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狩猟祭② らしくない説教

新規の評価、ブックマーク、誤字報告ありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。



……狩猟祭が始まってから1時間が経過。

どの参加者もまず魔獣を探すことに時間がかかっているようで、現時点で大体多くても5、6匹程度しか狩れていないようだ。

それでも普段の討伐に比べればかなりのハイペースのようだが。


ちなみに現時点でレイナは8匹、アルマは魔獣の群れと遭遇した、いやむしろ群れに向かって突っ込んでいったのもあって15匹以上は討伐している。

レイナはともかく、アルマは戦闘よりも魔獣の死体を回収する方が時間かかってるかもしれない。


あの後も何度か魔獣がエリアの枠を越えてくることがあったが、参加者やスタッフもなかなか手練れが揃っていて今のところ大きな怪我やトラブルには至っていない。

特に黄色エリアは枠を越えて侵入しようとした魔獣に積極的にアルマが突っ込んで討伐していくから、結果的に一番平和なエリアかもしれないな。

序盤から飛ばし過ぎて後半バテなきゃいいが…。



狩猟祭の討伐時間はおよそ5時間程度。長いか短いかよくわからんな。

休憩や食事、ポーションなんかによる補給や装備のメンテなんかは各自のタイミングに任せているようで、今も座り込んで休憩している人もいればパンを食べながら忙しなく走って魔獣を探している人もいる。吐くぞ。

アルマは力を温存しながら戦っているらしく、MPSPともに8割ほど残っている。まだ割と余裕そうだな。

レイナはMP9割、SP6~7割程度でちょっとSPの消費が激しい。このままだとあと1~2時間でバテちまうなこりゃ。

まあ途中で飯食って休めば終了時間までもつかな。討伐二日目の時に比べたらよゆーよゆー。



魔獣がエリア越えしまくってるけど、参加者は参加エリアを越えてはいけないのかというと、実はそうでもない。

最初に参加するエリアを決めて、そのエリア内の魔獣を狩った数と質を競うルールだが、エリアを越えること自体は別にルール違反ではない。

他のエリアの魔獣を討伐してもペナルティにはならないが、決められたエリア外で仕留めた魔獣はカウントされないから他のエリアでポイントを荒稼ぎすることはできないけど。

あと最初に決められたエリアから、途中で他のエリアに狩猟エリアを変更することは原則としてはダメだが、討伐数をゼロからやり直すならOKらしい。

狩猟の時間が他の参加者に比べて短くなって不利だから、途中で変更する人はほぼいないらしいが。

あと途中でギブアップしたり、魔獣の攻撃で気絶や重傷を負った場合は各地のセーフティエリアで治療・療養・待機することになっている。



参加者たちもまばらに広がっているところもあれば、様子をうかがっているのかある程度近くに固まっている人たちもいる。

スタッフの立場から言わせてもらうと、人数が多ければ多い方が強力な魔獣がエリア越えしてきた時に対処しやすいからある程度集まっててほしいんだけどなー。

どれだけ魔獣を多く狩れたかの競争でもあるから無理に馴れ合えとは言わないけど、孤立してるところに強力な魔獣に襲われでもしたら危険だし。

そういったトラブルに対処するためにスタッフが居るわけだけども。



…! 

言ってるそばから、孤立した参加者にエリア越えした強力な魔獣が襲いかかっているようだ。

信号弾を確認、即座に向かえるスタッフは俺一人、到着まで30秒くらいの距離か。どうにか持ちこたえろよ!

ん、近くにもう一人参加者がいるな、さっきの信号弾を見て加勢に向かおうとしているようだ。

距離は俺より大分近い、もう合流したようだ。これなら大丈夫そうかな。

……って、最初に襲われてた人が気絶した! 魔獣の攻撃をモロに喰らいでもしたのか!?

このままだと加勢した人もヤバそうだな、急いで助けますか。


ようやく辿り着いた時に見えたのは、地面に倒れている銀髪の女性とその人に襲いかかろうとしている羽毛が銀色でやたらツヤツヤしてるニワトリ魔獣。あ、名前やっぱシルバーコッコなのね。

そして、無防備な状態の女性を庇うように魔獣にたちはだかり、剣と盾を構えている青いのことウィルクラウスの姿が見えた。

……加勢したのお前かい。ちょっと見直した気がしないでもない。

銀色ニワトリがLv35なのに対し青いのはLv30か、ちょっと厳しいな。

アルマやレイナみたいに気力や魔力を操作できれば余裕で倒せるだろうが、スキルだけじゃなー。

現にニワトリの攻撃を盾や剣で受けるたびにHPが徐々に削られていってるし、このままじゃまずい。さっさと助けるか。


魔力飛行で急接近しながら、魔力の緩衝材と装甲を右手に纏わせ、爆発性の液体空気を生成し、その先に魔力の杭を作り―――



『グゴゲェェエエッ!!』


「くっ! こいつ! ………な、なんだあれは!?」



魔獣のすぐそばまで近づいた時点で起爆っ!



