おかわり
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魔獣の襲撃が始まってからおよそ30分。
サメ型の魔獣はほぼ全滅。何匹かは戦意喪失したのか逃げてった。貴重なフカヒゲフンッ 経験値がー。
クジラ魔獣3頭は斧使いの赤髪バーバリアンことヒュームラッサが単騎で殲滅。
倒すよりも解体してアイテムバッグに詰め込むことに手間をくっていた。
さすがに全部は入りきらなかったのか、1頭分は置いていったようだ。まあ他の魚の餌になるだろうし、無駄にはならんだろう。
で、俺はアルマとレイナが仕留めたフカヒレもといサメ型魔獣の死骸を回収。
ヒレだけじゃなくて牙なんかにもそこそこ価値があるらしいから、これも資金の足しにはなるだろう。
回収し終えると、【天駆】を使う振りをしながらアルマとレイナを抱えて甲板まで帰還した。
「二人ともお疲れ。まさか二人とも水の上を走ったり滑ったりできるようになってたなんて、ビックリしたよ」
「水の精霊の力を借りられるようになったから試してみたけど、すごく便利。海の上でも存分に戦える」
〈ちのせいれいたちが『こいつらやばい』っていってたけど、なっとくだわー……〉
〈あっちこっちめちゃくちゃはやくいどうするもんだから、しぬほどいそがしかった……〉
〈そのぶん、まりょくをいっぱいもらったけどな。うめぇわ〉
「魔力にも美味い不味いとかあるのか?」
〈あるぞー。としくったじじいのまりょくなんかはまずくてやるきでないけど、ねえちゃんのはなんかしんせんでうまい〉
〈てか、けいやくもしてないのにふつうにはなしかけんなよ。どうなってんだよあんた……〉
〈こわいわー。このおっさんこわいわー〉
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てかオッサン言うなし。まだ25だっつってんだろ。
「ふふふ、忍術スキルのレベルが上がるごとに徐々に使える忍具も増えてきたっす。それとは別にスキル技能も色々使えるんすよー」
「水蜘蛛を投影した以外になんか使ってたっけ?」
「……あっさり終わっちゃったから、使う機会が無かったんすよ」
せっかくの新技能を披露できなくて、ちょっと残念そうな表情のレイナ。
そのうち嫌でも使うことになるだろうし、そう落ち込むなよ。
お、赤髪バーバリアンさんが帰ってきたな。
長いし略すか? 赤ババアゲフンゲフン もとい赤斧さんと呼ぼう。
「お疲れさん! お嬢ちゃんたち、若いのにやるじゃないか!」
「お疲れ様っすー。そっちも、あんな大きなクジラを軽々と仕留めてて凄かったすよ!」
「斧を振るっただけで、クジラの攻撃も身体もバラバラになってた」
「ははっ! あんなもん、デカいだけのこけおどしさね」
随分フレンドリーに話しかけてきたな。コミュ力高そう。
そして特に怖がったりせずに応対するレイナとアルマもコミュ力結構高いと思う。
「おっと、自己紹介が遅れたね。アタシはヒュームラッサ、ソロの冒険者さ。ヒューラって呼んでくれよ」
「自分はレイナミウレ。略称はレイナっす」
「アルマティナ。アルマと呼んでくれればいい」
「ところで、なんでヒューラさんはソロなんすか? あれだけ強ければ、どこのパーティにいっても即戦力でしょうに」
「戦い方を見てたら分かるだろうけど、アタシは戦闘になるとどうにも相手以外に目がいかなくてね。他と連携するのがものすごく下手くそなのさ」
「というか、大抵の相手なら一人でも問題ないくらい強いから?」
「あー、それもあるねぇ。半端に腕っぷしが強くなっちまったせいで、最近じゃ喧嘩の相手にも事欠くようになっちまってさぁ。さっきのクジラじゃ軽い運動ぐらいにしかなりゃしないよ」
あれを軽い運動と申すか。
魔獣草原で出会ったイケおじは仲間との連携能力が高かったけど、この人は個人での戦闘力に特化しているみたいだな。
一口に冒険者と言ってもその生き方は人それぞれなんだなー。
「随分息の合った様子だったけど、アンタたちコンビなのかい?」
「コンビっていうか、同じパーティの仲間なんすよ」
「リーダーは、あっち」
赤斧さんに質問されて、こっちを指さす二人。
そしてこちらを胡散臭そうなものでも見るような目で見る赤斧さん。そんな目で見ないでほしい。
「……リーダー? アンタが?」
「初めまして。『希望の明日』というパーティのリーダー兼炊事担当兼荷物持ちの梶川光流と申します。で、こっちが新人もとい新獣のヒヨ子です」
『ピッ』
