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無理はさせない(無茶させないとは言ってない)

新規の評価、ブックマークありがとうございます。

お読み下さっている方々に感謝します。

「……あの子にばかり無茶させると外聞が悪くなるから、自分たちも無茶するべきだとか思ってませんか?」



代理の受付嬢が、ジト目でこちらを鑑定しながら低い声で問いかけてきた。

そんな怖い顔せんでも。怖い顔はコワマスだけで充分ゲフンゲフン。



「そんなつもりでは…」


「なら、なんですかこの討伐履歴は。メドゥウルフのハイランナーが17体、ブラッディファングが1体、ジェットボアが3体、トライホーンラビットが22体、ツインホーンラビットが5体……一日でこんなに討伐するなんて、途中で力尽きたらどうする気だったんですか」



ツインホーンラビットは角が二本、トライホーンラビットっていうのは角が三本あるウサギで、レイナが普段狩っている角ウサギの上位種だ。

あの角ウサギは進化すればするほど角の本数が増えて、肉の味が円熟していくうえに、角の部分が色々な道具や装飾品に使えるからそこそこ重宝されているらしい。



「いえ、一応余力は残しておいたつもりなんですが」


「膝が笑ってるじゃないですか、どう見ても満身創痍ですよ。怪我などはされていないようですが」



そりゃあんな重労働すれば誰だってこうなるって。わざわざ手伝ったことなんか言わないけど。

討伐自体はあと十体くらいは狩る余裕があったけど、まあ俺とアルマのレベリングはまだ初日だしそんな無理する必要ないだろ。



「おまけに薬草採取までこなしてきたんですか。あなたの持ち込んだ薬草の数が多すぎて、鑑定をしたナイマがまだ寝込んだままなんですよ?」


「さすがに初日ほど多くの量を採取するのは私も大変なので、数は大分抑えたつもりなんですが」


「…抑えて合計32本ですか。ちょっと私も鑑定のしすぎで疲れてきたんですが」



目蓋を指で揉みながら不機嫌そうに呟く受付嬢。

…そういえば、薬草採取って何本くらい持ち込むのが普通なんだろうか。



≪鑑定スキル持ちの人間が一度に持ち込む量の平均は鑑定による疲労などの理由から大体10~20本程度。鑑定スキルのない人間が正しく確実に見分ける方法をとって一度に採取できる量は時間の都合などの関係でヒルカの草で5~10本、キュアラの草で1~2本程度。適当に何十本も持ち込んで、雑草の数があまりに多い場合は評価が落ちるので推奨されていない≫


ふむふむ、なるほど。

…え、じゃあ今まで俺がメニュー頼りに見分けて持ち込んでた量ってすごく多かったりする?


≪鑑定無しで正確に見分けて持ってくる量としては異常なまでに多い、と言ってもいい量であると思われる≫


いやまあ200本近く持ち込んだのは自分でもどうかと思ったけどちょっと大袈裟じゃ。


≪30~40本の場合のことを告げている≫


そ、そうですか……メニューさんちょっと半ギレしてない? 気のせい?



「魔獣討伐の合計が125000エン、薬草採取の合計が16000エンになります。…二人でこれだけ稼げるのなら、あんな小さな子に魔獣を狩らせて稼がせる必要なかったんじゃないですか?」



ブッフォ!? なんか予想以上に儲かってた! 早くも一日で6ケタ稼げるようになったのか俺ら!

こういった討伐報酬のお金って、どこから入ってくるんだろうね。ギルドの七不思議のひとつに数えられてそう。



「お金も大事ですけど、どちらかというとレベリング目的で魔獣を狩っているんですよ。近ごろ物騒ですから自衛くらいできるように地力をつけておかないとまずそうですし」


「確かに、魔王が誕生した影響で各地で魔族が侵略または破壊活動をしていると聞いていますが、それにしたって明らかに生き急ぎすぎですよ。特にあの金髪の子はまだ成人したてでしょう、未熟なうちから無理をさせて大きな怪我でもしたらどうするんですか」


「…その通りですね。今後は倒れるまで無理して討伐をさせたりするのは控えます」


「当たり前です。他人事のように言ってますけど、あなたたちもですからね」



きつめの口調で軽く叱られた。でも不思議と嫌な気分にはならない。

この人が怒っている理由がレイナを、そして俺やアルマを心配してくれているように見えているからだろうか。

アルマも、ナイマさんに失礼な態度をとられた時のように不機嫌な顔はしていないし。

おっと、一瞬この人が正式な俺たちの担当になってくれればいいのにとか考えそうになってしまった、済まぬナイマさん。今度お詫びに薬草でも(ry




討伐報告と薬草納品を済ませ、宿に戻ると入り口でレイナが立っているのが見えた。

…わざわざ立って待たんでも。

こちらを確認すると、駆け足で近寄ってきた。なにこの子かわいい。



「おかえりなさいっすー!」


「お、おうただいま」



元気よく出迎えてくれるのは嬉しいが、疲労困憊の状態でそのテンションは正直ちょっときつい。



「ただいま、レイナ」


「なんかえらくしんどそうっすけど、怪我とかしてないっすか?」


「いや、疲れただけでどこも怪我なんかしてないよ。疲労だってレイナほどじゃないしな」


「レイナの方こそ、疲れはとれた?」


「お昼まで寝て、カジカワさんが作ってくれていたご飯を食べて、また寝てさっき起きたところっすからもう大丈夫っす」



寝すぎだろ。今晩眠れるのか?



