勧誘
新規の評価、ブックマーク、感想をいただきありがとうございます。
お読みくださっている方々に感謝します。
「うむ! 美味であるな! カレーと聞いていたのでてっきりスープかと思っていたのだが、まさかアロライスにかけるソースとは!」
「ソースっていうか、ルーだけどな」
「匙が止まらん、おかわりだ! 大盛りで頼む!」
「お、俺もおかわり!」
「自分もっす!」
「私も」
「はいはい、多めに作ってあるから好きなだけ食べなさい」
はいどうも。久々にカレーライスを作ってふるまってみましたが、思ったよりずっと好評なようでなにより。
どっかのグルメ番組かなんかで、日本のカレーを海外の人に食べさせてみたら好評だったーとか言ってる裏で、実は口に合わなくて撮影後に吐いてたって話を聞いたことがあって、同じようなことにならないか心配だったが杞憂だったようだ。
おかわりの分も作ってあるから、実際は20食分くらいの量はある。もしも誰にも食べてもらえなかったら俺が全部消費するハメになってただろう。危なー。
「ドロドロのカレーをアロライスにかけて食う、か。まるで勇者の飯だな」
「え、勇者様もこんな食べ方してるんすか?」
「今代の勇者のことは知らんが、過去の勇者は大体そういう食べ方をしておったようだ。……見た目が悪いから、誰も真似しようと思わなかったらしいが」
「こんなに美味しいのに、もったいない」
「あと、過去の勇者は黒髪の者が多かったらしいが、そういやお前さんも黒髪だなぁカジカワ」
「そういえばそうですねーまあ偶然でしょうけどハハハ」
「……なんで露骨に目ぇ逸らしてんだ?」
過去の勇者は日本人が多かったのか? いや日本以外にも黒髪の多い国もあるだろうけど。
別に同郷だってことがバレてもデメリットがあるわけじゃないけど、変に悪目立ちする要素は伏せておきたいんだよなー。
「で、ジュリアン。例の大槌が完成したのはいいが、今後はどうするつもりなんだ?」
「うむ。マイ・カスタマー専門の武器屋と言えば聞こえはいいが、扱える者が一人だけではな。だが、マイ・カスタマーから注文された武器というか兵器というか……とにかくアレならば常人でも充分使えてなおかつ他にない成果をあげることができそうだ」
「ふむ、まだまだ作りたいものがありそうだな」
「ええ。ほとぼりが冷めるまであまり目立つことはできませんが、いつか名を変えてでも再び出直そうと考えております。それまで、どうか我を工房に置いてやってください」
「まあ別にいいけどよ、どんなもんを注文されてんだ?」
「……例えばですな……」
「……うわ、なんだそのエグい発想は……」
「そいつぁ、ちっと共同で作りたくはねぇなぁ……。武器というより魔具の側面が強いうえに、持ち手を選ばんじゃないかソレ……」
いくつか俺の提案した武器や魔道具の説明をするジュリアン。
それを聞いてるゲンさんとヒグロさんの顔がみるみる引き攣っていく。
そんな顔せんでも。あの大槌に比べたらまだマシな発想だろうに。
で、翌日の朝。
爆裂大槌の扱いに慣れるためにも、今日も今日とてレベリングに向かいます。
なんか魔獣山岳でのレベリングにも飽きてきた感じはあるが、まあ地力をつけるためだしじっくりと続けていこう。
「そこの3人組、少しいいか?」
「……はい?」
とか思いながら魔獣山岳に向かっているところで、誰かが後ろから話しかけてきた。
振り向くと、そこにはなんとも見慣れない軍人というか騎士のような風体の壮年男性。
白の混じったブロンド短髪で、顔や手に傷跡がいくつも見られる。体格もデカい。かなりの筋肉質だ。
横には冒険者と思しき青年が二人。
片や長い金髪で、一見だるそうにしながらもこちらを見る視線に隙が無い。手練れだな。
というか、ぶっちゃけこの3人のなかで一番強そうだ。
もう片方は銀髪のポニテで、なにやらこちらを睨んでいるようにも見える。どしたの?
……この人たちどなた? なんか用なの?
