攻勢更生
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はいどうも、現在魔獣草原の少し奥地までアルマと二人で足を踏み入れているところです。
ちなみにレイナは宿で留守番中。昨日の無茶がたたってキツそうだったので予定を変更して今日は一日休ませることにした。もう少し討伐させる数を減らしておけばよかったかなー。
二日目ほどのペースで進めていたらレイナの身が持たないし、他の冒険者からも白い目で見られ始めてるので、レイナ、俺・アルマ、レイナ、俺・アルマといった具合に一日ごとにローテーションを組んでレベリング兼討伐をすることに。
レイナのレベリングのペースは少し落ちるが、そもそも毎日魔獣の討伐に向かうような人は少ないらしい。
お金を稼がないといけない理由があったり、急いでレベリングしたい人なんかは別だが魔獣討伐という命がけの仕事をした後は身体的な疲労はもちろん、精神的な負担も大きいから討伐のあとは最低でも2、3日は休むのが普通なんだとか。
…そう考えると俺とアルマのレベリングの仕方ってかなり無茶だったんだなー。ダンジョンに潜ってた時は週に五日連続でレベリングして、残りの二日は休むって感じで活動してたっけ。
日本じゃ完全週休二日なんてホワイトなところはもはや希少だが、異世界じゃそれでもブラックだったでござる。…いや、多分日本が異常なだけだきっとそうだ滅べブラック企業。
…俺の勤めてた工場、今どうなってるかな。多分なにも変わらずサビ残休出地獄だろうなー…。
魔獣草原は奥に進むにつれて、地面に生えている草の色が変わっていくようだ。
レイナが普段レベリングをしている外周は鮮やかな緑色の草木が生えているが、今現在足を踏み入れているエリアは黄緑色の植物が主だ。
お、洋梨みたいな果実が生ってる木がある。いくつかもいでいこうか。うまうま。
生息している魔獣もLv10台の魔獣が主で、普段の狩場より明らかにランクが上だ。
まあ今の俺やアルマにとっては実入りの少ない雑魚ばっかだが。せめてLv20以上はないと経験値の入りが悪すぎる。
さらに奥に進む途中で何度か魔獣に絡まれたが、文字通り一蹴。弱すぎて訓練にもレベリングにもならん。
スタンピードを乗り越えたころならいい修業相手になっただろうけどなー、強さのインフレって怖いわー。
さらに奥に進むと、黄緑色から黄色へと植物たちの色が変わっていく。
魔獣たちの気配もなかなか強力なものが感じ取れる。多分ここが次のエリアだろうな。
「今日はこの辺りで魔獣の討伐をしようか。大体Lv20くらいの魔獣の気配が感じ取れるし丁度よさそうだ」
「うん、肩慣らしにはそれぐらいでいいと思う」
Lv20以上の魔獣を肩慣らしの相手扱いですか。随分たくましくなってきたもんだな。
「もう少しでLv25になってジョブチェンジできそうだし、頑張る」
「ああ、やっぱLv25でジョブチェンジできるのか」
「Lv10まで上がって駆け出し、Lv25に達してようやく一人前として認められるようになる。…単にレベルだけ上がって、中身が伴ってない冒険者も多いみたいだけど」
「そうならないように、努力を怠らないようにしますか。さーて、手ごろな奴はどこかなー」
んー、近くにいくつか反応があるけど、どれにしようかなー。
む、一体ほど近付いてきてるな。手始めにこいつからいくか?
あれ? この移動速度と魔力反応、どっかで感じたことあるような…。
ってジェットボアじゃねーか! ちょっと懐かしいなオイ。
以前戦った時は入念に罠を張って、俺もアルマもボロボロになるまで消耗してようやく倒すことができた。
だが今では以前ほどの脅威を感じない。まあハイケイブベアに比べればワンランク下の魔獣だしなぁ。
「ヒカル、アレは私にやらせてほしい」
「ん、いいけど大丈夫……だよな。精霊魔法もあるし」
「精霊魔法は使わない。慢心してるわけじゃなくて、そればっかりに頼って他の戦術やスキルを使いこなせなくなるとよくないから」
「そうか、でも危険だと思ったら無理せず使いなよ」
「うん。……そろそろ、くる」
『ブゥガアアアアアアッ!!』
赤毛のイノシシが咆哮を上げながらこちらに猛スピードで向かってくる。
角ウサギみたいにジグザクに軌道を描いたりはせずにただ真っ直ぐに走るだけ、まさに猪突猛進。これ以上ないほどに分かりやすい軌道だ。
だがそれ故に衝突時の攻撃力は凄まじいものがある。しかもある程度接近すると【轟突進】を使って瞬間的に攻撃力をさらに上昇させるので、今の俺でもまともに喰らったらヤバいかもしれん。
そんな赤イノシシに向かって、アルマは【クイックステップ】を使用し自分の方から急接近した。
気力操作で移動距離と速度を強化しているらしく、俺の魔力飛行と遜色ない速さだ。
いきなり相手の方から近付かれて面食らったのか、【轟突進】を使うどころか怯んで走る勢いが鈍る赤イノシシ。
「ふっ!」
ドスッ!
