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新機能 新武器依頼

新規の評価、ブックマーク、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。



ダンジョンを脱出してからまず受付へ向かった。

最深部攻略なんて実績、下手に見せびらかしたくないけどダンジョンに潜った人は記録を残す義務がある。

ダンジョンに潜ってやましいことしたりとかする人がいないとも限らないらしいし、まあ仕方ない。



「お疲れ様です。前回より少し早く帰還されましたね。では、記録を確認させていただ……え?」



前回のようにダンジョン攻略の履歴を確認する受付嬢。その顔が確認中、急に固まった。



「え、ええと、今回は7時間半ほどの時間で最深部攻略、すなわちこのダンジョンを踏破されたと表示されているのですが………間違いありませんか?」


「はい。前回はちょっと寄り道しすぎて時間がかかってしまいましたが、今回は先に進むことを最優先で攻略していましたので」


「そ、そうですか……今まで15階を攻略したパーティは2組だけで、いずれも16時間以上ほどかかっていたのですが、半分以下のタイムで攻略されるとは驚きです……。よほど運よく魔獣やトラップを避けられていたのでしょうね……って最深部でLv63の魔獣を討伐!?」


「あ、はい。運悪くサプライズモンスターが出現してしまいまして、一歩間違えば全滅するところでしたねハハハ」


「よ、よく全員無事に生還できましたね……」



俺もそう思う。ホントよく死ななかったな俺ら…。



「ランキングは群を抜いて1位です。ダンジョン最深部を最速で踏破されたうえにサプライズモンスターまで討伐したとあっては、今後これを超える記録を作るのはよほどの手練れでなければ難しいでしょうね」


「いえいえ、私たちはまだまだ未熟者です。今回、ダンジョンに潜って全員それを痛感しているところですよ」


「御謙遜を。それでは、また訪れるのをお待ちしております」



目的のブツは手に入れたし、しばらく潜るつもりはないけどな。

さーて、今日はもう疲れたし素材コイツをジュリアンのところに持っていくのは明日でいいか。


デザートにプリンを作るって言っちまったけど、これでもうバニラのストックはゼロになっちまうな。

メニューさん、どっかでバニソイ豆を売ってるお店とかない?


≪ダイジェル、ヴィンフィート、ランドライナム、ニューシーナ、リングラナイタ、……いずれも該当無し≫


いやいやいや、おかしいだろ!?

他はともかくヴィンフィートは商業都市で、ランドライナムなんか他の大陸とも交易がある港町だぞ? なんで香水の原料一つ売ってないのさ。


≪バニソイ豆は非常にマイナーな香水の原料で、極一部の好事家しか使用しないため流通している数自体が非常に少ない≫


あんなにいい匂いなのにね。というかあの匂いで食欲が湧かないのはおかしいやろ。香り付けの発想が出てこないのは不自然だ。

おのれ過去の勇者! こちとらもっと気軽にバニラ味の菓子を作ったり食べたりしたいのに、なんでバニソイ豆の有用性を広めてくれなかったんだ!

はあ、会ったこともない故勇者に文句を言っても仕方がない。メニューさん、近場で手に入りそうなところは本当にないの?


≪…………ケルナ村にて、バニソイ豆の栽培を確認≫


それ俺が途中で栽培するの放棄したやつでしょ。

いくら年中採れる豆だからって、手入れ無しで収穫できるほど甘くないだろうに。

どうせ雑草に養分とられて枯れてるか、虫に食われてるか、水不足で干からびてるかしてるんだろ?


≪否。梶川光流が不在の間、村の住民が交代でバニソイ豆を栽培している畑の手入れをしているため、順調に育っている模様≫


……え、マジで!?


≪あと1週間もすれば、収穫可能。その頃に村を訪れればバニソイ豆の入手は可能≫


な、なんていい人たちなんだ。言い出しっぺの俺がロクに手入れもせずに投げっぱなしにした畑を何も言わずに管理してくれてるなんて。

……いや、違うか? 村の新たな特産品として、俺が放棄した畑を再利用しているだけかもしれないな。

うん、きっとそうだ。……お詫びも兼ねて近いうちに訪れておこう。できれば豆を売ってくれると嬉しいが、さて。



「うぅ、お腹が空きすぎて歩くのも辛いっす……」


『ピィ……』



切なげに鳴る腹を押さえながらレイナが小言を呟いている。

肩に乗っているヒヨ子も空腹なのか、頷きながらか細く鳴いている。



「宿に着くまで我慢。今なにか食べたら晩御飯を食べきれなくなるから」


「はーいっす……」


「でも確かに歩くのもだるいな。……丁度いいや、メニューの新機能のお披露目といくか」


「え?」



メニューさん、リングラナイタの宿ってマップ画面の登録地点に入ってるっけ?


