デートのような
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結果発表が終わってやっと祭りのメイン、すなわち屋台の食べ歩きに向かうことができた。
え、メインは狩猟の方じゃないのかって? いや疲れるし怖いし正直あんな行事に参加なんかしたくなかったです。
でもそれ以上にコワマスの依頼を断る方が後が怖そうだったからやむを得ず受けてしまった。
……白金ニワトリ戦は今思い出しても肝が冷える。
もしもドラゴンと戦うことになったら、きっとあれをはるかに超える死闘になるんだろうなー、怖ひ…。
レイナはラディア君と一緒に歩き回る予定らしい。
うん、いわゆるデートというやつかなコレは。
会ってまだ1日ほどの仲なのに随分と親しげですねー、言っとくがそのまま朝帰りなんてことは許しませんよホントに。
まあパーティ以外の人との交流も大事だろうからあんまうるさく言うつもりはないけど。
というわけで午前中は久しぶりにアルマと二人きりで、……いや、ヒヨコがいるから完全に二人きりってわけじゃないけど、とにかく二人で屋台をまわって食べ歩きでもしながら散策することに。
レイナがいないだけで随分と静かに感じる。あの子、今となっちゃパーティに欠かせないムードメーカーだな。
「お、そろそろ屋台が並んでるのが見えてきたな」
「うん、いい匂いもしてきた。朝御飯少なめだったし、お腹ペコペコ」
「なにから食おうかなー、楽しみだ」
見た感じ、どの店の料理も美味そうだ。
特に気に入った物があったら、自分で作れるか試してみたいな。
でも食べただけじゃ調理の細かい工夫なんかは分からないから難しいかなー。
≪現物を視認すれば、材料及び調理工程の分析は可能≫
メニューさんちょっとチート過ぎない!?
見ただけでタダでレシピが分かるのは有難いけど、同時になんだかすごく申し訳ない気持ちになってくるんだけど!
料理一つを『創る』のにも途方もないトライアル&エラーが必要だろうに、それをあっさりパクるのはさすがに罪悪感ががが…。
……たとえレシピが分かったとしても、作るのは身内で食べる分に留めておこう。でないと色々失礼な気がするし。
ま、まあいいや。深く考えるのはやめにして目に付いたものがあったら早速食べてみようそうしよう。
お、なんだあの野球ボールみたいな白い玉が入ったスープは?
≪【パナンスープ】 練った小麦粉で作った皮の中に挽き肉をベースにしたタネを入れたもの(パナン)をコンソメベースのスープに加え、ロックオニオンなどの野菜と共に茹でた料理≫
でっかいワンタンの入ったスープみたいなもんかな。
よくあんなきれいな球状に作れるもんだ、中まできちんと火が通ってるのかな?
お、メニュー表示を見る限りじゃ、一晩中煮込んでたみたいだからまず大丈夫みたいだな。
それで煮崩れしないのがすごい。いったいどんな食感なのかな、おっちゃん、ちょっと一杯お願いしまーす。
むむ、表面の皮が煮すぎて柔らかくグズグズになってそうだと思ったのに、しっかりとしたコシがあって程よい歯ごたえがある。小麦の皮になにか混ぜ物でもしてるんだろうか。
そして皮の中の具も、挽き肉の中に香草や薬味が混じっているのか、しっかりとした肉の旨味の中に爽やかな風味が混じって絶妙な味わいが口の中に広がっていく。
美味い、これは美味いぞ!
こりゃ他の店にも期待が持てそうだ。
「ヴィンフィートの屋台に比べて、こっちの屋台はレベルが高いな」
「うん、このスープも野菜の味が染み出てて、お肉の味とよく合ってる」
「朝御飯を控えめにしといてよかった。でないとこの一杯で腹いっぱいになっちまうとこだったよ」
これ一杯でも結構なボリュームがあるからな。
その分値段もかなり高いが。……一杯2500エンもするんだぜコレ。
最近一日で7ケタくらい稼げるようになったとはいえ、決して安い買い物じゃないなコレは…。
お、ちょっと先の店で売ってる腸詰め、ジェットボアの肉が使われてるのか。ジェットヴルストってまんまなネーミングだなオイ。
ジェットボアの肉は旨味が強いけど、ちょっと肉質が硬いイメージがあるけどどうなんだろ。おばちゃん、ちょっと一本くださいな。
で、早速ガブリと、……むおっ…!
