狩猟祭全プログラム終了
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「橙色エリアは終盤に赤色エリアから5体もの魔獣が侵入してくるアクシデントがあったようだが、参加者及びスタッフの尽力により死者は出なかった。この結果を見るに今回の狩猟祭は参加する人数もさることながら、個々のレベルの高さが窺えるな」
うんうん、せやな。
橙色エリアで出会ったパーティ【天への階梯】も、疲労困憊の状態にもかかわらずAランクの白金ニワトリ相手に苦戦しながらも懸命に戦い、援軍のニワトリ共をほぼ全滅させてたしな。
ちょっと手助けしたとはいえ、ニワトリの援軍を彼らが対応してくれなきゃ俺が白金ニワトリを仕留めるのは無理だっただろう。
ステータスを見る限りじゃ他のパーティも彼らと遜色ないレベルだし、実力者揃いなのは見れば誰でも分かる。
橙色エリア3等はソロの20代前半くらいの女性剣豪【ラウナクェス】 スコアは9体。
一見、今までのエリアに比べて数が少なく感じるが、Bランクの魔獣ばっかうろついてる橙色エリアで9体も一人で狩るのは簡単なことじゃない。
ちなみにこの女性、レベルは37で本来推奨されるエリアは黄色だったりする。なんかギルドが推奨してるエリアの一つ上のエリアで参加してる人多くない? アルマとかさっきの銀髪イケメン的中弓士とか。
あくまで比較的安全に狩りを進められるエリアを推奨しているから、一つ上のエリアで狩りをしたい人間がいるのも当たり前かもしれないけど。
やっぱ魔力操作や気力操作のアドバンテージがあっても、元々センスのある人間からしてみればさほど凄いことでもないのかもな。
段違いに強くなれるのは間違いないけど、あくまでそれは同レベル帯の人間と比べての話。
10や20も相手のレベルが上がれば普通に苦戦する。あの白金ニワトリに勝てたのは援軍に【天への階梯】のみんなが対応してくれたからだしな。
その【天への階梯】の順位は2等。仕留めた魔獣の数は42体。
援軍で呼び寄せられた黄色エリアのアイアンコッコが混じってるから、ちょっと総合レベルのポイントが低かったみたいだが、その分魔獣の数を稼ぐことができたため僅差で2等になれたらしい。
ちなみにゴールデンコッコとプラチナムコッコは、スタッフの俺がトドメを刺したからポイントには含まれなかった。申し訳ない。
1等はソロの槍使い、の中堅職『豪槍戦士』の男性【ヴィノウマック】 年齢は40くらいで、討伐数は23体。
筋骨隆々とした身体で、力任せに槍を振り回すスタイルなんだろうなと勝手に脳筋認定。失礼。
見た目は筋肉が服着て歩いているような人だが、実力は確かなようでLv46と橙色エリアではトップクラスの実力者だ。
赤色エリアでもある程度通用しそうだな。さすがにあの白金ニワトリ相手じゃ苦戦するだろうけど。
「その鍛え上げられた肉体に恥ずかしくない、見事な成果だな。今後も活躍を期待しているぞ」
「がっははは!! もちろんよ!!」
「…あともう少し声を小さくしてくれんか」
大声で笑う脳筋に顔を顰めつつも、惜しみなく豪華な景品を手渡すコワマス。
きちんと結果を出せばちゃんと認めてくれるのがコワマスのいいとこだよな。
俺が日本にいたころの労働環境と言ったらもうね。ノルマはこなせて当たり前、それ以上の付加価値がないやつに給料のアップなんかないし残業代も全部は出さんみたいな。…これ以上はやめておこう、気が滅入る。
赤色エリアに参加したのはたった3組だけなので、どのパーティにも景品が贈られることになった。
どのパーティも前衛、後衛のバランスがよく、あらゆる相手に対応可能な編成なのが分かる。
…それに比べてウチのパーティはバランスとか一切考えてない編成だよな。前衛後衛両方こなせるアルマ、隠密奇襲メインのレイナ、なんだかよく分からない俺。……なにこの編成。
3等は全員男のガチムチパーティ【イエス・マッスル】 討伐数4体。なんちゅー名前と見た目だ。むさい。
さっきの橙色エリアの脳筋があの中に加わっても違和感ゼロだろうな。暑苦しい。
見た目はともかく、前衛は棍棒使いと斧使いの中堅職【砕棍戦士】と【剛斧戦士】、後衛は魔術士と弓使いの上級職【天穿弓師】 といった編成で攻撃特化だがかなりバランスはいい。
弓を持ってるのがリーダーかな。一人だけ上級職だし、レベルもイケおじと互角の51。
一人だけ魔術士が混じってるけど、心なしか肩身が狭そうに見えるな。なぜそんなむさ苦しいパーティに入った。
2等は3人の女性を侍らせた美形赤髪青年のパーティ【ヘブン】 討伐数6体。全員がリーダーの男性にベッタリだしどう見てもハーレムです本当に(ry
しかも女性は3人ともまったく違う容姿で、かつ趣味で選んだのが見ただけで一発で分かる。
一人はおしとやかな黒髪眼鏡、メイド服とか似合いそう。
一人は褐色銀髪ナイスバディ、ちょっと出るとこ出すぎやろ。目の毒だ。
もう一人はなんとロリマスと同じく金髪エルフの少女。つるペタ幼女……いや、ステータスの年齢を確認するとこのギルド内じゃ最年長みたいだ。詳しい年齢は伏せるが。
そして、驚くべきことにこの女性たち全員がLv45を超える猛者で、ぶっちゃけ青年が一番弱い。それでもLv35はあるが。
なにこのパーティ、酷いレベルでバランスがとれてんな。青年以外。
観客席から「もげろ」とか「羨ましい」だの「また幼女か、最近の幼女強いな…」とか小声で聞こえてくる。他に幼女なんかいたっけ……あ、もしかしてレイナのことか?
