頼るべきものの重要性
新規の評価、ブックマーク、感想をいただきありがとうございます。
お読みくださっている方々に感謝します。
『シャアァァアア……!!』
大蛇の身体が、淡く光っている。
体術スキルの【気功纏】を使って、能力値を強化しているな。
ここからが本番というわけか。なら、こっちも気力操作で強化だ。
『シャルァアアアア!!』
「だりゃぁぁあああ!!」
大蛇の伸魔牙と、俺の魔刃改が衝突する。
魔力の牙の片方は砕いたが、もう一本で止まった。二連続で破壊するのはちときついか。
現時点での俺と大蛇の主要な能力値の強さは、共に大体2000前後。
大きく違うところとして抵抗値は大蛇が上、幸運値は俺が上ということ。
抵抗値が高いということは、状態異常にかかりにくいということなので閃光による目潰しは効果無し。口の中にライトニングペッパーぶち込んでも多分耐える。大きな音を出して耳を潰しても熱感知と嗅覚が鋭いから無意味。
格上相手に有効なデバフをことごとく封じられてて、正直戦いづらい。
それに比べて、幸運値とかいう不確定要素ばかりの能力値よ。
戦闘における幸運値の効果は『はずみ』、つまり運の良し悪しを自分に有利に働かせるというなんとも曖昧なものだ。
たとえば剣士相手に戦うことになった時に、たまたま相手の剣が金属疲労でポッキリ折れたりとか、重要な局面で足元がぬかるんでバランスを崩し、致命傷を与えるきっかけになったりとか。
……相手の牙は常に新品だし、HPもMPもMAXの状態でエンカウントしたからあんまり幸運値は働いてないんじゃないかな。
運頼みなんかアテにしてるとロクでもない結果になるだけだ。今はどうやってこいつを仕留めるかを―――――っ!
『シャグァァァアア!!』
「くっ……!」
この野郎、胴体の大部分を周囲に手繰り寄せて手数を増やしてきやがった。
一発一発が10本近い木々をおがくずに変えるほどの威力。
そんな攻撃が、秒間軽く5、6発近くぶちこまれていく。
鬼先生の攻撃に比べればスピード自体は遅い。
だが、このサイズと手数の攻撃を避けながら攻撃に転ずるのは容易じゃない。
胴体にカウンターで大槌をぶち込んでも、その隙に他の部分の胴体が俺を直撃するだろう。
『シャアアァァアッ!! ギシャアァアアア!!』
さらにダメ押しと言わんばかりに、魔牙・遠当てを乱射してきた。
しかし、胴体を振り回しながらじゃ上手く狙いがつけられないのか、微妙にずれたところへばかり飛んでいく。なにやってんだ?
……!? あ、あれ? 遠当てが消えない? てか地面に当たる前に空中で止まってないかアレ?
≪【貫牙術スキルLv7【魔牙・三日月】 放った斬撃を留めて設置する技能。設置した斬撃は触れた対象に斬撃ダメージを与える。設置している間魔力を消費し続けるが、魔力がもつ限り設置数は無制限≫
ヤバい、いつの間にか周りを斬撃の檻が囲んでやがる。
でも、こんな状態で胴体を叩きつけたりしたら大蛇の身体にもダメージが、いや、まさか!
『シャッ!!』
一瞬だけ、しかし相当量の魔力が頭部に集中し、俺に向かって吐き出された。
≪竜族スキルLv3【クイック・ドラゴンブレス】 単発の小規模な魔力弾を高速で吐き出す技能。スタンダードに比べ威力・範囲ともに劣るが速射性に優れ、着弾点で激しい爆発を起こす≫
轟音。それと同時に激しい衝撃。
「うわぁぁあああああっ!!?」
メニューの説明を読み終わる前に、ブレスの爆発でぶっ飛ばされてしまった。
直撃を避けてこの威力。魔力クッション+装甲を分厚く纏っていなければHPが尽きていたかもしれない。
あまりの威力に、毒の森の外まで弾き飛ばされてしまった。
くそ、辛うじて凌いだが、コイツ思ったよりはるかに強い…!
