表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/584

スタンピード②~経験値ピンハネ美味しいです~

 342、378、401…

 バカな、まだ上がっていく…!?

 などと、どこぞの野菜人の戦闘力を見て驚いてる隊長みたいなことを考えながらステータスのトータル経験値を眺めている。


 下の方では冒険者たちが次々と目も耳も利かなくなった魔獣たちを討伐していっている。

 気のせいか、冒険者たちが魔獣を倒す度に経験値が入っていってるような…?

 メニューさん何か心当たりない?



≪複数人数で魔獣を倒した際、取得する経験値の割合はその魔獣に誰がどれほどダメージを与えたか、とどめを刺したか、状態異常の付与をしたか、その魔獣によって与えられたダメージを回復したかなどによって配分が決まる。今の状態は梶川光流が状態異常の付与を成功させてから他の冒険者が討伐しているため、2、3割程度の経験値を取得している模様≫



 …えー、なにその寄生レベリングみたいな手口は。

 我ながらズルいなオイ。倒した側の損にならないならともかく、経験値のピンハネとかせこいわー。


 いやまあ、正直内心ウハウハなわけですが。


 まあよく考えたら敵の集団に一人で危険おかして突っ込んでいったんだから、これぐらいの役得はあってもいいんじゃなかろうか。

 乱戦で皆必死だし、ちょっとくらい経験値が少なくてもバレへんバレへん。

 まあ中には律義に倒した数をカウントしてる人もいそうだけど。


 さて、レベルアップして魔力が全回復したということはまだ戦場でできることはある、ということだ。



『キイイイィィィッッ!!』



 おおっと、なにやら聞きなれた鳴き声を上げながら、こちらに突っ込んでくる影が複数。

 ブレイドウィングか。距離が離れていたのか、何匹かは光や爆音の影響が薄かったようだ。

 魔獣の統率をグチャグチャにされたことに怒りを覚えたのか、こちらを睨みつけながら近づいてくる。


 好都合だ。地上に向かって絨毯爆撃でもされたら今度はこちらの皆に悪影響が及ぶ。

 ここで殲滅してやる。



 ギュンッ



 怪鳥の内の一匹に向かって猛スピードで一気に距離を詰めた。



『キキィィイッ!!?』




 自分より速く飛べる相手に慣れていないのか、反応が遅い。

 背後を取り、上手く飛べないように翼を掴んだ後、



 ギュンッ! ヒュウウゥゥゥゥゥ………



『キキッ!? キイイイイィィィィィィッッ!!!』



 怪鳥の体ごと地面に向かって急降下!

 この速さで地面に激突すればただでは済まないだろう。てか死ぬ。

 怖いか? そうだろうな。俺もめっちゃ怖いです。ひいぃ。

 激突する直前に俺だけ離脱。魔力で翼の根元を固めて、飛べないようにするのを忘れずに。



 ベシャアンッ!



 そのまま怪鳥は地面に激突した。

 血反吐を吐き、身体を妙なカタチに捻じ曲げながら絶命していった。


 お、魔力が回復した。またレベルアップしたみたいだ。


 残るブレイドウィングは4体。

 お前らもまとめて同じ目にあわせてやる、覚悟しろ。

 エアスパローはほとんどが光と爆音のせいで墜落してるし、大した脅威じゃなさそうなので無視。



 そうして、俺は同じように次々と怪鳥を地面に落としていった。

 こうして地面に激突させてて、もしも魔力が途中で切れたらと思うとぞっとするな。

 都合5匹、ブレイドウィングの討伐完了。再びレベルも上がった。うはは。

 さて、地上の方はどうかな?



