ネズミ、襲来
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ネズミどもの脅威を知らせるため、またそれらを迎え撃つためにファストトラベルで町へ移動。
すぐにネズミどもから逃げるように促すために、憲兵の詰め所へ連絡をした。
「Lv50近いボスを引き連れた、Lv30以上の魔獣が10体近くここへ向かっているだと!? 確かなのか!?」
「はい、申し訳ない話ですが、私たちが魔獣の巣を潰してからすぐにこちらに向かって移動を開始したようです。空間魔法で急いで戻ってきましたが、すぐに魔獣がここまでくるはずです。避難所などがあれば、すぐに皆を避難させてください!」
「分かった! お前たちはどうするつもりだ!?」
「魔獣を迎え撃ちます。巻き添えをくわないように、避難誘導を!」
話が済むと、すぐに街の警鐘が鳴らされて、憲兵たちが大声で避難指示を出し始めた。
こんな大騒ぎになってしまって、本当に申し訳ない……。
あのまますぐにネズミを追って、全部駆除していればここまでの騒ぎにはならなかっただろうが、万が一仕留めそこなったネズミが町まで侵入したらもっと大変なことになっていただろう。
最悪、無防備な生産職の人や成人前の子供が犠牲になる危険性もあったし、取り越し苦労になる可能性があっても安全第一で駆除を進めるべきだ。
「あの、この騒ぎはいったい……?」
魔獣を迎撃しようと準備を進めている俺たちに、フェリアンナさんが駆け寄ってきて、不安そうな表情で話しかけてきた。
「……フェリアンナさん、詳しいお話はまた後ほどお話しします。とにかく今は避難してください」
「こうしている間にも、魔獣が町に近付いています。急いで」
「で、ですが……」
「お母さん! 大丈夫、すぐに魔獣なんかやっつけるから!」
「……分かったわ。でも、お願いだから無理はしないでね……!」
「もちろん! お母さんも早く逃げて!」
心配そうにこちらを見ながら避難するフェリアンナさんを尻目に、編成を整える。
「俺とアルマは町の外から侵入してこようとする魔獣を迎撃。特にあのデカブツは絶対に侵入させちゃダメだ。基本、俺がデカブツの相手をして、アルマは取り巻きどもを可能な限り街の外にいる時点で仕留めてくれ」
「分かった」
「レイナとヒヨ子は町の中に魔獣が侵入してしまった時に、すぐに駆除してくれ。魔力感知を使いつつ影潜りやクイックステップを使えば移動に時間はかからないだろう。ただ、無理そうなら倒すことには拘らずに足止めに専念しろ」
「りょーかいっす!」
『コケッ!』
では、みっしょんすたーとー。
俺はアルマを抱えて縮地モドキで移動して、魔獣が侵入しようとしている方へ向かう。
「ひ、ヒカル、速い、怖い……!」
「ごめん、我慢してくれ。これでも大分速度は抑えてるから」
「抑えてる……? これで? う、うそでしょ……?」
「本気を出せばこれの3倍は速いけど、そこまで速いと制御が利かなくなるんだよなー。まあどうしてもやってほしいって言うなら――」
「やらなくていい、このままでいい……!」
さいですか。まあ俺も無駄に気力消費したくないしそう言ってもらえると助かる。
それにしても、こうやって町に侵入しようとする魔獣を討伐するシチュエーションはなんだかケルナ村のイノシシ退治を思い出すな。
あの時とは魔獣の強さが段違いだけどな。ジェットボア以上の魔獣が10体以上とか当時だったら絶望しかねぇ。
おっと、そろそろ魔獣の目の前だな。
まずはデカいので挨拶しますか!
「アルマ、山火事にならないように火属性以外の魔法で先制攻撃」
「分かった」
「その後はさっき言った通り、俺がデカブツを、アルマが他のネズミを随時駆除してくれ」
「うん。………はぁぁ……!」
指示通りにアルマが攻撃魔法を使って先制攻撃をする。
ん、岩の弾丸ってことはストーンバレットか。これなら火事にはならな……ん…?
