運送レベリング
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生命探知をして魔獣の位置を把握し、ハント開始。
角ウサギの反応が多めだが、ところどころ少し大きい反応もあるな。オオカミだけじゃなくて、なんか全体的に丸っこい四足獣の反応があるけどコレもしかして豚か? なら是非ゲットしておきたいな。
まぁ、始めの間は角ウサギをメインで運んでいくとしますか。時々オオカミとか混ぜる感じで。
お、近くに手ごろな奴がいるな。待ってろよーすぐに捕まえてやるからなー。
あれから数時間経過。
最初の一匹は、運ぶときにスピードを出し過ぎて運んでる最中に気絶してしまって、起きてこちらを見た直後に全力で逃げていってしまった。……追いかけて捕まえるのはさすがにちょっと可哀想だったので見逃しておいた。
二匹目以降は速度をおさえて運ぶようにしておいたので、特に問題なく作業を進められた。…多少、獣臭さが服にうつってしまったが。
昼食や休憩をはさみながらもひたすら角ウサギ(時々オオカミや豚)を運ぶだけの単純作業。単調で退屈だがこれもレイナのレベリングのためだと思えばさほど苦にはならん。
「ハイ次ー、レイナ、気力と魔力大丈夫かー?」
「ぜぇ、ぜぇ、だ、大丈夫っすけど、肝心の体力が、そろそろ限界、近いんすけど…」
「ヒカル、今日はもうお開きにした方が…」
「ん、そうか。これで何匹目だっけ?」
「ご、50匹は超えてるんすけど…」
「おおー、よく頑張ったなレイナ」
「ていうか、カジカワさんが次々ポンポンと魔獣を運んでくるから頑張らざるを得なかったんすよ! こっちの状況よく見ないで魔獣を置いてさっさと次のを運ぼうとするから、倒すのに手間取ると複数同時に相手しなきゃならなくなるし!」
「ええと、あれは複数の魔獣と戦う経験を積ませるためであって決して状況を見てなかったわけではごめんなさい途中から適当に放り投げてました」
「言い訳するの途中で諦めて謝られても困るんすけど!?」
いやでも、オオカミとか運んでくる時にまだ前の魔獣と戦ってたら倒すまで待っていたりしてたし、そんなに危険な状況にはなってなかったと思うんだが。
え、そういう問題じゃない? はいすみませんでした。
最後に運んできた魔獣を討伐し終わると、疲労からかそのまま倒れ込んでしまった。
地面にうつ伏せになりながら『もう一歩も動けないっす…』とか言ってるし、仕方ないからおぶって帰ることに。
なんだか魔力操作の修業をしてたころのアルマを思い出すなぁ、随分軽いし背中に当たるものも無いが。…気のせいか背中から殺気を感じるからこれ以上は考えちゃダメだな、うん。
しかし倒れるほど魔獣を討伐した甲斐あって、昨日と今日だけで随分とレベルアップすることができたようだ。
レイナミウレ
Lv7
年齢:15
種族:人間
職業:見習い忍者
状態:空腹 疲労(大)
【能力値】
HP(生命力) :101/156
MP(魔力) :34/93
SP(スタミナ):7/73
STR(筋力) :77
ATK(攻撃力):77(+18)
DEF(防御力):71(+80)(+10)
AGI(素早さ):114(+24)
INT(知能) :70
DEX(器用さ):109
PER(感知) :114
RES(抵抗値):63
LUK(幸運値):73
【スキル】
短剣術Lv2 体術Lv2 隠密Lv2 忍術Lv1
装備
鉄のナイフ
ATK+18
熊革仕込み黒装束
DEF+80
風切りの足袋
DEF+10 AGI+24
…ちょっと強くなりすぎじゃない?
レベリング二日目で早くもLv7にまで到達しおったよこの幼女。怖い。
しかも素早さ、器用さ、感知の数値が基礎レベル一桁のそれじゃない。どんだけチートな職業なんだよ忍者。
≪忍者の能力値成長率は素早さが特に高めではあるが、気力操作や魔力操作の訓練の影響で器用さと感知の値も上昇している模様≫
そういえば、アルマが魔力操作の修業を始めてから感知や器用さの値がやけに高くなってたっけ。
五感とは違う魔力や気力の感知と、その操作なんかやってたらそりゃ能力値が上がるのも無理ないか。
「うぅ、疲れすぎて身体が重いっす。ホントに自分は強くなってるんすかね…?」
「大丈夫、すごいペースで強くなってるよ。一晩ぐっすり寝て疲れがとれたら実感できると思うぞ」
「いま、どれくらいのレベルなの?」
「基礎レベルが7。あと短剣術と体術のスキルが2に上がってる」
「…確かに早い。異常なくらいに」
「まあ、カジカワさんの考えた方法っすからまともなペースじゃないのは当たり前な気もするっすけど」
「そりゃどーゆー意味だオイ」
人がいっつも変な発想ばっかしてるみたいな言い方はやめなさい。え、実際そうだろって? せやな。……せやろか?
