エリクサー きな臭い会話
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果実をニーナメリアさんに手渡すと、深々と頭を下げて何度もお礼を言ってきた。
果実の見た目に驚かないあたり、見たことがあるのかな?
いや、見たことがあるどころの騒ぎじゃないのかもしれない。
この人、ステータスを確認したら職業が薬師で調合スキルLv8まで達している。まだ20代半ばくらいに見えるのに随分とレベルが高いな。
もしかして自分で調合するのか? だとしたら相談もスムーズにいきそうかもな。
「ぐすっ……本当に、感謝してもしきれません」
「どうも。ところで、早く調合して旦那様に飲ませてあげるべきでは? 報酬の支払いはその後で結構ですので」
「そ、そうですね。申し訳ありませんが、お言葉に甘えさせていただきます。……終わりましたら、必ず支払うと誓います」
そう言って、すぐさま自宅のほうへ駆け足で去っていった。
……大丈夫かな? 失敗したりしないか?
≪調合スキルがLv8にまで達していれば、エリクサーの調合は充分可能≫
完全回復薬はLv8で作れるのか。
ならLv10ならどんな薬を作れるのやら。ちょっと怖い。
ところで、エリクサーの末端価格は大体300万らしいが、薬師が卸売りに渡す時の値段はどれくらいなんだ?
≪およそ200万エン前後が相場≫
ふむ、なら丁度いいな。
明日相談してみるか。
次の日、報酬を支払いにギルドへ訪れたニーナメリアさんと、元気そうに歩く旦那さんの姿が。
無事に調合を終えて、旦那さんを健康体に回復させることができ……いや、ちょっと元気になりすぎじゃない?
両手足が肘と膝あたりまで石化してたのが治ったのは分かるけど、あんな筋肉ムキムキじゃなかったはずだが……。
≪あれが正常な状態であるとエリクサーは判定した模様。おそらく奇病の影響で身体が極端に衰弱し、筋肉が萎んでいたのだと推測≫
……今思うと、確かに石化した部分がやたら太かったように思えなくもない。
なんて便利な薬なんだ。ぜひとも手に入れたい。
「このたびは、本当にありがとうございましたぁっ!! この通り以前と変わらず、いやむしろ前より快調に思えるほど元気になりましたっ! もう感謝の言葉しかねぇですっ!!」
「そ、そうですか。お元気そうでなによりです……」
「あなた、声が大きすぎよ。……見ての通り、おかげさまで夫は元の健康体に戻ることができました。重ねて、お礼を申し上げます」
そんな大声出して。嬉しいのは分かるが、こっちが驚くだけならまだいいけど周りの目がね…。
「こちらが報酬の500万エンになります。どうぞ」
「どうも」
とりあえず、一旦受け取っておく。うん、しっかり500万エンあるみたいだな。
「ところで、ニーナメリアさんはエリクサーの調合ができるのですか?」
「はい。繊細な作業ですので、1日に一つが限度なのですが」
「そうですか。……では、少し相談したいことがあるのですが、よろしいですか?」
件の果実をもう2個ほど余分に持ち帰っていて、これらを使ってエリクサーを作ってもらえないか相談してみる。
無論タダではなく、卸売りに出す時と同じ値段で構わない。ニーナメリアさんも俺たちも互いに損しないWin-Winな取引だ。…卸売りの人には悪いが。
貴重な『ビナー』を3つも入手していたことに驚いていたが、快く了承してくれた。
二つ出来上がるのは三日後になるらしい。昨日の晩から日をまたいで調合していたので、今日はもう作れないとか。
どんな薬なんだろうなー。……やっぱ墨汁めいた真っ黒な薬なんだろうか。怖ひ。
支払いと相談が終わった後に、受付嬢へ依頼の完了を報告。
無事に依頼が済んだのを確認できて、受付嬢もホッとしたような顔で報告を聞いている。
「良かった……立場上制止しなければならないのですが、正直、あんなに悲しそうな声で毎日依頼を受けてくれないかって懇願しているのを見ているのは、とても心が痛かったので」
「ええ、私たちも無事に依頼を達成できてホッとしています」
「魔獣の討伐も並行してくれたようで、スタンピード防止のノルマが一気に進んで………え?」
討伐履歴を確認している受付嬢が、急に凍り付いたように固まった。
……あー、アレか。
「ああ、例のヘビのことはあまり大きな声で言わないでください。悪目立ちしたくないので」
「み、ミニマム・ヨルムンガンドって、あの伝説の災厄と呼ばれた魔獣の進化前の形態じゃないですか……!?」
「進化する前の、まだ未熟な状態で発見できてよかったです。アレが成長したらもうどうしようもないですからね」
「あ、ありがとうございます。もしもあと数年でも放置されていたら、未曽有の大災害に陥っていたかもしれません……!」
ホッとした顔から一変、顔を青くしながら礼を言う受付嬢。
やっぱあの魔獣の脅威はこのあたりじゃ今でも言い伝えが残ってるみたいだな。
「というか、未熟と言ってもSランク下位、即ちLv70を超える魔獣を討伐したことになるのですが……なんでまだCランクなのですか?」
「レベリングばかりやってて、魔獣の討伐以外の依頼を数えるほどしかこなしていないからだと思います」
「今回、毒の森へエリクサーの触媒となる果実を採取するという高難度の依頼を達成した実績により、カジカワヒカルさんとアルマティナさんはBランク、レイナミウレさんはCランクへ昇格となります。……正直、みなさんもうAランクにまで上げてもなんら問題ない気もするのですが…」
今回、Cランクの俺たちがこんな高難度の依頼を受けられたのは、一定期間以上誰も依頼を受けようとしなかったことと、あれ以上放置されていたら旦那さんの命が危なかったこと、そしてなにがあっても自己責任という条件が揃ったうえでの特例だ。
その厳しい条件を満たしたうえで、無事に依頼を達成したので当然評価のリターンもデカい。
俺とアルマも、Aランクにこそまだなっていないが評価ポイントを多く獲得できたので、比較的早くAランクになれそうだとか。
それにしてもあのヘビ公の素材どうしようか。またゲンさんの工房にでも持っていくかな。
……毒まみれだし、そのまま持ってったら顰蹙買いそうな気もするが。
さーて、せっかく医療都市に三日ほど滞在することになったんだし、この街ならではの店巡りや買い物をするべきだろうな。
もしくはまた魔獣森林へ向かって、薬草や毒草を採取してそれを素材に有用そうな薬を作ってもらうのも面白そうだ。
だが、まずは食品関係を見て回りたいな。健康食品とか味気ないイメージがあるけど、美味な食材とか売ってないのかねぇ?
