表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

229/584

炭酸ガス 炭鉱ガス

新規の評価、ブックマーク、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。


さて、この三日で医療都市を見て回ったが、なかなか有意義な観光だったな。

食事もヘルシーなものばかりかと思いきや、近くの魔獣森林で採れる果物が実にファンタジーだった。


森林で薬草採取をしてる最中に、なんか青いチェリーみたいなのが実ってて、また紫蘇の実の亜種かと思ったけどまさかのソーダ味。シュワッシュワやぞ。

他にもメロンというか、正確にはメロン味の炭酸飲料みたいな味がする果物や、ぶっちゃけ〇ァンタそのものの味がするオレンジやグレープみたいな実など、炭酸系フルーツの宝庫だった。

さらに、それらの果汁が結晶化したキャンディみたいな鉱石も採取できて、もうウハウハですわ。

異世界の食材はやっぱこうじゃないとなー。



惜しむらくはコーラ味と栄養ドリンク味が無かったことだが、まあ仕方ない。

それに、コーラは手製の物がもうちょっとで熟成完了するところだし、味がかぶらなくてよかったとも言える。


え、いつそんなもん作ったって? 工業都市周辺のダンジョンで手に入れた木の実、アレ、コーラの原料だったんですよー。

正確に言うと、炭酸飲料を作るために必要な酵母が含まれている実で、ちょっと齧ってみたけど味はほとんどしなかった。

アレ単品で作れるほどコーラ作りは甘くない。あくまであれは糖分の一部を炭酸へ変えるものだ。


他にもバニソイ豆やカルダモン、シナモン系の木の実やほんのり香る程度に果汁を混ぜて、そして大量の砂糖。

それらを煮込みまくって、砕いた炭酸木の実の元を混ぜて、さらにそれらをエール用の樽に詰め込んで最低でも半月以上は寝かせる必要がある。

半月で熟成って、炭酸飲料としては早いのか遅いのかよく分からんな。


味の調整はメニュー任せだが、果たしてどこまで再現できているのやら。ド〇ペみたいになったりしたらどうしよう。アレはアレで嫌いじゃないけど。



炭酸果実の実を絞って飲み比べてみるのも楽しそうだな。

毒の森に近い魔獣森林でないと採取できない、完全天然フルーツらしいからあまり市場にも出回っていないようだ。


メニュー曰く、あれらのフルーツはほどよく中和されたヨルムンガンドの毒素が魔獣森林の木々に影響を及ぼした結果、炭酸ガスが溶け込んだ果物が実るようになったらしい。

毒が植物に与えるストレスは凄まじく、糖度も普通のフルーツよりもかなり高い。


ちなみに毒は人体に悪影響を及ぼすほど強くない。10kg一気食いしてようやくちょっと気分が悪くなるレベル。てかその前に食べ過ぎて吐く。

体内に滞留しないかとも思ったが、メニューいわくすぐに分解されるくらい人体に対しては毒性が弱いので問題ないらしい。


毒の森からの中和された毒が必要なので、人工栽培は不可能。食いたけりゃ高レベルの魔獣が徘徊する魔獣森林まで取りに行かなきゃならんというわけだ。……そりゃ、市場にも出回らんわな。



