閑話 クライングブレイバー
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はいどうも勇者です。現在絶賛脱獄進行中。
オレの他に誰か捕まっているらしいので、救助できそうなら一緒に脱出しようとその人を探しているところです。
【順風耳】で囚われている人のいる場所を探そうとしたけど、このアジト意外と広くてなかなか見つからないな。
モタモタしてると、オレが脱獄したことがバレて脱出そのものが困難になる。さっさと見つけないと。
もしもまた捕まったりしたらより身動きとり辛いカタチで拘束されるだろう。そうなれば脱出は絶望的になる。…最悪、必要な物をアイテム画面に入れてからの自殺も考えよう。
≪確かに、アイテム画面に入れておけば死んでもロストは避けられますけど、ちょっと思い切りが良すぎませんかね…≫
生き返るのが分かってるとはいえ、オレも死ぬのは怖いしできれば避けたい手段ではあるけどな。
でも山賊どもやその売る相手の慰み者にされるくらいなら文字通り死んだ方がましだ。生き返れなかったらさすがにそんなこと言わないだろうけど。
……ん? この扉の奥の方からなんだか甲高い声が聞こえるような。
山賊たちとは明らかに違う声だ。…なんかヒステリックに喚いているようにも聞こえる。怖い…。
もしかして、山賊たちが言ってた人がこの奥に囚われてるのかな。
扉を開いて奥に進むと、オレが囚われてたのと同じような牢屋があった。
こんなに牢屋造るとか普段どんだけ人攫ってんですかね…。それか元々この場所は刑務所かなんかだったのかもしれないな。
声がする方に進んでいくと、檻の中で両手を後ろに縛られている女の子の姿が見えた。
赤く長い三つ編みの髪を地面に垂らしながら恨めし気に唸っている。この子がさっき山賊たちが話していた子だろう。
ちょっとステータス確認。
レヴィアリア
Lv7
年齢:15
種族:人間
職業:見習い槍使い
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :162/174
MP(魔力) :92/92
SP(スタミナ):30/71
STR(筋力) :96
ATK(攻撃力):96
DEF(防御力):87
AGI(素早さ):99
INT(知能) :84
DEX(器用さ):69
PER(感知) :85
RES(抵抗値):84
LUK(幸運値):40
【スキル】
槍術Lv2 体術Lv2
ん、今のオレと同い年か、まあ見た目通りだな。
≪おお、15歳ですでにLv7とは。普通の戦闘職の人ならまだ戦闘訓練や冒険者としての講習を受けている最中くらいの年齢なのに、なかなか高いレベルですね≫
そうなの? オレなんかLv10なんだけど。
≪そりゃアナタがおかしいだけです。ロクに訓練もせずにいきなり実戦でレベリングするなんて、本来自殺行為なんですよ? 高い能力値と数多くのスキルがあるからこそ一人で、なおかつ短期間でレベリングできたんです≫
まあそうだよね。そう考えるとRPGの主人公とか、冒険に旅立つ前に結構苦労して訓練してたりするのかもしれないな。…話を戻そうか。
囚われている人は外見は可愛い女の子だが、こちらに気付いたのかさっきからすごい睨んできて怖いんですけど。…オレ、なんかした?
「ちょっとアンタ! 山賊の下っ端かなんかなの!? 私をここから出しなさいよ!」
そしていきなりこちらに向かって喧嘩腰で怒鳴ってきた。
違うんです、オレも攫われた側なんですよぅ。
「アンタ、よく見たら私と同じくらいの歳じゃない! そんな若いうちから山賊なんかになって、情けないと思わないの!?」
「ち、ちが――」
「どうせなんの努力もしないでダラダラ過ごしてるうちに捨てられでもしたんでしょう! 山賊に身を落とす奴の経緯なんてそんなもんに決まってるわ! そうでしょう!?」
「あ、あぅ…」
…どうしよう、こっちがなんか口を開く前に大声で畳みかけられて上手く話せない。
てか、そもそも女の子と最後にまともに会話したのって何年前かも分からんのに、こんなグイグイ攻めてくる子相手にまともに話せるわけないじゃん…。
それに、なんの努力もしないでダラダラ過ごしていたってのは、間違いじゃないしな。……あ、なんか涙出てきた。
「はっ、なに泣いてんのよ。こんな小娘相手に怒鳴られたのがそんなに怖かったの? 情けないわねぇ」
「…さ、山賊じゃ……ぐすっ……ない…」
「…え? なに? グズついてるうえに声が小さくてよく聞こえないんだけど?」
「だから、山賊じゃ、ない!」
「…は?」
「ううぅ……せっかく、オレの他にも捕まってる人がいるって聞いて助けに来たのに、そんなに怒鳴らなくても、ヒック、いいじゃないかよぅ………」
「え、えええ…?」
…目から涙が止まらない。こんなに悲しい気持ちになったのはいつ以来だろうか。
俯いてしばらくの間ガキみたいにメソメソ泣いてしまった。
…こんなにカッコ悪く泣くなんて、肉体年齢に引きずられて精神年齢も退化してたりするんだろうか。
唖然とした表情のまま固まっている女の子の前で数分ほど泣いて、ようやく少し落ち着いてきた。
…なにが勇者だ。今のオレは女の子に怒鳴られただけで泣き出す情けないガキじゃねーか。死にたい。恥ずかしくて情けなくて死にたい。
≪え、えーと、大丈夫ですよネオラさん。泣いてる姿も庇護欲をものすごくそそられて可愛らしかったですし≫
それなんの慰めにもなってねーよ! 馬鹿にしてんのか!
