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困った時はお互い様

新規の評価、ブックマーク、誤字報告ありがとうございます。

お読み下さっている方々に感謝します。



あれから昼食と休憩をはさんで、さらに魔獣狩り兼レベリングを続けた。

また魔獣の群れとやりあうのはさすがにきついので、魔獣が束になってるような反応は極力避けて、単独行動してる魔獣を狩るように心掛けていたから特に危なげなくレベリングできた。

まあ、Lv20台の魔獣相手じゃ10体や20体くらい狩ったところで今の俺たちのレベルを上げるには少し足りないんだがな。

アルマのレベルが上がったのはこないだ魔族を倒したばっかで、経験値の積み立てがある程度できていたからだ。

俺は港町に着く前にレベルが上がったばかりだったから、次のレベルまで必要な経験値が多いからまだ足りない。

こうなると、さらに奥地に進んでより経験値のおいしい魔獣を狩りたい衝動に駆られそうになるが、魔獣草原でのレベリングはまだ始まったばかりだ。焦って無茶をすると危険そうだし今日のところは自重しておこう。


んー、二人合計で大体30~40体くらい狩れたかな。

Lv20以上の魔獣をこれだけ狩れたなら相当な経験値が入ってると思うんだが、それでもレベルが上がるにはまだ足りないようだ。

レイナみたいに単騎で狩っていれば経験値の独占ができるから早くレベルが上がるだろうが、一人で突っ走る理由が無いし、そもそも一人じゃそんな数狩るの大変だしなぁ。

…アルマなら、その気になれば精霊魔法で一気に多くの魔獣を生き埋めにしたりすれば単騎でも多くの魔獣を狩れるのかもしれないけどな。もしかして、俺のレベリングのために気をつかってくれていたんだろうか。



≪それほど大規模な精霊魔法の行使は術者、精霊ともに負担が大きくしばらく行動不能に陥り無防備になるため、長い目で見れば非効率かつ危険だから、という理由もあると推測≫



そうですか、お気遣いどうも。

変に考えすぎて落ち込まないようにフォローしてくれるとは、メニューさんが気遣いのできるイケメンに見えてきた。


魔獣狩りばかりじゃなくて、薬草狩りもなかなかの収穫だった。

中級回復ポーションの素材の【キュアラの草】という薬草がこのエリアにはところどころに生えており、一本500エンで買い取ってくれるらしいので見つけ次第ちょこちょこ採取しておいた。

見た目はヒルカの草以上に雑草に似てて、その道のプロか鑑定士くらいにしか見分けがつかないからなかなか貴重な薬草らしい。まあ確かにぱっと見枯れた雑草にしか見えん。


…む、草原の奥からまた複数の人の反応が。

人数と魔力の強さからして、昨日感じとった反応と同じパーティかな? …うん、4人組で強力な反応だし、多分同じだな。

むー、どうしよう。他のパーティとエンカウントするのが面倒だからって、また町に急いで帰るのもなんか気がひけるし、他のパーティに出くわしそうになるたびにそんなコミュ障みたいな対応とるのも不健全な気がするしなぁ。

ここはあえて遭遇するまで休憩してて、近付いてきたら挨拶くらいはしておこう。



「アルマ、他のパーティが草原の奥地から帰ってくるみたいだ。会ったら軽く挨拶しておこうか」


「うん。…さらに奥地で狩りをするなんて、強そうなパーティだね」


「だな。もしかしたらAランクくらいの凄腕揃いかも」



実際、魔力や生命力の大きさがどの反応もかなり高い。

一番弱そうな人でもさっきのボスオオカミと同じくらいの反応だ。つまり最低でもLv30は超えてる。

…なんか今更になって変に緊張してきた。落ち着け、挨拶するだけだ。別に今からドンパチするわけじゃない。深呼吸深呼吸、ひっひっふー。…このネタ前にもやったような。

とか内心軽くテンパってると、そのパーティがこちらの方向に近付いてきてるのが見えた。

…ん、なにか引きずってない? 魔獣の死体かな?


って、デカっ。なにあれドラゴンかなにか? …いや、大きなトカゲ?



≪【メドゥリザード・クリムゾンスケイル】 トカゲ型の大型魔獣。体長は8mにも及び、その巨体の質量を活かした強力な物理攻撃や竜族スキルのブレスなどを使う、極めて危険な魔獣。冒険者ギルドの定めた魔獣ランクはA。爪や牙、肉や骨に至るまで良質な素材がとれるので、一体だけでも相当な価値がある≫



竜族? あれ、やっぱりドラゴンなのか? 翼もないしどっちかっつーとトカゲに見えるんだが。名前もリザードだし。



≪一部の魔獣が進化を重ねると、後天的に竜族としての特性やスキルを獲得する場合があり、この魔獣もその一例≫



なるほど、進化するとドラゴンの力を得ることができる場合があると。いわば亜竜ってやつかね?

で、その大トカゲを4人がかりで引きずりながら運んでるけど、アレ大変じゃない?

