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雑念を捨てよ

新規の評価、ブックマーク、誤字報告ありがとうございます。

お読み下さっている方々に感謝します。


アルマと討伐兼レベリングをした次の日。

今日はレイナの黄緑エリアでのレベリング開始の日だ。

ただ、実戦に入る前に覚えたての魔力操作の訓練をさせておくことにした。

こないだのニワトリ戦で魔力操作のコツを掴んだらしいが、まだまだ実戦で使うには危なっかしいので試運転も兼ねてアルマと軽く組み手をして操作に慣らしておく。

スキルのアレンジをレクチャーするのはアルマにしかできないしな。



「むぅ、【魔刃】を強化すると切れ味が良くなるらしいっすけど、見た目の変化があまり無いから上手く使えてるか分かりにくいっす…」


「なら【伸魔刃】を試してみて。あれなら魔力操作を上手く使えているか分かりやすい。……こんなふうに」



そう言いながら、伸魔刃を発動するアルマ。

剣の先からさらに魔力の剣を形作りリーチを伸ばす技能だが、魔力操作でアレンジすると魔力の刃の形を自由に変えられるようだ。

単に消費する魔力を追加して出力を上げるばかりではなく、スキルによって作られた剣の形を変化させる、という繊細な魔力操作の練習にはもってこいのスキル技能だろう。



「おお、伸びた剣の形が変わっていってるっす!」


「アレンジを試す時は、まずスキルを使っている時に魔力がどんな動き方をしているか感じ取ることから始めて。それがスキルのアレンジの基本」


「魔力の動き方っすか? ち、ちょっとどう感じとればいいかイメージしづらいんすけど…」


「…身体の外の魔力の動きが分かり辛かったら、頭の中に魔力を集中してみて。そうすれば、自分の外側の魔力の動きや大きさなんかが感じ取れる」


「り、了解っす…………んんん……おおっ?! なんすかコレ! 目に見えないし触ってる感触があるわけでもないのに魔力が感じ取れるっす!」



魔力感知の習得も問題なくできたようだ。まあ体内での魔力操作ができるなら朝飯前だろうが。



「おおお、世界が違って見える、いや、違って感じられるっす! ……でも、なんか、気のせいか頭の中が熱くなってきたような…?」


「その状態を長く続けてると熱さが痛みに変わってくる。ヒカルが言うにはさらに無理して維持してると、最悪廃人になるかもしれないらしいから痛くなってきたらすぐにやめて」


「は、廃人っすか…!? なにそれ怖いっす……!」



魔力感知を使って仮初めの万能感に酔いしれてるところに、魔力感知の危険性を聞かされて顔を青くするレイナ。

ちなみに、廃人うんぬんは脅しているわけでも大げさに言っているわけでもない。感覚を増やす、というのは思ったよりずっと危険な行為だ。

メニューいわく、脳が焼け焦げてマンガみたいに頭から煙を出しながらそのまま死ぬ危険性すらあるそうな。

視覚や聴覚など、他の五感を遮断すればある程度負荷を軽減できるらしいが、それでも長時間の使用は危険らしい。

俺もHPが尽きた時にうっかり使わないように注意しないと。ローストブレインとか食えない珍味になるつもりはないし。



レイナの訓練のかたわら、俺は素材や果物の採取と、近寄ってくる魔獣の排除をしておく。

洋梨モドキ(ラファの実)とかマスカットモドキ(グリグレの実)とかそのままでも美味しく食べられる果物がなる木がそこらに点在しているので、収穫し放題だ。

欲を言えばメロンが欲しいが、今のところどこにも見当たらない。ぐぬぬ。


で、それらを餌にしている魔獣がこちらに気付いて襲い掛かってくることもあるわけで。

緑エリアの魔獣の攻撃ならノーダメージで済むが、このエリアだとさすがにそうはいかない。

よってこちらに攻撃してきたらそれなりの対応を(ぶっころ)させてもらおう。



『ゴゲエェェェエエエッ!!』



おっと、言ってるそばから『なにウチのシマに足踏み入れとんじゃワレェ!』と言いたげにブロンズコッコが威嚇してきた。

ちょっと果物を収穫したいだけで、そっちの食事の邪魔をする気はないんだがなー。

まあ、こっちもそっちに遠慮する理由は無いし売られた喧嘩は買おう。

…それに、こいつの素材(特に肉)もなかなか質が良さそうだしな。カラアゲテリヤキオヤコドーン。



『ゴ、ゴギャッ!? ゴゲエエエェェェェッ!!』



…とかコイツを見ながら今晩の献立を考えていたら逃げられた。こないだのウサギの時のデジャヴが…。

ご飯のこと考えながら眺められてるのって、魔獣からしたらどんなふうに見えてるんだろうか。

こっちの世界に来た直後に遭遇したコボルトみたいな感じか? そりゃ怖いわな。



『ギュイッ! ギィッ!』



お、今度は二本角ウサギことツインホーンラビットが近寄ってきた。コイツも喧嘩売る気満々のようだ。

今度は逃げられないように雑念(今晩の献立)を考えないように、かつ殺気が漏れないようにしないと。

大丈夫ダイジョウブ、コワクナイヨーホントホントコワクナイコワクナイコワクナイヨー。



『ピ、ピギャアアアアアアアアッッ!!!』



……文字通り脱兎の勢いで逃げられた。なにもスキル使ってまで逃げんでも。

アルェー? 殺気が漏れないように意識してたのにまた逃げられた。ちょっと雑念が残ってたかな。



≪……雑念や殺気が抑えられた分、純粋な害意や殺意が見え隠れするようになり、かえって恐怖を煽ってしまった模様≫



…狩りって難しいなー。ある程度レベルが高い相手ならこんなことにはならないだろうけど。

エンカウントする度に逃げられるから、このエリアで肉や素材目当てに討伐するのは面倒そうだな。

まあ本気で追っかければ、レイナのレベリングのために拉致するのはなんとかできそうだが。



「…さっきからカジカワさんなにやってるんすかね?」


「果物とか採りながら、近付いてきた魔獣を威嚇して追っ払ってるみたい…?」


「というか、喧嘩売ってきた魔獣と戦おうとしたら相手がビビって逃げてるように見えるっす。カジカワさんくらい強くなると、このエリアの魔獣も喧嘩するのを避けるくらいなんすねー」



ちゃうねん、なんか変な具合に空回りして逃げられてるだけやねん。

結果的に訓練の邪魔にならないように追っ払えてるからいいけどさ。


集めた果物を使ったデザートとか考えてたらこんなに危険視されることはなかったかもな。

これから本格的に暑くなってくるらしいし、涼し気なメニューを考えてみるか。

シャーベットとか、フルーツゼリーとか作ってみるかなー。ゼラチンの代用品があればいいが。

うまく作れれば狩猟祭の屋台に出してもいいかもな。箸休め的な感じで。

いや他の人も同じようなこと考えるだろうから厳しいか。よっぽど珍しいメニューでもない限り。

狩猟祭かー、メインの狩りより食べ歩きの方が楽しみだなー。

そのためにも狩りの当日はなんとか平穏無事に終わってほしいものだが、多分無理だな。……絶対、なんかあるって最近出番のない俺の(ゴースト)が囁くのよ。


お読みいただきありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
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