デザートと今後の相談
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「野菜炒めってこんなにうまいものだったのか……! ソースのおかげで肉と同じくらいうまい!」
「こっちの野菜巻いたやつ、中に挽き肉が入ってるー!」
「むむ、その肉まだ食べてなかったっすね。自分もひとついただくっす」
「いや院長食いすぎだろ。病み上がりなのに大丈夫なのか?」
「うむむ、確かに。まだ腹6分目くらいっすけど、そろそろ自重しておこうかな」
「6分目って、あんだけ食っておいてまだ入るのかよ…」
「3日間なにも食べてなかったからか、いくらでも入りそうっす」
焼肉のタレ風に作ったソースをかけた野菜炒めやロールキャベツ、あとロックオニオンを間に挟んだ肉の串焼きとか野菜もおいしく食べられるように工夫してみたけどみんな美味しそうに食べてくれてるな。
まあ普段の食生活が質素な分、大抵のものはみんなごちそうに感じるだけかもしれんけど。
そして院長、アンタいったい何人前食べたんですか。
普段は小さな子に自分の分を分け与えたりしてるらしいが、自重しないとこんなに食うのかよこの人…。
全ての皿がほぼ空になったところで、そろそろ夕食も終わりかな。
子供たちは美味しい料理を腹いっぱい食べられた満足感と、食事が終わってしまった寂しさが半々になったような表情をしている。
「おなかいっぱいー」
「あー、終わっちまったー……明日からまたパン耳と芋とトマト生活かー…」
「文句言っちゃダメよ。1日だけでもこうしてごちそうを食べさせてもらったことをありがたく思わなきゃ」
空になった皿を見ながら名残惜しそうに呟く子を、カルラが諫めている。
うん、言ってることは間違いじゃない。むしろ贅沢を言わず感謝の気持ちを忘れていない大人びた意見だと思う。
だが、本心はどうだろうか。これまで通りの質素な食事で満足なんだろうか。
「あー、すみませーん、皆さんちょっといいですかー」
手をパンパンと叩きながら、子供たちに呼びかける。
不思議そうな表情を見せながら、こちらに注目する子供たち。
「はい、そろそろお料理も無くなってきたところですので、最後にデザートをお持ちしました」
「でざーと! でざーと!」
「マジかよ! どんだけ今日の飯は豪華なんだ!」
期待しているところ悪いが、そんな豪華な物じゃない。
というか、君たちが普段食べているものだ。
「では、どうぞ」
「ほいほーい」
合図とともに、リーナがデザートの乗った大皿をコンテナに乗せて運んできた。
大皿の上に乗っているのは、表面に白い粉のまぶしてある焦げ茶色のスティック状のナニカ。
子供たちは拍子抜けしたような少し困惑した表情になった。予想通りだな。
「これが、でざーと…?」
「な、なんか焦げた小枝みたいだな……あれ、でも香ばしくていい匂いがする……」
「まあ、期待せず騙されたと思って食べてみてくれ」
とりあえず手に取ってみて、おそるおそる焦げ茶スティックに齧りつく子供たち。
サクサクと快音を発しながら咀嚼していくうちに、不安そうな顔がみるみる幸せそうに緩んでいく。
「なにこれ! あまくてサクサクなの!」
「この白い粉って、もしかして粉砂糖か? 砂糖ってすっごい高いんだろ、こんなに食っていいのかよ!?」
「いいのいいの、メインの部分はほとんどお金がかからないものだし」
「んん、さっき食べたトンカツって料理の衣みたいな食感だね。初めて食べる料理なのに、なんだかすごく馴染みのある味わいだ」
「おー、ファラム兄さん鋭い」
「…え?」
食べながらデザートを観察するファラム君をリーナが軽くパチパチと拍手しながら称賛しているのが見えた。そりゃ馴染みがあるわな。
「ヒカル、これってなんの料理なの?」
「んー、ファラムの言う通りなーんか舌に馴染む料理っすねー」
「うーん、この味わい、金欠の時によく食ってたような……あ、これもしかしてパンの耳か!?」
ラディア君、正解!