まあ他の人が真似しようとしても多分難しいだろうけどな。
単純な動きで突進してくるとはいえ、能力値にそれほど大きな差がない相手にカウンター気味にナイフを突き刺すなんてことはそう簡単にできるもんじゃない。
それをあっさりルーティンワークのようにできるのは、やはり気力操作の効果が大きい。
少ない気力で、瞬間的に能力値を大きく上昇させて角ウサギやオオカミの動きに対応しているからこそできる芸当だろう。
時々短剣術スキル技能を試したりしてるけど、魔力が残り少なくなってきたら俺やアルマから魔力を補給してもらってるので魔力が切れる心配もないし。
あとは俺やアルマとの組手の時の攻撃に比べたら断然遅いって言ってたっけ。…最近、結構本気の速さで攻撃しても反応できるようになってきてるから驚きだ。
やっぱこの子も才能あるわー。アルマといいレイナといい、不遇な環境から抜け出したら一気にその優秀な資質を表に出してきてちょっとたじたじだ。
…それに比べて、俺に特筆すべき取り柄なんかあんのかねぇ? 唯一俺だけの技といえる魔力飛行は人前じゃ大っぴらにはできないし、魔力操作や気力操作なんか論外。
まあいい、他の人を羨むより今の自分にできることはなにかを考えよう。
というわけでギルドに寄って宿に帰ったら早く晩ご飯作ろう、俺にできる数少ない仕事だし。今日は何にしようかなー。
…ん? 草原の奥から複数、人らしき魔力反応。
俺たち以外にも魔獣討伐の依頼を受けてるパーティがいたのかな。
…挨拶とかしといた方がいいかな。でも早く町に戻りたいしなー。
まあいいや、レイナおぶってるのを見られて変な誤解されても面倒だし、鉢合わせる前にさっさと帰ろう。
ギルドに戻って、魔獣討伐と薬草採取の依頼達成の確認をしてもらう際に、代理の受付嬢が信じられないものを見る目でレイナを見ていた。
「ほ、ホーンラビット41体、メドゥウルフ8体、ラッシュピッグが4体………ってどれだけ狩ってるんですか!? 後ろの二人に協力してもらってパワーレベリングしてるかと思ったら、ほぼ自力で全部狩ってるじゃないですか!」
「ふ、ふふふ……すごいっしょー……」
「レイナ、無理に喋らなくていいから休んでで」
「こんな疲労困憊の状態になるまで狩らせるとか、アンタ方は鬼ですか…」
「…確かに、無理させ過ぎたかもしれませんね。ごめんな、レイナ」
「へ、平気っすよー……ダイジョブダイジョブー……」
「どう見ても大丈夫じゃないでしょう! コレいじめかなんかですか!? こんな小さい子になにさせてるんですかあなたたちは!」
「小さいは余計っすー…」
「明日からはもう少し抑え気味にレベリングしようか。今日はよく頑張ったし、晩御飯のあとにデザート作ってやるよ」
「ふおおおおっ! マジっすかー!?」
「あ、あっさり復活した……この子もなんなのよ……」
デザートと聞いて、死にそうな顔から一気にイキイキとした表情に立ち直るレイナ。言っとくが誕生日に出したケーキみたいなのは無理だぞ。
「食い物で釣ってあんな小さい子に無茶させてんのかあの二人」
「鬼や、鬼がおる…」
「鬼っつーか、外道?」
周りのギャラリーがなんか言ってるけど無視。
無理させ過ぎたのは認めるけど、そこまで言われる筋合いないぞ。
ただ、確かにレイナにばっかり討伐させて稼がせるのも外聞が悪くなりそうだし、合間を見て俺とアルマで草原の奥で狩りに行ってもいいかもな。
お読みいただきありがとうございます。




