復ッ活ッ 院長復活ッッ
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おはようございます。ただいま朝の6時です。
つらいわー、昨日から2時間くらいしか寝てないからつらいわーとか目と目が離れすぎているようなことを思いながら、現在孤児院の炊事をお手伝い中。
……朝飯食い終わってしばらくしたら二度寝しよう。眠すぎる。
「あ、あの、本当にいいんですか? 院長を救ってくださったうえに、食材を分けてもらって料理までしてもらって……」
「いいんだよ。食材の費用はレイナが出すって言ってるし、料理を手伝ってるのは俺の勝手だしね。まぁ邪魔になるようなら自重するけど…」
「い、いえ! 全然邪魔なんかじゃないです! むしろすごく助かりますよ!」
炊事当番の子供たちが申し訳なさそうな顔で言ってくるが、こんぐらい寝不足でも楽にできる。
それに院長の飯は消化に良く、かつしっかり栄養のあるものを食べさせるべきだ。
毒は回復したとはいえ、消化器官はまだ本調子じゃないだろうし、スタミナも一桁台だしな。
≪消化器官は梶川光流の生命力譲渡により回復し、本来の機能を取り戻している≫
あ、そうなの?
ならわざわざ具を乗せたお粥なんか作らなくても良かったかな。
≪……ただし、現在のヘーキミート院長の状態は【空腹(極大)】なので、飢えのあまり料理を勢いよく摂取しすぎて喉を詰まらせる危険性があるため、咀嚼不十分でも嚥下及び消化しやすい食材が望ましい≫
要するにお粥でいいわけね。
つーか飢餓状態じゃなくて空腹(極大)なんて状態表示初めて見たわ。
数日間何も食べてなかったとはいえ、凄まじい飢えっぷりだな…。
「お粥だ……」
「ごめんな、院長に合わせてつくってるからこんなものしかないけど、盛り付けた上に色々乗せるから我慢してく――」
「すげぇ、芋やパンの耳じゃなくてまともなメシが食えるぞ!」
「しかもこの上になんか乗せるってさ! 野菜の塩漬けとか食えるかな!?」
……普段の食事はいったいどんなメニューなんだろうか。
栄養状態を見る限りじゃ、貯蔵されてるスタミナは低いがバランス自体は悪くない。
脂質とタンパク質が不足してるあたり、普段は穀物と野菜中心の食事なのかな。
≪庭に菜園を確認。主に【ライトマト】や【牛馬鈴薯】を栽培しており、それらを普段の食事にしている模様≫
ライトマトってのはトマトの一種かな、なら基本的な栄養はそこそこ摂れてるのか。
牛馬鈴薯ってのはジャガイモみたいな物みたいだな。形はサツマイモみたいに細長いけど。
子供たちの分の食事も作り終えて、院長のもとへ朝食を運ぶ。
院長の部屋の前には、子供たちが中の様子を窺うためか何人も覗き見たり聞き耳を立てたりしている。
本当は中に入って院長と触れ合いたいんだろうが、病み上がりのところに大人数で押しかけても負担になるからもう少し元気になるまでお預けされてるらしい。
院長の部屋に入ると、レイナとファランナムとかいう院長代理の茶髪少年がベッドの傍にある椅子で眠っているのが見えた。
もう毒は大丈夫とはいえ、それでも不安だったらしく一晩中院長と一緒に居たらしいな。
……本当に、よく慕われてるんだな。
「おや、おはようございます。…あなたが、レイナの言っていたカジカワさんですか?」
「おはようございます。ええ、勝手ながらお邪魔しております、梶川光流と申します」
「この孤児院の院長を務めているヘーキミートと申します。よしなに願いますね」
寝言はレイナとそっくりな口調だったが、来客相手だからか随分と丁寧な言葉遣いだな。
いやむしろ院長の口調がレイナにうつったのかな?
