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狩猟祭開催

新規の評価、ブックマーク、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださいっている方々に感謝します。

はい、おはようございます。

今日はいよいよ狩猟祭当日。海の家もとい冒険者ギルドでは朝から参加者と思しき冒険者や、腕に覚えのありそうな戦闘職の人たちでごった返してる。

参加者200人はいるんじゃないかコレ。ダイジェルのスタンピードの討伐人数の倍以上もいるとか、ダイジェルが小さいのかランドライナムが大きいのか。

レベルもピンキリで、Lv5くらいのビギナーもいれば、あのイケおじみたいにLv50近い人も2~3人いる。エンジョイ勢とガチ勢みたいな。

一定周期で大量に魔獣を狩らないとスタンピードが発生する可能性があるなら、どちらも魔獣を狩る大事な役目を持っているには変わりないんだが。


で、狩猟祭のスタッフとして動員される人数も50人近くいる。

ギルドの職員、普段はこんなにどこにいるんだよとか一瞬考えそうになったが、どうも今日のためにコワマスが冒険者とか衛兵や傭兵とかにスタッフの募集かけてたっぽい。

まあ俺なんかに声かけるくらいだし、普通に考えれば他に頼りになる人たちに募集かけとくのは当然だよね。

募集をかけられて集まった人たちはLv20はあるそこそこ強めの人たちが主だ。まあ一番強い人はLv40くらいで、参加者に比べてちょっと低めだが。

スタッフたちの胸にはバッジが着けられていて、あれで参加者とスタッフを見分けるようだ。


で、その集まったスタッフたちの中で、仮面着けてフードを目深に被ってる俺が独り浮いてる状態。

他のスタッフに『なんやあいつこわっ、関わらんでおこ』みたいな感じで扱われていて、気分は針の筵。

…正体バレるよりマシだ、我慢我慢。


お、ようやくコワマスのお出ましか。

集まった参加者たちの前に立ち、狩猟祭開催の挨拶をするようだ。

はよ始めてくれ、この空気に長く耐えられる気がしない。



「諸君、本日は狩猟祭にこれほどの人数が参加してくれることを嬉しく思う。前回は狩猟祭の開催を見送り、それが原因か定かではないが結果としてスタンピードを引き起こすこととなってしまった。まずはそのことを深くお詫び申し上げる」



そう言いながら、深々と頭を下げるコワマス。

それを見た冒険者たちやギルドの職員たちがどよめく。…まあこの人が人に頭を下げるところなんか滅多に見られるもんじゃないだろうしな。

ちなみに前回のスタンピードの際は、コワマスが何日も不眠不休で駆けずり回って手練れの人材をかき集め、同時進行で町民の避難なんかも迅速に行なっていたため死者は出なかったらしい。有能。

人に厳しく、自分にはもっと厳しい。……まるで日本にいたころの俺の上司みたいだ。あの人過労死してないか心配だわー。



「今回はその詫びも兼ねて、各エリアごとに普段は1位のみに景品が贈られるところを、3位まで景品が配られることになっている。例年惜しくも景品獲得を逃している者にもチャンスはあるということだ。それらをモチベーションの糧にした諸君らの奮闘に期待する」



景品って、なにが贈られるんですかね?

景品が3位まで贈られるって聞いた皆のテンションが目に見えて上がってるのが表情から見て分かるけど、例年そんなにいいモノが景品になってるんだろうか。

…ちょっと参加できないのが悔しくなってきた気がしないでもない。



「狩猟祭のルールは例年通りで、一定時間内に魔獣草原の各エリアで魔獣を狩っていき、狩った魔獣の数とレベルによって採点しその点数に応じて順位を決めて報酬や景品が支払われることになっている。パーティを組んで狩る場合は得点を人数で割ることになる。先ほども言ったが今回は3位まで景品が出るから、例年よりも景品を手に入れやすくなっている。だが無理をしすぎるのは避けるように」



大事なことなのでもっかい言っとくんですね分かります。



「参加するにあたって承知しておいてもらうべき注意点だが、まず自分の身を大事にすることを最優先に行動することだ。景品や報酬欲しさに無茶しすぎて命を粗末にするような行動は控えるように。自分のレベルに見合わない危険度の高いエリアへの参加などその最たる例だな。参加者のレベルと討伐履歴を確認して、それぞれに推奨するエリアを伝えるからよほどの理由がない限りは推奨するエリア以外での狩りは控えてほしい」



変に背伸びしようとしないで、分相応の場所で狩れってことね。

逆にレベルが高い人が危険度の低いエリアで狩りを進めるのも景品の独占とかされそうで問題ありそうだが。



「ここ数年の間エリアの枠を越えて奥のエリアから浅いエリアに侵入してくることがあり、もしも自分の手に負えない魔獣と遭遇してしまった場合は周囲に助けを求めること。緊急用の信号弾を渡しておくから、危機が迫った場合は迷わず使え。それを使ったことに対してペナルティなどは特に与えるつもりはない。…万が一イタズラにでも使った場合は話は別だが」



