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もうアイツだけで充分じゃないかな

新規の評価、ブックマークありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。



ドゴォン ドゴォン と船に何かがぶつかる音と、振動。

船を囲んでいるサメ魔獣どもが、船体に体当たりをしているようだ。



「お、おい、やべぇぞ! このままじゃ船底に穴が開いちまう!」


「船底は特別頑丈に造ってあるが、こんな勢いで何度も突っ込まれちゃ耐えられないぞ! 応戦しろ!」


「乗客の中に戦闘職の方はいらっしゃいますか!? お願いします、どうかご協力を!」



お客様の中にお医者様はいらっしゃいますかみたいに言うなや。

あーあー、大騒ぎだな。まあこんなパニックムービーみたいな状況なら無理もないか。



「とりあえず、魔法で遠距離攻撃してみるか?」


「……思ったより海面まで距離がある。当てられるか微妙かも」



そう言いつつ、アルマが回転を加え貫通力と速度を強化したストーンバレットを甲板から放つ。

しかし、予想していた通りサメ魔獣たちは放たれた石弾を難なく躱していく。



「んー、もうちょっと下側の窓から撃ってみようか?」


「それだと時間がかかる。なら、近接攻撃で手っ取り早く仕留める」


「え? ……お、おい、アルマ!?」


「アルマさんっ!?」



遠距離からの魔法では当てるのが難しいと見て、なにを思ったのか甲板から飛び降りおった。

ってちょっと! アルマさんちょっとお待ちになって! ストップ! いやもう遅いわコレ!

いくらなんでも海洋生物の魔獣相手に水中戦なんか無謀すぎるぞ! あいつらLv40近いやつばっかだぞ!? 自殺行為だろ!



「【大地剣グランドブレード】」



落下中のアルマの持つ黒剣の剣身が、瞬く間に何倍にも巨大化する。

そして巨大化した剣で海面近くを薙ぎ払い、サメ魔獣を何体か切り捨てた。

だが、問題は着水した後にどうするかだ。あのままじゃサメの集団に海中まで引きずり込まれて喰われちまう!


危険な状況に陥る前に、魔力飛行でアルマを救出しようとしたが

その時、不思議なことが、起こった。



アルマが水面に着水したかと思ったら、そのまま水面をまるで地面を踏みしめているかのように、走り出したのが見えた。



……は? え、なんやあれ。

アレか、左足が沈む前に右足を前に出して右足が沈む前に左足を出してーって感じで水上走行してるのか? そんなアホな。重力はどうした。


≪否。精霊魔法スキルLv2【ミニニンフ】 水属性の精霊を召喚・使役する技能で、精霊に魔力を譲渡し海中に沈まないように指示を出している模様≫


……ああ! そういえば精霊魔法のスキルが上がってたっけ。それで新たに水属性の精霊を使役できるようになったのか。

あれなら陸で戦うのと大差ない立ち回りで戦えそうだな。……人のこと言えた義理じゃないけど非常識だこと。



「水の上を走ってるっす……」


「す、すごいなあれ。精霊魔法って、あんなこともできるのか」


「自分も行くっす!」


「え、お、おい! お前は精霊魔法なんか使えないだろ!?」


「だいじょーぶっすー!」



なにがだよ! アレか、泳ぎが達者だってか? だからサメ相手に水中戦なんか無謀だっつってんだろ!

とか言ってるうちに、レイナまで海面にダイブしおった。さすが蛮勇者。後先考えねえなオイ!

……って、今度はなんだ? レイナの足に、いつの間にか板状の骨組みみたいなのが装着されてるぞ? なにアレ?


≪忍術スキル【忍具投影】で創り上げた装備『水蜘蛛』。水面を滑るように移動できる忍具で、魔力操作によりさらに自由自在に移動可能≫


……ウチの子たち、海の女の素質あるかも。いや一切泳いでないけどな。

アルマもレイナも次々とサメ魔獣たちを蹂躙していく。【伸魔刃】や【魔刃・遠当て】あるいは攻撃魔法を使って水中にいるサメも問題なく排除しているようだ。

……俺いらなくない? もうあの二人だけで充分じゃないかな。


≪……離れて指示を出している大型魔獣はLv50以上のため、現在のアルマティナ及びレイナミウレでは討伐は厳しいと推測≫


ああ、そういえばまだデカブツが3体残ってたっけ。クジラみたいなの。

大体体長15mくらいか? あれだけデカいとアルマの強化した【大地剣】くらい大きな攻撃じゃないと効果が薄いだろうな。

でもこないだのワーム戦みたいに魔力不足にでもなったらそのまま水没しちまうし、3体相手はきついか。



……ん?