アイテムバッグでも持ってくれば、いやそもそもあんなデカいの入らないか。バッグの口でつかえるわあんなん。



≪バッグ内の容量に空きが十分にあれば、収納は可能。ただし、ある程度持ち上げることができないと収納できない≫



入るのかよ!? どういう原理で出し入れしてるんだろうね……てかどこに繋がってるんだろうか。

いやまあ俺のアイテム画面もどこに収納されてるかイマイチ分からんけどさ。


お、向こうがこっちに気付いたっぽいな。とりあえず頭下げて会釈しとくか。

これだけで済めば楽なんだがな。



「あのー! すみませーん! そちらの黒髪のお二人さん、ちょっと手を貸してもらえませんかー!? このトカゲ私たちだけじゃとてもしんどくて!」



パーティの内の一人、金髪の女性がこちらに大声でヘルプを求めてきた。

…えー。アレ引きずるの手伝えってか? めっちゃ大変そうなんですけど。できれば勘弁してほしいんですけど。



「コラ、なに言ってんだ。見ず知らずの人たちにいきなり手助け求めてどうする。こんなデカい獲物引きずるのなんか嫌に決まってんだろ」


「だってー、まだ町まですっごい遠いじゃん。こんなの私たちだけで運んでたら日が暮れるどころか日付けが変わっちゃうってー!」


「元はといえばお前がアイテムバッグを忘れるからだろうが! 魔獣倒した後にバッグがないと分かった時の絶望感が分かるか!?」


「分かるよぉ! 今こうやって引きずりながら絶望を噛みしめてるよぉ!」


「ならキリキリ文句言わずに運べやぁ!」



パーティの内の他の男性と口論をしながら半泣きでトカゲを引きずる金髪女性。

アイテムバッグがなくて手作業で運んでいる原因はこの人のせいか…ドンマイ。

とか思っていると、大トカゲを引きずっている40代半ばくらいの歳で、銀の短髪の男性が苦笑いをしながらこちらに声をかけてきた。



「あー、そちらのお二人、騒がしくして申し訳ない。こちらのことはお気になさらずどうぞ」


「ちょっとリーダー! こんなクソ重い荷物運ぶのに遠慮なんかしてる場合じゃないでしょう!? 手伝ってもらいましょうよ!」


「気持ちは分かるけど、ダメだよ。彼らにも彼らの都合があるんだから、私たちの都合ばかりを押し付けてはいけない。分かるね?」


「うぅ~…」



この銀髪の男性がパーティのリーダーか。

なんとかこちらに手伝ってほしそうにしている女性を、穏やかな口調で諭している。なにこのイケおじ、カッコいい。

なんというか、見た目と雰囲気だけ見るとダンディさと穏やかさが同居しているような、『完成された人間』って感じの印象だ。

会ったばかりだから感覚でしか言えないけど、先ほどの短いやり取りや話し方なんかを見てるだけでもいい人っぽいオーラが見える気がする。

…まあ、そう見えて実は、ってことも考えられなくはないけど。そのへんの判断をするにはちと情報が足りん。



「…ヒカル、大変そうだし手伝ってあげてもいいと思うけど…」



少し申し訳なさそうな顔をしながら、アルマが手伝いの催促をしてきた。

多分、俺が断ってもアルマだけでも手伝いそうだなこりゃ。……仕方ないか。



「あの、私たちもそろそろ港町に戻るところなので、よろしければ手伝いますよ」


「え、マジ!? よっしゃー!」


「お、おい、こっちから話しかけといてなんだけど、このトカゲ引きずるのすっげぇしんどいぞ? 無理しなくてもいいぜ?」


「いえ、筋力を鍛えるいいトレーニングになりそうですし、微力ながらお手伝いさせていただきますよ」


「…すまないね、正直とても助かるよ。でもくれぐれも無理はしないようにね。これが原因で体を壊したら目も当てられないしね」


「ん、頑張る」


「無理そうなら、すぐに言いますので安心してください」



というわけで、筋トレも兼ねたちょっとしたデスマーチ開始。

町まで10キロはあるけど、体力がもつかな…?



引きずりながら、数十分が経過。大トカゲを引きずってみると確かに重い。

少しは能力値も上がっていると実感していたつもりだが、これだけ大きい魔獣を運ぶのはさすがに楽じゃないな。



「そういえば、自己紹介がまだだったね。遅れてしまって恐縮だけど、私たちは『夢の懸け橋』という名前のパーティを組んでいる冒険者で、私はリーダーを務めさせてもらってるキョウクハルトという。よろしく」


「アタシはライーナンシー。いやー、手伝ってくれてありがとねー。あとで報酬は払うから頑張ってねー。払うのはダイナだけど」


「おいふざけんなてめぇ。…このバカの言うことは話半分に聞いといた方がいいぞ。まあタダ働きさせるつもりはねぇけどよ。俺はダイナルガってんだ、よろしくな」


「私はシスティナーカといいます。こんな重労働を引き受けて下さって、感謝します……うっ、立ち眩みが……」



銀髪イケおじのリーダー、金髪残念美人、茶髪ツッコミ青年、そして銀髪でひ弱そうなシスター風の女性。

…なんというか、一人一人の個性が強いのにどこかバランスがとれているような、なんともいえない調和性を感じるパーティだな。

無断でちょっと悪い気がするが、レベルだけ確認してみるとリーダーがなんとLv51、その他のメンバーが大体Lv35~45ほどもある強豪揃いだ。

誰もが単騎でも相当強い実力を秘めているだろうが、パーティで連携をとればさらに強大な力を発揮するんだろうな。まさに理想的なパーティだ。


…俺たちも、いつかこんな立派なパーティになれるだろうか。

いやまあ、立派な冒険者になるっていうのはあくまで目的のための手段なんだが。

肝心の目的が子供じみてとても頭悪いけどな。…目的より手段の方がよっぽど立派な目標に見える件。

焦る必要はないが、早くこんな風になりたいという気持ちが湧いてこないこともないな。そのためにもコツコツ鍛えていきますか。

……あ、ちょっときつくなってきた。い、いや、これも修業の一環だ、我慢我慢……やっぱつれーわ。

お読みいただきありがとうございます。

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