この手が悪いんです
新規の評価、ブックマーク、誤字報告ありがとうございます。
お読みくださっている方々に感謝します。
『グガァッ!!』
吠えながら、白虎が【縮地】を使って一気に距離を詰めてくる。
白金ニワトリほど速くないが、それでも回避が困難なレベルのスピードには変わりない。
爪で薙ぎ払いをかましてきて、咄嗟に魔力装甲を纏った腕で防御した、が
「うぐぁぁああっ!!?」
腕に奴の爪が触れた瞬間、全身に激痛が襲ってきた。
白虎のユニークスキル【疾風迅雷】の効果。攻撃に雷属性を付与するという俺にとっては、というか大抵の相手にとっては非常に厄介なスキルだ。
外付けHPのおかげで身体にダメージは一切ないのに、電気が神経を直接刺激してくるからとにかく痛い痛い! マジでやめて!
「はははっ、さすがにそいつの攻撃は効くようだな! 丸焦げになっていないだけ驚きだ!」
うるせぇ成金デブ!
お前もちょっとは痛みを味わってみろ!
追撃をしてこようとする白虎の尻尾をガシッとふん摑まえて
『グルゥッ!?』
「おるぁあっ!!」
気力で強化した腕力で、赤毛デブに向かってぶん投げる!
「うひぃあっ!?」
変な悲鳴を上げながら飛び退く成金デブ。
ちっ、外したか。
「ふ、ふんっ、悪あがきしおって! 当たるとでも思ったのか!」
当たらなかったのをいいことにイキりまくるデブ。
尻もちつきながらなに言ってんだこいつ。
「こいつを軽々と投げ飛ばすほどの腕力か…! おい、一気にカタをつけろ! 長引けばそのうち手痛い反撃を受けかねん!」
『ガグルゥゥァァァア!!』
飼い主から指示を受けると、白虎の牙と爪から血が滲んで、いやポタポタと滴り落ちていく。
それと同時に、白虎の攻撃力がみるみる上がっていくのがメニュー表示を見て分かる。
これが【バイタル・タスク】ってスキルの効果か、見てて痛々しいなー…。
てかまずい、出血の影響でHPが徐々に減少していってるけどその分モリモリ攻撃力が上がっていって、このままだと4ケタ超える勢いだ。
そうなる前に、こっちからも攻撃を仕掛けてHPを減らさないと!
っ!
『ガルゥッ!!』
また縮地頼りの突進攻撃か、そう何度も喰らうと思う―――
あ、やばい、爪の攻撃は避けられたけど【魁追魔爪】の追撃が
「あだだだだだだっ!!?」
魔力の刃が一瞬遅れて俺に向かって振るわれた。
辛うじて防御できたが、やはり雷による追加ダメージがあって痛い、超痛い!
『ガルァッ!』
「いっだだだ!」
『ゴルゥァア!!』
「いだいいだいいだい!!」
『が、ガアアアアアアアッ!!!』
「いぎゃああああああああ!!!」
白虎の攻撃を防御するたびに全身に電流が走り、近ごろ忘れかけていた『痛み』の感覚が襲ってくる。
ってかいい加減にしろや! 攻撃喰らうたびに叫ぶのも辛くなってきたわ!
「……ず、随分痛がっているようだが怪我一つしておらんぞ、本当に効いておるのか?」
「お、おそらくは。今の迅雷白虎の攻撃力は1000近くまで上昇しているはずです。そんな攻撃を何度も受けて無事でいられるわけがありません。並の戦闘職ならば最初の一撃で死んでいるでしょう」
「ならば、なぜあんなにピンピンしておるのだ!?」
痛いけど、外付けHPが尽きない限りはダメージは無いからな。
でも何度も攻撃を喰らってたせいか、そろそろHPが半分切りそうだ。このままじゃHPが尽きて本当にダメージを受けることになる。
こんな痛い攻撃を外付けHP無しで喰らったりしたら、多分あいつらが言うように黒焦げだろうな。こわ。
反撃しようにも火力特化パイルは無理。
アレを使うにはかなりの集中力が必要で、準備してる間に電撃を喰らっただけで魔力も液体空気も霧散する。
でも普通のパイルや魔刃改じゃ攻撃力イマイチ……いや、確かこいつ防御力が500程度だったし、普通に効くか?
なら!
