大蛇ブレス
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ヒカルが毒の森に入ってから、もう1時間近くになる。
待っている間に魔獣が襲ってくるかと思ったけど、毒の森に近いからかまったく襲ってくる気配が無い。
奥からこちらにくる個体もいないのは、多分ヒカルが通った後を魔獣が避けているからだと思う。
「……カジカワさん、大丈夫っすかね」
『ピィ……』
「きっと、大丈夫。さっきから何度か爆発音が聞こえるけど、魔力もスタミナもほとんど減ってないみたいだし」
「むしろ、爆発音が聞こえるたびに魔獣の魔力が消えていくのが感じ取れるっすね…… っ!? カジカワさんの近くに大きな魔獣の魔力を感じるっす!」
「……この間のカニくらいの大きさの魔力。ダンジョンで見たワーム……違う、もっと長い」
「いや、なんなんすかこれ……!? 長すぎるし大きすぎるっすよ!」
大きなワーム、あるいはヘビ型の魔獣だろうか。
海の上で戦った時はヒューラがいたから安全に倒せたけど、単騎でこのレベルの魔獣に挑むのはこれが初めてのはず。
……大丈夫だって信じたいけど、やっぱり心配。
「もしも危なそうだったら、自分が影潜りで回収するっす! 影の中だったら毒も入ってこないだろうし、一瞬だけなら多分大丈夫っす!」
「うん。その時は、魔力が足りなくなると危ないから、私も一緒に行く」
『ピピッ!』
一応、事前に『ヤバそうだったら助けを求める。万が一そうなったらなるべく長居はするな』って言ってたから、助けに行くこと自体は間違いじゃない。
でも、タイミングを間違えるとかえって足手まといになりかねない。助けに行くかどうか、慎重に状況判断をしないと。
~~~~~カジカワ視点~~~~~
『シュルルラァァァア……!』
大蛇がこちらに向けてシャーシャー叫んでいる。
発声器官が弱いのかあまり大きな声は出ていないけど、それでもあのサイズの魔獣に敵意を向けられると結構なプレッシャーがあるな。こわ。
『シャァアッ!!』
! 胴体をくねらせ振り回して、まるで鞭のようにこちらに叩きつけようとしてきた。
≪大蛇スキル技能Lv4【大蛇鞭】 鞭術スキルの【魔鞭】同様、攻撃が命中した際の衝撃を増幅する技能≫
ギリギリまで引き付けて、回避。派手な音を響かせながら木々ごと地面を抉り、爆ぜさせた。
撒き上がった土埃でこちらを見失ってくれないかと期待しての行動だったが、目が利かずとも的確にこちらの位置を認識しているらしく、次々と追撃してくる。
そういえば、ヘビには獲物の体温を感知する器官だかなんだかがあるんだっけ? あと鼻とは別に口を開いて匂いを嗅ぎ分ける器官とかもあるとかなんとか。
マンガの知識だけど、なんでも覚えておくもんだな。……ちょっと、実験してみようか。
まず俺の体温を隠すために、魔力で身体を覆って微妙に冷気を纏わせる。冷たくし過ぎると不自然になるからほどほどに。
で、魔力に生命力と気力をブレンドして、辺りの土埃を取り込ませてデコイを作る。
デコイの魔力をほんの少し熱エネルギーに変換し、人肌温度のナニカが動いているように誤認させる作戦だ。
俺と魔力デコイ、反対方向へ同時に逃げたら、どっちを襲う?
『シイィィィ……シャァァア!!』
結果。両方を狙ってきました。
ふむ、この防毒スーツのせいで匂いが制限されてるはずだが完璧ではないようで、熱を感じなくともこちらもしっかり認識できてるっぽいな。
魔力デコイのほうは匂いが無くても熱だけは感じとれるから、とりあえず両方やっとこうみたいな感じで攻撃してるようだ。
ヘビからしたら急に獲物の熱と匂いが分かれたから、ちょっと困惑しているようだが。
ヘビの攻撃でデコイが潰されたが、無駄無駄。
元々決まった形の無い魔力の塊を物理攻撃で潰そうが斬ろうが意味は無い。
『シィィッ? シャァァァアッ……!』
潰された魔力の塊を再びデコイとしてウロチョロさせると、苛立った様子で再びデコイを攻撃し始めた。だから無駄だっつの。
んー、思ったよりも効果的でちょっと楽しくなってきた。
魔力デコイをさらに増やして撹乱するのも面白そうだが、それだと匂いだけの俺がかえって目立っちまうな。どうするか。
あ、そうだ。
アイテム画面から、俺の着ていた古着をいくつか取り出して魔力を纏わせて操作。
さらに魔力デコイを何体か追加。数が多いから単調な操作しかできないが、囮役としては充分だろう。
『シャアアァァアア!?』
急に匂いと熱反応が増えて困惑した様子を見せたが、すぐに殲滅しようと胴体を振り回して攻撃してきた。
尻尾の先から頭まで、自由自在に動かして複数のデコイを攻撃しているが効くわけねーだろばーかばーか。
あんだけ暴れまわってよく絡まらないな。そこはギャグマンガみたいにボケてもええんやで?
