると、精神構造は人間と大差ないように思えるな。
〈あ、やっときたー!〉
〈ねえちゃん、どうかとめてくれー!〉
〈おっさんもなんとかしてくれ! もうさいあくぜんいんぶっとばしちまってもいいから!〉
エルフ側にいた地の精霊たちがこちらに気付き、助けを求めてきた。
オッサン言うなし。てか全員ぶっ飛ばせって、兄貴とか言ってたのに敬意は無いのか?
「あのー、すみませーん、ちょっと一旦中断してもらえますかー?」
「ああん? なんだテメェら、人の喧嘩に割り込む気か? 邪魔すんな!」
「これは私と彼の問題です。巻き込まれないうちに関係のない方々は下がってください!」
うわ、こっちに向かって魔法飛ばしてきたよ。ストーンバレットとファイアーボールって、生産職の人が受けたら普通に死ぬぞ。
初級魔法だし、当たっても痛くもなんともないだろうけど、ちょっと頭に血がのぼりすぎだろ。
魔力クッションを纏った手でキャッチ。
かつてダンジョンで戦った三角帽子の精霊使いの魔獣より大分威力が強いが、こちらもあの時とはステータスが違う。
「……素手で、受け止めた……!?」
「な、なんで爆発しねぇんだ……!?」
狼狽えた様子でこちらを見ている。
今なら説得のチャンスかもしれないが、その前に。
「もしも、喧嘩を止めにきたのが鉱夫の人たちであっても、同じように魔法を放つつもりだったんですか? 喧嘩するなら人様の迷惑にならない範囲で殴り合いでもして決着つけろ」
炎と岩の弾丸を、それぞれ握り潰して霧散させる。
「どんな理由で喧嘩してるのか知らないが、それに便乗して暴れまわってるそこの精霊たちもちょっとは諫めろ」
〈なんだテメェ、偉そうに説教かます気かぁ!? いきなり水差すような真似しやがって!〉
〈イフリート、我らの言葉は契約した者にしか通じぬ。そんなことも忘れたのか? だから貴様は野蛮だと言うのだ〉
ふーやれやれとでも言いたげに、肩を竦めながらバカにしたようにイフリートに声をかけるノーム。そういうとこだぞ。
「通じてるよ。お前もいちいちカンに障る言い方して煽るのはやめろ」
〈なっ…!?〉
〈あにき! このおっさんやばいから! ぜったいにてきたいしちゃだめなやつだから!〉
〈このおっさんせいれいとはなせるし、さわれるし、たぶんころすことだってできるとおもうぞ〉
〈精霊に、触れる? 殺せる……!?〉
〈つまり、こいつは精霊に対する脅威ってわけか。ならこの場でぶっ殺しておくべきってことか!〉
〈〈〈だからだめだってー!!〉〉〉
喧嘩していたイフリートとノームが、こちらに向き直り臨戦態勢に入った。
……うん。喧嘩は止まったけど、今度はこっちに矛先が向いたでござる。どうしてこうなった。
仕方ない、とりあえずチビ精霊たちが言うように全員ボコっておとなしくさせるか。
お読みいただきありがとうございます。
>女の子にげっぷはさせませんかそうですか――
需要はあるんですかね。まあしたとしてもあんまりお下品な描写にはしたくないですねー…。
ラストエリクサーなんて久しぶりに聞いた。もう25年前のゲームなんですねぇ。時の流れの早さよ。