「お、落ち着いた…?」
「…うん」
「……話も聞かずいきなり怒鳴ったりしてごめんなさい。あなたも奴らに捕まったの?」
「ああ、そうだよ。脱獄して逃げようとしてる最中に、オレの他に誰かが捕まってるって話を聞いて、一緒に脱出できたらって思って、探してたんだけど…」
「そ、そうだったの……。助けようとしてくれてたのに、あんな言い方して、本当にごめんなさい」
「…もういいよ」
申し訳なさそうな顔をしながら謝る女の子。それに対して少しいじけたような態度で言葉を返すオレ。
……なにこの図。小学生かオレは。
≪いや、むしろ幼稚園児…≫
それ以上なんか言ったら叩き割るぞ二次元野郎。
気を取り直して牢のカギを開錠して短剣で縄を切り、赤髪の女の子、レヴィアリアを解放した。
「とりあえず、まずは自己紹介からしましょうか。私はレヴィアリア、見習い槍使いの冒険者よ。助けてくれて、ありがとう」
「まだ脱出してないし、助かったわけじゃないけどな。…オレは、ネオライフ。よろしく」
「職業は?」
「…当ててみたらどうだ?」
「まあ、開錠に短剣と言ったらシーフでしょうね」
「じゃあそれでいい」
「じゃあ、ってなによ!? 真面目に答えなさいよ!」
「あんまり大きな声出すなよ、怪しまれてこっちに山賊が来たらどうする」
「アンタが茶化すようなこと言うからでしょうが!」
だってさぁ、さっきまでメソメソ泣いてたオレが実は勇者でーすとか言っても信じてもらえないだろうし、信じてもらえるように説明するの面倒だし。
もうシーフでもコソ泥でも好きに思ってくれればいい。あーメンドイ。
「それじゃあ、ここから無事に出られたら答え合わせをするから、それでいいかな?」
「いや、今教えなさいよ! 仮に山賊と戦闘になったりした時の連携に困るでしょうが!」
「基本は前衛だ。あと、仮にじゃない」
「え?」
この牢屋だらけの部屋から出るための扉から、山賊たちが何人か入ってきた。
…だから言ったのに。
「おい、てめえらどうやって檻から出やがった!」
「おいおい、あの男女までいるのかよ。他のトコに閉じ込めといたのにどうやってここまできたんだか」
「いや、男女じゃなくて女っぽい男だっての」
今、男女とか女っぽい男とか言った二人、絶対ぶっ飛ばす。
「お前が騒いだせいで山賊が見回りに来たじゃねーか、どうすんだよこれ」
「…え? アンタ男なの?」
「今ソレ聞くかお前!? 一人称『オレ』って言ってる時点で分かるだろ!」
「だって、アンタその辺の下手な女の子より可愛いじゃないの! ぱっと見、女か男かなんて分かんないわよ! 口調だってボーイッシュな女の子だって思えば無理ないレベルだし!」
「………オレ、また泣きそうなんだけど」
「な、なんか言い争ってんぞあいつら」
「今のうちにとっ捕まえてふん縛れ!」
口喧嘩している間に山賊どもが襲いかかってきた。
もうこうなったらこいつらに八つ当たりして憂さ晴らししたるわクソァ!!
ちなみに今回初登場のレヴィアリア、三人娘の赤髪の子の妹だったり。
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