「あの、なにか御用で?」
「少し確認したいことがあってな。お前たち、つい最近この近くのダンジョンを踏破したという3人組のパーティ『希望の明日』ではないか?」
「え? アッハイ」
なんかいきなり自分のところのパーティ名を言われて思わず生返事してしまった。
しまった、相手がどんな人かもわからないのに肯定なんかするんじゃなかった。
「おいおい、予想してたより随分若いな。特にそこの女の子、本当に成人してるのか?」
「してるっすよ!? なんすかいきなり失礼な!」
「ああ、ごめんごめん。もしかしたら、そっちの黒髪の男に無理やり連れられてるんじゃないかと思ってしまっただけで、悪気はないんだ」
俺を睨んでた方の銀ポニテ青年がなんかレイナに謝ってるけど、それはそれで俺に失礼じゃね? 別にいいけど。
「自己紹介が遅れたな。我々は王国直下の対魔族軍に所属するもので、私は第5部隊隊長のヘイゲルダラーという者だ」
「ジャングラジマーでぇす。ヨロシク」
「ナクラムラダです。よしなに」
隊長のおじじがヘイゲルダラーさん、金の長髪チャラ男がジャングラジマーさんで、未だにこっちを睨んでる銀髪ポニテがナクラムラダさんね。
対魔族軍って言ってたけど、俺らになんか用なの?
「なんの用か、と言っていたな。簡潔に言おう。……我らの軍に入ってもらいたい」
「……はい?」
……会って間もないのにいきなりなにを言ってきてるのかなこのおじじは。
スカウトするにしてもこういうのはもっと手順を踏んで話を進めるべきでは?
「いや隊長。いきなり軍に入れとか言われても訳分かんないでしょ。スカウト下手すぎですよ」
「遠回しにまどろっこしい言い方をしても時間の無駄だろうが」
「今みたいな言い方で軍に入りたいと思う人なんかそうそういないと思いますけどね。ほら、お三方ともすごい怪訝そうな顔してるじゃないですか」
金髪青年が呆れたように隊長にツッコミを入れている。
この中で一番チャラそうに見えるけど、実は常識人枠なのかな。
「あーごめんねぇ。まずは順を追って説明させてもらいたいんだけど、今、時間いいかな?」
「はぁ……」
正直、今すぐ逃げ出したい。面倒事の予感しかしないもん。
でも聞かなかったら聞かなかったでまたトラブルの元になりかねないし、聞くだけ聞くとしようか。…メンドクサー。
「まず、最近魔族が世界各地で暴れまわってるのは知ってるかな?」
「ええ、まあ」
知ってるどころか実際ヴィンフィートで魔族を何人か殺ってます。
それ言ったら絶対話がややこしくなるから言わないけど。
「で、それに対抗するための軍を急遽編成することになってね。正規の王国軍だけじゃ手が回らないから、こうやって色んな人に声をかけて回ってるってわけ」
「はぁ」
「誰彼かまわず声をかけているわけじゃないよ? 君たちみたいにダンジョンを踏破した実績があったりとか、魔族を討伐したことがある実力者とか、いわゆる精鋭に相応しい人材がほしいのさ」
「……それはどうも」
こんなふうに会って間もない人に褒められても簡単に信用できないなー。
相手を褒めちぎっておいて、いざ現場に配属されたら無能だの未熟者だの言われて潰された人を何人も見てきたし。
「まあいきなり軍に入れーとか言われても抵抗あると思うし、今すぐ結論を出せとは言わないけど、加入してくれるのを待ってるよーってことを覚えておいてくれればいいよ」
「おい、私の話を聞いていなかったのか? なんとしてでも軍に入れろと――」
「この隊長は堪え性ないうえに口下手だし顔は厳ついしで印象最悪だろうけど、オレみたいなのでもある程度自由に行動できるし、まあよかったら考えておいてよ」
「は、はあ……」
「上司に向かってその言い草はなんだ! あと、顔は関係ないだろう! 貴様、いったいなんのつもり、ってどこへ行くつもりだ! 腕を引っ張るな! おい!」
「それじゃあ、またねー」
……なんか言うことだけ言って、文句を言ってる隊長さんを引き摺りながらどっか行っちゃった。
なんや今の。なんだあの金髪さんは。
そしてそれを追いかけていく銀髪ポニテが、去り際に殺気混じりの視線をこっちに一瞬向けてたけど、俺なんかしたの? 身に覚え無いんですけど。
「……今の、なんだったんだろう」
「さあな。対魔族軍への勧誘っぽかったけど、強制的に加入させたりするつもりじゃあないのかな」