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「む、手駒の候補が一体殺られたようだ。どこのどいつが仕留めたのかしらんが、手練れだな」
「なんだと!? くそ、例の大会まであと3週間という時に……! もっと早急に回収しておくべきだったか!」
「まあよい、他にも駒は揃いつつある。それに、アレは育てすぎると我らにも牙を剥きかねん諸刃の剣だ。不確定要素を処分されたことで、逆に安心できるという見方もある」
「半端な戦力では返り討ちになるだけだぞ。あれほどの魔獣を、あと何体準備できるというのだ」
「魔獣はあくまで戦力を削るためのものだと思え。本命が来るまでの、な」
「本命……まさか!?」
「ああ、直々に皆殺しにするとおっしゃっていたよ」
「……魔王様は各地の拠点を維持せよとおっしゃっていたのだろう? その指示をないがしろにするような真似をして、万が一があった時には……」
「ありえんよ。あの方は特別強く創られている。たとえSランクの冒険者相手でも問題なく殺せるだろうさ」
「……そうだな。ところで例の黒竜の相手はどうする?」
「竜には竜をだ。ちとランクは劣るが何体かテイムに成功したらしいのでそれをぶつける予定だ」
「今回の催しで、人間どもも強力な戦力を集める狙いがあるのだろうが、そのおかげでまとめて潰せて手間が省けるというものだ」
「準備は既に済んでいる。あとは時を待つのみだ」
「では、祭りで会おう」
お読みいただきありがとうございます。
>エクス某…どっちかっていうと―――
光になーれー。あれ、前にも似たようなコメントがあったような……?
なお振り回してるのは別に勇者でもないただのオッサン予備軍な模様。
>ジョブチェンジに必須ってことは勇者の方も――
はい。しかも誰かに寄生して倒すのではなく、勇者がメインで倒さなければならないので難易度マシマシ。さらに世界を滅ぼしかねない魔獣なんかそうそういないのでまず発見するのが難しいという。
ちなみに仮に鬼先生を倒したとしてもその称号は得られません。鬼先生は別に世界滅ぼす気はないし、周りの生物を無差別に死なせる習性もないので。
4桁系の称号って5~9千台はどうなるんでしょうね?――
これから徐々に出てくると思います。
なお、別に能力値は4ケタで止まるわけではない模様。
>雷鼓→雷虎じゃないですかね?
雷鼓で合ってます。某弾幕STGのキャラは関係ない。
色気づいて字面だけ変えたらかえってややこしくなってしまいましたね(;´Д`)
なおこんな人間兵器でもまだ魔王を倒すには力不足な模様。つまり、まだまだ成長途中ということです。
>HP.MP.SPのステータス計算を教えていただけるとありがたいです――
カジカワの場合、HPは現在レベルの二ケタ目+10の値ほど上がっていってます。要するにLv20台だったらレベルが1上がるごとに最大HPが30増えるという具合ですね。
MPはその半分、SPはさらにその5分の3、といったカタチで成長させていましたが、称号の影響で現在成長率がおかしなことに。
現在はMPが35ずつ、SPが25ずつ増えている状態です。レベルの二ケタ目が上がればさらに増える模様。
MPは基本毎日寝る前にゼロにして、枯渇から復活させているので1日ごとに1増えています。他二人と1羽も同様。ただ、カジカワ以外の者が枯渇した場合は魔力の補給が必要ですが。
……正直、かなりいい加減な計算をしているので、もしかしたら矛盾点なども多々あるかもしれません。(;´Д`)
>確かに世界を喰う大蛇が最終形態ならミニマムですわ――
なお、最終形態になる前に『天啓』スキル持ちが警告を出して対処される場合がほとんどな模様。
でなければ軽く10回はこの世界滅んでたりします。神様鬼畜過ぎんよー。
>ビナーの性質に採取した者の正常な状態を記録とあるのですが――
正常な状態を理解し、その通りに治すのがエリクサーの性質ですので、即ち飲んだ本人にとって正常な状態まで戻すということです。
生まれつき目が見えない人が飲む場合、『目で見たい』と思っているならば視力が回復しますし、『目が見えるようになるのは嫌だ』と強く思っている人ならば盲目のままです。
……我ながらなんてご都合主義な設定なんでしょうか。
…コメ返しが本編並みに長くなってしまいましたね。ものすごく嬉しいのですが。




