故郷へ
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パーティ全員の意見を聞いた結果、工業都市近くにある【ディオルゴ】という町へ害獣退治の依頼がてら向かうことに。
他にも行ってみたい場所があるにはあったけど、なんでもその町はレイナの故郷なんだそうな。
レイナのお袋さんを安心させるためにも、行くならここがいいと満場一致。そうと決まればはよ行くべ。
「よ、よかったんすか? 自分の行きたいところを優先してもらって……」
「いいのいいの。どうせ今のところ特に目的地があるわけじゃないし」
「お母さんに早めに会って、安心させてあげた方がいい。きっと、すごく心配してるだろうし」
「あ、ありがとうっす……!」
「……まあ、自分の娘がもう中堅職までレベルが上がってるなんて聞いたら、どんだけ無茶してんだって別の意味で不安になりそうでもあるが」
「そ、そうっすかね……」
というわけで、ディオルゴへ向かっているわけですが馬車での移動はやっぱ慣れないな。
魔力飛行じゃダメなの? あ、ダメですかそうですか。
…獣車に比べたらマシだし我慢するけどさ。
「あ……あの山……」
「ん? どうかしたのか? ……ってなんだあれ!?」
景色を眺めているレイナがなにか見つけたので、覗いてみると遠くに見える山のてっぺんにすげぇデカくて赤い、花かあれ? が咲いているのが見えた。
まるで千年杉のようにバカでかい花で、見た目は真っ赤なヒマワリみたいだ。ちょっと不気味。
「ライジング・サンフラワーっていう花で、もう何百年もあそこで咲いたままらしいっす。高いところから見守っているようにも見えるから、このあたりじゃ守り神様として崇めてる人たちもいるとか」
「へぇ、立派な花だな。……いやちょっと立派過ぎる気もするが」
「詳しいね、レイナ」
「はいっす。お母さんから、小さいころから言い聞かせてもらってたっすから」
「お母さんからってことは、そろそろ町が近いのか?」
「そうっすね。なんだか懐かしい景色っす……」
しみじみと、景色を眺めながら懐郷にふけるレイナ。
……今くらいは、茶化さずそっとしておいてあげようか。
『ピピィィッ!!』
そして静かで優し気な雰囲気をぶち壊すヒヨ子の鳴き声。
……お前ね、レイナにもうちょっと気を使ってあげてもアーハイハイ小腹が空いたのね。
「おやつに作っておいたクッキーならあるが、食うか?」
『ピピッ!』
「あ、自分もいただくっす!」
「…私も」
そしてこの有様である。他人のこと言えた義理じゃないけどウチの子ら食い気強すぎやろ。
丸1日ほど馬車に揺られて、ようやくディオルゴの町に辿り着いた。
んー、ケルナ村ほどじゃないけど田舎っぽい町だなー。
大きな建物もほとんどないし、寂れているってほどでもないけど静かな町だ。
アレだ、『年をとったらこういうところでのどかに暮らしたい』とかよく言われてそう。
「ふわぁ……! もう、景色はもちろん空気の匂いからなにからなにまで懐かしいっす……!」
「静かでいい町だな。工業都市の喧騒を体験した後だと余計にそう感じる」
「なんだか、落ち着く」
『ピ』
「もう夕方だし、今日はもう宿で休みましょうっす」
「お袋さんへの挨拶はいいのか?」
「いや、まあ、その、……ここまできて今更なに言ってんだって思われそうっすけど、正直まだ心の準備が……」
ここまできて今更なに言ってんだ……はっ!? いやお約束のボケはいいから。
実の親子だし、話を聞く限りじゃレイナのことを本当に大事に想ってくれているお袋さんらしいから、無理やり会わせてもなんとでもなりそうではあるけどなぁ。
まあ焦る必要はないし、明日にでもお邪魔すればいいか。
「レイナがそう言うなら、今日は買い物したら宿に向かうか。……ただし、ディオルゴに滞在している間に必ず会うんだぞ」
「できることなら今すぐにでも会ってほしいけど、気持ちの整理がついてからでも遅くはないから、安心させてあげて」
「は、はいっす」
「さーて、今日の晩御飯の材料はせっかくだしこの町で売れてる食材で作るかな。食材を売ってる店がどこにあるか知ってるか?」
「ここは自分の故郷っすよ? もちろんっす、案内するっすよー」
いつも以上に軽い足取りで町を進んでいくレイナ。
故郷に帰ってこられたことで、気分が上がっているみたいだな。
少し ほんの少し うらやましいな
町の中で一番大きな八百屋で、とりあえず晩御飯用の食材を見て回ることに。
田舎町かとおもっていたけど、この店はなかなか大きいな。日本のスーパーくらいの大きさはありそうだ。
……そのせいで、ヒヨ子以外の二人があちこち見て回ってるうちにはぐれてしまったようだ。
まあそのうち合流するだろ。
っておお? なんだあのエビにトンボの羽が生えたようなのは?
≪【フライシュリンプ】 海ではなく、陸に生息する空を飛ぶ海老型の魔獣で、通常の海老と同様その身は美味≫
空飛ぶエビて。海泳げや。
コイツはLv1~9くらいの魔獣みたいだな。レベルが上がったらサイズも大きくなって食いでがありそうだな。
いやこのままでも結構な大きさだけど。
ところでこの羽の部分は食べられるの?
≪可食。炒めたり揚げたりすると香ばしい風味と軽快な食感になる≫
なるほど。今日はアレを使ってエビフライでも作るかな。フライシュリンプだけにゲフンゲフン。
あとは付け合わせの野菜をどうするかなー。一緒に揚げてしまうか、それともやっぱあっさりと生野菜にするべきか。ううむ。
って、おいおいレイナ。なんで自分で買い物カゴを持ってエビを入れてんだ?
エビ料理を作ってほしいなら言ってくれればいいのに。しょうがないなもー。
「おーい、エビならこっちのカゴに入れるからわざわざ分けなくてもいいぞー」
「……え?」
「いや、え? じゃなくて。……あれ? レイナ、そんな服着てたっけ? 着替えたの?」
「……!!?」
なんかすごく驚いたような顔をしてこちらの顔を見るレイナ。
なにその顔。 ……ん、なに? どしたのメニューさん?
≪今、話しかけた対象は、レイナミウレではない≫
……え?
≪対象の名前は『フェリアンナ』であると判定。過去に、『フェリア』という略称の人物がいることを孤児院にて確認した記録あり。その対象は――≫
「あ、あなたはどちら様ですか? れ、レイナを知っているんですか!?」
≪レイナミウレの母親であると推測≫
………。
マジで?
≪マジである模様≫
おい口調。
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