 んー、大体3、4割くらい討伐できてるっぽいな。

 ホブゴブリンとか、コボルトの上位種みたいな奴は健在みたいだが、結構なハイペースで数を減らしている。

 まぁ、相手が目も耳も利かない状態じゃ討伐するのは鴨打ちより容易いか。

 そして経験値ウマウマ。いいぞーもっと貢げーフゥーハハハー!……うん、調子に乗るのはやめよう。


 さて、問題はここからだ。

 これまで魔獣たちは視力は一時失明、聴覚麻痺の状態だったが、時間経過により少しずつ回復していっている。

 既に残った魔獣の半数は既に一時視力低下、聴力低下程度にまで回復している。

 数はまだまだ魔獣たちの方が多い。さらに大物はまだほとんど仕留められていない。油断できない状態だ。

 まあ、冒険者たちも俺より強い人たちしかいないし、そう簡単にはやられないだろうけどな。


 状態が回復しきっていないうちに、ホブゴブリンなんかの大物にできるだけダメージを与えておきたい。

 でも俺のステータスじゃ難しいよなぁ。

 空から突き落とそうにもあの巨体を地上から空に持ち上げるのはちときつい。最初から空にいて体重も比較的軽いブレイドウィングとは勝手が違う。

 どうしたもんかね。


 そうやって悩んでいるうちに、冒険者の一人がゴブリンのナイフに脚を刺されて負傷したのが見えた。

 負傷した冒険者はLv5の短剣使いの少年だ。いや、年齢を確認すると15歳みたいだし、この世界基準だと成人してるから少年と呼んでいいのか分からんが。


 お、回復ポーション飲んだ。っておおお? 飲んだ直後に傷が塞がってHPも元通りになった。

 なにあの薬。効果が発揮されるの早すぎて怖いんですけど。

 で、飲み干したあと空になったビンをゴブリンの頭に向かって投げつけて攻撃してるのが見えた。たくましいなあの少年。



 …それだ!



 ギュンッ!




 思いついたことを実行するべく、門の方へ高速で飛んで離脱した。



 門に近付くとギルマスの姿が見えた。

 魔獣の数、予想の倍以上じゃねーかふざけんなとか文句の一つでも言ってやりたいが、後にしよう。




「おおカジ、いや飛行士。上手くやってくれたようだな」



 ギルマスから声をかけられた。誰が大火事やねん。じゃなくて。



「すみません、投石用の手ごろな石などがまとまっているのはどこですか?」


「ん? それならあっちの後衛達のいる方にある白い袋の中だが」


「いくつか、頂いてもよろしいですか?」


「腐るほどあるから別にかまわんが…いったい何に使うんだ?」



 返答を待たず、急いで石の入った袋を手に取り再び戦場に飛んだ。

 うぐぐ、重い。軽く30kgはあるんじゃないかこれ。

 魔力で包んで持ち上げたいところだが、少しでもMPを節約したいので自力で持ち上げている。


 さて、ホブゴブリンたちがいる真上まで来たが、結構高い位置にいるうえにまだ視力が回復しきっていないからかこちらへの反応はなし。

 味方との距離もそこそこあるからフレンドリーファイアの心配もないだろう。


 というわけで投下しますか。


 魔力で野球ボールくらいの投石用の石を一つ一つコーティングする。

 案外魔力消費が激しい。そう何回も使えそうにないな。

 で、俺の真下に居るホブゴブリンたちに向かって、魔力操作により石を急降下!



 ビュンッ!



 バラバラと30~40個近い石が地面にいるホブゴブリンたちに向かって凄まじいスピードで降り注ぐ。

 俺がいるのは高層ビル並みの高さの位置だ。普通に落とした石に当たっただけでも大ダメージだろう。なら、さらに加速させたこの石ならどうだ。





 ダダダダダダダダダダダンッッ!!


