変な客
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「小さな手だな、だがよく鍛えているのが分かる。その華奢ななりでよくやるもんだ」
「いやいや、おじいさんも同じくらいの背じゃないっすか」
「ブフッ」
「やかましいわい。あとバカ弟子笑うな!」
手相占いでもしているかのように、まじまじとレイナの手を見て呟くじい様。
はたからだと事案っぽく見えなくもない。いや、孫と戯れてるおじいちゃんに見えるのが普通だろうになんで事案なんて思ったんだろ俺……。
脳内ゴーストに毒されてきたのかな。いやそれも結局俺の思考なんだけれども。
「うむ、握りや刃渡りの目途はついた。あとは実際に作ったものを振ってみて、違和感があったら調整するか」
「分かったっす」
「あと『シュリケン』と『クナイ』だったか? 両方とも投擲用の武器らしいが、また随分とけったいなもんを注文するな」
「忍術スキルで投影できる武器なんすけど、なんでかこんな形なんすよ。でもやたら手に馴染むし、慣れれば使いやすいっすよ。ただ、スキルで創ったやつはちょっと弱くて牽制くらいにしか使えそうにないっすから、切り札になるような強いのが欲しいんすよ」
実際に投影してみせて説明するレイナ。
見た目は金属製の苦無と手裏剣だが、材質はレイナの魔力を固めた物らしく能力値の影響が大きく出る。
成長すればそこそこ強い武器になりそうだが、今のレベルではちょっとイマイチのようだ。
「なるほど。……ふむ、どちらもオオカミやトラの牙を使えば問題なさそうだな。短刀に使う部分以外の牙を無駄にせずに済みそうだ」
「どんなのができるか、今から楽しみっす!」
「おう、期待しとけ。……にしても、魔獣の死体をそのまま持ってくるとはな。状態はまるでついさっき仕留めてきたみたいに新鮮だが」
「すみません、前の街の解体屋さんではこれらの加工は難しいと言われまして」
「こんだけの素材になりゃ無理もないな。それに解体屋の中にゃおいしい部分をピンハネする悪質なところも少なくない。ウチから信用できるところに持ってってやればその心配はねぇけどな。お前さんがウチの店を信用できるならの話だが」
「売っている商品の質がいいですし、適正価格で売っているので信用しますよ」
「……目利きに自信があるみたいだな。鑑定スキルも無いのによく店を選べるもんだ」
メニューさんのおかげだけどな、マジチート。鑑定スキルなんか目じゃないわー。
正直、メニューさんが使えなかったら軽く2、30回は死んでる自信がある。……なんて情けない自信だ。
他は白金ニワトリの羽の繊維で作る手袋と俺の胸当てにアルマの胴当て、あとレイナの装束のための採寸を済ませてようやく作ってもらうための準備が済んだ。
「そっちの黒髪の嬢ちゃんの武器は元々持ってるのが強力そうだからいいが、お前さんは武器を持たんのか?」
「私のステータスを見ればお分かりでしょうが、半端な武器を持ってもかえって戦いづらいですし、強力な武器を持っても使いこなせませんので」
「だからって素手で戦うよかマシだと思うんだがな……能力値はかなり高いが、それでも限界があるだろうに。それとも専用の武器でも持ってるのか?」
「ええ、まあ……」
「これだ」って武器があれば使ってみないこともないが、今のところ見当たりませぬ。
大抵の武器なら魔力操作で再現できるし、今のところ無理に武器を持つ必要無いしなー。
武器というか俺謹製の変な戦闘用アイテムだったらちょっとずつ作ってたりするんだが。大して強力でもないけど使われたら地味に鬱陶しい、性格の悪さが滲み出てるようなやつばっかだけど。
「一番楽しみなのはプラチナムコッコの羽で作る手袋ですかね。あのニワトリは本当に強かったし、丈夫なものができるでしょうね」
「ああ、確かにこいつを素材に使えばそのへんの手甲なんか目じゃないくらい防御力の高いのが作れそうだな。……っておい! そこのヒヨコなにやってんだ!?」
「え? ………おい、ヒヨ子。なにを食っている」
『ピ?』
じい様に言われてヒヨ子の方を見てみると、ヒヨ子が白金ニワトリの羽を啄んで食べているのが見えた。
話を聞いてなかったのかお前は。これから装備品を作るための素材になにやってんだ、つーかそれお前の産みの親だぞ! 当然のように共食いするのやめろ!