「いやそれ単なる雑用担当じゃないの? てか新獣ってそのヒヨコもメンバーなのかい……?」
「ですね。いやー、最近はこの子たちが強すぎて私なんかが戦う機会はあまりないんですよねーハハハ」
「「いやいやいや」」『ピィピィピィ』
アルマとレイナとヒヨ子が声をハモらせながら手を振っている。
いや嘘は言ってないでしょ? 今回みたいな場合は、レベリングのためになるべく他のメンバーに戦ってもらうことばっかだし。
「言っちゃ悪いけど、全然強そうに見えないねぇ。それでなんでリーダーなんて呼ばれてるんだい?」
「あー、ヒューラさん。この人、普段猫かぶってるだけなんすよ」
「ヒカルがリーダーなのは、まとめ役として一番適任だから。……私たちの中で一番強いからでもあるけど」
「…ふーん。なあ、アンタ。ちょっとこの後手合わせ――」
赤斧さんがなにかを言いかけた時、クジラの死骸あたりからまるで火山の噴火のように水飛沫が吹き上がった。
その衝撃と波が船を揺らす。一瞬、海底火山の噴火でも起きたかと思ったが、違う。
クジラの死骸の方から、凄まじい生命力と魔力を感じる。といっても、クジラのじゃないな。段違いにこっちの方が強い。
「な、なんなんすか、アレは……!?」
「大きな、カニ……?」
「……はっ、こりゃ驚いたねぇ……!」
アルマとレイナは呆然として、赤斧さんは冷や汗をかきながらも笑みを浮かべ、水飛沫から出てきたものを眺めている。
出てきたのは、巨大なカニ。さっきのクジラのさらに倍近いサイズだ。
……怖いから見たくないけど、ステ確認しときますかね。
魔獣:オーシャンズ・ギガントクラブ
Lv74
状態:空腹(極大)
【能力値】
HP(生命力) :2512/2512
MP(魔力) :1651/1774
SP(スタミナ):68/998
STR(筋力) :1712
ATK(攻撃力):1712
DEF(防御力):2341
AGI(素早さ):878
INT(知能) :612
DEX(器用さ):347
PER(感知) :1200
RES(抵抗値):999
LUK(幸運値):134
【スキル】
魔獣Lv8 体術Lv10 極体術Lv7 甲殻獣Lv8 爪術Lv10 鋭爪術Lv7
【マスタースキル】
オーラ・ミティゲイション
リバイバル・クロー
わぁお。ダンジョン最深部で戦ったワームよりさらに強い。
特に防御力がヤバい。単純にみてもワームの倍以上は硬い。
そしてあのサイズ。規模の小さな攻撃じゃ、いくら高火力の技を当てても大したダメージは与えられないだろう。
「ぜ、全速離脱ぅぅぅうう!!」
「セイントヴェールの出力を最大まで上げろっ! こっちに目を向けられたら終わりだぞぉ!!」
「クジラの死骸を喰ってる間に逃げるんだぁぁああっ!!」
大ガニを見た船員さんたちが大慌てで離脱しようと駆けずり回っている。
カニは今のところクジラの死骸を食べてるけど、あれだけで足りるかな。スタミナの残量を見る限りじゃ、満腹にはほど遠そうだが。
多分、残りのクジラの死骸を餌に撒いても足りないだろう。
「アレを喰い終わったら、今度はこっちを食いにくるだろうな」
「も、もしも逃げるのが間に合わなかったらおしまいっす!」
「ああ。だから、スタミナが回復しきらないうちに仕留めるぞ」
さーて、いよいよ実戦で『アレ』を使う機会がきたか。
あれだけの巨体と防御力をもつ相手に通用するかどうか分からないが、やるだけやってみよう。
……もしも、ダメだったらファストトラベルで全員脱出することも考えておかないとな。
「……へぇ。さっきまでナヨナヨの優男の顔だったのに、いざ戦いになると別人みたいだねぇ。怖い怖い」
アンタに怖いとか言われたくないんですがそれは。
「けど、アンタに独り占めさせるつもりはないよ。いいとこ見せたきゃ、アタシより先に仕留めてみなぁっ!!」
そう言いながら、再び【天駆】で空を駆けて大ガニに向かっていく赤斧さん。無理すんなよー。
さーて、俺も出遅れないようにいくとしますか。
……あのカニ、どうやって食べようかなーフフフフフ。
お読みいただきありがとうございます。
>主人公も多分水上走れるだろ、空飛べるのは――
はい、余裕で走れるでしょうね。というか正確には水の上を走るふりなら、なのですが。
あと某黒いライダーはパワーアップや危機を乗り越える理由が簡単すぎる。太陽光浴びただけで回復したりとか燃費良すぎやろ。
>主人公だったら海水に魔力通して、上から気力操作――
できますね。下手したらクジラの攻撃よりコイツの攻撃の余波で船がヤバいまである。




