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不自然な魔獣

新規のブックマーク、感想をいただき、ありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。


今回はアルマ視点です。

孤児院から出た後、冒険者ギルドに寄って、薬草が生えてる近くの魔獣のテリトリーの場所を教えてもらって、急いで向かう。

遅い時間でもギルドが開いていてよかった。ビーナファーっていう美人の受付嬢も親切に教えてくれて助かった。明日にでも、お礼を言っておこう。



「院長、大丈夫かな……」



不安そうにレイナが声を漏らす。

ヒカルがついているから、薬草を採りに行ってる間になにかあっても大丈夫だとは思うけどそれでも心配みたいだ。

…大切な人があんな状態じゃ、無理もない。



「レイナ、焦り過ぎんなよ。もしもヘマして全滅して、薬草持ち帰れませんでしたってことになったら最悪だからな」


「わ、分かってるっすよ……」


「それに、カジカワさんがついてるならまず大丈夫だろ。つーか、空飛べるわ喧嘩強いわ回復魔法使えるわ芸達者すぎだろあの人。……飛行士って、ホントにエリートな職業なんだな」


「そ、そうっすね……」



…言えない、本当はヒカルがなんのスキルも持ってなくて、なのに魔力とか生命力とか直接操ってるからあんなことできるなんて言えない。

ヒカル本人は自分に自信がないのか、どんなすごいことができても『大したことない』『俺じゃなくてもできる』って言って謙遜してるけど、近くで見てるとどう見てもおかしい。

トラブルに巻き込まれるのを嫌がるから、自分から目立つようなことをするのは避けてるけど、そろそろ誤魔化すのが難しくなってきた気がする。



街から数十分ほど移動したところに、魔獣のテリトリーが見えた。

魔獣湿地【ボルフォード】 小さな池や湖が広がる低地で、生息してる魔獣のレベルは大体10~30程度。今の私たちならなんとか探索が可能。

夜だからいつもより視界が悪いけど、魔獣のいる位置なんかは時々魔力感知を使って確認しているからとりあえずは大丈夫。

二つの月のおかげで、真っ暗ってわけでもないから足元に注意していればさほど問題なく薬草を探すことができそうだ。



「ラディア、近くに解毒剤の材料になりそうな薬草は?」


「うーん……見当たらねぇな。……なんか、誰かが雑草ごと根こそぎ持ってったような跡があるんだが」


「自分らより先に誰かが持ってったってことっすか?」


「ああ、この辺をよく見ると、青い草が生えてたような跡が残ってる。野生の草食魔獣が食っていったにしちゃ、ちょっと採り方が丁寧すぎる」


「……解毒ポーションを必要としている人が他にもいるのか、あるいは…」


「誰かが、解毒ポーションを手に入らないように手を回しているか、だな」


「だ、誰がそんなことを……! そのせいで院長は……!」


「落ち着け、あくまでそうかもしれないってだけで、もしかしたらホントに事故と偶然がかさなっただけかもしれないぞ」



涙ぐみながら怒りに表情を歪めるレイナをなだめるラディア。

…もしかしたら、その『誰か』は院長を死なせるために解毒ポーションやその材料を…。

憶測だけで考えても埒が明かないけど、もしもそうだとしたら、いったいなんのために。

……魔族の悪意とはまた違った、人間特有の粘着質な悪意が見え隠れしてるのが感じ取れるようだ。



「誰かが採っていったとしても、この湿地帯全部の薬草を持っていくことなんかできないはず。もう少し奥の方まで行ってみよう」


「了解っす!」


「分かった」



…ヒカルがいないから、今は私がパーティを先導しなければいけない。

士気を削がないように、なおかつ安全に行動できるように常に意識するのは精神的に結構疲れる。

ヒカルは、普段からこんなに気を張っていたんだろうか。

はたから見てるとなんてことなさそうにしてるのに、いざその立場を代わってみると見えない苦労が分かる。

……今度から、ヒカルの負担を減らせるように意識して行動するように心がけよう。




湿地帯をさらに奥へ進んでいくと、複数の魔獣の反応が道を塞いでいるのが感じ取れた。

なるべく魔獣を避けて進んでいくように道を選んでいたつもりだけど、この道を進めないとかなり遠回りに迂回する必要がある。

仕方ない、ここは魔獣を駆除して進む。



「この先に、魔獣が5体くらい集まって道を塞いでる。迂回すると大幅に時間ロスになるから倒して進む」


「え、見えるのか?」


「ここからだとよく見えないけど、分かる」


「…カジカワさんもすげーけど、アンタも大概だな。どんな訓練してたら魔獣の気配なんか感じ取れるようになるんだか…」



魔力感知のことを言うわけにもいかないから、反応せずに魔獣の方に集中するふりをしておく。

申し訳ない気持ちはあるけど、こればっかりは気安く話していい内容じゃない。


魔獣の姿が見え始めた辺りで、違和感に気付いた。

大きなカエル型の魔獣だけど、様子がおかしい。別になにか奇行にはしっているわけじゃないけど、おかしい。

むしろ逆だ。これより奥に進ませないために、見張っているかのように動かずこっちの方を向いている。

なにかを守っている? なにを?