『ピピッ! ピッ!』
「どうしても食べたくなって我慢できなかった? いやそれお前の……ん?」
ヒヨ子が白金の羽を飲み込んだ直後、ヒヨ子のステータスに変化があった。
能力値が5割程度上昇したうえに、スキル欄に【体術】【爪術】【牙術】が追加されているのが確認できた。
……どういうことだ。
≪ある程度強力な魔獣になると、自分の子供に自身の身体の一部を摂取させ、ステータスの一部を継承させることができるケースがある。ただし、生涯で一度しかステータスの継承は不可能≫
そんなシステム聞いてないですよメニューさん。
いや聞いてたとしても倫理的にどうなんだって躊躇してたかもしれないけどさ。
だがおかげで今後のレベリングがスムーズに進められそうだ。……レベリング初日はその辺の雑魚相手でも散々だったからな。
本来、メドゥコッコは集団で狩りをしてようやく他の魔獣と渡り合えるらしく、ヒヨ子みたいにまともな戦闘スキルのない状態のまま単騎で他の魔獣と戦おうとするのは自殺行為らしい。
気力操作で強化してやって、ようやく1匹倒したころにはボロボロだったし、それも頷ける話だ。
白金ニワトリの羽を2、3枚啄んだら満足したのか、興味を失ったようにそっぽを向いてしまった。冷たいなオイ。
魔獣の親子関係ってのは案外ドライなものなのか、それとも本能は自分の本当の親だということを理解しているからこそ食べたのか。
……なんか、改めて罪悪感ががが……。
「今のは継承か? となると、そのヒヨコはこのニワトリの……」
「ええ、仕留めた後に死体が産み落とした卵から孵化したのがこのヒヨコです。すぐに孵化してしまい、最初に見たものが私だったので、すりこみで私を親だと……」
「そうか。見たところよく懐いてるようだし、大事にしてやんな」
「はい。………では、装備が出来上がったころにまた来ます」
「おう、楽しみにしとけ。ああ、査定額はこんなもんだが大丈夫か?」
「どれどれ、………ま、まあ、なんとか、払えそうです、はい」
「がはは、その様子じゃかなり痛い出費みたいだな。だがこれでも適正価格なのはお前さんなら分かるだろう?」
じい様の言う通り、合計で75万エンもの査定だがそれでもぼったくりではない。極めて妥当な値段だ。
でもこの街の宿屋100日分ものお金が飛んでいくのはやっぱ痛い。予定を早めて今日から魔獣討伐にでも行かないと金欠になりかねんぞ。
「なあ、ジジイ。俺にもできることねぇのか? こんだけすげぇ素材そうそう入ってくることないし、ちょっとでも触れてみたいんだが」
「……絶対に失敗しない作業だけならやらせてやる。だがいいか、大事なのは俺たちの事情なんかじゃなくて、客のために最高の仕事をすることだ。それを忘れんじゃねぇぞ」
「……おう。ヘマなんかしねぇさ」
帰り際に弟子の青年がじい様になにか言ってたけど、失敗して粗悪品を作られなきゃそれでいい。
店に来た時は喧嘩ばっかしてるイメージだったけど、なんだかんだで話は合うのかもしれないな。
さて、お金を稼ぐのとレベリングを兼ねていつもの魔獣討伐に向かいますか。
…やっぱ冒険者というより、魔獣討伐屋と化してる気がするな。
~~~~~じい様視点~~~~~
変な客だ。
失礼に聞こえるかもしれないが、変だとか異質だとかそんな表現しか思い浮かばない。
受け答えは丁寧で、黒髪以外に特徴があるわけでもない。だがそれ以外の全てがおかしい。
ステータスがおかしい、スキルを一切取得していない、なのに魔獣をテイムしている。
そして極め付きはこの魔獣の死体だ、鮮度が良すぎる。
……今の客が取り出したバッグに保存効果の付呪でもついていたのかもしれないと思ったが、鑑定してみるとアイテムバッグですらないただのカバンだった。
なのに中からこれだけの魔獣の死体を取り出してみせた。……なんなんだろうな、あの客は。
「おい、早く解体屋に依頼しねぇと素材が駄目になっちまうぞ」
「ああ、分かってる。ロベリンのところに急いで持ってきな」
「おう。しっかし、俺と同い年くらいに見えたのにこんだけ強い魔獣を単騎で仕留められるとか、あの黒髪の客かなり強いな。レベルはいくらくらいだったんだ?」
「守秘義務がある。聞くのはやめろ」
「ケチケチすんなよ、言いふらしたりしねぇって」
「いいから早く持っていけ! 素材が駄目になるっつったのはお前だろうが!」
「へいへい、わーったよ!」
渋々ながら、アイテムバッグに素材を詰め込んで急ぎ足で解体屋に向かうバカ弟子。
気になる気持ちは分かるが、仕事に関係ない客の情報は言う必要はない。というか、どう説明したらいいんだあんなの…。
黒髪と金髪の少女たちも相当珍しい職業だったが、専用のスキルがあってやたらレベルが高い以外はさほどおかしな点は無かった。
だが、あの黒髪の青年はどうだ。いくら能力値が高かろうとあの魔獣たちは明らかに手に余るはずだが、確かに単騎で仕留めた履歴がある。
……スキルが無い人間専用の武器でも持っているのだろうか、そもそもそんな武器が存在するのかが疑問なんだが。街の端にある狂った発想を武器で表現してる工房の作品でも使っているんだろうか?
あれは人に扱えるものじゃないと思うんだがなぁ。扱えるようになるスキルも存在しないだろうし。いや、だからこそ今の客には向いているのかもしれないが。
っと、いかんいかん。無駄なことを考えていないで、製作の準備をしないとな。
あんだけ上質な素材は久しぶりだ。腕が鳴るな……!
お読みいただきありがとうございます。
時間が、書く時間がほしいぃぃ……!