「やるな、お嬢さん方。さぁて、若いのが頑張ってることだし、あのデカブツくらいは仕留めておかないとなぁ!」



横から、誰かの声が聞こえた。



声の方を向くと、そこには赤髪ウェーブの長い髪に、健康的な褐色肌に少々筋肉質な体躯の長身女性が、大きな斧を背負いながらクジラ魔獣を見据えていた。


……いつの間に横にいたのやら。てか、魔力と生命力凄いなこの人。対魔族軍の金髪ロングの青年と互角以上だ。

ちょっと勝手にステータスを確認すると、なんとLv64。年齢は30……失礼。筋力が素の状態で1100を超えている。

素早さと知能が他のステの半分以下だが、他は大体1000近くあるんですけど。

なにこのガチファイター。これまで見てきた人間の中でも5本の指に入るほどの実力者だ。


持っている斧も、攻撃力+650、さらに素早さ+400の付呪がされていて、弱点を補っているのが分かる。


女性の名前は『ヒュームラッサ』。魔獣討伐履歴の実績を見る限りじゃSランク目前のAランク冒険者ってとこか。乗客にこんな人までいたのか。気付かんかった。



「いくぞぉ! クジラ肉なんて久しぶりでワクワクするなぁ!」



そう叫びながら、空を駆ける技能【天駆】と高速移動技能【クイックステップ】を組み合わせ、あっという間にクジラに向かって距離を詰めていく。

速いなぁ。縮地じゃなくてクイックステップであの速さか。装備品の補正の影響も大きそうだが、魔力や気力の直接操作なしであの動きは凄いわ。


とか眺めながら感心していると、クジラ魔獣たちから水飛沫、いや水の弾丸が赤髪ことヒュームラッサに放たれた。

弾丸だけじゃない。レーザーみたいに圧縮された水鉄砲や、水の斬撃が同時に襲いかかってきている。弾幕STGかな?

大丈夫なのかあれ。撃ち落とされないか?



「はっはっはぁっ! 温ぃよ木偶の坊どもがぁ!!」



余裕の態度でクジラたちを嗤いながら、斧を思い切り振り回す赤髪。

たったの一振りで水の弾幕が真っ二つに切り裂かれた。なにこれこわい。



「まずはてめぇだぁ!!」



グルグルと縦に回転しながらクジラに向かって落下していく。

クジラがさらに水の弾丸を浴びせかけるが、全て回転する斧の刃に弾かれ、切り裂かれてダメージを与えられない。


そして、そのままクジラの一体が胴体真っ二つに容易く切り裂かれた。

攻撃がヒットする瞬間に、伸魔刃で攻撃範囲を拡大したのか。あれなら大型の魔獣でもザックリ斬れるってわけだ。

すごいなこの人。戦い方が豪快かつスムーズで戦いなれてるのが分かる。まさにベテランって感じだ。



「次はどっちだぁ? 死にてぇ方からかかってこいやぁ!!」



こっわ。戦闘狂ですやん。クジラたちも心なしか怯んでいるように見えるんですけど。

あれなら任せても大丈夫そうかな。じゃあ、俺はフカヒレもといサメの死体でも回収しますかね。


……アレ? ホントに俺いらなくね? もうあの人だけで充分じゃないかな。


お読みいただきありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[良い点] ヒロインたちもどんどん常識を捨て去ってるな…… いいぞ!このまま人外化して主人公の孤独を埋めるんだ! [気になる点] そういうことばっかしてるから舐められるのでは……? いやこいつが武器使…
2024/01/31 14:51 退会済み
管理
[一言] 主人公だったら海水に魔力通して、上から気力操作で強化した拳を叩きつければグラグラさせられそう。
[気になる点] 主人公も多分水上走れるだろ、空飛べるのは 秘密だけど魔力で足だけを覆えば…… [一言] >>その時、不思議なことが、起こった。 どこかで聞いたようなセリフだなー(棒) まるでご都合主…
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