定時上がり
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レベリングは初日からなかなか順調だな。
アルマはLv30台後半からLv40台前半の魔獣を合計12体、レイナはLv20台の魔獣を9体。
狩猟祭じゃ31体とか57体とか、色々頭おかしい数を狩っていたからそれに比べると数自体は少ない。
しかし、取得した経験値は狩猟祭の時よりも多かったりする。理由は簡単、討伐した魔獣のレベルが高いからだ。
レベルが10も上がれば段違いに取得できる経験値も多く、アルマ、レイナ共にレベルが1ほど上がっている。
「……疲れた」
「ぜぇ、ぜぇ、ひ、一回り近くレベルに差がある相手と連戦は、さすがにケホッ、し、しんどいっす……」
その分、負担も相応に大きいようだが。
途中でレベルアップしたからMPにはまだ余裕があるが、SP消費と疲労がそろそろきつくなってきたみたいだな。
アルマはまだ大丈夫そうだが、気力操作に頼る比重が大きいレイナにはもうこれ以上は難しそうだし、今日はこれくらいにして帰ろうかな。
「はい、ここまでー! 今日のお仕事兼レベリングはこれで終了としまーす! 定時過ぎたらさっさと帰宅しましょー」
「定時……?」
「生産業じゃあるまいし、定時なんか決まってないっしょ…」
ノリで言ってるだけだから細けぇことはいいんだよ。
二人ともよく頑張った。こんだけ狩れれば充分だ。
さーて、帰るかなー。………ん? なーんか忘れてるような。
「……そういえば、カジカワさんだけ全然魔獣倒してないっす」
「…言われてみれば、確かに」
しまった、二人のところに魔獣を運ぶのに夢中で自分のレベリングのこと忘れてやんの。アホス。
このままでは少女二人に魔獣討伐を押し付けて楽してるヒモ男と思われかねない、つーかまごうことなきヒモじゃん俺!
「……残業するんで、二人は先に宿に戻っておいてくれ」
「残業……?」
「だから別に定時とか決まってないから残業もなにもないっすよ。1日中魔獣を運んだりして大変だっただろうし、カジカワさんも今日はもうあがりましょうよ」
「大丈夫大丈夫、ちょっとその辺の魔獣を何匹か高いとこから落とせば終わるし、そんなに時間はかからないよ」
「倒し方がちょっとエグすぎないっすか!?」
「空を飛べると、そんな倒し方もできるんだね」
「墜落直前にエアステップとか使われて上手くいかないこともあるけどな。まあ魔力操作で拘束すれば問題ないけど」
さてさて、そうと決まればさっさとその辺にいる魔獣を落下死させていきますかね。
……なんか通り魔にでもなった気分だ。
『ビェバァァァァァァアアアアア!!!』
変な叫び声を上げながら、地面に向かって墜落していくデカいネズミ型の魔獣。いやヌートリアか?
Lv40台までの魔獣なら魔力操作で拘束した後、魔力飛行で高高度まで飛んでから問答無用で墜落させられるし楽だわー。
幻惑の仮面が無いから人に見られたりしたらまずいが、近隣のマップに人の表示はないから大丈夫だろう。
お、レベル上がった。迅雷白虎をモツ抜きした時以来のレベルアップだな。これでLv35だ。
ようやくLv30台後半に突入かー。ドラゴンと戦えるようになるにはあとどれくらい強くなればいいのやら。
……あの黒いドラゴン、あいつの飼い主のけしかけた魔獣のせいでアルマが死にかけてたし、いつかステーキにしてやらなきゃ気が済まん。
レベルは上がったけど、実戦の訓練にはならなかったなー。MP全快したし、気力も余ってるからもうちょっと強めの魔獣と戦って終わるか。
……! 丁度近くにかなり大きい人型の強力な魔獣の反応が。しかもこっちに近付いてきてる。
派手に魔獣を墜落させてるのを見て、脅威だと思って排除しにきたのかな。
姿が見えて、シルエットから一瞬ホブゴブリンかと思ったけど、存在感が違う。明らかに別格の魔獣だ。
初見の魔獣だし、ステ確認といきますか。
魔獣:オーガ
Lv57
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :1244/1248