≪登録地点に該当するため、新機能の使用は可能≫


なら、早速試してみるか。




メニュー、『リングラナイタの宿屋』まで、【ファストトラベル】!


≪了解。MPを100消費してファストトラベルを実行≫





メニューに新機能使用を実行させると、ダンジョンから街までの道のりから、一瞬でリングラナイタの宿の前まで景色が変わった。

ふむ、タイムラグはほぼ無しか。場合によっちゃ緊急回避なんかにも使えそうだな。



「え、あれ? え、えええええ!?」


「さ、さっきまでダンジョンから街までの道を歩いていたはずなのに、いつの間に……!?」


『ピピッ!?』


「これがメニューさんの新機能、【ファストトラベル】だ。マップ画面に登録してある地点まで、MPを100ほど消費して瞬間的に移動できる超便利機能ですよー」



もうね、こんな便利な機能があるなら最初っから使わせてほしかったと言わざるを得ない。

日本でも是非使いたかった。出勤する時間もアパートに帰る時間も大幅カットできただろうに。



「か、カジカワさんのステータスを聞いた後じゃもうなにを見ても驚かないと思ってたのに、またひとつ常識が崩れ去っていくっす……」


「でも、すごく便利。これなら行きたい場所まで馬車や獣車を使わなくてもすぐ行ける」


「登録してある場所や街限定だけどな。登録される条件はメニュー基準だからどこへでも移動できるわけじゃないし、登録するためには一度でも自分でそこまで行かなきゃならない」



まあ、正確には自分で行かなくてもマップを広げて登録地点を増やす機能はあるが、しばらくはその機会はなさそうかな。

……もしもカナックマートさんと会う前にもう一つの新機能を獲得していたら、今後一気にマップが広がっていっただろうに。惜しい。

さーて、宿に手早く帰ることができたし、さっさと晩御飯作りますかね。

プリン、うまく作れるといいが。魔力操作で加熱と冷却をすれば短時間でも作れるだろうが、すが入らないように注意しないとな。











翌朝、早速ジュリアンのいるゲン工房へ大槌の材料を渡しに足を運ぶことに。

あの甲羅のカケラ、クッソ重いんだがアイツに扱えるのかねぇ?



「カジカワさーん、あのプリンってお菓子、もう残ってないんすかー?」


「残ってるけど、しばらくはお預けだ。昨日お前3つも食っただろうが。太るぞ」


「ふ、太ってないっすよ! ただ、こんな美味しいものがこの世にあったのかーって感動しちゃって、気が付いたらお皿がいくつも空になってたっす……」


「確かに、あれは危険。プルプル滑らか、ほろにがなのにすごく甘くて美味しすぎて歯止めがきかなくなる。……でも、本当に美味しかった」


『ピピィ……!』



プリンの味を思い出しているのか、2人+1羽が恍惚とした表情をしている。

まさかあんなに好評だったとは。日本で売ってる市販のプリンよか美味く作れたとは思ったが、バースデーケーキより美味しそうに食べる姿を見てたらちょっと複雑な気分になった。

手間をかけた分だけ結果が伴うとは限らないと分かってはいるんだけどね。ぐぬぬ。



「コラ、ヒグロ! てめぇまた徹夜してやがったな! 次の日の仕事に差し支えるからやめろっつってんだろが!」


「わ、わりぃジジイ。どうしてもアイツよりスキルが低い自分が許せなくてつい……」


「おいおい、いい仕事をしようと思ったら徹夜はよくないぞ。我も12年間ほど武器を作ってきたが、下手に徹夜するより結局早寝早起きした方が効率がいいと去年くらいに気付いた」


「去年って遅いな!? つーかお前さんいつも一番初めに工房に居て仕事しているが、いつごろ起きてんだ……?」


「朝の3時ですが、なにか」


「「そりゃ朝じゃなくてまだ深夜だろうが!」」



……凸凹師弟にジュリアンが加わって喧嘩の頻度自体は少なくなったが、普段のやりとりが漫才じみたノリになってる地獄絵図。

見てるだけでもうお腹いっぱいなんですが。もう帰っていい?