なにが「負ける気がしない」だ! アホか俺は! ちょっとばかしレベルが上がったからって天狗になるのも大概にしろ!
俺一人にできることなんかたかが知れてるだろうが!
『シャギャァァアアアアッ!!』
まだ俺が生きていることに気付いたのか、毒の森の外にまで追いかけてきた。
執念深いこった。一度狙った獲物は逃がさないってか。
……もう入ってるみたいだな。おかげで気付かれてはいないようだ。
ならこっちも全力全開でヘビ公の相手をするか!
現時点で残った気力を使いさらに能力値を強化!
3000程度まで上昇させるとなると、せいぜい数分程度しかもたないがこのままじゃジリ貧だしな。短期決戦でいこう。
念のため魔力を気力に変換して2割程度ほど回復させておく。これで魔力も残り半分切ってしまったから残量を意識しないと。
速度がはね上がった魔力飛行で、ヘビの周りを不規則に飛び回る。
『シ、シャ!? シャアァア!?』
慣性も重力も無視した高速軌道を捉えることができず、混乱した様子であちこちキョロキョロしながら狼狽えるヘビ公。
さらに魔力熱源デコイを放ち、そちらに意識が向いた隙に爆裂大槌を取り出す。
気力・生命力をブレンドした魔力の縄を大槌の持ち手に絡ませ、ハンマー投げの準備完了。
連続で爆発させながら、一気に縄を伸ばして遠心力を加える。
ほらほら、よそ見してるうちにえらいもんがお前の頭部を狙っているぞ!
『シャ、シャアアアァアアアアアッ!!!』
大蛇の頭部を狙った大槌は、ほんの少しヘビの頭部を掠めて抉った。が、脳や重要な組織を傷つけるには至らなかったようだ。
『シャァァアアッ!!』
お返しと言わんばかりに、大槌を振り回してるせいで隙だらけの俺目がけて再びブレスを放とうと魔力を頭部に集中する大蛇。ブレスもこれで何度目だろうか。
今の状況、俺にはヘビ公のブレスを迎撃することも止めることもできない。
俺には、な
「アルマっ!!」
「【伸魔刃】・【大地剣】ッ!!」
『ハギャ、アアァガガガガアアッ!!!?』
影の中から、アルマが剣術と魔法剣の合わせ技で巨大な剣を伸ばし、ブレスを放とうとしている大蛇の口に突き刺した。
急に口の中に剣を突っ込まれて、たまらずブレスを放つのを中断する大蛇。うまいか? なら遠慮せずしばらくしゃぶってろ。
毒の森の外に出たのなら、アルマたちも一緒に戦うことができる。
影潜りの高速移動で接近し、機会を窺いながら影の中で待機していたというわけだ。
影の中なら熱も匂いも感じとれない。魔力でも感知できない限りは存在を認識できないから奇襲を予測することができなかったというわけだ。
『ギャシャガガガガアアアア!!!』
『コケェエェェェエエッ!!』
剣を持つアルマに向かって、胴体を振り回し攻撃してきたが、ヒヨ子が全気力を消費して能力値を瞬間的に爆上げし、伸魔爪を振り回して弾き飛ばした。
ほんの数秒だけだが、大蛇の攻撃に匹敵するほどの威力。時間稼ぎには充分すぎる効果があった。
「てぇぇぇえええりゃぁあああああああっっ!!」
大地剣の上を強化したクイックステップで駆け進み、大蛇の脳天に『雷虎の短剣』を突き立てるレイナ。
これまた気力操作で能力値を強化し、さらに魔力操作で強化した【魔刃】を使ったとてもシンプルに高火力な一撃。
容易く大蛇の脳天に持ち手まで深々と突き刺さった。
『ハバガガガガガアアアアガアガガッッ!!?』
「うわわっと!?」
短剣の雷属性追加ダメージを脳に直接叩きこまれて、痙攣しながら麻痺する大蛇。
痙攣の振動で振り落とされてしまったが、墜落寸前に影の中へ潜ったので怪我はないようだ。
大蛇の抵抗値を考えると、おそらくすぐに麻痺は解除されるだろう。
あの短剣のサイズじゃ頭に刺したとしても致命傷にはならない、だが、最高だ。よくやってくれた。