……気になる点はあるけど、やることは変わらない。

この場で駆除して、先に進んで薬草を採取する。それだけを考えないと。



「レイナ、道を塞いでいる魔獣を魔法で狙撃するから、着弾した後影潜りで接近して、爆裂サンゴを弾けさせて陽動して。サンゴの音に驚いてる間に残りのカエルも魔法で仕留める」


「了解っす!」


「ラディアはもしも位置がバレて接近戦になった時に備えて、いつでも奇襲できるように物陰に隠れていて」


「分かった!」



ヒカルいわく、魔獣と戦わなければならない時に、最初に考えるのは奇襲ができるかどうかって言ってた。

レベリングとか訓練の時と違う実戦で、最初からまともに戦おうとするのは悪手だと思う、と。

安全に、楽に、手早く仕留める方法を、普段から足りない頭を振り絞って考えて実行しているんだとか。

……確かに、格上や集団相手の実戦だと奇襲をよくやっていた気がする。

最近は実戦経験を積むために真正面から戦うことが多かったけど、魔獣の討伐っていうのは本来こうするものなのかもしれない。



目立たず、発射音も小さい強化したストーンバレットをカエル型の魔獣に向けて撃つ。

魔力の反応からして、大体Lv20~30程度の魔獣だと思う。当たれば仕留めるには充分な威力だろう。


着弾したカエルの頭部が弾け飛んだ。

続いてもう一発、隣のカエルの胴体めがけてストーンバレットを発射。

しかし、避けられた。……反応がいい。野生の魔獣というより、まるで訓練された兵士みたいな対処の早さだ。

どこから撃ってきてるのか、目星をつけようとしたところで


パァン! パパンッ! パンッ! と派手な炸裂音がカエルたちの周囲に鳴り響く。

影潜りを使って高速で移動しつつ、レイナが爆裂サンゴを断続的に炸裂させた音だ。

まんまとその音に反応してしまい、こちらの位置を見失ってしまったカエルたちに向かって、さらにストーンバレットを発射。

2匹目、3匹目を仕留めたあたりで残りの2匹がこちらの位置に気付いたらしく、凄まじい勢いでこちらに向かって跳躍してきた。



『ゲゴォッ!』


『ゲボッ!』



跳躍しつつ、こちらに向かって水の弾のようなものを口から発射してきた。

クイックステップで避けつつ、魔法で反撃。

ダークウィップで、接近してきたカエルを拘束しようとしたけど、体表のぬめりが強くてすぐに振りほどかれてしまった。

拘束を脱出したカエルを【大海原乃剣】で斬りつけようとすると、水属性に耐性があるらしく水の刃が体に触れても弾かれるだけでダメージを与えられない。

クイックステップで距離をとろうとしたら、向こうの方が一瞬早く【轟突進】を使ってこちらに体当たりを仕掛けてきた。

このままじゃまともにくらう。


その突進に合わせて、魔力操作で網状に攻撃範囲を広めた【伸魔刃】を発動して、突っ込んできたカエルの身体を賽の目状に斬り裂いた。

大盾のような広範囲を、鋭い剣の斬撃で斬ることができるアレンジだ。ヒカルとの組み手中に使って、対処に困らせたほどの嫌らしい技。

実戦でも充分使えるのが、これで分かった。……まともに当てたらほぼ確実に相手を死なせるから、対人戦じゃ使えそうにないけど。



『ゲゴロォッ!!』



! バラバラになった死体を目くらましにして背後にまわり込んでた!?

このレベルの野生の魔獣がするような戦法じゃない。間違いない、()()()()()()()()()()()()()んだ!

いけない、この体勢じゃ対処できな――



「はぁっ!」


『ゲボォッ!!?』


「そんで、トドメだッ!」


『ガブゥァアッ……!!』



こちらに攻撃が当たる直前に、隠れていたラディアがカエルに向かって突進し、【魔刃】による不意打ちを刺した直後に、伸魔刃で体の中から魔力の刃を貫通させた。

……これでLv15だっていうから、驚きだ。魔力操作も気力操作も使えないのにスキルの使い方を工夫して、ラディアなりに有効な攻撃方法を編み出してる。



「よ、よかった、なんとか倒れてくれたか……」


「……助かった、ありがとうラディア」


「お、おう。役に立ててなによりだ。……あのままじゃ俺の出番なしで終わりそうだったしな。いや別に無事に済むことに越したことはないんだけど」


「さっきの攻撃、狩猟祭でも使ってたっすよね。身体の内側から伸魔刃を発動させるなんて、やろうと思ってもなかなかできないっすよ」



……使えるスキル技能が多くても、使いこなせなければさっきみたいに危ない場面も多いだろう。

ラディアみたいに、魔力も気力も操作できなくても、工夫次第でいくらでも強くなれる。

……一度、自分の手札を見直してみるのもいいかもしれない。



「アルマさん、大丈夫っすか? なんか考え込んでるっすけど」


「…うん、なんでもない。道を塞いでた魔獣も倒したことだし、早く先に進んで薬草を採ろう」


「そうだな、早く持ち帰ってやらないと」



……さっきの魔獣、不自然な点が多すぎた。

誰かがテイムしていたのは間違いないと思う。

もしも、この先にある薬草を採りに行かせないために、あそこで見張らせていたんだとしたら、やっぱり院長が襲われたのは事故なんかじゃなくて……。

……いや、それより早く薬草を持ち帰らないと。犯人捜しはそれからでも遅くない。

ヒカル、それまでどうか院長の身体をもたせて。

お読みいただきありがとうございます。


枕元で肉焼いてたら無意識に貪りそうで怖いこの院長。

侵入者相手の対処は、次回以降となりそうです。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
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