狩猟祭① 開始数十分間のできごと
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参加者、スタッフそれぞれが魔獣草原の定位置に移動していく。
他のスタッフと違って、俺は黄色エリアと橙色エリアの掛け持ちなのでさっさと空を飛びながら移動して様子を見ておくことにした。
機動力があるからってコキ使いすぎやろ、いっそのこと橙色エリアだけの方がまだ楽だわ。
緑のエリアは既に狩猟を開始したみたいだな。マップ画面に表示されている参加者たちのアイコンが忙しなく動いている。
早めに集合が可能なエリアから随時開始していく流れか。この分だとあと30分くらいで黄色のエリアも狩猟開始かな。
レイナは黄緑のエリアで狩猟をするようだ。
緑のエリアのほうが安全だからできればそっちにしてほしかったが、腕試しも兼ねているから緑のエリアじゃどうもご不満の様子。無理はするなよ。
え、普段から無茶させまくってるお前が言うな? ハイソウデスネスミマセーン。
アルマは安定をとって黄色のエリアで討伐をするようだ。
本来推奨Lv30以上のエリアだが、こないだのオオカミの群れ相手に戦った様子を見る限りまず大丈夫だろう。
橙色エリアから魔獣が侵入してきても余裕で対処可能だろうな。
…むしろ橙色エリアに赤色エリアから魔獣が侵入してきた時のことを考えておかないとな。
赤色エリアの魔獣は最低でもLv40以上、下手したらLv50を超える。
そんなバケモン相手に俺一人で戦うのはとても……いや、死ぬ気でやれば割となんとかなるかもしれんが無茶だ。
ヤバそうだったら即座に逃げるか、遠慮せずにアルマに頼るとしますか。
お、黄緑エリアでも狩猟開始か、思ったより早いな。
黄緑エリアに散らばっていくアイコンの中にレイナと緑髪少年のものもあるな。どっちも参加者たちの中じゃレベルが低いが、頑張ってほしいものだ。
レイナは焦らずバテないように、気力を温存しつつゆっくりと、しかし確実に魔獣のいる方向へ移動しているな。
魔獣に近付いて、影に潜ったらしくアイコンに『状態:影潜り』と表示されている。
で、その魔獣のアイコンが『状態:死亡』と表示されたあと、消えた。
…開始数分で早くも一体討伐か。もしかしたら、レイナが黄緑エリアで一等になる可能性もあるかもな。
魔獣の死体なんかはあらかじめ配布してあるアイテム袋で回収するので荷物にはならない。
最終的に全てギルドが買い取るかたちになるらしいが、任意で狩りが終わったあと受け取ることも可能だとか。
ちなみにアイテム袋を破損したり紛失したりした場合は、どえらい額の弁償金を支払う羽目になるので注意が必要。…レイナ、マジで気を付けてくれよ。
さて、そろそろ黄色エリアでも狩猟開始か。
む? …なんかアルマのやたら近くに誰かいると思ったら、あのウィルクラウスとかいう青いのじゃねーか。
またなんか難癖でもつけてきてんのか? いい加減にしときなさい。アルマがキレて殴ったりして退場くらわないか心配だ。青いのは別にどうでもいいけど。
とか思っている間に狩猟開始の合図。それと同時にアルマがものすごい勢いで青いのから離れて、魔獣のいる方に向かっていった。
縮地並みに強化したクイックステップで移動しているみたいだが、使い過ぎてバテるなよ。一応弁当は持たせてあるから気力の補給は可能だろうが。
置いてかれた青いのは呆然としたようにしばしその場に立ち尽くしている。はよ狩りに向かえや。
橙色エリアにも人が集まってきたな。
このエリアはソロが3人に、4人組のパーティが4組ほどで合計19人か、少ないな。
赤色のエリアはさらに少なく、イケおじパーティの四人と、手練れのパーティが二組ほどで合計12人。
もう赤色エリアは参加するだけで景品がもらえるぐらい参加者が少ないな。
…ん?メニューさんどうしたの?
≪レイナミウレの近くに黄色エリアから魔獣の侵入を確認≫
マジかよ! いきなり!?
……近くにスタッフは?
≪…信号弾を放ったのを確認したらしく、現場に向かっているが到着まで数分ほど時間がかかる距離の模様≫
まずいな、俺が向かうべきか。いやでも管轄のエリアを離れている間になにかあったら…!
いや、レイナの危機に管轄がどうとか言ってる場合じゃ――
≪レイナミウレの近くに、短剣使いの『ラディアスタ』を確認。共闘をして魔獣の対応をしている模様≫
ラディアスタ、……さっきの緑髪少年のことか! グッジョブ!
…でも、この2人だけでどうにかなるもんなのか?黄色エリアの魔獣ってことは少なくともLv20超えてるだろ?
≪……ラディアスタが不意打ちにより魔獣に深手を負わせたのちに、レイナミウレによる討伐を確認。当面の危機は去った模様≫
そ、そうか、良かった。
……緑髪少年、マジグッジョブ。ナイスワーク、ナイスワークだ!
今度飯でも奢らせてもらおう。……俺の手作りじゃ駄目なようなら飯屋の高いメニューを奢ることも辞さないよ、うん。
≪……アルマティナの近くに橙色エリアの魔獣が接近しているのを確認≫
またかよ! 今度はアルマの方だと!?
なんでピンポイントで俺の仲間にばっか向かっていくんだよふざけんな!
黄色エリアなら俺の管轄だし、堂々と向かえるな。よし、念のため様子見に―――
≪アルマティナによる魔獣の討伐を確認。無傷でMP、SPともに消費は軽微≫
はっや!? ち、ちょっとアルマさん気合入れすぎじゃない? まだエンカウントして数十秒程度だよ?
…もしかしたら、橙色エリアで参加しても余裕だったかもしれないなこりゃ。
お、おおぅ………始まったばかりで早くも魔獣のエリア越えが2件発生。しかもその標的が両方とも俺の仲間だという。
まだ開始から数十分程度しか経ってないのになんか精神力がゴリゴリ削られていってる気がする。
もうね、心配なのもさることながら、こちらが様子を見に行く前に二人ともあっさり討伐してるからそのリアクションにも疲れてる感じなのよ。
高レベルの魔獣がアルマかレイナに近付くたびに冷や汗かきながら内心焦りまくり。……もう俺も一緒に参加すればよかったかな。
でもコワマスの依頼を断るのって大分勇気がいると思うんだ。怖いし。
それに、手練れの人員は少なくないのに俺に声をかけたのにはなにか意味があるのかもしれない。
単に、飛行能力を持っているなら救助しやすいからって理由だけかもしれんが。
こりゃ思ったより忙しそうだなー、早く終わってー……。
お読みいただきありがとうございます。
青いのが早くもなんかちょっかい出してきてる模様。そして無事スルー。イ㌔。




