表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

178/584

やめて差し上げろ

新規の評価、ブックマークありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。



「このドリル槍は標的突いた後に持ってる腕への負荷がヤバすぎる。能力値が低けりゃ槍を持ってる腕が捩じられて、相手より持ち手の方がダメージがデカいと思うぞ」


「うむむ、採掘用の魔道具のようにはいかないか。かといって槍本体の重量をこれ以上重くするわけにもいかないのである」


「こっちのチェーンソーみたいな剣はもっと肉厚に剣身を作らないとすぐに折れちまうぞ。魔刃とは違った発想で攻撃力を上げようと工夫してるのは分かるがな」


「剣身を肉厚にか! うむ、試してみるのである!」



はいどうも、ただいまジュリアンの作品を一つ一つ試しに使ってみて、今後の参考に改善点や感想を伝えているところです。

ホントはこんな禍々しい武器なんか使いたくないんだけどなーでも何事も経験だからね仕方ないねーははは。



「……二人とも、すごく楽しそう」


「……なんだかんだ言って、根っこの部分に近いモノがあるんだと思うっす」


『…ピ』



後ろからの視線が痛いが、こういう変な武器は男のロマンだからな。

女の子にはちょっと理解しがたいかもしれない。する必要もないだろうけど。

俺も女物のファッションのこととかはよく分からないし。


色々試してみたけど、気のせいか俺の魔力操作で使ってる攻撃方法を無理やり武器として作ったような作品がちらほらあるな。

単に有効な攻撃方法を模索してたらたまたま似たような発想に至っただけかもしれないけど。

……ん?



「こっちの杭打機みたいな武器は?」


「うむ、エクスプロージョンバスターと似たような発想、というかこっちの方が先に作られたものなのだが。火の魔石を使った爆発機関によって、勢いよく杭を突き出し攻撃する武器だ! 名付けて――」


「パイルバンカーじゃねーか! こんなもんまで作ったのかお前!?」


「うむ、そうそうパイルバンカーである! ………おや?」



思わず武器の名前を先に言ってしまって、それに対してジュリアンが首を傾げて怪訝そうな表情をしている。



「な、なぜこの武器の名前を知っているのだね? 我以外に知る者などいないと思っていたのだが」


「え、えーと、アレだ、過去の勇者が残した、日記? みたいなものの写しをチラッと見た時に、これによく似た武器が、書いてあったよーな」



思わず咄嗟に嘘を吐いて適当に誤魔化そうとする俺。

…でもこれがいけなかった。



「なんと!? 我が家に伝わる家宝である、勇者の手記が他にも存在していたのか!」



勇者の手記? 家宝?

……ちょっと待て、なんか嫌な予感が。



「勇者の手記って、過去の勇者が遺した書き物のことか?」


「うむ! なにを隠そう、我が作った芸術武器のほとんどは過去の勇者が残した、武器の設計図を基に作られているのだ!」


「設計図って、……え、この武器って元は勇者が設計したもんなの?」


「ああ。我が家に伝わる家宝、勇者の手記を成人前にこっそり読んでな。スキルを度外視した新たな可能性に溢れる武器設計図の数々を目にした時に、我の価値観は大きく変わった。なんという斬新な発想なのだと衝撃を受けたよ」


「それ、ちょっと見せてもらうことってできるか?」


「写本でよければ見るかね? 原本は我が家の家宝であるからして、家を継がなかった我に所有権はないのでな」



家ねぇ。公爵家継がずに武器屋やってるんだっけ? 親御さん今どんな心境なんだろうか。

お、写本って言うから質素なノートを想像してたんだが、きちんと装丁されてる立派な本だ。どれどれ。



………




こ れ は ひ ど い 。




う、うわぁ、うわぁぁあ…。

…うん。どの武器の設計図もよくできてる。素人が作ったものとは思えないほどかなりしっかりした構造理論が書かれていて、職人が見れば少し調整すれば再現するのは難しくないと思う。

でも武器の名前とか、日本語で書かれている解説が酷過ぎる。なんだよ天を衝くドリルランスって。なんだよ神をも殺すチェンソーって。

これ、アレだ。俗にいう黒歴史ノートだ。



「勇者の故郷で使われている言語が混じっているようで、読めない部分も多々あるがそれでもこれの素晴らしさは充分理解できるのである! 是非御本人にお会いしたかった……!」



やめろ。やめて差し上げろ。

多分、これ真面目に書いたモノじゃなくて、闘いの日々に疲れた勇者が書いた息抜きみたいなもんだと思う。

ふざけて書いた厨二めいた黒歴史ノートが、大真面目に貴族の家に家宝として伝わってる地獄。なにこの公開処刑。羞恥プレイかなにか?

