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ダンジョン攻略開始

新規のブックマーク、ありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。

ジュリアン工房に顔を出した二日後に、素材目当てにダンジョンに潜ることになった。

さすがに俺一人で攻略するのはちとキツそうなので、アルマとレイナ(とヒヨ子)に手伝ってもらうように頼んでみる。



「俺の装備の材料のための攻略なんだが、ホントにいいのか? すごく助かるけどさ」


「…ヒカルは自分のことになると遠慮しすぎ。もっと仲間を頼るべきだと思う」


「自分の新しい装備も、元はカジカワさんとアルマさんが仕留めた魔獣の素材だし、今度は自分もお手伝いするっすよー」


『ピィ』



同じパーティとはいえ、俺個人の事情で結構な重労働を強いてしまうのは気がひけるなー。

そして嫌な顔一つせず協力してくれるウチの子たちマジいい子。帰ったら労いにアイスクリームでも作ってあげよう。…バニラの豆、もう一食分くらいしか残ってないけど。


前日はダンジョン攻略のための下準備。

浅い階層ならダイジェルのダンジョンと似たような構造らしいが、階層が深くなってくるにつれ急激な環境変化やら殺意満点なトラップやらが待ち構えている。

魔獣の強さもどんどん強くなっていくし、最深部まで攻略するのは一筋縄ではいかないだろう。

急激な温度変化に備えて耐熱耐寒用装備に、状態異常回復ポーションその他色々購入。

ただでさえ武器を作るのに金がかかるのに、下準備でも結構なお金がとんでいった。…ダンジョンの魔獣の素材やドロップに期待しよう。




はい、というわけでダンジョン攻略当日です。はいじゃないが。

ダイジェルのクッソマイナーなダンジョンと違って、ダンジョン周辺に屋台やら受付やらが設置されているようだ。

ダンジョン潜るたびに受付通さなきゃならんの? 面倒な。



「あの、ダンジョンに潜りたいんですけど」


「いらっしゃいませー。ダンジョン攻略希望の方はこちらにパーティ名と名前を書いてからお入りください。なお、Eランク以下のパーティは5階以降には入らないようにご注意ください。危険ですので」


「5階以降の魔獣のレベルはどれくらいでしょうか?」


「5階からはLv20以上、10階からはLv30~40、最下層である15階はLv40~50ほどの魔獣が徘徊しています。無理して進み過ぎないようにご注意を」


「分かりました、ありがとうございます」



受付嬢から簡単な説明を受けて、いざダンジョン攻略へ。

本当は階層ごとの環境とかのことも聞き出しておくべきなんだろうが、あえて聞かない。

最初は環境の変化にどう対応するべきか、自分たちで考えることも大事だと思うから。

…やっぱ聞いときゃよかったって後悔しそうな気もするが。


他のパーティの人たちも何組か出たり入ったりしているようだ。

こちらを見ると、皆怪訝そうな顔をしたりなぜか俺の方を睨みつけてくる人もいた。なんでや。



「おいおい、そんな若い女の子二人だけ連れて入ってく気か? 危ねぇぞ」


「二人だけじゃないですよ。マスコットも一緒です」


『ピッ』


「いや大して変わんねーだろソレ…」



他のパーティの青年から警告された。ヒヨ子を紹介したが呆れ顔で顔を押さえている。

これでもウチの期待の新戦力です。いやホントレベリング3回目で進化するとか割とマジで成長率は随一かも。

あと女の子二人も強いから。特に黒髪の子はアンタより基礎レベル上やぞ。






手続きを終えてまずは一階層。魔獣もアイテムも罠もショボいものしかない。しかし油断してると痛い目に遭うことには変わりないので慎重に進む。



「自分、ダンジョンに潜るの初めてなんすけど、意外と明るくて進みやすいんすねー」


「この光源とかどう考えても自然に作られたもんじゃないよな。誰が作ったもんなのやら」


「神様、とか」


「そうかもな」



ローグライクツクール的なシステムでもあるんだろうか。

で、それを使って魔獣やアイテムの出現率なんかを細かく設定してる神様を想像するとちょっとシュール。会ったことないけど。

…俺、異世界こっちでも地球あっちでも神様なんか見たことないけど、ホントにいるのかねぇ? 信じちゃいないけど、居てもおかしくはないって認識なんだが。まるで幽霊みたいな。