この謎デザートの正体は、パンの耳を揚げたものに砂糖をまぶしただけの簡単なおやつだ。
それを聞いた子供たちが目を見開いて驚いている。
「パンのみみ!? これが!?」
「オレの知ってるパンの耳と違う! 腹には溜まるけどもっとボソボソしてて変に柔ら硬いもんだろ!?」
「ふっふっふ、料理長の手にかかればパンの耳すらごちそうと化すのです」
「りょうりちょーすげー!」
だから料理長ってなにさ、2回ほどキッチンに立っただけやぞ。
……そう呼ばれ続けてるうちにステータスに変な称号が追加されたりしないだろうな。
「ふはいっふ! はまいっふ!」
「院長、飲み込んでから喋りなよ! なに言ってんのか分かんねーよ!」
……院長、5本同時に食うのはさすがにどーかと。
もうお腹いっぱいのはずなのに、まだまだ余裕と言わんばかりに皆次々とパン耳フライを頬張っていく。
甘いものは別腹ってやつか。というか、甘味そのものに飢えてる感じだな。
あっという間にパン耳フライの皿も空になってしまった。
……皿に残った粉砂糖を舐めてる子が何人かいるが、ひとまず話を進めよう。
「さてみんな、今晩の晩御飯はどうだったかな」
「うまかったー!」
「あんなごちそう、初めて食べた!」
「でも、もうなくなった…」
「そうですか、お口に合ったようでなにより。では、一つ聞こうか。明日から、これまで通りパンの耳や芋を齧りながらひもじさをしのぐか、今日の晩御飯に出てきたような料理を2、3品ずつでも毎日食べるのと、どちらがいい?」
これまで孤児院の炊事をこなしてきた子たちにはちょっと申し訳ない気もする質問だが、必要なことだ。許してほしい。
「…今日の晩御飯みたいなのがいい!」
「あんな量の料理を毎日とは言わないけど、できれば三食違うものが食べたい」
「贅沢言うようだけど、正直な気持ちはそうだよなぁ」
食べられるだけましだ、飢え死にするよりずっと幸せだ。
理性でそう思っていてはいても、美味しいものを食べたいというのは当たり前の欲求だろう。
「でも、むりだよ。……おかねないもん」
「そうだね、今は院長がお裁縫の仕事をしたり、時々入る寄付金なんかで収入を得ているらしいけど、それじゃ必要最低限のお金しか使うことができない。院長はこの上なく上手く運営しているみたいだけど、それでも今のままじゃ食事の改善ができるほどの余裕はないだろうね」
「…あ、分かった! パンの耳でもあんなに美味しくなるんだから、芋やトマトも美味しく料理すればいいじゃん!」
「うん、半分正解。でもさすがに基本材料が3種類だけじゃどうしても限界があるよね。肉や魚を芋やパン耳で再現するのは難しいと思うよ」
「う……たしかに」
この材料で作れそうな料理やおやつはどう頑張ってもせいぜい5~10種類くらいだろうなぁ。
材料が同じだから、風味も似たようなもんだろうし、すぐに飽きてしまうだろう。
「半分正解ってことは、今ある材料を料理すること自体は間違いじゃないってことか?」
「うん。色々準備が必要だし、上手くいくとは限らないけど試してみる価値はあることだと思うよ。興味があるなら、このまま聞き続けてほしい。馬鹿馬鹿しいと思うなら、無理にこの場に留まる必要はないけど、どうかな?」
そう言うと、子供たちは顔を見合わせたりしながらちょっと悩んだような素振りをしていたが、すぐに全員こちらを向きながら言葉を待つ態勢になった。
やる気は充分みたいだな。さてさて、そうと決まればプランの説明をしますかね。
…期待を裏切ることにならなきゃいいが。うまくいきますよーにー。
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