最後に一言ボソッと話した時に微妙に笑みを浮かべているのが超怖い。

もしもふざけてイタズラに使ったりしたらどんな恐ろしい目に遭うのやら…。



「信号弾を発射すれば、各エリアごとに配置をされているヘルプスタッフたちが助けにくる手筈になっている。スタッフたちは赤いバッジを着けているからすぐ分かるはずだ」



……で、そのスタッフたちの中に見た目不審者が一人混じってるんですがそれは。



「スタッフの中に仮面を被っている者がいるが、彼は『飛行士』と呼ばれている者で、その名の通り空を飛ぶことができる。監視の間は空を飛んでいることがあるかもしれないが、気にせず狩りを進めてほしい」



空飛んでても気にするなって、俺が言うのもなんだけどちょっと無理ある気が…。

参加者もスタッフも怪訝そうな顔でこっち見てるし。頼むからそっとしといてください。

空にいる俺が鬱陶しくて、狩りに集中できないとかクレームがこなけりゃいいが。



「とりあえず伝えておくべきことは以上だ。なにか質問などがあればギルドの職員に聞いてくれ。では、準備や質問が終わったら魔獣草原に移動するように」



それだけ言って、礼をしたあとすぐに退場してしまった。

長々と堅苦しい挨拶をすると皆のやる気を削ぎかねないから短めに終わらせるつもりだって言ってたけど、ホントにあっさり終わったな。



挨拶が終わった後、参加者たちは職員たちに細かなルールを聞いたり、装備や道具の確認をしたり準備を進めている。

スタッフたちも自分の持ち場の確認をしてるな。俺は黄色と橙色のエリアだっけ。


黄色と橙色のエリアのマッピングはほぼ済ませてある。

マップ機能があるから、広い草原のマッピングも楽に進められて、大体3日くらいで完了できた。

これで黄色と橙色エリア内の参加者や魔獣の動きが一目で分かるようになった。魔力や生命力探知だけじゃ限界あるしな。

橙色エリアはブラッディファングやハイケイブベア級の魔獣がゴロゴロいるエリアで、タイマンならまあ問題なく倒せるが複数相手だとちとキツいレベルだった。

まあレイナみたいに気力操作で一瞬だけ能力値を爆上げすれば比較的楽に倒せるけど、気力の補給に食費がかさむのはちょっとなー。飯作るのも時間がかかっちまうし。

一応、気力補給用に飯も作り置きを用意してあるけど、できれば使いたくないなー。残しておけば今後の食事の用意が楽になるし。

まあ出し惜しみしてろくでもない結果にならないように注意はしておくけど。



「なあアンタ、ちょっといいか?」



とか考えながらスタッフ用のパンフを眺めていると、参加者から声をかけられた。

声をかけてきたのは緑髪の少年。いや少年っていっても成人はしているみたいだが。

え、なに? 自分で言うのもアレだけどこんな不審者になんか用なの?



「アンタ、ダイジェルのスタンピードの時に参加していた飛行士だよな? それともまさか他にも飛行士っているのか?」



いるわけないだろ。そもそも【飛行】なんてスキルは無いし『飛行士』なんて職業は存在しないからな。

空を飛べる魔道具とかなら誰か開発してもおかしくなさそうだけどな。



「…いや、その飛行士で合っているが」


「やっぱりか! おれもあの時の討伐に参加してたんだよ。アンタやあの黒髪のネーちゃんがウェアウルフを倒してくれなかったらどうなってたか…!」



あ、この子アレだ。ウェアウルフに盾にされてた短剣使いの少年やないの。

この子がポーションの空き瓶をゴブリンに向かって投げつけていたのを見て、空から投石するのを思いついたんだっけ、懐かしい。



「…元気そうで、なによりだ」


「おう。アンタがいてくれたおかげで生き延びられたぜ、あんがとな。無事に報酬も貰えて、やっとまともな装備が買えたから最近は魔獣を狩りながら報酬を受け取りつつレベリングしてるとこなんだよ」


「私は大したことはしていない。君が生き残ったのは君の実力と運の賜物だろう」


「謙遜すんなよ、アンタがいなけりゃ絶対誰か死んでただろ。…多分、おれもな」



実際、この子も真面目にレベリングしているようで、ダイジェルのスタンピードから3ヶ月近くしか経っていないのにLv5からLv13までレベルアップしている。

この子も相当無茶しているようだな。狩猟祭で怪我でもしなきゃいいが。



「アンタは今回ヘルプなのか。ヤバくなったらまた助けてくれるか?」


「私は黄色や橙色のエリアだが、君はどこで狩るつもりなんだ?」


「え、そうなのか? おれ、黄緑のエリアで狩ろうと思ってるんだけど、やっぱ黄色にしようかな」


「やめておけ。ウェアウルフ以上の魔獣が群れを成して襲いかかってくるようなエリアだ。狩るどころか餌になりかねないぞ」


「あ、やっぱやめときます、ハイ」



顔を青くしながら即答する少年。賢明だな。

黄緑エリアでもこの子のレベルじゃちょっときつそうだけどなぁ。レイナみたいに気力や魔力の操作が使えるなら話は別だが。


少年と会話している間に、皆準備が整ったみたいだな。

さーて、事前にやれることはやっておいたし、あとは大きなトラブルが起きないように祈るのみだな、ああ不安。


お読みいただきありがとうございます。


まあこんなイベント起こしといてなにもトラブル起きないわけないよね。

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