「ごめん、今日の晩御飯は作り置きのあり合わせでいいか? 疲れすぎてて飯作る気力が湧かん…」


「いいっすけど、そんなにへとへとになるまで討伐してたんすか? …もしかして、自分が倒れるまで討伐してたのに気を遣って…?」


「いや、別のパーティが荷物運ぶの手伝ってほしいって頼んできたのを受けたからだが」


「そ、そっすか……」



一瞬申し訳なさそうな顔をしたが、本当の理由を聞くと安心した反面どこか釈然としないような表情をするレイナ。うん、まあ、なんかごめん。



「そのパーティの人たちがまたすごくてな、飯食う時にでも詳しく話してやるよ」


「うん、私たちもあんなパーティになれたらいいなって思う」


「カジカワさんとアルマさんがすごいって言うくらいなんすか、どんな人たちなんすかねー」



あのイケおじパーティ、…パーティの名前なんだっけ……あ、そうそう『夢の懸け橋』だ、危ねぇマジで忘れるとこだった。

いつぞやのダなんとか相手じゃないんだぞ、しっかりしろ俺。

あのパーティの話だけでも今日の土産としては充分だろう。是非レイナにも見せてやりたかった。



宿に入り、晩御飯を食べながら今後の予定というか方針について大雑把ながら話しておいた。

具体的には、一日おきにレベリングを進めていくが、今日のレイナみたいに疲労が酷い場合は無理せず休むこと。

疲労で倒れるまで討伐することは控えること。辛いなら辛いと言う勇気。…いや勇気っていうか普通に申告してくれればいいけどさ。

週に二日は休日をつくること。これは元々やってたことだけど、今一度確認しておいた。

リーダーだからって俺一人であれこれ決めるのは横暴なので、皆の意見をまとめた結果こうなった。…なんつーか、とってもシンプルだな。

まあ成人したての二人の意見を、残念な頭脳の俺がまとめてるからこんなもんだよね……。




そして次の日。今日はレイナのレベリングの日だ。

二日前までに比べると、明らかに動きが良くなっている。

能力値やスキルが上がったのもあるが、多分魔獣の討伐そのものに慣れつつあるんじゃないだろうか。



「んー、こないだよりずっと魔獣を狩りやすい気がするっす。これがレベルアップの効果なんすねー」


「弱らせた魔獣を狩らせて、レベルを上げるだけのパワーレベリングじゃそこまで効果は出ない。ちゃんと実戦を体験してるからこそ本当に強くなれる」


「そうっすねー、おかげでこの辺の魔獣と一対一ならもう楽勝っす。ふふん」


「そうかそうか、なら次から2体以上持ってくるのがデフォになるからよろしくー」


「し、しまった! 余計なこと言っちゃったっすー!」



まあ、今のレイナなら複数相手でもなんとかなるだろ。

素の能力だけに頼るなら少し厳しいだろうが、気力操作という奥の手があるしな。

ちなみに魔力操作の方はようやく魔力の放出が少しずつできるようになってきたぐらいだ。

アルマの時は一気に魔力を放出しすぎたりして細かい制御が利かなかったが、レイナの場合は放出する魔力の出力を上げるのに苦労しているようだ。人によってやっぱクセとかあるんだろうか。

その分、魔力が枯渇しにくいから悪いことばかりじゃないが。



「はいはーい、今回は珍しくニワトリっぽい魔獣を発見したから何羽か連れてきたぞー」


『『『『ゴケーッ!!』』』』



おお、元気がいいな。魔獣討伐の実戦相手として申し分なさそうだ。



「に゛ゃあああっ!? ちょっと数が多すぎるっすよー!! この魔獣初見なのにー!!」


「はいはい、まず複数相手にまともに戦おうとしない! 距離をとって投擲とかで遠距離攻撃したり、影潜りを使って奇襲で一匹ずつ仕留めるとかして工夫するんだ」


「き、距離を離すったって、このニワトリたちすごく足速いんすけど! 速さ特化の自分とほぼ互角じゃないっすか!」


「なら影潜りだ! 気力操作で緩急つけてニワトリたちの影に飛び込め!」



とか言ってみたりしたけど、ニワトリたちのあんな小さな影にレイナ入れるのかな? あ、普通に入ったわ。セフセフ。

で、なんと影から腕だけ出して、突然レイナが消えて困惑しているニワトリの首を一つずつ刈りとっていってる。なにあれこわい。

全身を出していないから発見や反撃をされづらい状態のまま一方的に攻撃するとは。大分、忍術スキルも使いこなせるようになってきてるな。



「カ~ジ~カ~ワ~さ~んっ!! 今後はあんまり無茶させないって昨日言ってたじゃないっすかー!!」


「いやあれくらいどうとでもなるだろ。実際ちょっとアドバイスしただけで無傷で討伐できたじゃん」


「たまたまっすよ! 一歩間違ったら袋叩きだったっす!」


「あー、うん、ごめん。今度からしばらく2匹ずつに抑えておくよ」


「いやできれば一匹ずつでお願いしたいんすけど!」



効率悪いし、一匹ずつじゃ大して訓練にもならないから却下。

まああんま無理させるつもりもないから、持ってくるペースは少し落とそう。

この調子なら、あと半月くらいでジョブチェンジできそうかな。ホントにハイペースだこと。


アルマもレイナもジョブチェンジして、新たな力を手に入れつつあるけど俺は大きなステップアップができるのはまだ先だ。

Lv30になれば、メニュー機能がまた増えるかもしれないが、それはメニューさんが成長しているのであって俺が強くなったわけじゃない。

今できることと、街で売っている道具とかを見ながら、俺も色々工夫してみますかね。

お、またニワトリ発見。日によって見つけやすい魔獣が違うのかなこの草原。




お読みいただきありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[良い点] 何時もお世話になってますダなんとかさん。ぷぷぷ( *´艸`) 忘れた頃にやってくる笑いが良いです。ツボは人それぞれですけどね。 〉あのイケおじパーティ、…パーティの名前なんだっけ……あ、そ…
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