あの、アルマさん? なんで岩以外に氷やら水やら風やら光やらの弾丸を準備してらっしゃるんですかね……?
「火属性は使えないから、それ以外の属性を使ってる」
「いや、それ以外の属性全部を使えという意味じゃなかったんだが……いや、もうこのままぶっ放しちまえ」
「ん、………はぁっ!」
……やる気満々なのにツッコむのも野暮なんでそのまま攻撃開始。
【二枚舌】を使えるようになってから、どうにも積極的に色んな属性を同時に使うように意識しているようだ。
『『『ピビャアアァァアッッ!?』』』
で、いきなり複数の属性の魔法が一斉に降りかかってきたネズミたちは、見ていて面白いほど混乱してくれた。
だが、さすがにLv30以上。強化されているとはいえ、遠距離からの攻撃魔法程度で全滅してくれるほど脆くはないようだ。
今の攻撃で死んだのはたったの2匹。
生き残ったネズミどもは多少の怪我こそ負ったものの、走ったりするのには特に問題は無いようだ。
デカブツに至ってはほぼ無傷。まあ当然と言えば当然か。
「アルマ、あとは手筈通りに頼む。無理はするなよ」
「うん。そっちも気を付けて」
『クグルルィィイイギギャアアアア!!』
デカブツが咆哮を上げる。威嚇のつもりだろうが、こちとら今更そんなもんでびびったりせんわい。
なんせここんとこお前の100倍は怖い鬼先生の攻撃を受けてるからな! かかってこいデカネズミ!
~~~~~アルマ視点~~~~~
『ピギャアアアア!!』
まず1匹。
『プゲギグャアアッ!!?』
2匹目。次。
『ビュビバアアア!!!』
これで3匹。
さっきは不意打ちで派手に広範囲を雑に攻撃したけど、ちゃんと狙いをつけて撃てば1つの属性の攻撃魔法でも充分仕留められる。
でもいかんせん数が多い。最初の半分程度は仕留められたけど、このままだと街の方に何体か侵入してしまう。
せめてレイナとヒヨコでも対処できるくらいまでは数を減らさないといけない。
『『『ビュビャアアアアっ!!』』』
「っ!」
いけない、固まってるといい的にされると気付いたのか、バラバラの方向へ分散し始めた。
せめてあと2匹は仕留めないと!
~~~~~フェリアンナ視点~~~~~
町の避難所に、町民の人々が密集している。
魔獣が町の中に侵入する危険性があると、憲兵の人たちは言っていた。
聞けばかなり凶暴な魔獣で、町の戦闘職の人たちでは手に余るくらい強いとか。
そんな魔獣を相手にして、レイナは大丈夫なの……?
お願いします、神様、どうか、どうか、レイナにはあの人のような目には遭わないように、御加護を……!
「お、おい! 誰かアンヴィとマルティを見なかったか!?」
「い、いや、見てないが、アンタと一緒に避難したんじゃなかったのか!?」
「さっきからずっと探してるんだが、どこにもいないんだ!! おーい!! アンヴィッ! マルティィ!!」
……!?
まさか、まだ避難していない子供がいるの……?
「くそ! 世話焼かせやがって! 待ってろよ!」
「お、おい! どこ行く気だ! 魔獣が入ってくるかもしれねぇって聞いてんだろ!?」
「だからこそ探しに行ってやらねぇといけねぇだろが! あいつらはまだ成人前のガキなんだぞ!?」
「ダメだ! 探しに行ったらあんたの身も危ないんだぞ! もしかしたらこっちに向かってる最中かもしれない。気持ちは分かるが待ってた方がいい!」
まだ避難していない子たちを探しに行こうと、男性が避難所から出ていこうとしている。
……我が子を案じる気持ちは痛いほど分かる。でも、今の状況では余計な混乱を招くことになる。
レイナ、あなたの身が心配です。その気持ちに嘘はありません。
でも、一つだけ、お願いをします。
我が子を心配しているあの男性のためにも、その子たちを守ってください……!
お読みいただきありがとうございます。




