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閑話 Run away !

新規の評価、ブックマークありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。


今回は勇者視点で、ちょっと短めです。

全力疾走。

街道を馬車も使わずもうかれこれ数十分も走り続けている。



「そういやさ、レヴィアの姉さんも冒険者やってるんだっけ?」


「え? うん、そうだけど、どうしたの急に」


「いや、なんとなく。レヴィアみたいに成人したてで無茶するような人なのかなーって気になって」


「…無茶するような人で悪かったわね。言っとくけど、キャノ姉もフィラ姉も私と違ってちゃんと訓練してから冒険者になってるわよ」


「え、三姉妹なの? お前、末っ子?」


「ええ、言ってなかったかしら?」


「姉がいるくらいのことしか聞いてなかったよ」



脚がだるい。

こっちに転生してから毎日のように魔獣を狩ったり、体力づくりのために走り込んだりしてるのにそれでもつらい。



「ところで、今日の晩御飯なにがいい?」


「カレーがいいわ。あなたの作るカレーってドロドロしてて、最初は食べるのを躊躇したけどアロライスと一緒に食べると本当に美味しいから好きよ」


「こっちじゃスープカレーが主みたいだけど、オレの故郷じゃあんな感じに作るのが一般的だったんだよ。本場の味とはまた違うみたいだけど」


「料理スキルも無いのにあんなに美味しい物が作れるなんて、ネオラって凄いのね」


「スキルが無くても、自炊してた前世の経験があるからな。急に料理下手になったりしなくてよかった。……でもカレー粉めっちゃ高いからあんまり頻繁には食べられないんだよな」


「でも今日ぐらいはいいでしょ? もうずっと走りっぱなしで疲れてお腹ペコペコよ」


「分かった分かった、今日は作り置きのカレー出すからもうちょっと頑張れ」



とか言ってるけど、オレの方がそろそろへばりそう。

なんかくだらない話をしながら走ってて余裕そうに見えるかもしれないけど、こうやって気を紛らわせでもしないとやってられないんだよ。



「はぁっ…ハァッ…と、ところでまだついてきてるの? も、もうどれだけ、走ったか、分からないん、だけど…ケホッ…!」


「ゼェ、ぜぇ……ふ、振り返んな、ちょっとでも、減速したら、追いつかれる……!」



足が痛い、肺が痛い、酷使しすぎた全身が悲鳴を上げてる。

死にそう。初の死に戻りの可能性が頭をよぎる。

死んでも生き返ると分かっていても死にたくなんかない。

…ん? なんかレヴィアの顔が恍惚とした表情になってね? なにその顔エロい。



「あ、あは、あはは、ナニコレ、さっきまで痛くて苦しくて死にそうだったのに、なんか走ってるのが気持ち良くなってきた……」


「ランナーズ、ハイ、だな、オレも、なんか、テンション上がってきたふふへへへ……あ、でも吐きそう」


「ちょっ、お願いだから吐かないでよ!? つられてこっちまでこみ上げてきたりしたらどうするの!」



知らんがな。オレだって好きでリバースしたいわけじゃないっての。


この吐き気は走り過ぎて死にそうになってるからってだけじゃない。追いかけてきてる奴の影響も少なからずあると思う。

え、ナニに追われてるかって?

魔獣? ノン。この辺りにはそんなに強い魔獣はそうそう出現しない。

なんかトラブルでも起こして憲兵から逃亡中? 違う、オレらなんも悪いことしてないよ。

変質者にストーキングされてる? はっはっはまさかそんな



大正解だよ!!




「勇者ちゃあああああん!! 待ってぇぇぇぇぇええええっっ!!!」



後ろから汗だくかつ爽やかな笑顔で追いかけてきてるのは、最初の街でしつこく声をかけてきたハゲ筋肉男。

どっから情報を手に入れたのか、オレのいる場所を突き止めてついてきやがった!

頼むからどっか行ってくれ! もうオレに関わらないでくれぇ!!



「クソァ!! あの野郎まだついてきてやがる!!」


「もういい加減にしてよ! もういっそのことあのハゲの話を聞いてあげたら!?」


「勇者ちゃぁんっ!! 俺様とラブラブちゅっちゅしようぜぇぇぇええ!!!」


「聞いての通りだ! 捕まったらオレの貞操が死ぬ!!」


「うわぁ、なにあいつキモイキモイキモイ!! ホモなの!? ネオラ、もっとペース上げなさい!!」


「分かってるよ! 待てよ、貞操が死ぬ……死ぬ……死んで再召喚されれば逃げられるんじゃね…?」


「それは本当に最後の手段にしときなさい! アンタ錯乱してとんでもないこと口走ってるわよ!?」



そりゃ錯乱するわ! 逃げ切れなかったらあのハゲに※自主規制※されるような状況でいつまでも正気なんか保ってられるか!!

まああのオッサンもそろそろ限界っぽいし、なんとか逃げ切れそうだけど。



「ゆ、勇者ちゃぁん…! 俺様の、よ、嫁に……!」


「オレは男だっつってんだろ! 息も絶え絶えにキモイこと言ってんじゃねぇ!! てかオレなんかより可愛い女の子いくらでもいるだろうが!」



実際、この世界の女性は美人が多い気がする。

いや別に元の世界の女性のルックスにケチつけるつもりはないけど、この辺じゃ適当に街を歩いてるだけでも目移りするような美人の姿をちらほら見かけるし。

で、見とれてる間にレヴィアに蹴られるまでが日常的な流れだったりする。はいはい、お前も可愛いよ。ホントに。



「いや、まあ、ネオラほど可愛い子と言われたらそうそういないとは思うけど…」


「なに言ってんだレヴィア!? 全然嬉しくないんだけど!」


≪まあネオラさんが可愛いのもありますけど、多分たまたまあのオッサンのツボにネオラさんの容姿がヒットしたんじゃないでしょうか≫


全然嬉しくない情報その2!

それで性別まで考慮せずアプローチかけてくるとかホント勘弁してほしい。


≪むしろ男だからこそいいとか後ろのオッサン言ってますけど≫


ごめん、今すぐ吐いていいかな?


≪今吐いたら高確率で気管支に胃液が入り込んで地獄を見ますよ?≫


もう今この状況が地獄だっての!!

あとちょっとだ、ふんばれオレ! 逃げ切れオレ!


お読みいただきありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
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