デジャヴ宝箱
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「ハイゴブリンっていうホブゴブリンの上位種が4体、ウェアウルフが同じく4体いる。アルマはハイゴブリンを殲滅。レイナはウェアウルフとサシで戦ってみようか。残りは適当にこの3人に仕留めてもらおう」
「分かった」
「はいっす!」
「お、おいおい! アルマちゃん一人に4体も相手させるのかよ!? そっちの子供もウェアウルフと一人で戦うだなんて無茶だ!」
「てか、アンタは戦わないのかよ!?」
「いやー、なるべく若い子たちに戦闘経験積んでほしいし、俺がしゃしゃり出なくても余裕だと思うから」
「なわけねぇだろ! ハイゴブリンにウェアウルフとかC~Dランクのバケモンじゃねぇか!」
「パーティで一匹倒すならともかく、複数相手に突っ込んでくなんて自殺行為だろ! アンタ何考えてんだ!」
『グルルル……!』
「ああ、こっちにもウェアウルフが一匹近付いてるな。というわけで3人ともガンバッテー」
「「「だからテメェも戦えやあああ!!」」」
8体もの魔獣が待ち構えているエリアに着いたが、せっかく過半数をこっちが引き受けると言っているのに男3人がなんかゴネてる。
なにが不満なんだか。ラディア君なんかまだLv15だったのに、魔獣湿地でLv30以上の魔獣を倒した実績があるんだぞ。同レベル帯の魔獣くらい仕留めてもらわないと困る。
≪……同レベル帯の魔獣を安全に仕留めるには一体相手に複数人で挑むのが常識であり、梶川光流の考え方は一般的に見て無茶を強要しているように見られてもやむを得ないと推測≫
えー。
「ヒカル、ハイゴブリン仕留め終わった」
「早いな、お疲れ」
「な、え、も、もう仕留めたのか!? どうやって……!?」
ハイゴブリンの方は【大海原乃剣】で複数同時に首を狩られて瞬殺されたようだ。
魔獣草原の時点で10体以上ものオオカミ魔獣を同時に討伐してたし、こんくらい楽勝だろうな。
「こっちも終わったっすよー」
「レイナもお疲れ。おーい、こっちのノルマはもう終わったぞー」
「いや、だからアンタは戦わないのかよ! ヒモか、ヒモなのか!?」
「ウェアウルフ3体とか普通まともに相手できるわけねぇだろ! ちょっとは手伝え!」
ああもううるさいなー。
仕方ない、1匹だけ仕留めて後はもう任せてしまおう。
「って、ヤバい! おい、そっちに2体行ったぞ!」
と思ったら2体きてるし。ちょっと男子ー真面目にやってよー。俺も男子っていうかオッサン予備軍だけど。
「ヒカル、見てばかりいてもあの3人がうるさいだけだから相手したら?」
「はぁ、しょうがないなーもー」
「あー、あんまりグロい倒し方は遠慮してほしいっす」
「しないよ。トラをモツ抜きしたのは事故みたいなもんだったからね?」
「なに和やかに話してんだ! 早く逃げろっ!」
『『ガルゥアッ!!』』
なにを思ったのか、俺に向かって襲い掛かってくるウェアウルフ2体。
アレか、他の面子が懸命に戦ってるなかサボってる俺なら、一番弱そうだし倒せるとでも思ったのかな。
突っ込んできた2体のウェアウルフの首を片手ずつで掴み、そのまま身体を持ち上げた。
『グルッ!? グ、グブブ……!!』
『グググガガグゥゥ……!』
息ができないからか、苦しそうに呻いている。
あんまり苦しませるのも可哀想だし、さっさと仕留めよう。
「そぉいっ!」
『『ギャンッ!!』』
ウェアウルフの頭と頭をかち合わせごっつんこ。そのまま御臨終。合掌。
もうLv20の魔獣相手じゃ魔力も気力もいらんな。ダイジェルのスタンピードの時はあんなに怖かったのになー。
「え、えええ……」
「う、嘘だろ、首掴んでかち合わせて仕留めやがった…」
「てか武器は!? 武器は使わないのかアンタ!?」
「いやいや、ウェアウルフの頭蓋使ってたでしょ」
「それを一般的に武器とは言わねぇよ!」
「それより後ろ、危ないぞ」
『ガルッ!!』
「え? う、うわぁぁあ!!」
俺にツッコミ入れてる余裕なんかないはずなのに、いちいちリアクションとってるうちに後ろから不意打ちをかけられる3人。
……ホントにもうこの3人は。
『コケェッ!』
『ガブハッ…!?』
3人の後ろから不意打ちを仕掛けてきたウェアウルフの、さらに後方。
そこから虎視眈々とチャンスをうかがっていたのか、ヒヨ子がウェアウルフの背中に伸魔爪を突き刺し、胴体を魔力の刃で真っ二つに切り裂いた。
