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狩猟祭⑤ 白金ニワトリ 軍団

新規のブックマーク、誤字報告ありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。


くっそ、この白金ニワトリ小さいクセにまるで隙がねぇ!

むしろ小さい分攻撃が当てづらいうえに、速さ特化の能力値がそれに拍車をかけてる。

攻撃力も俺の倍近くで、モロに攻撃を喰らいでもしたら即HPが溶けること必至。



「くそ、今のは当たったと思ったのに! 紙一重で絶妙な避け方しやがって! ニワトリのくせにぃ!」


「やっと追い詰めたと思ったらとんでもない速さで距離を離しやがる! やっぱこのトリ公【縮地】を使えるみてぇだ!」


「あんな遠くじゃ魔法を撃っても避けられるし、近付いても縮地ですぐ逃げられるし、かと思ったら急接近して攻撃してくるし! なんて厄介なニワトリなの!」


「的が小さすぎるうえに、素早すぎて当たんないよー!」


「おまけになんだあの余裕に満ちた態度は! ニワトリ魔獣ってのはもっとやかましく鳴きながら戦ってるイメージなのに、こいつは余裕しゃくしゃくなのがなんか腹立つわ!」



『コケッ』



大体言いたいことを言ってくれたな、説明乙。

四人が言ってる通り、攻撃がまともに当てられないのが最も厄介だ。

四人組パーティ『天への階梯』もかなりの実力者で、パーティのレベルは30~40くらいだ。

万全の状態なら、このニワトリを仕留めることもできなくはないだろう。

だが疲弊し、消耗しきっている今の状態じゃこのニワトリを相手取るのは厳しいようで、大苦戦を強いられている。


で、俺はというとちょくちょく魔力飛行で割って入ってニワトリの攻撃を防いだり、パーティに攻撃を仕掛ける瞬間に奇襲を仕掛けたりしてるがそれも縮地で避けられてしまう。

パーティの攻撃は紙一重で避けるくせに、俺の攻撃は必ず縮地で避けやがって。

まあ俺の場合は紙一重で避けても、全身のどこからでもパイルを打てるから避けた直後に攻撃を受けることになるけどな。

まだパイル一発も打ってないのに警戒しまくってるのが気になるが。勘か、野生の勘ってやつか?

ん、待てよ? 俺の攻撃に対しては必ず縮地を使って避けるってことは…。


……。


こいつ、やっぱアホかもしんない。確定じゃないけど、攻略法が見えた気がする。

まさかそんなに上手くいくとは思わないけど、今の状態が延々と続くよりはなにかしらのアクションを起こして早めに決着をつけるべきだろう。

他のエリア越え魔獣の様子も見に行かないとだしな。そうと決まれば縮地モドキこと魔力飛行でニワトリに急接近!



『ココ、コケッ』


「あ、また縮地で距離を離しやがった!」


「ちょっと! アンタの突進じゃ無駄に避けられるだけだからもっと他の方法を試しなさいよ!」



静かに鳴き声を上げながら、縮地で回避しつつ距離を離すニワトリ。

なんかブーイングの声が上がってるけど、これも戦略のうちなのよー。


逃げたニワトリ魔獣をさらに魔力飛行で追う。



『ココッ』



追う。



『コ、ココッ』



追う、追う、追う。



『コ、コケッ!』



追い詰めるつもりで、追いすがり、追い続ける!



『コケッ、コケェッ!』



なぜ俺の攻撃や突進をわざわざ縮地で避けてるのか。

自分に匹敵する速さに脅威を感じているのもあるかもしれないが、おそらく『練習』をしているんだと思う。

縮地は極体術スキルLv3の技能で、多分進化した際に獲得した新規スキル技能なんだろう。

新しく覚えた技能に使い慣れるために、格下かつ素早い相手である俺は絶好の練習相手だ。

ただ、使い慣れないということは有用性だけじゃなくてそのリスクについても深く理解ができていないのだろう。


俺の魔力飛行は宙に浮かんでいるだけならほぼ魔力を消費することはない。

高速で飛んでも自分に纏わせている魔力を動かしているだけだから、よほどの長距離を移動しない限りさほど魔力を使わない。

それに対して、魔獣の使っているスキル技能の消費量はどうだろうか。


下位スキルのクイックステップですら一回使うのに5ほどスタミナを消費する。

じゃあ上位スキルの縮地は一回使うのに、どれだけのコストがかかるんだろうな?