「…このたびは、本当に感謝の言葉もありません。もしもあのままだったなら、じぶ…私は毒に侵され命を落とし、子供たちは住む所を失くしていたかもしれません」
「いえいえ、こちらも無事に依頼をこなせて、正直ほっとしているところですよ」
「薬草採取だけでなく、例の前髪だけ白い赤毛男の襲来からも守っていただいたそうではないですか。このご恩をどうお返しすれば…」
「あれは私が勝手にやったことですよ。ちょっと軽く捻って差し上げただけですし、さほど大きな手間でもありませんでした」
「ちょっと軽く捻ったっていうか、思いっきり捩じり曲げたって感じだったけど…」
後ろで覗いてる炊事担当の桃髪少女リーナヴェーゼことリーナが小さな声で呟いたのが聞こえた。
成金デブの方は生命力操作で身体は治しておいてあげたし、死ななきゃ軽い軽い。
ボロボロになるまで『お話』しても、保身のために不自然な黙秘や嘘を繰り返すもんだから、治した後に『身体も治ったし、これで何度でも『お話』できますね』と言ってやったら完全に心が折れたらしく、ペラペラと今回の騒ぎの動機やら悪行の内容やらを話してくれた。
ちゃんと憲兵さんたちにも『私が全ての元凶です』と自白させたし、後は法の下適切な裁きを受ければいい。
ちなみに外に放置しといたチンピラは、強盗殺人の罪を犯した指名手配犯だったらしく今回の騒ぎでお縄に。
これまで暗黒街で今回のような裏の仕事で生計を立ててたらしいが、とうとう年貢の納め時のようだ。
こっちはもう死刑が確定しているらしく、治すだけ無駄なので壊れた人形状態のまま憲兵に連れていかれていった。
その際にこちらを呪い殺そうとするような眼で睨みつけていたが、無駄に気力を籠めた眼力で殺意を込めて睨み返してやったら泡を吹いて気絶してしまい、そのまま引きずられていった。だっさ。
睨み返した瞬間になんか憲兵さんたちもビクッてしてたけど、巻き添えの誤爆ですのでお気になさらず。
「とりあえず、今はご飯を食べてゆっくりお休みください。毒は中和されたとはいえ、まだ病み上がりなんですから」
「朝食の用意までしていただいたんですか? …本当になにからなにまですみません」
「まあお粥ですからちょっと物足りないかもしれませんが」
そう言って、院長のベッドの隣の机上に朝食に作ったお粥を乗せた。
半熟状の卵と、ペースト状にして魚の出汁と塩で味付けした野菜、そしてラッシュピッグの挽き肉をソイソと砂糖とみりんモドキで味付けしたそぼろを乗せた三色粥だ。
バランスよく消化吸収しやすいメニューにしたけど、院長さんのお口に合うかな?
……ん?
「お、おお、おおおおおお!!?」
ひぃっ!? な、なんだ? 粥の入った器の蓋を取った直後に院長が急に吠えおった!?
「あ、あの、なにか嫌いな物でも入って――」
「肉の香りっす!! この茶色い粒々、もしかしてラッシュピッグの胸肉の挽き肉っすか!?」
「は、はい、そうですが」
「ふぉぉぉおお! なんというごちそう! いただきまーすっ!!」
さっきまでの柔らかで丁寧な態度と口調はどこへやら、目つきが肉食獣さながらの鋭さに変わり凄まじい速さで三色粥をかきこみ始めた。
この人、二重人格かなんかか? てか結構熱いはずなのに平気で口の中に放り込んでいらっしゃいますね。なんつー頑強な口だ。
お粥を食べている院長を唖然としながら見てて、気がついたら米一粒残らず完食していた。
……おいおい、一杯食うのに30秒くらいしか経ってないぞ。もっとよく噛んで食べなよ…。
「ごちそうさまでした。とても美味しくて、お腹だけでなく心まで満たされていくのが感じられるようでした」
そして再び何事もなかったかのように丁寧な口調で礼を告げる院長。落差がひどい。
「お、お粗末さまでした…」
「カジカワさん引いてる引いてる。院長、今更丁寧な態度とっても誤魔化せてないよ。さっきの食事風景なんか完全に野生の魔獣の勢いだったじゃん」
「魔獣とはなんすか! せめて人間に例えてほしいっす!」
ツッコミを入れるリーナに素の口調でくってかかる院長。
このノリどっかで見たような……ああ、普段のレイナと俺の会話がこんな感じだわ。
食事も済んだし、一段落したらちょっと院長とお話ししますかね。いや成金デブの時と違って本当にお話だけ。
あのデブがなんでこの孤児院、というかこの土地を欲しがっていたのか。
そして、今後のことについてだ。
…狩猟祭での経験が、もしかしたら役に立つかもしれない。上手くいくとは限らないけど、失敗してもさほど損は無いしダメ元で提案してみるか。
お読みいただきありがとうございます。