「最初は口の中が爆発したんじゃないかってビックリしたっすけど、食べ始めるとやみつきになる美味しさっす!」


「しゅわしゅわ。口の中が痺れるのと一緒に甘さと果物の風味が一気に広がって、とても美味しい」


『ピピッ、……ケプッ』



ウチの子たちも、気が付けばよくフルーツをつまんでしまっている。特にヒヨ子、お前ちょっと食いすぎだ。

炭酸ジュースは日本じゃよく飲んでたが、炭酸フルーツは初めてだな。

なんだか懐かしい味わいで、ついつい食べ過ぎてしまった。……ヒヨ子のこと言えんな。げっぷ。



ちなみに医療都市ではあまり目ぼしい食料は見当たらなかった。

いや他の街でも売ってるような食材だったらあるけど、この街ならではって感じのものはほとんどなかった。

強いて言うなら豆乳が売ってたくらいか? まあ湯葉の材料にはなるか。



……てか、この都市のメインはあくまで医療と薬品関係であって、食材にまで期待するのは酷な話だったか。

実際、回復薬もかなり豊富で、普通の回復ポーションはもちろん魔力ポーションや魔力回復丸薬、上級状態異常回復薬とか。

さらにかなり貴重品だがスタミナを回復させるポーションまで売っていた。ただし値段は1本5万エン。高すぎる。


そしてなんといってもエリクサーを手に入れられたのはデカい。


生命力操作はあくまで傷を治すことしかできない。いや欠損まで治せるのは我ながらどうかと思うが。

毒や病気には対応できないし、万が一あの旦那さんみたいな奇病やヨルムンガンドのような強力な毒を持つ魔獣に出くわした時の切り札として有効活用させてもらおう。

……できれば使う機会がこなければいいが。エリクサーっていうのは使うもんじゃなくて、あくまでコレクションとして持っておくもんだっていうのがRPGでも鉄則だし。え、違う?


あの真っ黒な果実から作る薬なんだから墨汁みたいな見た目を想像してたけど、渡された瓶の中に入っていたのは虹色に輝く美しい液体だった。

……なんか逆に毒々しいな! 黒くはないけど、ここまで鮮やかな色してると別の意味で怖いわ。



あと、整体やマッサージのお店なんかもあって、筋トレで凝った筋肉をほぐしてもらおうとしたり。

……結果、全ての店で『アンタの身体硬すぎワロタ。ウチじゃ無理なんでよそへいってください』と店側が音を上げてまともにマッサージしてもらえませんでした。敗北を知りたい。切に。




医療都市で寄っておきたいところは大体回ったし、そろそろ移動するとしますかね。

武術大会が控えてなけりゃ、もうちょっとゆっくりしていってもいいかもしれないが、あんまりモタモタもしていられない。



馬車に乗り込み、医療都市を眺めながら王都から直通の道が敷かれているという炭鉱都市へ。

まあ、いつでもファストトラベルで来られるし感傷に浸るほどのもんでもないか。


炭鉱都市といっても、石炭ばかりがとれるわけじゃない。

むしろメインは魔石。燃料用の無色の魔石はもちろん、属性付きの魔石なんかも種類が豊富らしい。

さらに、近くに鉱山なんかもあってミスリルやアダマン、極稀にオリハルコンなんかもとれるとか。



「院長へのお土産、結局お肉に合いそうな薬味くらいしか思いつかなかったっす……」


「多分、それが一番喜ぶと思う。レイナのお土産ならなんでも嬉しいだろうけど」


「次は炭鉱都市か。どこの街もそうだが、最近は質のいい素材や鉱石は対魔族軍に持ってかれてることが多いし、もしもいい素材が手に入りそうなら是非確保しておきたいな」


「魔獣の素材なら討伐すれば手に入るけど、鉱石はそうはいかないからね」


「でも、自分たちのパーティに装備品用の鉱石なんか必要なんすかね?」


「今はまだ不要だけど、いずれ必要になるかもしれないから念のためだな。アイテム画面があれば嵩張ることもないし」



……たとえば爆裂大槌は、今のところは傷一つない。

だが、もしもあの大ガニや大蛇よりも強い相手と戦うことになって、破損しないという保証はない。

その時は、より強い素材を使って作り直してもらう必要がある。そのために、より強い素材を確保しておきたい。


あと、ジュリアンに頼んでいるものの材料として、属性付きの魔石が必要だしな。

それも使い捨てにする前提で大量に。我ながらなんて贅沢というかもったいない使い方だ……。

また魔力ドリルで掘って魔石を手に入れられないか試してみようかな。





馬車に揺られて、さらに三日が過ぎた。

大会まであとおよそ2週間。間に合うのかな?


≪炭鉱都市から王都への直通の道ならば馬車で1日程度。炭鉱都市に長期間滞在しなければ充分間に合うと推測≫


大会のエントリー受付なんかのことを考えると、一週間前までには王都へ着いて登録しておきたい。

となると炭鉱都市に留まれるのは一週間弱といったところか。


いや、ファストトラベルが使えるからここは一旦王都へ向かって先に登録を済ませるべきか?