ステータスを見る限りじゃ大体15程度スタミナを消費しているようで、何度も使っているうちに残りのスタミナが3割を切っている。

このまま縮地を使い続ければスタミナが枯渇するぞ、さあどうする?



『コッ』



『コケエエエエェェェェェッッ!!!』



耳をつんざくような、甲高い絶叫。

これまでの余裕に満ちた静かな鳴き声とは違う、必死の声。

いよいよ追い詰めたかと一瞬思ったが、違う。



「お、おい、なんだよ今のやたら響く鳴き声は」


「な、なんか辺りから変な声が聞こえない? だんだん近づいてるような…」


「……まさか【コール・ハウリング】かっ!? あのニワトリ一匹でもう手一杯だってのに、そりゃねぇだろ!」



…メニューさん、さっきの鳴き声は?

なんかこっちに向かって十数体ばかし生命反応が近付いてきてるんだけど。


≪魔獣スキルLv6技能【コール・ハウリング】声が届く範囲にいる格下の同族系統の魔獣を呼び寄せる技能。呼び寄せた魔獣は呼んだ魔獣の指示に従い行動する≫


……マジかよ。

こちとらこの白金ニワトリ一羽相手にするのでいっぱいいっぱいだっつの!

追い詰めすぎた俺のせいか? ……いや、ピンチになったらどっちにしろ呼ばれてただろうな。



『ココッ! コケエェェェェッッ!!』


『ゴゲェェェェエエ!!』


『グギャアアアアアアアア!!!』



とか思っているうちに、四方八方からニワトリ魔獣たちがこっちに向かってダッシュしてきやがった。

総数、14体。

なんか灰色っぽいのが6体、銀色が7体、そしてダチョウ並みにデカい金色の奴が1体。

灰色っぽいのは銀色の前の形態かな。あ、名前アイアンコッコっていうのね。普通銅色の前に鉄じゃないの? どうでもいいけど。

銀色は7体って、極端な話ハイケイブベアが7体いるのと同じようなもんなんだよな。この時点で既にヤバい。

そして極めつけは金色のビッグサイズニワトリ、ゴールデンコッコ。デカすぎるしなんかこいつだけ鳴き声がおかしいし、ホントにニワトリかこいつ?


…どうしよう、マジでどうしよう。

こんなことなら白金ニワトリ追い掛け回してる間にあの四人に遠くまで逃げるように促しておくんだった。

そうすれば適当な頃合いで俺も離脱できたのに。……後悔しても仕方ない、今の状況を乗り切るための手札を確認しないと。



まず四人組パーティの戦力確認。


剣士の金髪中年『グレッグナー』Lv43。剣士っていうか『剣豪』っていう中堅職みたいだ。金色相手にサシで戦える見込みがあるのはこの人くらいか。


盾使いの銀髪青年『ヒューイット』Lv38。こちらも『壁盾戦士』っていう中堅職。攻撃を防ぐのはもちろん、相手のヘイトを自分に向けるスキル技能なんかが使えるようで、集団相手のタンクとして活躍できそうかな。


魔術士の金髪ロング女性『ジェシーフェール』Lv36。攻撃魔法スキルLv9か。……惜しい、あとちょっとで上級魔法スキルが使えるのに。だが風属性特化型らしく、広範囲攻撃や火力一点集中攻撃など様々な相手に対応できそうだ。


最後に弓使いの黒髪ポニテ女性『ナヴィーシア』Lv36。中堅職『的中弓士』。的中って割には白金ニワトリに一発も当たってなかったが、さすがに相手が悪いからあんまそのことツッコむのは酷だろう。他のニワトリなら的がデカいし問題なく対処できるだろう。


だが、全員疲弊しているうえにMPもSPも残り少ない。

まともにこの数と質の魔獣相手に戦おうとしても、おそらく押し切られる。

……仕方ない、出し惜しみしている場合じゃなさそうだ。ここで残りの力使い切るくらいの気持ちでいきますか。


お読みいただきありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
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