「う、美味い。これホントにジェットボアの肉なのか? ちょっと歯ごたえは感じるけど、全然食べづらくないぞ」
「丁寧に念入りに肉を挽いて、ジェットボア特有の肉の硬さを和らげてるのさ。それだけだと逆に歯ごたえが足りなくなるから、すごく細かく刻んだ肉も混ぜてるけどね」
なんという芸コマ。このおばちゃんやりおる…!
しかもコショウまで入ってて生臭さがいい具合に緩和されている。味付けも食感も素晴らしい出来だ。
どの店もレベルが高いなー。スキルのレベルだけじゃなくて、それぞれの店に独得の個性というか工夫が見られる。
こりゃレシピが分かったとしても簡単に再現できるもんじゃなさそうだな、ちょっと自惚れてたかも。
「……ふふ」
料理を食べながら、うんうん唸っているとアルマが微笑を浮かべながらこちらを見ていた。
「ん、なんか面白いことでもあったのか?」
「ううん、ごめん。ヒカルがあまりにも美味しそうに食べてるのを見てつい」
「そ、そうか。…俺ばっか楽しんでるみたいで悪いな」
「そんなことない。一緒に食べ歩きしてるだけで、すごく楽しい」
…そう言ってもらえると、正直すごく嬉しい。
気を使ってくれてるだけかもしれないけど、それでも嬉しい。
アルマもこんなオッサン予備軍とじゃなくて、レイナみたいに同年代のイケメンとでも一緒に歩いた方がもっと楽しいだろうに、そう言ってくれる。なんていい子なんや。
…あれ、レイナはともかく、アルマが同年代の男と一緒に楽しそうにしてるのを想像したらなんかすごく心がざわついた。嫉妬か、彼氏でもないオッサンの嫉妬とか醜すぎるぞ俺。
こんな若くて可愛くて優しい子が俺なんかと釣り合うわけが……う、うぐ…………これ以上は考えないようにしよう、うん。
などと勝手にアンニュイな気分に陥りそうになったところで次の屋台。
今なら自棄食いで軽く5人前はいけそう。気力からっぽだし。
ってなんだありゃ!? イケおじパーティが引きずってた大トカゲとかでっかい怪鳥とか、魔獣の丸焼きが並んでるんだけど!
「おおお、すげぇ! これが狩猟祭名物【魔獣の姿焼き展】か!」
「何度見ても圧巻だな、特に今年は赤色エリアの魔獣が多くて見ごたえがあるなぁ」
「いくら強い魔獣は美味いとはいえ、こんなに食いきれるのか?」
「祭りの参加者みんなが食べていくから、不思議と残飯が出たりすることは無いらしい。むしろ早めに食っとかないとあっという間に骨だけになっちまうぞ」
「参加料を払って、あとは食べたい分だけ好きなだけ刻みながら食べていくバイキング方式みたいなもんらしいな」
「オレ、ちょっと参加してくる」
あんだけ大きな魔獣なら、普通食べやすいように解体してから調理するもんだろうに。
あえての丸焼きとは、なかなかロマンがあるな。調理する方はめっちゃ大変そうだが。
「うわ、食べ放題だけど参加料30000エンだってさ、どうする?」
「……ヒカルは、どうしたい?」
「ちょっともったいない気もするけど、できれば食べ比べたりしてみたいなー、アルマは?」
「うん、私もそうしたい」
じゃ、そういうことで。
参加料二人で60000エンか……。
一人頭のお小遣いが100000エンくらいをみてたけど、その3割を早くも費やしてしまった。
こうなったら悔いの残らないように食いまくって元をとっておこうそうしよう。
さーて、まずはあの大トカゲの肉から食べようかなー。
「ち、ちょっとニーさん! いくらなんでも食いすぎだろ!」
「おいおい何キロ食う気だあんた! てか食ったもんいったいどこに納まってんだ!?」
「さ、サイクロンウィングの肉があっというまに半分近く骨に……」
「すみませんお客様これ以上はどうかご勘弁をというかホントに食べるの止めてー!!」
…自重せずに自棄食い気味に食いまくってたら出禁になったでござる。どうしてこうなった。
アルマもさすがにドン引きしてるし。こんなだから釣り合わないんだろ俺。
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