「今日はあくまで様子見だ。無理に最下層まで行くことは考えずに、ダンジョンの進み方の参考程度に攻略していこう」


「言い出しっぺのリーダーがあんまやる気ないんすけど。いや安全第一で攻略したいのはよく分かってますけど」


「初日の目標としては何階層まで?」


「できれば10階層くらいまで行きたいけど、環境変化とかでキツそうなら早めに帰ろうと思ってる」


「トラップとかにも気を付けないと。浅い階層ならそれほど危険じゃないけど、奥に進むにつれてどんどん危険になっていくから」


「魔獣のテリトリーとはまた違った怖さがあるんすねー。気を付けないと……って宝箱っす! ふわぁ、こんな絵本に出てくるようなコテコテの宝箱なんか初めて見たっす!」



おお、1階層から宝箱とは幸先いいな。

でも他のパーティが中身を持ってった後とかだったら残念――――!?



「レイナッ!! 今すぐそれから離れろっ!!」


「へ…?」


「どけぇっ!」



レイナが開けようとした宝箱が、ひとりでに開いた。

その中身には、上下に牙がビッシリ生えていて、毒々しい紫色の舌が伸びている。


≪魔獣:コモン・ミミック Lv15 宝箱に擬態し、近付いてきた対象を捕食する魔獣。移動能力に乏しいが、捕食する際の瞬発力は高い≫


だから読んでる暇ねぇって! 要はミミックだろコイツ!

魔力遠隔操作でレイナを引っ張って捕食されないように危険域から離脱させる。

そして、口を閉じたミミックを思いっきり蹴っ飛ばす!



「オラァッ!!」



鳴き声も上げず、壁や天井にバウンドする音を響かせながら吹っ飛ぶミミック。

ガタン ガシャン  バキィッ と激突するたびに箱が砕かれていき、地面に落ちるころには原形を留めていなかった。

お、おぅ。サッカーボールみたいな感じでバウンドするかと思ったら、思った以上にはねてちょっとビックリ。



「ひ、ひいぃ……! な、なんなんすか、今のはぁ……!?」


「ミミックっていう、宝箱に擬態して開けようとしたヤツを食おうとする魔獣だ。うかつに変なことすると、ああいった罠にかかってえらい目見るから気を付けろ」


「は、はいっす……!」


「…1階層なのに、あんな危険な罠が出ることもあるんだ……」



俺も驚いたわ。初心者に対して殺意強すぎないかこのダンジョン。

宝箱とか開ける時には、事前に魔力感知とかで安全確認してからにしよう。



ちょっとしたトラブルもあったが、気を取り直して先へ進む。

メニューには危険なトラップがあったら即表示するように頼んであるし、初見殺しのトラップなんかにひっかかることはないだろう。


2階、3階と進んでいるが、ダイジェルのダンジョンに比べて魔獣のランクアップが若干緩やかな気がする。

ダイジェルなんか3階層でLv20台の魔獣が出現してたのに、そろそろ5階層に達しようとしてようやく同じくらいだ。

……ん?



「人間っぽい複数の魔力反応が、この先のスペースでちょっと大きな魔獣の反応と戦ってるっぽい」


「他のパーティの人たちっすかね?」


「……大丈夫そう?」


「さあ? 多分大丈夫だと思うけど、相手の魔獣のレベルがちょっと聞いてた話よりも高いような。大体Lv30くらいはありそうだぞこりゃ」


「5階層でLv20くらいって言ってたのに、えらく強い奴と遭遇しちゃってるみたいっすね」


≪稀に、数階層先の魔獣が出現することがあり、ダンジョン攻略者たちにはサプライズモンスターと呼ばれている。出会った場合は即逃走するか、ボスモンスター扱いして倒すかの2択≫


うーん、戦ってるパーティはLv20後半くらいのメンバーが3人か。

油断しなけりゃ多分大丈夫だと思……あ、一人重傷を負ったのか、生命力が一気に削れた。

このままじゃヤバそうかな。



「ごめん、やっぱダメっぽいからちょっと助けに行った方がよさそうだ」


「あらら、急いだ方がいいっすね」



さて、間に合うかな。

やれやれ、他のパーティの面倒までいちいち見てらんないってのに。忙しいわー。

お読みいただきありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[一言] 忍者のくせにミミックトラップに引っかかるなんて、 忍者つかえねーな忍者 まぁ、NINJAじゃなくて忍者だからな仕方ないね
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