そして、赤色エリア1等はもちろんイケおじパーティこと【夢の懸け橋】 討伐数は驚異の12体。
B~Aランクの魔獣を12体ってとんでもないな。2等との差が倍近いですやん。
1対1とはいえ、こちとらあの白金ニワトリ1体相手でもヒーコラ言いながら倒したってのに。
やっぱ熟練のパーティは違うなー、いつか俺たちもあんな風になれるかな。
イケおじリーダーことキョウクハルト氏に、コワマスから景品が手渡される。
「…狩猟祭の限られた時間の中で、赤色エリアの魔獣を12体とはな。本来なら1日1体を討伐するだけでも大したものなのだが」
「ええ、さすがに今回の狩猟は少し頑張り過ぎました。疲労からか、正直言って今も腰と肩が痛んでいます」
「無理はしすぎるなと言っただろうに。……だが、見事な戦果だ。赤色エリア1等、おめでとう」
「ありがとうございます」
景品が手渡されるのと同時に、観客席、参加者、スタッフ全員から拍手が贈られた。
絵になるわー、誰も文句がつけようもないくらい素晴らしい光景だ。
ちなみに手渡された景品は『オリハルコンのインゴット』らしい。
ついに出たか、オリハルコン。ファンタジーじゃ最強装備の材料として欠かせない印象があるよな。
≪【オリハルコン】 靭性、剛性ともに非常に優れた性質を持っており、ユニーク魔獣装備の最終進化を除けばトップクラスの装備品の原料となる。単体を原料としても充分に強力な装備品を作成可能だが、とある金属と混ぜ合わせた合金ならば――≫
あ、ちょっと待って。その情報も気になるけど今いいとこだからまた後でね。
狩猟祭もようやく終わりかな。
結果発表と景品の手渡しが済んだし、あとは簡単な挨拶が済んだら屋台の並んでるところまで行って午前中は思いっきり飲み食いするとしよう。
というわけで早く終わってー。
「さて、以上をもって狩猟祭のプログラムを終了とするが、なにか質問や確認したいことなどはあるか?」
ないない。
みんなもないよな? ないよね?
「一つ、よろしいですか?」
誰かが、手を挙げてコワマスに声を発した。
空気読め! みんなもうさっさと解散したがってるでしょうが!
って、手を上げてるの青いのことウィルクラウスとかいう奴じゃん。
なにが聞きたいの?
「なんだ?」
「……今回のスタッフの中に、飛行士という仮面を被った人が居たはずですが、その方はどこに?」
「なぜ、それを聞く必要がある?」
「今回の狩猟で、彼に危ないところを助けられたので、改めてお礼を言いたくて…」
律義なやっちゃなー、やっぱこいつ根はそんな悪い奴じゃないのかね。多少鬱陶しいけど。
なおその本人はさっさと解放されたがってる模様。はよ終われ。
「分かった、私の方から伝えておこう」
「いえ、できれば直接会って自分の口から伝えたいのですが……彼は今どこに? そもそも彼は何者なのでしょうか」
「ウィルクラウス」
『青いの』とは呼ばず、フルネームで名前を呼ぶコワマス。
急に名前を呼ばれて少し驚いたような顔をする青いの。ちょっと怖がってるな。
「『飛行士』の詮索は控えておけ。彼には彼の事情がある」
「ですが……」
「下手に関わろうとすると、礼を言うどころか迷惑になりかねんぞ。いいから伝言くらいで手を打っておけ」
「……分かりました」
渋々といった様子で折れる青いの。
早めに諦めてくれて助かった。もうこれ以上の面倒事はごめんだ。さっさと屋台で美味いもの食いながら舌鼓を打ちたい。
飛行士の話題が出た時に【天への階梯】のメンバーがこっちをチラ見してたけど、苦笑いで返しておいた。
さて、狩猟祭も終わったし思いっきり食うぞー!
どんな料理が並んでるか楽しみだ、じゅるり。
お読みいただきありがとうございます。
仕事が忙しすぎて更新ペースがちょっと落ちるかもしれません…(;´Д`)




