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噂と実物


や、やっと、やっと町に着いた…!

この何kgあるか分からんトカゲを運びながら進むのは本当にきつかったわ…下手したらトン単位いってるかも…。



「や、やっと着いたー」


「ぜぇ、ぜぇ、い、一時はどうなるかと思ったが、無事についてよかったぜホント……」


「それもこれも、君たちが手伝ってくれたおかげだ。本当に助かったよ、ありがとう」


「い、いえ、コレぐらい、大したこと、ないです……」


「ヒカル、息を整えてから返事した方が…」



お、おう。せやな。深呼吸、深呼吸。…もうラマーズ法とかやってる余裕ない。

レベルが上がって、能力値とか少しは上がったと思うんだが、きついもんはきついわー……。



「運んでいる間に魔獣に襲われた時の皆さんの連携、凄かったですね。参考にしようにも凄すぎて真似するのは難しそうなくらいでした。…自分が、パーティのリーダーを名乗るのが恥ずかしく思えましたよ」


「いきなり奇襲を仕掛けられていたら少し厳しかっただろうけど、君が魔獣の存在をいち早く感じとって伝えてくれたからね。そのおかげで襲われるまでに作戦を考える時間ができたから比較的楽に対応できたんだよ」


「危機管理能力はリーダーに必須の重要な資質です。そういう意味ではあなたは充分リーダーの器ですよ」


「なにせ私より先に魔獣の存在に気付いていたからね」


「いえ、そんな」



そりゃ魔力感知や生命感知が使えれば、誰だって気付くわあんなデカい魔獣。

むしろ羽ばたく音とかわずかな情報をもとに、どの魔獣か予測できる経験値の方がすごいと思う。



「さて、ここまでくればあとはアイテムバッグを取りに行って収納して、問題なく運搬できるな」


「で、約束の報酬だけど、なにがいいかな?」


「えーっと……」



どうしよう、こういう場合の報酬の相場とか分からんぞ。

お金を要求しようにも何エンくらいなら許されるんだ? ああもういっそタダでもいいから無用なトラブルを起こしたくない…。



「そうだ、君たちさえよければこの大トカゲの素材の一部を報酬代わりにどうかな?」


「えっ…!? いや、それはさすがにもらいすぎですよ!」


「遠慮する必要はないよ。いや別に欲しくないなら現金で支払うけどさ」


「い、いえ、欲しくないわけではないのですが…」



Aランクの魔獣の素材なんて、今の俺たちからしたら喉から手が出そうなほど欲しい。

でも、荷物の運搬手伝った程度でもらっていいモノじゃないのは確かだろうに、なんちゅー太っ腹な。んー、でもなー。



「変に気遣う必要ないぜ? こんだけデカい魔獣なんだから、ちょっとくらいそっちに分けてもこっちの使う分には充分だしな」


「ヒカル、この場合せっかくの厚意を無駄にするのはかえって失礼。遠慮せずいただくべきだと思う」



む、むぅ、そうかな。

……それじゃあ、いただくとしましょうか。



「大トカゲの解体が終わったら、必ず届けるからそれまで待っていてくれ。受け渡しの準備ができたらギルドに伝言を伝えておくから」


「分かりました、お手数おかけします」


「そりゃこっちのセリフだよ、色々ありがとうねー」



そう言って、金髪さんが宿の方向に駆けていった。アイテムバッグを取りに行ったのかな。

…俺たちも、行くとしますか。



「それでは、私たちもギルドに戻りますね」


「ん、レイナが待ってるし、早く戻らないと」


「レイナ?」


「ああ、私たちのパーティにもう一人成人したての女の子がいるんですよ。…ちょっと華奢すぎてそうは見えないくらい見た目が幼いんですけど」


「昨日はレベリングのために無理させ過ぎたから、今日は宿で休ませてる。そもそもあんな奥まで連れていくにはまだレベルが低いし危険だから」


「…あんな無茶させてしまって、限界を見誤ったりするあたり、やっぱり自分はリーダーとして未熟ですね」



実際、魔獣を倒し終えた直後に倒れるくらいまで無理させたのは自分でも最低だと思う。

今の俺たちも相当疲れてるけど、レイナはこの比じゃなかったしな。ごめんなー。



「うん、無理させすぎるのはよくないね。でも、どれくらいなら大丈夫かは掴んだんじゃないかな?」


「はい、もう少し討伐させる魔獣の数を減らして、休日多めで無理なくレベリングしていこうと思っています」


「反省すべき点を分析して分かっているなら、それほど気に病む必要はないと思うよ。失敗は、後悔することより次に活かすことが大事だからね。…なんか説教くさくなっちゃったね、ごめん」