ズダァンッ! と派手な爆音と衝撃を発生させながら、爆発で押し出された杭が着弾した銀色ニワトリ魔獣の頭を弾き飛ばす。

ん、よしよし。ヴィンフィートの赤魔族みたいに身体全体が粉々になったりしてないな。狙いを頭だけにして範囲を絞っておいて正解だった。羽毛も肉も上質そうだし無駄にならなくてなにより。

この場合はスタッフの介入があったため、参加者の得点には加算されない。無駄に消耗するだけで参加者にとってはあまりいい結果ではないだろう。


気絶している女性はニワトリに蹴られて、防御は成功したものの地面に頭をぶつけて気絶したようだ。

幸い、重傷には至っていない。頭にたんこぶと首がちょっとむちうちになった程度だな。

確認を済ませたらさっさとセーフティエリアに運びますか。この青いのにあんま関わりたくないし、万が一正体ばれたりしたら厄介だ。

あー、でも助けるのにちょっともたついたし傷くらいは治しておくか。



「…遅れてすまない。ほら、回復薬だ。……余計なお世話かもしれないが」


「……いや、助かった。俺一人じゃ彼女を守り切るのは厳しかったかもしれない」



そう言ったあと、受け取った回復薬をあおり傷を癒す青いの。

意外と素直だな、ギルド内で俺に突っかかってきた時とはなんか印象が違う気が。



「一応、簡単な状況確認だけさせてもらっていいか?」


「……彼女がエリアを越えてきた魔獣に襲われているのを見て、加勢したんだが守り切れず魔獣に攻撃させるのを許してしまったんだ」


「で、気絶した彼女を庇いながら戦っているところに私が入ってきたわけか」


「ああ。………君は、凄いな。あんな強力な魔獣を一撃であっという間に仕留めてしまうなんて。それに比べて、俺は……」



なんか落ち込んどる。まあ今日だけでも色々ショックなことがあったっぽいし無理もない。

アルマと会話してフラれたり、…いや別にフラれたわけじゃなくて単に相手にされてなかっただけかもしれんが。あれ、そっちの方が酷くね? …まあいいや。

…ガラじゃないけど、ちょっとフォローしとくか。



「……確かに、実力を伴わない正義感だけでは誰かを助けるのは勇気というより蛮勇だな。最悪、助けるどころか二人仲良く魔獣の餌になっていてもおかしくなかったかもしれない」


「……っ! だが俺はっ……!」


「中身のない正義になど大した価値はない。下手したら助けようとした人間にとっては偽善や迷惑と思われるかもしれない。心当たりはないか?」


「……き、君に俺のなにが……!」



反論しつつも、どこか後ろめたそうに目を逸らす青いの。うん、そりゃ心当たりあるよね。

俺もなんか偉そうなこと言ってるけど、ギルドでのやり取りの意趣返しもちょっと交えてたりする。我ながら性格悪いなオイ。



「だが、お前が彼女に加勢しなければ私が間に合わなかった可能性があるのもまた事実だ。お前の正義感全てが間違っているとは言わん。それに見合った中身があれば誰も文句は言わんさ」


「……中身って、なんだよ……」


「自分で考えろ。理不尽を跳ね除けられる頭脳やコネか、暴力に抗う腕力か、それはお前の理想次第だろう。……長々と説教してしまったな、すまない。彼女をセーフティエリアに運ばなければならないから、私はもう行くとする」



なんか言い逃げみたいになってるけど、実際この人ほっとくのはまずいしな。一応、生命力操作で治療はしてあるけど。

さーて撤収撤収ー。



「お、おい! 君の名前は――」



青いのがなんか言ってるけど無視!

始まったばかりのアルマよろしく猛スピードで逃走。ばいびー。

あ、また呆然と立ち尽くしてる。まあもうほっとけばいいか。




はぁ、なんからしくない説教しちまったなー。

偉そうなこと言いまくってたけど、俺自身そんな立派な中身のある人間じゃないっていうね。

そもそも中身って何を詰めればいいんだよ。アンコか? ……こっちに来てから餡子食ってないなー。どっかで小豆とか栽培してないかな。

とか食い物関係の話題に思考がすぐ脱線している時点で俺の中身なんかお察しである。あー、腹減ったわー……。


お読みいただきありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
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