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狩猟後の晩御飯

新規の評価、ブックマーク、誤字報告ありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。

ニワトリ魔獣の卵を3つばかし割ってかき混ぜ塩を少々加える。

砂糖を入れると味がマイルドになるけど焦げやすくなるから今回は入れない。卵の味がやたら濃厚だから塩だけでも充分美味いしこれでいいや。


アダマンメッキのフライパンを熱して、バターと植物油を入れる。

バターが溶け切らないうちにフライパン全体に油とバターを広げていき、卵を入れた時にフライパンにくっつかないようにしておく。

…さて、バターが泡立ってきたらいよいよ卵の投入だ。なんで家庭料理にこんな神経使ってるのか自分でも分からんけど、卵料理は火加減とスピードが重要だから嫌でも集中しなきゃならん。

火加減もいい感じに中火から強火を維持できてるし、いざ投入!

卵を入れたら、フライパンを前後に揺らしながら均等に熱が通るように箸でかき混ぜていき、卵全体を半熟状態にする。

フライパンに接している部分を徐々に剥がすようにフライパンの端に寄せていき、フライ返しで一気にひっくり返 グシャァ


チクショウメェ!! ひっくり返す直前まで上手くいってたのにミスって形が崩れた!

うぬぬぬぬ、やっぱり俺には無理なのか……? 料理スキルがあればこんなことも楽にできるのかねぇ…。

…これは俺の分にしよう。


仕方ない、魔力操作の反則技使うか。

え、気がひけるとか言ってなかったかって? 記憶にございませぬ。

普段のメンツだけなら笑い話で済むが、仮にもお客に出すものを失敗するわけにはいかんし、やむを得ん。



…まず火加減、さっきは中火と強火の間を維持できてたけど、コンロの薪が燃え尽き始めて火が弱くなってる。

また薪を追加すれば火力を上げられるだろうけど、時間かかるしそろそろ薪の消費量が追加料金払わなきゃいけないレベルになってきた。

というわけで、IHクッキングヒーターよろしく火を使わずに魔力を熱エネルギーに変換して熱する作戦に。セコい。

火加減もとい熱加減は、メニュー頼りだから適切な温度で調理を進められる。ズルい。

そして、肝心のひっくり返す工程は卵全体を魔力で覆って浮かせながらやるので崩れる心配は無くなった。きたない。

……なんだこの謎の罪悪感は。


で、形の整ったオムレツができたらさっき作ったウサギライスに乗せて、最初に作ったトマトソースをかけてオムライスの完成だ。

オムレツの中身はなかなか程よく半熟に仕上がってるようだ。

さすがにアニメや漫画みたいに、ナイフで横に開いたら半熟卵が溢れ出てくるような極上仕上がりにはなってないけど。

…アレって現実でできるもんなんだろうか。できる人がいたら是非やり方をご教授願いたいものだ。


スキルも魔力も使わずに、綺麗に料理を作れる地球の料理人の方々には敬意しかない。マジリスペクトっすわー。

いやこっちの世界の料理人の人たちをけなしてるわけじゃないけどね?

…綺麗なオムレツを作るのに必要なスキルレベルってどんくらい必要なんだろうか。


≪このオムレツと同レベルのものを作ろうとした場合、個人差はあるがおおよそLv6~7程度は必要≫


確か、Lv7で高級レストランのシェフとして働けるレベルなんだっけ?

魔力操作の反則技はそんなレベルまで料理の腕を引き上げてくれるのか。…あんま使い過ぎると魔力なしじゃ料理できなくなりそうだから極力控えよう。


≪ちなみに横に開いて半熟卵が溢れ出るほどの仕上がりは、Lv9~10相当の腕が無ければ至難≫


よーするに俺には無理ってことね、残念。

高級料理店とかで食事をする機会があったら食べてみたいなー…。




さて、人数分できあがったしさっさと運びますかね。

ヒヨコの分も含めて5人前となると、ちょっと時間かかっちまったな。

…そういえば、ヒヨコに卵なんか食わせて大丈夫なんだろうか。こう、倫理的に。


≪野生の魔獣も自身の幼体に無精卵を摂取させたり、極限状態の場合自分の肉を食い千切って食べさせたり餓死した他の幼体の――≫


スタァァァップ!! これから飯食う時にそういうヘヴィな話は勘弁してください! 食欲が失せるから!

……まあ卵はともかく、これから鶏肉とかメニューに出す時はこいつには別の肉を用意しておこう。

特にあの白金ニワトリはコイツの実の母親だし、アイツの肉を食う時は代わりにクリムゾンスケイルの肉でも食わせてやるか。


『ピ?』


コイツ自身は別に気にしないかもしれんけどな。

え、気がひけるなら白金ニワトリの肉食うのやめろって?