「でも、あの隊長のおじさんは『なんとしてでも軍に』とか言ってたっすよ? それを無視して金髪の人が話を切り上げたように見えたっす」
「隊長は厳しそうに見えたけど、あの金髪の人はなんだか話しやすそうだった」
「相対的にだろ。あの人だけだったら逆に怪しく感じてたと思うぞ」
「あと、銀髪の人はなんでカジカワさんを睨んでたんすかね? なんか恨みでも買った覚えでも?」
「ない。今さっき会ったのが初めての対面だよ。大方、レイナやアルマを年が離れてる俺が連れて歩いてるのを見て、内心あの青いのみたいに勝手に俺を悪者にしてるんじゃないか?」
「あー、港町でも誤解されて悪者扱いされてたっすね」
「あるいは単に可愛い子連れてる俺が妬ましかっただけかもしれんが」
「……そう?」
どっちにしろ、いわれのない理由で敵意を向けられるのはあまりいい気分じゃないな。
……メニュー、さっきの3人、念のためマーキングしといてくれ。
≪了解≫
~~~~~~~~~~
「どういうつもりだ! なんとしてでも軍に加入させろと言ったのを忘れたのか貴様は!」
「いやー、だから軍に入ってくれそうな見込みが一番ある方法をとったつもりなんですがねぇ?『つべこべ言わずにいいから入れ』なんて言っても不信感を持たれるだけだったでしょうに」
「貴様の腕なら、その気になれば腕ずくで強引に連れていくこともできただろうが!」
「……なあ隊長。アンタ、サシでどれくらい強い魔獣と戦える?」
「なにを言っている!? 話を逸らすんじゃない!」
「大事なことなんだよ。いいから答えろや」
「うっ……! な、なにが言いたいのか分からんが、サシならばLv40台の魔獣くらいならほぼ確実に倒せると自負しているが」
「あのニイちゃんの横にいた黒髪の女の子、日常的にLv40台の魔獣を単騎で20匹以上狩ってるみたいだぜ?」
「なっ!?」
「金髪のおチビちゃんもLv30台の魔獣を何匹も狩ってて、肩に乗ってたヒヨコも同じくらいの強さだった。もうこの時点でオレやアンタの手に余るでしょ。伊達にLv60以上の魔獣を狩ってないってことでしょうねぇ。なんなら、鑑定証明書でも作りましょうか?」
「そ、そこまでの強さだと……!?」
「……つまり、さっきのパーティは少女たちこそが実力者であり、リーダー面している男はお飾りということか……やはり、ロクでもない奴のようだな……!」
「バカかお前。そんな役に立たねぇ目ん玉ならくり抜いて、代わりにそのへんに落ちてる石でも埋め込んどけ」
「……何が言いたい」
「あの中で一番ヤベェのはあの黒髪のニイちゃんだっての。まだLv43なのに全ての能力値が900半ば以上、おまけにスキル欄に取得不可なんて表示されてたぜ」
「きゅ、900半ば以上!? しかも全ての能力値がだと!? そんな馬鹿な!」
「取得不可……? スキルを扱えないということか?」
「多分な。……なのに、なんでLv50以上の魔獣を毎日のように狩ってる履歴があるんだろうな」
「す、ステータスを誤魔化してる可能性は?」
「ありえなくはねぇけど、ダンジョン踏破の実績までは誤魔化せねぇだろ。表示されてる数値以外になにか隠してるんじゃねぇの?」
「……念のため、奴らについて情報を集めておくとするか」
「というか、勧誘する前にまずそっちの方が先でしょ。下手に逆鱗に触れて敵対でもしようもんなら絶対に負けるわありゃ」
「……ありえん、ありえんぞ、そんなこと……」
「信用するかどうかはアンタらの自由だ。オレは自分の鑑定結果と直感を信じるよ」
「……貴様は態度は悪いが、その腕と目利きだけは信用している。ここは慎重に事を運ぶべきか…」
「あのような、冴えない男が私たちより強い……? そんなはずはないだろう……!」
お読みいただきありがとうございます。
>もうあいつ(鬼先生)一人でいいんじゃないかな…
ぶっちゃけこの人、…人? が味方に付けば敵はほぼいないという恐怖。
夜に組手する以外には手を貸すつもりはないようですが。
>非常識度を加速させる所――
ええんか、良い点そこでええんか……?
山を3割消し飛ばした際にはアルマが精霊魔法で防御とかしてたんじゃないでしょうか。面倒何で描写してないですが。
魔王は別に目指してません。場合によってはぶちのめす対象にはなりえますが、積極的にかかわる気はないようで。
ここでコメント返信するのが最近なによりの楽しみだったり。
気が向いたら、気になる点や感じたことがございましたらお気軽にどうぞ。