「おい、いつまでじゃれあってるつもりだ、いい加減にしろ! さっさと喉笛でも食い千切って仕留めてしまえ!!」
魔獣使いの男が怒声を上げて、白虎に指示を出す。
それに応えるように、さらにHPを消費して攻撃力を上げる白虎。
…お前も大変だな、あんなのが主なんて。
『グゥガァァァァアアアアアッッ!!!』
これまでのものとはまるで違う迫力の咆哮。次で決めるつもりだな。
……こいつは別に悪い奴じゃない。悪いのは指示を出してる魔獣使いと、その雇い主の成金デブだ。
でも、こっちも死ぬわけにはいかないから、許せ。
白虎が【縮地】を使い、距離を詰める。
それに合わせて、超低空魔力飛行で後ろに高速移動。
これでお互い止まったままで攻撃を繰り出すような状況になった。
『ガルァァァアア!!!』
叫びながら、俺の喉に喰らいつこうとする白虎。
その攻撃を、俺は 避けなかった
身体に牙が食い込む感覚。痛みとは違う異物感が気持ち悪い。
「よし、そのまま首を食い千切ってやれ!!」
魔獣使いが、機嫌良さそうに叫ぶ。
喉どころか、首全体に齧りつくカタチになった白虎。
その間も、電流が流れ続けて痛いいたいイタイ
魔力でパイルを撃とうにも、こんな状態じゃ上手く魔力を操れない。
「ぐぅっ…うううぅぅぅぅっ……! ご……ごめ……」
「ふはは! 今更謝っても、もう遅いわ! 死ね、さっさと死ねっ!!」
だが、気力による強化は別だ。
「……ごめんな、トラ野郎」
『グルゥ……!?』
右腕の膂力を気力で大幅に強化。
そして、思いっきり白虎の腹に向かって殴りつける! 吹っ飛べ!!
ズボッ と、予想と違った生温かく柔らかい感触。
え、ズボッ? なにこの感触。
あ、吹っ飛ばすどころか、白虎の身体を右腕が貫通してるわこれ。
い、いや、ここまでするつもりはなかったんや、あ、し、死んじまった……。
……合掌。スマン、殴りつけるつもりがまさかのモツ抜きになるとは思わなかった。
それを見ていた成金デブと魔獣使いが、なにが起きたのか分からない、といった様子で呆然とこちらを見ている。
……とりあえず、右腕抜こう。うわ、血塗れだ。グロイわー……。
「な、なにが、起きたのだ……?」
「じ、迅雷白虎が一撃で……それも、素手でだと……!?」
うん、こいつ殺したのは俺だし、それについて言い訳するつもりはない。手加減を見誤った俺が悪い。
でも、特に罪もない魔獣を操って人殺しをさせようとしたのはこいつらだ。元はと言えばこいつらが悪い。……え、それは言い訳じゃないのかって? せやな。
≪ちなみに、この迅雷白虎はテイムされる前に何度か人間を食い殺した履歴あり≫
まるっきり罪がないってわけでもなかった。いやそれも人間基準での話だし、本人ならぬ本トラからしたらただの食事だったんだろうけど。
まあいいや、後で供養はしてやろう。それよりも
「……さて、お次はどなたでしょうか?」
笑顔で優しく穏やかな口調で、なおかつ右手を滴る血がよく見えるように成金デブたちに話しかける。
…この図だと、『次の相手は誰だ』って言うより『次にこうなりたいのは誰だ』って言ってるように見えるかもしれない。我ながら完全にホラーやないの。
「ひっ……! ば、化け物……!!」
「に、逃げろ! あんな奴に勝てるわけがない!!」
悲鳴を上げながら尻尾を巻いて逃げる魔獣使いと取り巻きたち。
置いていかれた成金デブは、ただ立ち尽くしている。
だが、その表情にはまだ余裕がありそうだ。
「……ふん、所詮は有象無象か、肝心な時に役に立たん」
「そうですね、せめて担いででも一緒に逃げればいいのに」
「逃げる? なんのために?」
醜悪な笑みを浮かべながら、なお余裕のある声で話しかけてくる。
……!
……そういうことかよ。
「そこの黒髪ぃ! 動くなぁっ!!」
孤児院の扉から、ガラの悪い顔をした男が出てきた。
俺が白虎と戦ってる間に、後ろからこっそり侵入していやがったな。
そして、その右手には銀髪少女ことカルラが拘束されて、ナイフが首元に突きつけられている。
「……でかしたぞ、他の無能共は全員クビで、その分の報酬は全てお前にくれてやろう」
「ははっ、ありがてぇ話ですぜ!」
「ご、ごめんなさい、他の子を避難させようとしてる間に見つかっちゃって……っ」
目に涙を浮かべながら、カルラが謝っている。
多分カルラの性格上、怖い目に遭っているから泣いているんじゃない。こちらの足手まといになってしまっているのが申し訳ないとでも思っているんだろう。
謝るのはこっちの方だ。戦闘に夢中になって侵入者を見逃すとか本末転倒にもほどがある。
「動くなよ、一歩でも動いたらこのガキの喉掻っ捌くぞっ!!」
「ああ、ちなみにこいつは既に何人も殺したことがある男でな、今更ガキの一人二人殺すのに躊躇するようなことはない。ハッタリだと思うなら一歩前に進んでみるがいい、その瞬間このガキは鮮血ぶちまけて死ぬだろうがな」
「要するに、お前はもう詰んでんだよ! 分かったら動くんじゃねぇ!!」
んー、確かにキルログを見ると人殺しの履歴があるな。確かにハッタリじゃなさそうだ。
……往生際の悪い。詰んでいるのはお前らの方だ。
お読みいただきありがとうございます。
また風邪ひいた……(;´Д`)