その隙を突き、【魔刃・疾風】を使用し赤イノシシの脳天に鬼喰い鮫の牙剣を突き刺した。
並みの魔獣ならこれで勝負ありだろう。
『ググブゥアアアアアアアッ!!!』
頭に剣を刺されてもなお死なず、痛みからか怒りからか絶叫を上げている。
だが、この程度で死なないことは前回の戦いの時に分かっていることだ。
ゴゥッ と音を発し、赤イノシシの頭から青い炎が噴き出た。
【火炎剣】を発動させてそのまま脳を焼いてトドメを刺す、前回と同じ戦法だな。
前回みたいに剣に電流が流れたりしていないから火傷の心配も無し。あっという間に赤イノシシのHPはゼロになり、倒れた。
「…ホントに精霊魔法無しで倒しちまったな」
「うん、少しずつ強くなれてるみたいで安心した」
前回二人がかりで大苦戦しながら倒した相手を、ひと月経っただけで一人で楽に倒せるようになるようなペースを少しずつとは言わないと思う。
まあ俺も似たようなもんだけどさ。
「…でも、レベルがまだ上がらなかった」
「まあ他にも魔獣は沢山いるみたいだし、地道に狩っていけば上がるだろ。……早速、お出ましみたいだしな」
「…うん」
ジェットボアが倒れたぐらいから、十数体ほどの魔獣の群れがこちらに接近してきているのが感じとれた。
多分、ジェットボアの死骸を狙ってるんだと思う。
四足獣、大まかな輪郭、走るペースからしてオオカミかな。
…うわぉ、一体一体のレベルが20を超えてるうえに、リーダー格っぽい奴が一体混じってるやん。
魔獣:メドゥウルフ・ハイランナー
Lv23
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :381/381
MP(魔力) :120/120
SP(スタミナ):120/271
STR(筋力) :237
ATK(攻撃力):237
DEF(防御力):194
AGI(素早さ):285
INT(知能) :64
DEX(器用さ):78
PER(感知) :230
LES(抵抗値):69
LUK(幸運値):33
【スキル】
魔獣Lv3 四足獣Lv4 体術Lv4 牙術Lv3
魔獣:メドゥウルフ・ブラッディファング
Lv36
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :618/618
MP(魔力) :214/298
SP(スタミナ):207/399
STR(筋力) :422
ATK(攻撃力):422
DEF(防御力):356
AGI(素早さ):378
INT(知能) :170
DEX(器用さ):210
PER(感知) :374
LES(抵抗値):154
LUK(幸運値):93
【スキル】
魔獣Lv4 四足獣Lv6 体術Lv5 牙術Lv5 爪術Lv5
おいおい、ここはLv20の魔獣専用エリアじゃないのかよ。
総合的に見てハイケイブベア以上の魔獣が出現するとか、運がいいのか悪いのか。
多分、群れの一体が強くなって進化して、普通ならより奥地に移動するはずが、まだボス気取りのぬるま湯につかっているって感じかな。
例えるなら中学校の不良グループに高校生のOBが混じってるようなもんか。……どうしよう、そう思うとすごくダサい魔獣に見えてきた。
『ウオオオオォォォォォォォォオオオオオンッ!!!』
あ、なんか失礼なこと思っているのに勘付いたのか、遠吠えを上げて手下どもに攻撃命令を出したっぽい。
…よろしい、ならばかかってくるがいい不良オオカミども! 文字通り更生させてやる!
お読みいただきありがとうございます。