MP(魔力) :868/889
SP(スタミナ):752/969
STR(筋力) :1180
ATK(攻撃力):1180(+240)
DEF(防御力):1020
AGI(素早さ):810
INT(知能) :521
DEX(器用さ):874
PER(感知) :833
RES(抵抗値):746
LUK(幸運値):147
【スキル】
魔獣Lv6 体術Lv10 極体術Lv5 拳法Lv10 格闘術Lv3 棍術Lv5 投擲Lv5 牙術Lv5
【マスタースキル】
オーラ・ミティゲイション
達人の拳
装備
魔樹の棍棒
ATK+240
姿を見せたのは、3mはある巨体に筋骨隆々というかもう筋肉の塊と言うべき青肌の人型魔獣。
鋭い目つきに荒々しい表情。ホブゴブリンとは月とスッポンだ。
待て、待ってくれ。ちょっと強過ぎんよー。
白金ニワトリや迅雷白虎ですらステータスは3ケタ止まりだったのに、こいつ攻撃防御ともに4ケタ突入してるんですけど。
今の俺のステが大体630前後だろ? 元の身体の分の力を足してもせいぜい700ちょっとってとこだし、素の状態じゃ勝ち目は薄いだろうなー。
てかこいつ、棍棒持ってるけどスキルを見る限りじゃ明らかにステゴロ主体の魔獣なんだけど。
素手で戦って成長してきたけど、そこそこ強い武器を拾って使うようになってから棍術スキルを取得したのかな。
魔獣の事情がステを見て推理できる。ちょっと楽しいかも。
『グゥァァァアアアアアアアアッッ!!!』
訂正。全然楽しくねぇ! 超怖い!
こんな強力な魔獣と戦ってられるか! 俺は街に帰るぞ! ……なんか死亡フラグっぽく聞こえる。
≪非推奨。万が一、梶川光流を追って街に侵入した場合街に被害が及ぶ危険性があり、その罰を受けることになる可能性が高い。レベルが上がったばかりで魔力気力ともに余裕のある今ならば討伐は充分可能≫
それ相手のステ見て言ってる? 4ケタ超えてる数値がある時点でヤバくね? 無理じゃね?
≪気力により膂力を強化すれば問題なく対処可能と推測≫
……チクショウ、こうなったらやったるわ。
その言葉信じるぞメニューさん! もしもダメだったら恥も外聞も捨てて救助求めて街まで帰るぞ!
ああもう、白金ニワトリ倒した時にもう単騎でこんな強い魔獣と戦わないって思ったばかりなのにー!
『グゥアァァアッ!!』
「うわぁいっ!?」
【縮地】を使ったのか、オーガがとんでもない速さで接近して棍棒を振り下ろしてきた。
合計攻撃力1400を超える一撃。まともにくらえば即HPが溶けて死ぬ。
やばいやばいやばい! やっぱこれ無理だって! 気力強化で両腕を瞬間強化及び魔力装甲で保護!
棍棒を両手で受け止めた瞬間に バキィッ! となにかが折れる音。 一瞬俺の腕がイッたのかと思ったが、全然痛くない。
オーガの持っている棍棒が、インパクトと同時に折れて使い物にならなくなったようだ。
……あれ? あの棍棒、アルマの剣に匹敵するくらいの攻撃力補正があったはずだよね? 木製だから強度自体はさほど強くなかったのかな。
『グッ!? ゲァア!!』
「うおぅ!?」
棍棒が壊れたことに一瞬狼狽えた様子だったが、すぐに徒手空拳に切り替えて攻撃してきた。
弱い魔獣の力任せの大振りと違って、スキのない綺麗な攻撃。そこらの拳法家よりよっぽど様になってるように見えるな。
とりあえず一旦距離とろう。近接戦闘じゃちょっと分が悪そうだ。魔力飛行で上空へ移動するか――
『グガアアアアアア!!』
目に見えない階段を上るように、空を駆けて追いかけてくるオーガ。
こいつ【天駆】まで使えるのかよ!? 見た目脳筋なのに割と芸達者だなお前!
どうしよう、こんだけ強力な魔獣相手だと魔力の遠隔操作じゃ拘束できない。
多少動きを鈍らせることくらいはできるだろうけど、常時そんなことやってたら魔力がもたない。
……こうなったら、超短期戦といきますか。
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