対ワーム
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『ヴヴヴ…ヴルヴヴヴ……』
太さだけでも直径2mはあるんじゃないかという巨体。長さは軽く20mくらいか。
そのデカいミミズみたいな巨大ワームが、目のない口だけの顔をこちらに向けて唸っている。キモ怖い。
二人+1羽の能力値を気力で強化。
さらにアルマに補助魔法を使ってもらい、防御力と素早さを強化してもらう。
その間に目の前にいるバケモンのステータスを確認。
魔獣:ジャイアントワーム・グランドイーター
Lv63
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :1811/1811
MP(魔力) :1514/1514
SP(スタミナ):1247/1301
STR(筋力) :1612
ATK(攻撃力):1612
DEF(防御力):1147
AGI(素早さ):438
INT(知能) :237
DEX(器用さ):274
PER(感知) :1030
RES(抵抗値):983
LUK(幸運値):120
【スキル】
魔獣Lv7 牙術Lv10 貫牙術Lv5 体術Lv10 極体術Lv6 蟲族Lv7
【マスタースキル】
オーラ・ミティゲイション
バイタル・タスク
強い。オーガすら超える攻撃力と防御力。これだけでも相当な脅威だ。
暴食スライムと比べたら大分マシな方だが、それでも今の俺たちにとっては普通なら絶望的な相手だろう。
使える手札を考えろ。打つ手を誤れば誰かが犠牲になる危険があるぞ。
だからといって闇雲に恐れるな、正しく目の前の脅威を恐れるんだ。
『ヴヴヴ…ヴヴヴヴァアアァァァアアア!!』
巨大ワームが、咆哮を上げる。
それだけで部屋全体の空気が震え、地面すら揺らしている。
こわぁい! 超怖い!
ごめん、自分で闇雲に恐れるなとか言っといてなんだけど、こんなもん相手に冷静になれって無理だと思うんですけど!
「……っ!」
「ひ、ひぅっ……!」
『ココッ……』
仲間たちも今の咆哮を聞いただけで身体が強張り、震えあがってしまっている。
無理もない。俺も今すぐ逃げ帰りたい気持ちでいっぱいだし。
でももう出口は塞がれちまってるし、多分アイツを倒さないと脱出はできないんじゃなかろうか。
「ヒカル、補助魔法かけ終わった。……でも、どうやって戦おう」
「ち、ちょっと大きすぎないっすかね。これ、本当に倒せるんすか……?」
「倒せなきゃ死ぬぞ。死なないように死ぬ気で頑張ろうか」
『コケェッ…!』
さーて、まずあのサイズと能力値じゃ並の攻撃はほとんど意味はない。
アルマの強化した攻撃魔法も、レイナの手裏剣や苦無を巨大化させても効果は薄いだろう。ヒヨ子の攻撃は論外。進化したと言ってもまだ弱いし。
ただし、それは普通に攻撃を当てたらの話だ。
『ヴァヴゥァアアヴォエェエエッ!!!』
しまった、どう攻めるか決めかねてるところにワームが攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃方法は、口からなにか緑色の液体をこっちに向かって吐き出して――
≪蟲族スキルLv4技能【消化液砲】その名の通り、強酸性の消化液を口から吐き出し攻撃する技能≫
「全員避けろぉっ!!」
「うわっ」
「に゛ゃあああいっ!?」
『コケェッ!!』
俺は魔力飛行で、アルマとヒヨ子は強化したクイックステップで、レイナは影潜りで俺の影に溶け込み避難。
消化液のかかった壁や地面がドロドロに溶けている。まともに喰らったらただじゃ済まないな…!
『ヴォウッ! ヴァォウ!!』
空に逃げた俺に向かって、魔牙・遠当てを連続で発射してきた。
速い、が避けられないこともない。自機狙いならチョン避けで避け続ければ……
!?
ワームが飛ばしてきた魔力の牙が、突如3つに分裂した。
≪魔牙・遠当てを、攻撃の判定を増やす貫牙術スキルLv4技能【魔牙分閃】により分裂させた模様≫
スキルのコンボとは、魔獣のくせにえらく芸達者だなオイ!
あ、ヤバい避け切れない!
「うおぅあああ!!?」
「ひ、ヒカルっ!」
チョン避けでギリギリの回避を試みたのがアダとなって、何発か当たってしまった。
魔力装甲と魔力クッションで受けたが、それでもHPの半分近くが溶けた。
「大丈夫だ、怪我はない! それよりこのままいつまでもしのぐのは無理だ! 魔法や魔刃・遠当てなんかの遠距離攻撃を当てて援護してくれ!」
「分かった!」
本当は近距離攻撃を当てた方が武器の補正値がある分効果は大きいだろうが、あの巨体相手じゃリスクがデカすぎる。
攻撃魔法じゃアイツに通じる威力を出すには相当魔力を消費する必要があるだろうし、魔刃・遠当てだけじゃちょっと弱い。どうしたもんかね。
「『稲光乃剣』!」
え、魔法剣?
ちょっと待て、近距離攻撃は危ないから駄目だって!
と一瞬思ったりもしたが
「ハッ!」
『ギギィィガガガア!!?』
魔法剣を発動した後に、そのまま魔刃・遠当てを発動するアルマ。
すると雷を纏った斬撃がワームに向かって飛んでいき、確かなダメージを与えて大きく怯ませた。
なるほど、さっきワームが牙術スキルと貫牙術スキルを組み合わせたように、魔法剣と剣術を組み合わせたのか!
アレなら武器の補正値を攻撃に加えつつ、魔力消費を抑えて安全に攻撃できる。
……なんか、某大冒険マンガの主人公が使ってる技みたいだな。すとらーっしゅ。
さて、こっちも反撃の準備を進めますか。
「レイナ! 魔力を多めに込めた手裏剣や苦無をいくつか俺に渡してくれ! 影潜りに使う分だけは魔力を残しておけよ!」
「ええ? は、はいっす!」
「ヒヨ子は小さくなって俺の肩に乗ってろ! 今のお前の機動力じゃ狙われたら即やられちまうぞ!」
『コケッ! ……ピピッ!』
レイナから魔力入りの手裏剣と苦無を数本ずつ受け取った後、ヒヨ子を回収。
アルマの攻撃は威力が高くて燃費がいいとはいえ、いつまでも打ち続けていられるほど余裕があるわけでもない。
早く手を打たないと。さーて、上手くいくかな?
…しっかし、我ながらえぐい方法を思いついたもんだ。
お読みいただきありがとうございます。




