折れ曲がる 折り畳む
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お読みくださっている方々に感謝します。
今回、ちょっと(?)主人公がえげつないことをするのでご注意を。
「そのまま動くなよぉ!? なんなら見せしめに指の一本でも切り取ってやろうか!?」
カルラの首にナイフを突きつけながら、成金デブの隣のチンピラが叫ぶ。
…このチンピラのキルログを見ると、過去に6人も殺しているらしい。
人を殺すことなんかなんとも思っちゃいない。罪悪感もなく、殺された人やその親しい人のことまで、まるでゴミのように扱ってやがるんだろうな。
警告を無視して、一歩、前に出る。
「おやぁ、聞こえてなかったのかなぁ? 一歩でも前に出ればコイツを殺すと――」
「うるさい」
一言告げた後に、ナイフを持ってるチンピラの両手足が関節の可動域とは逆方向に折れ曲がった。
ベキベキと嫌な音を立てながら、糸が切れて壊れた操り人形のように崩れ落ちるチンピラの身体は、はたから見てると滑稽にも思えた。
「え…? あ、ああ、あああぁぁあああ!!!? う、うでぇ、あし、あ、あぎゃああああああ!!!」
「カルラ、もう大丈夫だからこっちにおいで」
「え、ええ…!? あ、は、はい!」
俺がやったことは至極単純。魔力の遠隔操作でチンピラの手足に魔力を纏わせて、無理やり曲がっちゃいけない方向に曲げただけだ。
なにが起こったのか分からず唖然としているカルラを、チンピラと成金デブから離れるように誘導。成金デブがカルラにまたちょっかい出してくる危険性はこれでなくなった。
「ひいぃぃっ!!? お、俺の手足ぃ……!! 何が起きて、いったいどうなって、い、いでぇぇえええ!!!」
「うるさいつってんだろ、黙れ」
「お、俺にこんなことして、タダで済むと思うなよぉ……!! 殺す!! てめぇも、家族も恋人もダチも誰も彼もみんな殺して――」
「はい、お口開ーけて?」
「あ、あががが!!?」
魔力操作で今度は口を無理やり開かせる。
いい加減コイツの声聞くのもうんざりだし、ちょっとお仕置きしてから黙っててもらおう。
第一、こちとら家族にはもう会えないし恋人はいないし友人もそんなに多くないっつーの。…あれ、目から汗が。
「はいどうぞー、遠慮しなくていいんだよー? たんとお食べー」
「は、はぎゃああああががああぎゃあああ!!!」
そして口の中一杯に刺激調味料の【ライトニングペッパーパウダー】を詰めて、魔力操作で無理やり口を閉じさせ固定した。
一応、呼吸はできる量に抑えておいたし、呼吸困難で死んだりはしないはずだ。死ぬほど口の中と手足が痛いだろうが、生きてる証拠だ。喜べよ。
「随分大げさなリアクションだねー、そんなに美味しいのかい? ウレシイナー」
「う、うわぁ、顔が真っ赤になって涙と鼻水が滝みたいに……」
トマトみたいに顔を赤く染めて、吐き出すこともできず口を閉じながら悶えているチンピラを見てドン引きするカルラ。
人質にとられていたとはいえ、この状態を見たらさすがに同情する気持ちになってしまったようだ。
こいつはこのまま放置でいいか。もう動けないだろうし、あとは成金デブだけだ。
「く、くそぉっ!! 貴様! このままで済むと思うなよ!!」
そう言いながら、走って逃げようとする成金デブ。
……おっそ。非戦闘職とはいえ、成人前のレイナより遅いのはどうなのよ。不摂生にもほどがあるだろ。
「どこへ行くつもりですか?」
「うぐぅっ!?」
縮地モドキであっという間にまわり込んで、目の前で通せんぼ。
「あなたとはまだ話が済んでいませんので、しばらくお待ち願います」
「さ、さっきは帰れと言っておっただろうが!!」
「いやぁ、どうもご自身がなにをされたのか、よく分かっていらっしゃらないようで」
「な、なにを言っておる! どけ、早くどかんか!」
「お前が行くのはそちらではありませんと申し上げているのですよ、クソ野郎」
そう言いながら、魔力の遠隔操作で成金デブの両脚もチンピラ同様、本来曲がらない方向へ折り畳んでおく。
ボキベキゴキィッ! と人体から鳴る音とは思えない不快な音が響いた。もうこれで逃げられない。
「ひ、ひぎゃああああああああっっ!!!?」
「さて、ここではなんですし、どうぞお上がりください。大したもてなしはできませんが、どうぞごゆっくり」
成金デブの赤毛と白髪を鷲掴み、ズルズルと孤児院の方へ引きずりながら移動。
歩けないからちゃんと補助してあげないとね、オレッテヤサシー。
「ひ、ひいぃぃっ!!? は、離せぇっ!! 離してくれぇっ!!」
「はいはい、話しますよ。中でゆっくりとね。カルラ、孤児院の応接室というか、客間はどこか案内してくれるかな?」
「え、ええと、わ、分かりました」
「ああ、あとちょっと騒がしくするかもしれないけど、お話の最中は決して誰も入れないようにね」
「は、はい……」
少し怯えたような顔でこちらを見ながら了承するカルラ。
……こんな惨状見せたら、そりゃ怖がるわな。
小さな客間で、椅子に腰掛けテーブル越しに面談開始。
成金デブはえらいことになってる足が痛むのか、それとも俺と二人きりの状況が嫌なのか脂汗を流しながら顔を青くしながら俯いている。
「さて、いくつかお聞きしたいことがあるのですが、お答えいただけますね?」
「……………」
「返 事 は ?」
「ひ、ヒィィッ!! は、はい! はいぃっ!!!」
ちょっと低めの声で返事を催促しただけで、泣きそうな顔になりながら返事をするデブ。
あんまりやりすぎると弱い者いじめみたいになるし、……いや、もうなってるかもしれんけど、とにかくちゃっちゃと話を済ませてしまおう。
「正直にお答えください。そうすれば、今回の騒動の流れを憲兵に説明したうえでブタ箱に放り込まれるだけで済みますよ?」
「そ、それでは破滅するのと同じではないか!」
「当たり前でしょ? それだけのことをあなたはしてしまったんですから。ああ、そうそう。もしも黙秘したり、言ってることが嘘だと感じたら」
おもむろに掃除用の雑巾を取り出し、目の前で絞って見せる。
ギリギリギリギリと思いっきり捩じられていき、ついにはビリィッ と裂けてしまった。
「あなたの腕で同じことをしますので、どうか虚偽の回答はお控えください」
それを見た成金デブの青い顔が土気色に変わった。
さて、では拷もゲフンッ、尋もゲフンゲフンッ、…お話を始めましょうか。
お読みいただきありがとうございます。
前回のトラのモツ抜きは過失、今回は故意。
どんどん暴力的になっていってる気がしないでもない。