おかげで頭にこいつをぶち込む決定的なチャンスができた。
一撃目を躱したせいで、さらに爆発しながら回転し遠心力を増した大槌。
威力は大ガニを倒した時よりさらに上がっている。さて、覚悟はいいかな? え、よくない? そうかそうか。死ね。
「トドメだゴルァァアアアアア!!!」
『シ、シ、シャヒャアアアアァアアアァァァアアガボギュッ!!!?』
短剣が突き刺さったままの脳天に、アホほど威力の増した大槌を思いっきり叩きこんだ。
悲鳴を上げながら、大槌を受けた瞬間変な声を上げて大蛇の頭が弾け飛ぶ。
毒を含んだ肉片が撒き散らされたが、アルマたち全員は影に避難済みなので問題なし。
生命力・魔力が全快する感覚。レベルアップしたということは、無事仕留められたようだな。合掌。
……一人だとあんなに苦戦してたのに、3人+1羽だとこんなにあっさり勝てるなんて。やっぱ、一人じゃ限界あるよなー。
「……みんな、お疲れ。ありがとな」
「お疲れ、ヒカル。無事でよかった」
「お、おっきなヘビだったっすねー。飲み込まれないかハラハラしたっす」
『コ、コケェ、コケエエェエ!!』
「ヒヨ子もよく頑張った。まさかあのヘビの攻撃を止めるなんて……ん?」
ヒヨ子の身体がみるみる大きくなっていく。
羽の色も鉄のような黒みがかった灰色から、より光沢の強い銀色へと変わっていく。
どうやら今の戦闘でレベルアップし、シルバーコッコへ進化したようだ。
「おおー、さらに大きくなったっすね」
「羽が、キラキラしてる。とても綺麗」
「ここまで大きくなると、元のサイズじゃ抱えるのが大変そうだな。……どうした? なんか元気ないみたいだが」
『コ、コ、コケェ……』
「あー、気力を使い果たして腹減ったのね。今弁当出してやるから腹いっぱい食べな」
『コケッ、……ピッ』
幼生擬態を使って、銀色のヒヨコへと身体を縮めるヒヨ子。
弁当を渡してやると、残像が見えるくらい凄まじいスピードで食い始めた。喉詰まらせるなよ。
「あっ! そういえばヘビの頭に刺した短剣、頭が砕けた時にどっか飛んでっちゃったっす!」
「……そういえば突き刺さったままだったな」
「探すの、大変そう」
「あ、俺は果実の回収任務があるから、そっちはよろしく」
「いやいやいや、ヘビの頭砕いたのカジカワさんじゃないっすか! 一緒に探してくださいよ!」
いやー、やっぱ仲間の力って偉大だわー。
この子たちがいなかったら、あのヘビ公を仕留めるのは無理だったかもしれない。
うん、アルマの言う通り一人で突っ走って無茶してもロクなことにならない。頼るべき時は積極的に力を貸してもらおう。
というわけで短剣の捜索は任せた。がんばってくれたまへー。
大丈夫大丈夫、なんか短剣の魔力がすごく強まってるみたいだしすぐに見つかるってーハハハー。
お読みいただきありがとうございます。
>巨大蛇がブレス吐くなら――
本編よりエグい発想してて草。
血液毒ならウナギみたいに食べられそうなものですが、肉自体が汚染されてますのでなんとも。革なんかの素材は極めて良質ですが。
>前々から思ってたけど、この世界のモンスターって妙に利口――
『スキルを使用する』という行動が本能にまで刻み込まれているうえに、それらを使いこなそうとする知能くらいはあるようです。故に人間臭い。
哲学してるモンスターは、現時点で強いて言うならブラックドラゴンでしょうか。正確には魔獣ではないのですが。
>ほぼ全ての魔物を食料にしか見えてない男――
さすがに虫なんかは食べるの抵抗あるんじゃないでしょうか。というかそんなもん食べてるシーン書きたくない(;´Д`)
毒物を珍味と言いながら食べることはあるかもしれませんが、仲間にふるまえないのが残念なところ。