≪エントリー登録は大会の十日前から開始するため、早急に向かっても登録は不可能≫


んー、じゃあやっぱ炭鉱都市をそこそこ見て回ってからでも遅くはないか。

ていうか、よく武術大会のエントリー受付の期間まで分かったな。


≪……梶川光流が流し読みしていた新聞から大会についての書き込みを確認≫


……見逃してたわ。メニューさんマジ有能。いやむしろそんな重要な情報を見逃してた俺が無能。バカス。

アルマとレイナは大会に出る気満々だが、俺はパス。メンドイ。そもそも中堅かどうかも分からないのに登録自体できるか怪しいし。




さてさて、やってきました炭鉱都市【ダンジグレイド】

鉱山の周りに半円状に都市を築いているようで、都市から地続きで鉱山へ足を踏み入れることができるようだ。


今回は昼前に街へ着くことができた。

いつもなら宿屋へ直行だが、今日は久しぶりにちょっと贅沢して外食してみるのもよさそうかな。

一食一人頭5000エン近くかかるけどな。ホントこの世界の料理の値段ヤバいわ。



「あー、やっと着いた。もう身体バキバキだわー」


「バキバキっていうか、ベキキバキベキョって音が鳴ってるんすけど、大丈夫なんすか……?」


「大丈夫? またマッサージする?」


「ありがとな。でももう馬車から降りた後だし、また今度頼む」



さすがに人前でマッサージを受けるのはちょっと。どんな羞恥プレイだ。

また身体が変に強張って悪化するといけないし、自分で魔力を使って揉み解しておこう。



どこか飯を食うのにいい店は無いかなー。

……医療都市といい炭鉱都市といい、その街の名物を無視して飯のことばっか考えてるのは我ながらどうかと思う。

お、あの武骨な石造りの飯屋からやたら食欲をそそる匂いが。よし、ここはあの店へ――






とか思いながら店に向かおうとしたところで、鉱山のほうから爆発音が鳴り響いた。

……炭鉱ガス爆発かな? よりによってなんで俺らが街に着いた途端にこんな事故が起こるのやら。


お読みいただきありがとうございます。



>おぉ!確かにきな臭い会話だ!――


むしろきな臭さしかない。

どうなるのかは、大会にて。しばしお待ちを。



>おおいよいよ魔王幹部、もしくは四天王登場かしら?――


大陸が大きく分けて全部で5つあるので、四天王だと一人多くなることに。なにそのクロ高スタイル。

幹部もただのかませにならないように描写したいのですが、筆者の執筆能力ではどうなりますやら(;´Д`)


>ビナーの性質しだいでは梶川さんがまた悪さしそうだから良かった…


果実を使って過回復とかちょっと考えてましたけど、自分でも何を書きたくなったのかよく分からなくなったので没に。


>きな臭いことになってきましたね〜。――


魔族も主人公一行も勇者一行もどんな暴れ方をさせようか、まだ構想中だったり。

まあとりあえず会場は更地にしようそうしよう。


>エリクサー……カジカワにあんま必要無いけどもしもがあるからなぁ――


生命力操作による回復は傷や欠損の回復なら可能ですが、毒や病気を治す効果はありません。

病気も普通に存在します。……リアルでも最近嫌な病が流行してますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[気になる点] 「229話」 >……結果、全ての店で『アンタの身体硬すぎワロタ。ウチじゃ無理なんでよそへいってください』と店側が音を上げてまともにマッサージしてもらえませんでした。敗北を知りたい。切に…
[良い点] ブクマしてまだ全部読んでないですが、 面白くまだ半分ですが、一気読みしてます [気になる点] 爆裂鎚、グラーフアイゼンだなと [一言] 白菜漬け買ったの忘れてて冷蔵庫の中で袋がパンパンに …
[一言] > 「院長へのお土産、結局お肉に合いそうな薬味くらいしか思いつかなかったっす……」  ホースラディッシュ(西洋ワサビ)かな?っ(牛肉の薬味)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