いやー、そりゃ無理。あんだけの死闘を繰り広げた相手だし、食えるのなら仕留めた俺自身で食って供養してやらないと気が済まない。

…どうやって食べようかな。じゅるり。



ハラペコ三人組がスタンバイしてるテーブルにオムライスを運んでいく。

合掌するまで我慢することすら辛い、といった表情で運ばれてくるのを凝視する三人。怖いから目を光らせるな。

オムライスの横に作り置きのクリームシチューを添えて、ようやく晩御飯を食べる準備が整った。

では、俺とヒヨコも席について



「いただきます」


「「「いただきます!」」」


『ピッ!』



俺の合掌に続いて三人+一羽も合掌し、速攻でスプーンをオムライスに突き刺しすくい上げて口に運んでいった。

……ものすごく腹減ってたせいもあってか、口に含んだ直後に顔を綻ばせていく三人。口にあったようでなにより。



「ふわふわ、トロトロ……!」


「半熟の卵が赤いアロライスに絡んでなんとも言えない味わいっすー…!」


「……あんたら、普段からこんなごちそう食ってるのか? こんなにうまいモン久しぶりに食ったよ!」



そりゃどうも。お褒めいただき恐悦至極にございまする。

レイナの食レポが頑張って具体的に表現しようとしてるのがちょっとわざとらしい気もするけど。



「でも、カジカワさんの卵だけなんか形が変じゃないっすか?」


「……俺だって失敗することくらいある。オムレツ作るのめっちゃ難しいんだぞ」



俺だけ半熟スクランブルエッグかけウサギライスとかいうもはやわけの分からない料理だしな。

見た目はあんま良くないけど味は悪くないからいいけど。



「失敗してもうまそうじゃん。おれが料理なんかしようとしたらすぐ黒焦げになっちまうのに」


「スキルがないとそうなるのが普通なんすよねー…」


「アロライスとソースが赤いから、見た目辛そうに見えるけど全然辛くない。程よく酸味が利いてて食べやすい」


「ああ、この赤みはケチャップとかヘヴィトマトの赤さだからな」


「おれ、正直トマト苦手なんだけどこの料理はすげー好きだわ」



トマトは栄養豊富だから食べといた方がいいぞ。…俺も子供のころは苦手だったけどな。



『ピッピッ!』


「…そういえば、このアロライスに混ぜ込んであるお肉ってなんのお肉なんすか?」


「鶏肉っぽいかもしれないけど違うぞ、角ウサギが二回進化したやつの肉だ。さすがにヒヨコに鶏肉食わせるのはちょっとな」


「そ、そうっすか、よかった。……てか、このちっちゃいカラダのどこにこんな量が入っていくんすかね」


「明らかにコイツの身体より、食ったもんの量の方が多いよな…」


「不思議だねーハハハ……」


「いや、カジカワさんもヒヨコのこと言えないんすけど。大食い大会の時とか30皿くらい食べてたじゃないっすか」


「あれは序盤の量が少なかったからセーフ」


「それでも軽く4人前は食べてた……」



あのころは気力が空だったからな。補給するのに何人前も食べないと気力がまともに回復しないのはちと不便だった。

今はメニューの新機能で魔力を気力に変換できるからもうその必要はないだろうけど。



「狩猟祭の結果はどうなったんだろうな」


「黄緑エリアは接戦だったからなぁ、ちょっと誰が一位なのか分かんないかも。レイナがすごい勢いで魔獣を倒しまくるから、それにつられておれも頑張り過ぎちまったよ」


「なんかスクロールをいっぱい使って魔獣を狩ってたパーティがいたっすけど、パーティだと人数分ポイントが割られちゃうんすよね。なら、多分自分かラディアさんのどっちかが一番だと思うっす」


「普段安全に狩れる範囲でしか魔獣の討伐をしてないんだけど、正直おれ自身あんなに魔獣を狩れるとは思ってなかったよ。レベルが一気に2も上がっちまったしな」



狩りに出かける前のラディア君はLv13だったが、今はLv15にまで上がっている。

いったい、何十体討伐したんだろうか。魔力操作も気力操作も使わずこの成果って、この子もしかして天才だったりする…?



「黄色エリアのトップはアルマかな。最後の1時間は別のエリアに行ってたからその分ハンデはあるけど、それでも狩った数も質もえらいことになってたからな」


「別のエリアに? なんでっすか? 最初に狩ってたエリア以外のところで魔獣を狩ってもポイントにならないのに」


「……『飛行士』に協力を頼まれて、赤色エリアから橙色エリアへ入ってきた魔獣の討伐をしてた」



『飛行士』って言う時にこっちチラ見するんじゃありません。勘付かれたらどうする。



「赤色エリアから!? あそこの魔獣ってLv40以上の超強い魔獣ばっかりなんだろ、大丈夫だったのか!?」


「ちょっと危なかったけど、飛行士と協力してなんとか倒せた」



ちょっと危なかった(下手したらあと一歩で死んでた)。

まああの後ドラゴンが通過していくもんだから、それぐらいどうってことないと感じてしまってるのかもしれないが。



「俺は明日の出店の準備があったから参加できなかったけど、みんな大変だったんだな。迎えに行った時もすごく疲れてそうだったし」


「ソウッスネー」


「ウン」


「……なんか返事がそっけなくないか?」



そりゃ事情を知ってる二人からすれば、今の発言は白々しいことこの上ないだろうしな。

さーて、みんな食べ終わったみたいだし、明日の出店で売るデザートの仕込みをしておくか。

午後からの出店だから、午前中は思いっきり食べ歩くぞーフフフ。


お読みいただきありがとうございます。


2020/5/3

後の描写と矛盾する描写があったので、修正しておきました。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
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