「いえ、胸に刻んでおきます。…名残惜しいですが、そろそろ行きますね」


「おう、何度も重ねて言うがマジで助かった。ありがとな」


「お世話になりました」


「それじゃあ、またね」



そう言って、アイテムバッグを取りに行った金髪美人を待つ彼らと別れた。

ほんの少し一緒に行動しただけなのに、ちょっと寂しい気持ちがこみ上げてくる。

…そして、疲労感も。うごご、身体が重いぃ……。








~~~~~イケおじリーダー視点~~~~~








「リーダー、どう見る?」



ダイナが真顔でこちらに問いかけてくる。



「なんのことかな?」


「分かってんだろ、あの二人のことだよ」


「…ギルマスの話と、噂話どちらが正しいかって話かい?」


「んー、まあ聞くまでもないかもしれねぇけど、一応な」



数日前に、この町に来た黒髪男女の冒険者の噂。というか悪評に近い伝聞だが。

男の方は20代半ばで、女の方は成人して1~2年程度の年齢らしい。

金髪の幼い子供を連れていて、その子に無理やり魔獣を討伐させて日銭を稼いでいるというロクでもない噂を耳にした。

もしそれが本当ならば、その子をその二人からどうにか引きはがして保護しておきたいと思っていたところだ。


ギルマスにその二人について知っていることが無いかと尋ねてみたが、『変に詮索する必要はない、ただ決して悪人ではないと思うぞ』とだけ返ってきた。

詮索する必要はない、というよりむしろ詮索するなと言いたげな、少し威圧的な口調だった気がする。…いやあの人普段から威圧感凄いけどさ、年上のはずの私でも少し気圧されるほどに。

もしかしたら、ギルマスもその二人に弱みでも握られてるんじゃないかとか一瞬思ったりもしたが、この人が人に知られたら困るような弱みを持っているイメージが湧かない。

この人は、他人より自分に厳しいタイプで、スタンピードが発生した時も他の職員が休んでいる中でも不眠不休で数日間、問題解決に向けて走り回るような人だ。

もしも何らかの過ちを犯してしまったら、皆を集めて堂々と告白するだろう。そんな人が脅迫などされる可能性は極めて低いように思える。

結局、実際に会ってみなければ判断はできないという結論に至り、機会があったら話してみるのもいいかもしれないと思う程度だった。



ギルマスに尋ねた次の日に、新調したい装備品の素材としてここ一週間ほどの間、魔獣草原の奥地で探していた『メドゥリザード・クリムゾンスケイル』を発見し、仕留めることができた。

討伐そのものは非常にスムーズに完了できたが、ここで問題発生。ライーナが仕留めた魔獣を入れるためのアイテムバッグを宿に忘れてきてしまったらしい。

アイテムバッグを取りに戻っても、回収しようとするころには他の魔獣に大トカゲの死体を食われている可能性が高いし、誰かが単騎で宿まで取りに戻ろうにも一人じゃ危険だ。

というわけで、苦肉の策として全員で引きずりながら運ぶことにした。

これだけ大きな魔獣を運ぶのはさすがに辛い。主に肩と腰が痛い。…私ももう若くないしな、ハハ…。


などと妙に悲しい気分に陥りそうになっている最中に、草原の黄色のエリアに黒髪の人影が二人分佇んでいるのが見えた。

黒髪、20代半ばの男性に成人して少し経った程度の女性。おそらくこの二人が件の冒険者だろう。

…まさかこんなに早く、こんなところで接触の機会が訪れるとは。


結論から言って、断言はできないが噂に聞くような外道ではないように思えた。

こちらから助けを求めると快く了承してくれて、辛そうだが嫌な顔一つせず運ぶのを手伝ってくれた。

男性の方の荷物を見てみると、この辺りで採取していたのか薬草の束を持っているのが見えた。ギフトの鑑定スキルで確認してみたが、雑草は一切混じっておらずどれも薬草採取依頼の対象となる有用なものばかりだった。

あれだけの質と量の薬草があれば結構なお金になるだろうし、稼ぐ能力がないわけではないようだ。

おそらく幼い子供に、いや幼い子供に見えるだけで、実際はもう成人してるらしいからお金儲けのために魔獣を狩らせているのではなく、どちらかというとレベリングのためではないだろうか。

外聞をよくするための演技の可能性もなくはないが、どうにもあの二人がお金儲けに誰かを利用するようには思えない印象を受けた。



「…きっと、君の思っていることと大差ないと思うよ」


「そうだわなぁ、どう見ても噂に聞くような奴らにゃ見えなかったしよ」


「やはり、噂ばかりで人を見るべきではありませんね」


「うん、それに…」


「ん? どうかしたのか?」


「いや、あの二人、歳の差の割にお似合いだなぁって」


「…リーダーがおちゃらけたこと言うの珍しいなオイ」



…それに、悪いと思いながらもステータスを鑑定させてもらったけど、なるほど、ギルマスがあの二人を詮索しないように言っていた理由が薄々分かった気がする。

二人とも、ステータスが普通のそれではない。アルマティナという女の子はハイ・パラディンという珍しい職業で、基礎Lv25と年齢の割に異常なまでにステータスが高く、スキルの種類もレベルもかなりのものだった。

まあ、こちらは早熟なうえに珍しい職業という以外はさほど異常ではなさそうだった。…いやこの子も充分おかしなステータスだけどさ。

問題は、カジカワヒカルという男性の方だ。職業判定不能、スキル取得不可なんて表示、初めて見たよ。あれでよく魔獣草原の奥まで来て魔獣に襲われないものだ……?

いや、まさか、スキル無しでも戦う手段でも持っているのだろうか。彼の持ち物に強力な武器や道具などは特に見られなかったはずだが。

もしかしたら、彼をパーティのリーダーたらしめている理由がその疑問の答えなのかもしれない。

…なんとも奇妙な人たちだったな。その分、面倒事に巻き込まれることも多いだろう。どうか、そんな中でも強く前に進んでほしいものだ。

お、ライーナ帰ってきたな。やれやれ、これでやっと町の中に入れるよ。



お読みいただきありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
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