攻撃する直前まで幼生擬態を使っていたから、ウェアウルフに気付かれずに奇襲を仕掛けられたみたいだな。
ていうか、もうLv20台の魔獣を仕留められるのか……。この子も成長速すぎてちょっと怖いわー。
「に、ニワトリ…!? 従魔の首輪を付けてるってことは、アンタの従魔か?」
「ああ、そうだ。よくやったなヒヨ子」
『ココッ』
「……最終的に、自分らだけで魔獣全部倒しちゃったんすけど」
「アルマにいいとこ見せようと変に気張ってるから、倒せる相手も倒せなくなるんだろ。もう次のポータル見つけたら帰った方がいい。正直言ってこれ以上こんな状態で進むのは君たちにとっては危険すぎるし、俺たちも疲れるだけだ」
「うっ……」
「……ごめん、アルマちゃんの助けになるどころか、迷惑かけちまった…」
再びションボリする3人。ちゃんと反省できるあたり悪い奴らじゃないんだろうけど、どうにも今回は空回りしてしまって本来の実力を発揮できなかったようだ。
まあ上手くいかない時期は誰にでもあるもんだ。日本での俺なんか常に…これいじょうはおもいだしたくもないのでやめておきましょうかはははは。
「…今はまだ未熟でも、努力すればきっと強くなれる。私もまだまだ未熟だからあまり偉そうなことは言えないけど、自棄になって無茶するより、地道に努力して腕を磨くことが大事。だから、落ち込まないで頑張って」
「あ、アルマちゃん……!」
「こんな不甲斐ない俺たちに、なんて優しい子なんだ……!」
「あ、アルマちゃんっ! オレら絶対もっと強くなるよ! 強くなれたら、その時はオレと付き合って」
「それは嫌」
「即答!?」
落ち込んでる3人を元気づけようと優しく励ますアルマ。マジ天使。
でもプロポーズは食い気味に断る。無慈悲。
……まあ、こいつらスキルもそこそこ鍛えてるみたいだし、本気で頑張れば案外本当にひとかどの冒険者になれるかもしれないな。多分。
脱出ポータルが見えてきた。
俺たちは次の階層へ、男3人パーティは帰還することに。
正直これ以上一緒にいてもお互いのためにならないだろうし、素直に帰ってくれて助かった。
「おお? ポータルの傍に宝箱が2つもあるな」
「じゃあ山分けしようか。宝箱一つずつで」
「え? い、いや、オレたちはいいよ。なんの役にも立たなかったし……」
「なら強くなった時にでもお返ししてもらえばいいさ。2つもとるのは独り占めしてるようで気がひけるし」
まああんまり役に立ってなかったのは否定しないが。
さーて、なにが入ってるかなー?
「おおっ!? これミスリルの剣じゃねーか!」
「すっげぇ! こんないいもん初めて手に入れたぞ!」
男3人の方はミスリル製の剣(ATK+200)となかなか高価な装備を手に入れられたみたいだな。
こりゃこっちの宝箱も期待できるかもな。では御開帳ー。
………
「……なんすかこれ? 袋いっぱいに何か詰まってるみたいっすけど」
「小さい、クルミみたいな木の実?」
デジャヴ、なんかデジャヴー!
どうして俺が宝箱開けると豆とか木の実とか微妙なもんばっかなの!?
い、いや、バニラ豆の例もあるし、もしかしたらこの木の実も有用なモノかもしれな――
「おい、固まっちまってどうしたんだ?」
「な、なあ、中身がショボくて落ち込んでるなら、この剣そっちに――」
「いやいい、これでいい、むしろこれがいい」
「え? そ、そうか……?」
「カジカワさん、それ、なんの木の実だったんすか? 食べられるものなの?」
「アイスクリームの材料みたいに、香り付けに使う物だったりするの?」
「当たらずといえども遠からずだな。熟成までちょっと時間がかかるけど、コイツを使えばアレを作れるな。正直嬉しい。超嬉しい。バニラに匹敵するくらい嬉しいふふふははは」
「笑い方が不気味すぎるんすけど!?」
「また、美味しいものが作れる?」
「ああ、期待しててくれ」
嬉しすぎて変な笑いがこみ上げてきた。
完成するまで半月くらいかかりそうだが、他の材料も急いで手に入れないとな。楽しみだなー。
……金策のこと考えたらミスリルの剣の方を持って帰った方がいいのは分かってますよ、はい。
お読みいただきありがとうございます。
バカーズこと3人組も決して弱くはないのですが、今回は空回りした結果足手纏いに。
もしも再登場したらちょっとは活躍させてあげたいなぁと思わなくもないです。
あと主人公が周りを恐怖させるの得意分野とか言われてて草。