本人としては多分中身を見ずに今すぐ破り捨てて燃やしてほしいんだろうなー……。


てかこのノートのせいで、ジュリアンっていう貴族の跡継ぎになるはずだった青年の人生が大きく狂ってしまってる件について。

誰だこんなもん遺したアホ勇者は! ええと、著者は『相馬 竜太』さんね。お前のせいでジュリアンの将来がヤバい。というかもう今現在がヤバい。



「なるほど、我の武器との相性が良かったのはある程度勇者の設計した武器に対する知識があったからかもしれないな! なんという巡りあわせだろうか! フハハ」


「お、おう……」



……まあ、本人結構幸せそうだしもういいや。



「ふふふ、今日は貴重な意見を述べてくれてありがとう。非常に有意義な時間を過ごせたよ。今後の武器製作の参考にさせてもらうとしよう!」


「…そりゃどうも」


「…ところで、今作っている真・エクスプロージョンバスターの製作について相談したいことがあるのだが、よろしいかな?」



ちょっと表情を曇らせながら、ジュリアンが武器についての相談を持ちかけてきた。……その名前も勇者がつけたんだろうか。

なんかトラブルでもあったのか?



「槌頭の部分に、強力な魔獣の素材を使って製作しようとしているのだが、どうにも街の市場などを見ても連続爆発に耐えられそうなほど頑丈な素材が見当たらないのだ。少なくともAランク上位以上の素材が使いたいところなのだが……」


「うん? この街って工業都市だし、よく探せば見つかると思うんだが」


「それが、最近魔王が誕生した影響で魔族が各地で破壊活動をしているだろう? その対策として編成された軍などに、ランクの高い素材を根こそぎ買い叩かれてしまったようでな。どの店もせいぜいB~Cランク以下相当の素材しか残っていないのである。さすがにミスリルやアダマンは工業都市には必需品だから全て持っていかれたりはしなかったようだが」


「……マジか」



ちょっとマップ画面を使って、爆裂大槌の素材に使えそうな素材を売ってる店が無いか確認してみたが、ダメだ。該当ゼロ。

どうしよう、妥協した素材で作られた武器じゃすぐに壊れちまうし、かといって他の街まで取りに行っても同じ状況かもしれないしなぁ。

魔獣山岳の魔獣の素材を使うか? でも今の俺たちじゃ仕留められるのはせいぜいAランク下位がいいとこだし、無理しすぎるのも良くない。

どーすっかなー。……ん? メニューさんどしたの?


≪工業都市近辺のダンジョン攻略を推奨≫


え? いや、なんで?


≪ダンジョンの攻略の報酬アイテムの中には、装備品などの材料に使用可能な素材が与えられる場合がある。ダンジョン攻略時に与えられるアイテムはランダムなので確実に手に入るわけではないが、強力な装備品や素材が与えられた前例があり、現状ではもっとも安全かつ手早く素材を手に入れられる手段であると推測≫


なるほど。そういえば、この街の近くにも攻略済みのダンジョンがあるって言ってたな。

久々に潜ってみるのも悪くないし、素材目当てに攻略してみるかな。


≪ただし、近辺ダンジョン最下層の15階はLv50台の魔獣とエンカウントすることもあるので、対策は万全に行うことを推奨≫


Lv50台までならなんとかできると思う。最悪逃げればいいし。

さーて、そうなると近日中にダンジョンに潜ってみるかな。最初っから最下層目指すつもりはないけど。

……できれば、またバニラの豆とか欲しいなー。


お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[一言] >神をも殺すチェーンソー その『かみ』様、闘う前に「これが いきものの サガか···」とか言ったりしません?
[一言] 名前付き黒歴史ノート・・・人に見られたら外を歩けないデータが入ったPCに並ぶ後世に遺してはならない遺物じゃないですか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