 グシャッベチャッゴシャッ




 ホブゴブリンたちに石が着弾した。

 地面にいくつも蓮コラみたいな穴が開いていく。ちょっとキモい。

 頭に当たった者は即死。体に当たった者は命中した箇所に大穴が開いた後、静かにその巨体を地面に委ね、死んでいった。



 う、うわぁー……えっぐい。

 まるで軍用ヘリ搭載のミニガンの弾に当たったみたいにグチャグチャになってるんですけど。

 我ながら酷い戦法だ。でもこれって戦争なのよね。仕方ないね。


 今のでホブを3体ほど仕留めたようだ。何匹か普通のゴブリンもとばっちり受けてるな。

 そして、またレベルアップと魔力回復。やばい、何この戦場。経験値がうまい、うますぎるー。


 そんなこと考えているうちに、そろそろ魔獣たちも状態が回復して持ち直してきやがったな。

 だが、もう遅い。


 魔獣たちの残りの数は既に残り150程度。その大半はゴブリンやコボルトといった雑魚ばかり。

 こちらは数でこそ劣っているが、ステータスは数段上だ。この程度の数の差は問題にならない。


 ホブゴブリンとコボルトの上位種、ハイコボルト? って奴が一体ずつ残っているが、それもLv20にわずかに届いていない程度のレベルだ。

 しかも、なにやらその二匹が仲間割れを起こしているようだ。この状況で何やってんだあいつら。

 もはや勝ち確。負けようがない、のだが。



 嫌な予感がする。

 こういう何もかも上手くいっている状況って、絶対何か重大な見落としとかあるんだよなー。


 よく考えろ、今の状況での脅威と言えばなんだ?


 ブレイドウィング率いる空の魔獣は殲滅済み、問題なし。


 通常のゴブリンやコボルトなんかの魔獣。現在喧嘩中のホブゴブリンとハイコボルトの肉盾になっている状態。全滅は時間の問題だし、これも問題なし。


 で、やっぱり気になるのはその大物2匹なんだよなー。

 あの仲間割れ、憎しみあってやっているというより、必要に迫られて仕方なく、という風に見える。

 何のために?




≪推測:経験値取得によるレベルアップ及び、魔獣スキルLvのアップによる進化のための争い≫



 …え、進化? この状況で?

 普通協力し合ってこの状況をなんとかしようとするだろ。



≪Lv19程度の魔獣2匹ならば、現状の冒険者たちの戦力で充分討伐可能。ホブゴブリンもしくはハイコボルトが進化をした場合、対処可能か予測不能≫



 やばい、あの2匹から先に仕留めておくべきだった。

 くそ、今から投石用の石を取りに行って間に合うか?……あっ!



『ガアアアアアァァァァァッッ!! ガ、フッ…!』



『グウオオオオオオォォォォォッッ!!』



 ハイコボルトが、ホブゴブリンの喉笛を食い千切り、遠吠えを上げた。

 ホブゴブリンは、しばらく痙攣した後、動かなくなった。

 それと同時に、ハイコボルトの身体が脈打ち、その形を変えていく。

 くそ、間に合わなかった。


 その眼は、獲物を逃がさないようにより凶暴な本能を携えて。

 その爪は、より容易に獲物を切り裂けるように長く、鋭く。

 その牙は、より確実にかみ殺すために特化した牙の並びと形に。


 進化が、完了した。




 魔獣:ウェアウルフ


 Lv20


 状態:正常



【能力値】


 HP(生命力) :350/350

 MP(魔力)  :70/70

 SP(スタミナ):214/281


 STR(筋力) :214

 ATK(攻撃力):214

 DEF(防御力):196

 AGI(素早さ):198

 INT(知能) :50

 DEX(器用さ):78

 PER(感知) :211

 RES(抵抗値):53

 LUK(幸運値):41



【スキル】


 魔獣Lv3 爪術Lv4 体術Lv4





 これこそオオカミ男、ウェアウルフだな。

 体格は人間並みだが、より毛深く筋肉質になってより戦闘向けの姿になった。


 ステータスは今まで見た魔獣の中でも頭一つ抜けて強い。

 さっきの投石戦法なら当たればダメージも入るだろうけど、視力と聴力は既に正常。おまけに素早さと感知が高い。当てられるかどうか分からん。

 さて、こんなめちゃ強そうなウェアウルフだが、一つ言いたいことがある。



 頼むからなんか穿けよ! 進化前からフル〇ンになにかこだわりでもあんのかお前は!

お読み頂きありがとうございます。

ちょっとお下品なオチで申し訳ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[気になる点] 急に嫌な予感がするは違和感ありすぎる 主人公って勘がいいって描写ないよね? しかも、未然に防げてないんだからその描写いらなくない?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