いくら圧し潰してもすぐに復活するデコイたちに夢中になってる隙に、さっさと先に進むのが吉かな。
食える魔獣ならともかく、毒まみれの肉なんか文字通りうまみが無いし。経験値は惜しいが。
……あれ? なんか、大蛇の口にとんでもない量の魔力が集中してませんかね? 気のせい?
いやコレ気のせいじゃないやばいやばい絶対ヤバいやつだコレ!
≪竜族スキルLv1技能【スタンダード・ドラゴンブレス】 口から圧縮した高密度の魔力を放出し、広範囲を破壊する≫
ゴウッ と大蛇の口が一瞬光ったと思ったら、まるで怪獣映画の破壊光線のような魔力の波動が口から放たれたのが見えた。
「おわああああぁぁぁああああっ!!?」
あまりの迫力に思わず叫び声を上げてしまった。
待て待て待てふざけんな! 今の一撃で森が何haか更地と化してんじゃねーか! ゴ〇ラの世界へ帰れ!
さっきのブレスに魔力デコイと古着デコイが巻き込まれて、全て霧散してしまった。
物理攻撃は効かないけど、魔力攻撃は別だし当然か。
『シャアアアアァァアア……!!』
デコイが全て消滅したことで、俺が本体だと気付いたらしい。
こちらを睨みながら、再びブレスを放ち確実に仕留めるために魔力を頭部に集中させ始めた。
そうは問屋が卸しませんぜ、ヘビ旦那。
全速力の魔力飛行で、大蛇の頭部まで急接近!
アイテム画面から爆裂大槌を取り出し、ヘビの頭部めがけてぶん回す!
「おらぁっ!!」
『シャウッ…!』
……っ! 頭を引いて避けやがった!
しかも頭に魔力を集中させるのを途中で中断し、魔牙・遠当てを放ちつつ、尻尾で槍のように刺突攻撃を連続で放ってきた。
スキル技能のキャンセルなんかできるのかよ!? このレベルの魔獣、どいつもこいつも芸達者すぎだろ。人間顔負けですやん。
一発一発は耐えられないことはないがいかんせん数が多い。
しかもこの遠当て、【ポイズン・タスク】っていうマスタースキルの影響でガードの上からでも生命力を削ってきてやがる!
いつまでもこんな攻撃捌ききれないぞ!
あっ。
攻撃を受け続けている途中で、胴体に嫌な感触。
まずい、尻尾が俺の身体に巻き付いて、拘束されるカタチになった。
このまま絞め殺す気か? だがこの程度じゃ俺の身体を締め上げるには力不足―――
え、おい、なんでブレスの準備してんの?
まさか、自分の尻尾ごと吹き飛ばす気か……!
『シャァァアッッ!!!』
躊躇なく、自分の尻尾に向かってブレスを放つ大蛇。
自らの身体のダメージすら度外視した、だがこのうえなく有効な攻撃方法。
ダメージを無視すれば確実に相手を仕留められる、完璧な戦術だな。たかが魔獣と御見逸れしたよ。
相手が俺じゃなかったら、の話だが。
『シャギャアアアアア!!?』
大蛇が絶叫を上げる。
自らの尾をブレスで焼いた激痛からかな。まあ覚悟を決めてても痛いもんは痛いか。
だが残念。お前がブレスを浴びせたのはお前の身体だけで、俺には傷一つない。
ブレスが放たれる直前に俺の全身に魔刃改を纏わせて、絡みついてる尻尾を切断して脱出したからな。
さて、随分好き勝手してくれたな。
このまま先に進もうとしてもまた襲いかかってくるだろうし、そうじゃなくてもアルマたちのほうに向かったりしたら最悪だ。
だから、ここでキッチリ仕留めさせてもらう。いくぞヘビ公。
あ、なんか尻尾が焼けてちょっと香ばしい匂いがする。
食えないのに美味そうな匂い漂わせやがって。腹減ってきただろうが。
お読みいただきありがとうございます。
>ふぐの卵巣といいこんにゃく芋といい、何故毒のあるものを――
極々単純に、美味いからでしょうね。こんにゃくは旨味ないけど。
というかフグの肝や卵巣食べたことないけどどんな味なんでしょうか。養殖物なら毒は無いらしいですので食べてみたいですね。
>テンションが食欲と直結している男!――
まあ異世界の娯楽といったら三大欲求が主でしょうし無理もないでしょう。
元々食いしん坊だったのかもしれないけど、最近〇リコ化しかかってる気がしないでもない。
>なんかもうヘビ公の行く末が見えてるんですが……。――
どうなるかは次回あたりで分かるんじゃないかと。
腐っても竜族スキル持ちですので、そう簡単には終わらない、といいなぁ。