「おや、マイ・カスタマー、おはよう。材料の調達はできたのかね?」


「おはよう。ああ、バッチリ手に入れたんだが、これ、加工できるか?」



カバンを介して例の甲羅のカケラを取り出す。うぐぐ、おっも。

それを見たジュリアン、そして凸凹師弟が目を剥いて驚いた表情を見せた。



「うおおお……! こ、これはSランク魔獣の素材ではないか!?」


「ヴォルカニック・ジャイアントタートルの甲羅か…! とんでもなく強度が高くてクソ重いから、加工するのも扱うのも一筋縄ではいかねぇぞ」


「おいおい、こんな超希少な素材初めて見たぞ! ち、ちょっと持ってみていいか? ………って、お、重っ!? こ、こんなもんどうやって加工すんだよ!?」



筋力800超えてる今の俺が持っても重く感じるくらいだ。生産職の腕力じゃ持ち上げるのは厳しいだろうな。

とか思ってたら、ジュリアンが眉間にしわを寄せて困ったような様子で甲羅のカケラを見ている。どしたの?



「ううむ、真・エクスプロージョン・バスターの素材としては理想的な素材ではあるが、正直言って我の鍛冶のレベルではこの素材の加工は難しいぞ」


「え、作れないのか!?」


「作れないことはないが、とにかく時間がかかる。最低でも数か月程度は見てもらわなければならんだろうな。……我が未熟なせいで、申し訳ない」



ここにきて新たな問題発生。完成までの期間が長すぎる。

せめてひと月以内なら許容範囲だが、数カ月となるとちょっと……。



「数か月か……なんとかもう少し早く作れないか?」


「厳しいな。火の魔石を使った爆発の術式を刻むだけなら1週間もあればできるだろうが、肝心の武器本体の加工に時間がかかるのだ。我の鍛冶スキルがもう少し高ければ……」


「ちょっと待て、武器の本体部分さえ作れればさほど時間はかからねぇってことか?」



ジュリアンがションボリしながら自分の未熟さを嘆いていると、ゲンさんが口を挟んできた。



「はい。本体さえ出来上がれば、ですが。しかしSランクの、それもこれほどの重量の素材を加工するとなると、スキルレベルが6程度の我では……」


「そうか。………カジカワ、手を見せな」


「……はい?」



急に俺の腕を取って、手相を見るようにまじまじと観察し始めた。なにしとんの?



「う、ううむ? なんだこの手は。見た目はヤワな手なのに、触った感触はまるで別物じゃねぇか。……なにからなにまで奇妙だなお前さんは」


「あの、なにを?」


「ああ? 決まってんだろ、お前さんの武器を作るのに、まずどんな握りにするべきか見てんだよ」


「………ゲダガン殿、まさか」


「おう。客がもっと早く作れって言ってんだ。なら俺が本体を手早く作ってやっから、ジュリアン、お前さんは術式を刻む作業を進めな」



俺の手を観察しながら、話を進めるゲンさん。

……驚いた。まさか、合作をゲンさんの方から提案してくるとは。この人絶対自分の仕事は他人に手出しさせないイメージがあったのに。



「よ、よいのですか? しかし、これは我の受けた仕事であり、そちらの迷惑になったりは……」


「構わねぇよ。どうせこのパーティ以外の仕事はロクに依頼がこねぇしな。それにこんだけ上質な素材を扱えるのは数年ぶりだ。タダでやってもいいくらいだぜ」


「……マイ・カスタマー。ゲダガン殿はこう言っているが、君はいいのか? 正直、我としてもこれが最適解だとは思うのだが」


「ゲンさんとジュリアンがそれでいいなら、俺が口を挟んだりはしないよ。……ただ、作ってる最中に喧嘩するのは控えてくれよ」


「それは無理だろうな」


「無理だな。絶対、意見の衝突があるだろう。それも一度や二度じゃ済まんだろうな。……だが、最終的には最高の出来に仕立て上げてやるから、安心しな」



全然安心できねぇ! ジュリアンとゲンさんが喧嘩してるとこを想像しただけで胃が痛くなってくるわ!

でも、二人ともそれを予測してるってことは、もしかしたら武器の合作をする際に意見の衝突が起こるのは鍛冶屋の間じゃ常識なんだろうか。

……完成するまで、ここに顔を出すのは控えた方がよさそうかなー……。




お読みいただきありがとうございます。


休日になんの予定もなければ小説を書いている今日この頃。

ちなみに土曜月曜ともに出勤でした。社畜ェ……。

一気に強くなった主人公サイドのステータスですが、もう数十話進めばすぐに弱く感じるんだろうなーと今からインフレの予感。いや、そんな都合よく急に滅茶苦茶強くしたりはしないつもりですが。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[良い点] メニューの新機能についてコメントがないのでおっとり刀でコメントを。 旅が捗りますな~。ファストとあるので今後機能の拡張が有るかも。あと、現時点で明らかではないが大陸制限や距離により消費MP…
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